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創立総会はいつどのように開催するのか/会社設立前の株主総会

創立総会はいつどのように開催するのか/会社設立前の株主総会

起業を考えている方、特に募集設立という方式で事業を立ち上げようと考えている方の場合「創立総会」というものについて知る必要があります。ここでは創立総会とは何か。どのタイミングで行い、どんなことを行うのか、といったことを解説していきます。

創立総会とは?

創立総会とは、株式会社の設立段階における株主総会のようなものです。つまり、会社設立のために決めなければならない様々なことを話し合う場、のことです。 しかし株主総会と異なる点もあります。そもそも株主総会は株式会社において「最高の意思決定機関」「万能の機関」などと言われるように、原則、あらゆることを決定する権限を持っています。そしてこの株主総会を構成するのが各株主であり、この場で様々な決め事をするだけでなく取締役など役員に対する責任問題についても扱うことになります。株主は株式という形で会社に投資をしているため、その投資分につき利害を共にします。そのため役員等がその職務においてミスを犯し、会社に損害が生じた場合には文句を言う権利があり、逆にそれを許すこともできる立場にあります。

創立総会開催の条件

創立総会はいつどのように開催するのか/会社設立前の株主総会の画像1

創立総会は株主総会の前身であり、会社設立に関する様々な事項を話し合う場になります。ただしこの話し合いを行うには、その権限を持つ株式引受人を確定しなければなりません。「株式引受人」とは将来株主になるとみられる者のことですが、設立前の段階では厳密には株主ではないためこのように呼ばれます。 そして創立総会を開催する条件として、株式引受人を募集すること、株式を各株式引受人に割当てること、そして払い込みを受けるなど、一連の手続きを経る必要があります。

起業者は、設立手続きにおいては「発起人」と呼ばれ設立手続きを進行させる職務を執行します。この発起人は株式の引受について払い込みの日、または払込期間の末日ののち、創立総会の招集をすることと定められています。

創立総会は発起人が招集する

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創立総会の招集をかけるのは発起人です。会社設立後取締役になる者を「設立時取締役」と言いますが、招集をかけた時点ではまだ選任されておらず存在そのものがありませんので、当然これらの者が召集をかけることはできません。

創立総会の招集は基本的に株主総会と同じです。公開会社であるかどうか、取締役会設置会社であるかどうかによって条件が異なる点なども似ています。以下で具体的に招集における通知の内容や、通知を出す時期について解説していきます。

創立総会の通知内容とは?

創立総会の招集通知には「日時と場所」「目的」「書面投票ができる旨」「電磁的方法による投票ができる旨」などを記載します。日時と場所は当然のこと、開催する目的についても明確にしておく必要があります。

目的と聞くと抽象的な印象を受けるかもしれませんが、創立総会においてはこの目的が重要になってきます。なぜなら目的事項以外のことは原則決議をすることができないからです。何を話し合うのか、会社設立にあたりどんなことを特に定めておく必要があるのか、事前によく考えて記載、通知を出さなくてはなりません。

創立総会の通知の時期とは?

通知の時期、つまり通知を発する時期についてですが、これは原則創立総会の2週間前までに出さなくてはなりません。ただしこの期間は設立する会社が公開会社かどうか、取締役会設置会社であるかによって変わってきます。

仮に、株式譲渡に制限を設ける非公開会社として設立するのであれば、例外的に創立総会の1週間前までに通知を出せば良いとされています。さらに、非公開会社かつ取締役会非設置会社であれば、定款の定めによりさらに短く設定することも可能です。そのため創立総会まで1週間を切ってから通知を出しても問題はありません。

ちなみに設立時株主の全員に同意を得ることができれば招集の手続を省略することも許されます。

創立総会では何をする?

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招集をかければいよいよ創立総会の開催となります。そして創立総会ですることとは「創立総会の目的である事項」と「定款の変更」、そして「株式会社の設立の廃止」です。目的である事項とは通知の記載事項にもあった、発起人の定めた「目的」のことです。通知に関する説明をしたとき、創立総会では目的として定めた事項しか決議できないと言いましたが、会社の根本原則となる定款の変更や、会社設立の廃止に関しては非常に重要な事項ですので特に通知に定めがなくても取り決めを行うことが許されています。

それでは、創立総会でどのようなことを行うのか、詳しく見ていきましょう。

創立総会でやること①設立時取締役の選任

会社設立において発起人は大きな権限を持ちます。しかし一般投資家の投資を募る募集設立をする場合には発起人以外の利害も存在するため発起人の権限にも制限がかかります。その根拠のひとつが創立総会の存在です。これがあることにより発起人があらゆる事項を勝手に決めることができなくなっています。設立時取締役の選任ついても同様です。これは創立総会で選任しなくてはならず、発起人の一存では決められません。しかし、定款に規定を置けば直接定めることも可能とされています。なぜこのようなことが認められているのでしょうか。

定款による定めで設立時取締役を決められるのは、結局創立総会において定款の変更が可能であるからです。発起人によって作成された定款の内容、つまり設立時取締役の選定に不服があれば定款を変更すれば良いのです。

ただし創立総会による決議であったとしても、設立時取締役等に選任できない場合があります。法律の規定により、取締役になることができない要件(欠格事由)を満たすケースです。会計参与や会計監査人に資格制限があるように、それぞれの役職に応じてある程度の制限があります。

欠格事由にあたることもなく、無事選任の賛成を得られたとしても、設立時取締役に選任されようとしている本人がこれに同意をしなければ就任には至りません。会社設立後の役員同様、設立時取締役は設立会社に対して就任承諾書を提出します。

創立総会でやること②定款の承認・変更

定款は会社の根本原則であり、ここに定められている規定に従い会社は活動を行っていきます。そのため定款の内容は将来株主になる者にとって非常に重要なものです。創立総会ではこの定款に問題がないかどうか、その承認を得、もしくは必要に応じて変更をすることになります。定款ですでに設立時取締役が定められていても変更することはできます。また、一度選任が決まった設立時取締役がいても、会社成立までの間はその後の創立総会によって解任することはできます。

定款には「絶対記載事項」と呼ばれる、最も基本的で重要な事項があります。これがなければ会社が無効になることもあるほど重要です。 また、「変態設立事項」と呼ばれる事項もあります。例えば払込みを現金ではなく不動産や自動車などの物で行う場合(現物出資)などにはそのことを変態設立事項として記載しなければなりません。そしてここに記載される事項は設立時株主同士の公平・不公平に関わってきます。そのため変態設立事項の変更がなされた場合、これに不服がある設立時株主は株式の引受を止めることもできるとされています。

創立総会でやること③発行可能株式総数の決定

「発行可能株式総数」は定款の絶対的記載事項です。会社が発行できる株式の数の設定です。そして定款の内容は創立総会以前に、発起人全員の同意によって決められていきます。しかし、設立時募集株式の払込期日または払込期間の初日以後には発起人全員の同意があったとしてもこの数に変更を加えることはできません。創立総会の決議を経る必要があります。

そもそも設立時に発行する株式の総数は、発行可能株式総数の4分の1未満になってはいけないとされています。これには、後に取締役の意思により発行できる株式の数を制限するという意図があります。 公開会社では取締役会の判断で株式の発行が行われます。そして取締役にとって都合の良い株主に発行をすれば間接的に株主総会の決議を取締役が操作できてしまうのです。このように、株主にとっては発行可能株式総数と設立時発行株式総数の比率が重要になるためその変更は創立総会で行うべきとされています。

ちなみに非公開会社であれば4分の1以下という制限はないため比較的緩く発行可能株式総数を決めることができます。

創立総会でやること④会社設立廃止の決定

創立総会で会社の設立そのものをやめる決定もできます。定款変更と並んでこの決定ができることは設立時株主の重要な権利です。話し合いの結果設立を廃止すべきと思慮する場合にはこの決定がなされる可能性もあるでしょう。

創立総会でやること⑤発起人による報告

会社成立後の株主総会では取締役・会計参与・監査役および執行役に説明義務があります。しかし創立総会ではこれらの役員等が存在しないため発起人が設立に関する事項を報告、説明する義務を負います。報告内容としては、現物出資された物の価値が正しいのかどうか調査した結果、などがあります。

創立総会でやること⑤設立時取締役等による調査報告

選任された設立時取締役はその選任後すぐに調査をしなければなりません。現物出資に関することや会社設立の手続きに関して法令違反等がないことなどを確認していくのです。そしてその結果を報告しなければならず、設立時株主から調査に関して説明を求められればそれに応えなければなりません。

本来設立時取締役として選任されてからの調査になりますが、実務上、選任予定の設立時取締役が事前に調査を行うことが望ましいとされているため調査の時期が前後することもあるでしょう。

創立総会でやること⑥創立総会議事録の作成

創立総会で話合うことは重要ですが、これを議事録として記録に残すことにも非常に重要な意味があります。この創立総会議事録は設立登記の添付書類となるため、必ず記録しておかなければならないのです。ここには「開催日時と場所」、「議事の経過の要領および結果」、「出席した発起人または設立時役員等の氏名」などを記載します。さらに、会社が成立したあともこれは保管しなければならず、創立総会の日から10年間、発起人が定めた場所に備え置き、そして設立時株主から閲覧の請求があればこれに応えられるようにしておかなければなりません。

創立総会の決議要件とは?

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創立総会では原則1株式につき1個の議決権となります。そして決定する事項に応じて「普通決議」と「特別決議」に分かれ、それぞれに要件が分かれます。 普通決議の場合には「総議決権の過半数、かつ、出席した設立時株主の議決権の3分の2以上の賛成」が決議要件です。 これに対し特別決議の要件は「議決権を行使できる設立時株主の半数以上、かつ、総議決権の3分の2以上の賛成」と定められています。特別決議では株主の頭数が要件に入っていることがポイントとなります。

まとめ

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創立総会の概要、招集通知について、そして当日に行われる内容やその決議の要件について説明してきました。株主総会と共通点は多いものの各要件が比較的厳格に設定されている点で相違します。

また創立総会を理解するにあたり、発起人という存在が重要になることもポイントと言えます。株主総会では発起人が問題になることはなく、会社成立後には取締役などの役員が大きな力を持ちます。しかし成立までは、のちに取締役になることが予定されている者だとしても、設立時取締役が取締役会のようなものを行いここで取り決めをすることは許されません。定款作成の段階においても発起人の同意が必要不可欠であり、おおむね発起人にあたると考えられる起業者はこれだけ重要な権限を持っているということを認識して設立の手続きを進めていく必要があります。

発起人以外に利害が及ぶ募集設立では特に手続きに瑕疵がないよう配慮しましょう。その瑕疵によって損害が生じた場合、発起人は責任を負うことになり、いったん会社が成立していたとしても株主の訴えにより会社の成立自体が無効になる可能性もあります。創立総会における瑕疵も会社設立の無効事由に含まれており、不当な招集や決議、議事録の不備などもその後リスクとなる場合があります。手続きに心配がある場合には専門家のアドバイスを得るなどして対処するようにしましょう。

企業の教科書
高桑 哲生
記事の監修者 高桑 哲生
税理士法人 きわみ事務所 所属税理士

東京都千代田区にある税理士法人きわみ事務所の所属税理士。
「偉ぶらない税理士」をモットーに、お客さんに喜んでもらえるサービスを提供。
税務処理だけでは終わらない、プラスアルファの価値を提供できる税理士を目指す。

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