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会社設立に定款がなぜ必要?定款に定めるべき事項とは

会社設立に定款がなぜ必要?定款に定めるべき事項とは

会社設立の時にすべき準備が定款の作成です。初めて会社設立をする人は、定款とはどんなものなのかピンとこないかもしれません。定款の目的や、定款にどんな情報を含めるべきかについてまとめました。

会社の定款に従わなかったときにどうなるのかという点も説明します。どのような定款を作るか考えるときに覚えておきたい注意ポイントについても紹介していきます。

定款はなんのために必要なのか

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定款とはどんな目的のために必要なのでしょうか。簡単に言うと定款とは、会社のルールブックです。定款の内容には、会社についての基本的な情報が含まれます。

会社がどんな名称なのかという商号を書かなければなりませんし、どんな目的の事業なのかについても書いておく必要があります。

事業年度も自分で決められますから、何月から何月までが事業年度になるのかを記載してください。本店所在地や株式についての情報も書かれます。特に会社の存在目的となる事業内容は重要な項目となります。いわば会社の根幹とも言える部分なのでよく考えて作成していきましょう。

定款を一旦作成したら、認証手続きを行います。本店所在地を管轄する法務局へ定款を提出し認証します。この認証については後ほど詳しく説明していきます。

定款に含めるべき情報とは?

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もう少し具体的に定款に含めるべき情報について解説していきます。大きく分けて定款には三つの事柄を書かなければなりません。

  • 絶対的記載事項
  • 相対的記載事項
  • 任意的記載事項
この三つのポイントは会社法によって定められているもので、このうちの幾つかは必ず記載しておかなければいけない情報です。もしこれらの情報が記載されていないと定款は無効になることがあります。それぞれのポイントには何が含まれるのか説明します。

絶対的記載事項

絶対的記載事項には、最初の項でも説明したような基本的な情報が含まれます。会社の商号や事業目的、本店所在地などについてです。資本金や発起人の個人情報なども書かなくてはなりません。

事業目的を書く理由は、事業の取引や運営を安定させるためです。目的がはっきりしていないと運営の方向性が定まらず会社が不安定になってしまいます。

商号は他の会社と似たような名前にならないために、はっきりと決めておかなければなりません。

本店所在地を決めるときには、商用利用が許可されているエリアの住所を書いてください。不動産を取得していない場合には、バーチャルオフィスの住所を利用することも出来ます。

資本金を書くときには、この金額が金融機関の融資を募るときにチェックされることを覚えておいてください。あまりに低い金額だと金融機関から信頼してもらえません。

相対的記載事項

続いて相対的記載事項について考えます。絶対的記載事項は必ず書かなければいけない項目ですが、相対的記載事項は書いた場合のみ効力が発生する情報です。例えば、相対的記載事項として株式を発行すると書いたら、必ず株式を発行しなければなりません。書いていなければその義務はありません。

株式発行を定款に書いたのに、発行しなかった場合はルール違反と見なされます。会社設立時に株式会社にしたのだから、株式発行をするのは当たり前だろうと思われるかもしれません。実は2006年の法改正の際に、株式会社であっても株券の不発行を選ぶことが出来るようになっています。

定款に書いていなければ株式を発行しなくても、株式会社として運営していけるのです。 発行すると書いたとしても、無制限に株券を発行しなければいけないわけではありません。 どれくらいの株券を発行するか上限を記載しておくことができます。

任意的記載事項

任意的記載事項は、定款ではなくても他の文書で明確化し、効力を発揮できるような情報のことを表します。例えば、役員の数や総会を行う月などの情報です。必ずしも定款で明確化しなくても良い内容となっています。一旦定款に書いてしまうと、守っていく必要があるので気をつけてください。

後から定款の内容を変更したいと思ったら手間と費用がかかります。任意的記載事項に何を載せるかどうかをよく検討しましょう。

定款の事業目的に違反するとどうなるの?

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もし定款の事業目的に違反したならどうなるのでしょうか。刑事罰や行政罰を受けることはありませんが、民法では違反と見なされます。事業目的以外のことをした場合、その事業は無効と見なされてしまいます。

定款に記載のない事業をして利益を出したなら、その利益は法律に基づいていないものと判断されてしまうのです。刑事罰はありませんが、周りの企業や取引先からの信用を失います。融資を受けている金融機関や出資者からの信頼も落ちてしまいます。会社の運営は極めて不安定になってしまうでしょう。特に株式会社の場合は株主や債権者からの追及を免れません。

あまりに定款の事業目的化からかけ離れて不当な利益を得た場合は、筆頭株主としての責任を果たさなかったとして特別背任罪に問われることもあります。

定款を遵守するために知っておきたいこととは?

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しっかりと定款を守っていくためには、事業目的を考えるときに注意しなければなりません。具体的にどんな点に注意すべきか最後の項で説明します。

事業目的に慈善事業をするとはっきり書かないことも大切です。

基本的に会社は利益を出すことを目指して運営されます。簡単に言うと、お金を儲けるための組織です。それなのに慈善事業をメインにするかのような事業目的の書き方をしてしまうと、定款を遵守していないとクレームを受ける可能性があります。

どうしても慈善事業メインで行っていきたいなら、公益法人を作るようにしてください。 もしくは、営利目的の事業と慈善事業のどちらも行うことを定款に明記しておくべきです。

どんなときに定款の認証が必要?

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定款が完成したら認証が必要となります。作成した定款が正当性があるかどうかを公証人に認証してもらわないといけないのです。

これを行っていないと、後から定款を改ざんしたと言われたり、定款が紛失したので詳細は分からないといったと問題になります。特に株式の譲渡や相続の時に定款の正当性を巡って問題が起きます。

未然にこの問題を防ぐため、公証役場で定款の認証をしておくのです。定款の認証には5万円のコストがかかります。認証が必要なのは株式会社や一般財団法人です。

定款の認証が必要ない会社もありますが、どんな種類の会社でしょうか。

  • 合同会社
  • 合名会社
  • 合資会社
これらの種類の会社では定款の認証が必要ありません。なぜなら株式会社と違って会社の意思決定をする人が社員だけで、流動的な株主ではないからです。

会社設立時の定款で注意すべきポイントを解説

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会社設立時の定款で注意しなければいけないポイントを解説します。

絶対的記載事項の注意点

事業目的を書くときには、将来に始める可能性がある事業についても書いておきましょう。 直近で行う事業だけではなく、今後始める確率が高い事業についても明記しておくと、記載されていない事業を行ってルール違反と見なされることを防げます。

また、事業目的をある程度曖昧にしておくことも大切です。具体的な事業について書いた後に、前各号に附帯または関連する一切の業務、と付け加えておくだけで関係する事業の幅が広がります。

商号を書くときには必ず株式会社という言葉を入れてください。社名の前でも後でも良いですが、必ずこの言葉が必要となります。支店や部門の名前は商号に含める必要はありません。

相対的記載事項の注意点

発行可能な株式の数を決めるときには、公開会社にするか非公開会社にするかが関係します。非公開会社であれば株式の発行数に限度はないので明記する必要はありません。

公開会社であるなら、すでに発行分の株式の4倍が上限となります。もし会社が認めた人だけに株式を譲渡できるようにしたいケースでは、株式の譲渡制限に関する事項を含めてください。

この点を書いておかないと、知らないうちに会社の知らない人や企業が株式を取得し、会社の経営権を奪われてしまうことが起きえます。

節税のための注意点

事業年度を決めるときには、利益が一番出そうな月から年度を始めるようにすると節税がしやすいです。ビールを造る会社が、一番暑くてビールが売れる8月を年度の頭にするとします。

そうすると年度頭の売り上げを見ながら、年度末までの残りの期間にどれだけ経費を使っていくかを決められます。売り上げが予想以上に多かったなら、広告費を多く使って経費で計上できる金額を増やすことが出来るのです。

役員報酬で経費をコントロールすることも可能です。年度頭の3ヶ月だけが役員報酬を変更できる期間です。最初の月の利益を見ながら、役員報酬を上げるか下げるかを決めて節税をしていけます。

春の時期に事業年度末を持ってくると、税理士から適切なサポートを受けられないことがあります。多くの企業が年度末を迎えるため税理士が忙しくなるからです。年度末の時期が他の企業とずれているなら、税理士と一緒にゆっくり節税対策を練られますよ。

まとめ

会社設立の際には定款を作る必要があります。定款には事業目的や会社の商号と言った絶対的記載事項が書かれています。

さらに株式の発行数などを明記している相対的記載事項も記されています。定款は会社の実態と方向性を表すルールブックのようなものです。

もし書かれている内容と違う事業を行うなら、ルール違反と見なされて社会的な信用を失います。

定款を遵守するためにも事業目的を書くときには、何を書くかをよく考えてください。ある程度曖昧な文言にすることや、将来取り組む可能性がある事業を明記しておくと良いでしょう。

事業年度を決める際は、節税の観点から有利になるような時期を選ぶのがおすすめです。
会社の運営を安定させる力を持つ定款ですから、時間をかけて準備していくようにしてください。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

東京都千代田区にある税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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