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フランチャイズでの独立開業|メリットとデメリットについて解説

フランチャイズでの独立開業|メリットとデメリットについて解説

フランチャイズ(FC)は、すでに確立されたノウハウや実績を利用して始められる開業方法の1つです。フランチャイズならではのメリット・デメリットが存在するので、フランチャイズでの開業を検討する人は事前に注意点を確認しておきましょう。

当記事ではフランチャイズでの独立開業を検討する人に向けて、ビジネスモデルの概要や加盟のメリット・デメリットなどを解説します。

フランチャイズとは?

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フランチャイズとは、フランチャイズ本部(フランチャイザー)が有する商標、ノウハウ、仕入れルートなどを、加盟店(フランチャイジー)に与えるビジネスモデルです。加盟店は本部から提供される権利・設備と引き換えに、ロイヤリティ(権利所有者へ支払う対価)を本部へ支払います。

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出典:中小企業庁|フランチャイズ事業を始めるにあたって

事業開始・運営に必要な権利・設備を本部に準備してもらえるので、初めて独立を志す人でも利用しやすいビジネス形態です。

フランチャイズ展開は、レストラン、コンビニ、ラーメン店、クリーニング店、学習塾、修理業、介護業など業態・業種を問わず多くの企業で採用されています。日本の大企業の中にも、売上・事業拡大のためにフランチャイズ展開を行っている企業が多数存在します。

  • セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンなどの大手コンビニ
  • マクドナルド、王将フードサービスなどの外食チェーン
  • アパホテル、東横インなどのホテル関係
  • ヒューマンアカデミー、学研などの学習塾・スクール関係
  • アパマンショップ、センチュリー21などの不動産関係

「2021年度フランチャイズチェーン統計調査(業種別チェーン数・店舗数・売上高)」によると、フランチャイズ市場の2021年度の売上は25兆8,800億円という規模でした。中でもコンビニエンスストアなどの小売業が、約75%と大部分を占めています。

このようにフランチャイズ業界は、日本においてポピュラーかつ多大な市場規模を誇るビジネスモデルだと言えるでしょう。

フランチャイズと直営店・代理店との違い

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フランチャイズの仕組みを知るためには、直営店や代理店との違いを頭に入れておくと理解しやすいです。

直営店とは、フランチャイズ本部が直接雇用や経営を実施している店舗のことです。フランチャイズオーナーではなく、本部の正社員が責任者となっているケースが多くなっています。

一方で代理店は、フランチャイズよりも自由度が高いビジネスモデルとなっています。本部から提供されるのは商品やサービスのみで、経営方針や販売方法は代理店に一任されるのが一般的です。

フランチャイズによる開業のメリット5つ

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フランチャイズ契約で開業するメリットは、主に次の5つです。

  • 事業未経験でも本部のノウハウを使って運営できる
  • フランチャイズ本部のブランド・設備を活用できる
  • 資金調達の面で有利になる
  • 低コストでの開業がしやすい
  • フランチャイズ本部からのさまざまなサポートを受けられる

事業未経験でも本部のノウハウを使って運営できる

フランチャイズに加盟すると、フランチャイズ本部のビジネスモデルやノウハウの提供を受けられます。

個人経営の場合だと、経営に関するノウハウなどを1から構築しなければなりません。構築すべきものの例としては次のとおりです。

  • 接客マニュアル
  • 原材料・製品の仕入れルート
  • 営業ルート
  • 商品管理の方法
  • マーケティング関係
  • 業界・業種に関する知識
  • 経営に関するバックオフィス体制

フランチャイズ契約による開業の場合、これらの経営に必要なものは、すべて本部が準備しています。事業未経験の人であっても、時間や労力をかけることなく経営をスタートしやすいのがフランチャイズのメリットです。

フランチャイズ本部のブランド・設備を活用できる

フランチャイズ契約での開業は、本部の商標や商品・サービス、看板デザインなどをほぼそのまま引き継いで行います。

そのため、本部がこれまで培ってきた知名度や商品満足度などを保ったまま、事業をスタートできるのがメリットです。開業直後から、一定の集客や顧客満足度を期待できるでしょう。

特に大手のフランチャイズであれば、TVCMや大型広告などのマーケティングや、潤沢な資金を利用した新商品開発・研究などを本部が請け負ってくれます。フランチャイズオーナーは、自店舗の売上・利益の拡大に専念できます。

また、フランチャイズ契約であれば、調理器具、机・椅子、配列棚などの備品を本部が提供するケースが多くなります。オーナー側で設備の選定や改善などを行う必要がなく、常に店舗に合った設備を利用できるのです。

資金調達の面で有利になる

フランチャイズでの開業の場合、本部がこれまでに培ってきた信用のおかげで、1から独立する事業者よりも銀行からの融資や助成金・補助金が出やすいメリットがあります。

事業計画書を作成・提出する際も、本部の類似事例・実績が活用できます。融資・支援側も「すでに実績がある事業だ」と判断できるため、安心して資金を提供できるのです。

店舗型やその他初期費用がかかる事業を始める場合だと、開業資金や当面の運営資金を調達することが非常に重要です。この点フランチャイズであれば、経営初期から資金調達の面で有利になります。

またフランチャイズによっては、資金調達のサポートや各設備・備品の支払い代行など、本部側で資金関係の支援を行ってくれる場合もあります。

低コストでの開業がしやすい

フランチャイズ契約だと、ノウハウや設備・備品が揃っていたり、資金調達しやすかったりなどのメリットのおかげで、1から独立するよりも低コストで開業できるのが特徴です。

株式会社マイナビの調査(97社)によると、フランチャイズオーナーになる際にかかった開業資金の金額は1,000万円未満が83.6%という回答でした。

1番多かったのは100万円未満の25.8%、次いで300万~500万円未満の23.7%、500~1,000万円未満の20.6%でした。前述したノウハウ・資金調達面のサポートも同時に受けられることを考えると、低コストで開業しやすい方法であると言えるでしょう。

とはいえアンケート結果を見ても、開業資金がまったく必要ないというわけではありません。業態や業種によりますが、店舗型フランチャイズの場合は数百万円~数千万円の開業資金が必要になる可能性があります。

少し古いデータですが、フランチャイズ・チェーン事業経営実態調査報告書(2007年度)の結果を参考として紹介します。

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出典:経済産業省|フランチャイズ・チェーン事業経営実態調査報告書

低コストでフランチャイズ開業を検討している場合は、本部側がどこまで支援してくれるのかを事前に確認しておきましょう。

フランチャイズ本部からのさまざまなサポートを受けられる

フランチャイズに加盟すると、ノウハウ提供や資金面以外でも本部からさまざまなサポートを受けられます。具体的には、次のようなサポートです。

  • 接客や運営方法の指導
  • 経営に関する指導・改善点の抽出
  • 店舗開店時の準備
  • フランチャイズ本部の経営戦略・最新商品・トレンドなどの共有
  • その他本部担当者からのアドバイスやサポート

フランチャイズ契約4つのデメリット

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フランチャイズでの開業を検討する際は、次のデメリットに注意しましょう。

  • ブランド利用による責任が発生する
  • ロイヤリティが発生する
  • 独自・自由な経営が難しくなる
  • フランチャイズ契約ならではのトラブルが発生する

ブランド利用による責任が発生する

フランチャイズ開業は、本部のブランドを利用できるメリットがある反面、ブランド利用による責任やデメリットが発生します。

例えば、個人ブランドでの失敗はすべて自社の責任です。一方でフランチャイズに加盟している場合は、失敗した分が本部企業や他のフランチャイズ店舗にも影響する可能性があります。逆に本部や他店舗の失敗が、自店舗の売上・評判に影響するケースもあります。

とくに近年では情報端末やSNSの発達により、従業員・アルバイトによる問題行動や商品・サービスの問題が一気に拡散されやすくなりました。2023年には大手の回転寿司の問題が大きく拡散され、株価に影響が出るなど社会問題になりました。

フランチャイズのブランドの利用は、メリットだけでなくデメリットの影響も強く受けることを覚えておきましょう。

ロイヤリティが発生する

フランチャイズ開業は低コストで済むケースがある反面、ロイヤリティの高さがデメリットになる可能性があります。フランチャイズ事業で挙げた利益は、全額が自分の利益になるわけではありません。

ロイヤリティの金額は、フランチャイズの本部の方針によって変わります。ロイヤリティの支払い方法は主に次のとおりです。

ロイヤリティの支払い方法 概要
粗利益配分方式
  • 「販売価格-仕入原価」で算出した粗利益に対して、
    一定の割合をかけた金額で算出する方式
  • 大手コンビニにて採用
売上高比例方式
  • 売上高に対して、一定の割合をかけた金額で算出する方式
  • 外食チェーンなどにて採用
  • 売上高が上がるほどロイヤリティの比率を
    少なくする形式を採用するフランチャイズもあり
定額方式
  • 業績や売上などにかかわらず、一定の金額を
    ロイヤリティとして支払う方式
  • 市場規模の小さい業種で採用
営業規模比例方式
  • 店舗面積や部屋数に応じて金額を算出する方式
  • 居酒屋チェーンなどで採用
商品供給代替方式 加盟店に提供される商品などの価格に
ロイヤリティが含まれている方式

ロイヤリティのトラブルは、フランチャイズ契約において多い事例であると、経済産業省や中小企業庁などでも注意喚起されています。契約前には、算出方法やその根拠などをしっかりと確認しておきましょう。

独自・自由な経営が難しくなる

フランチャイズ契約は、原則として本部のブランドを基に経営を行います。そのため、加盟店は原則として独自の商品開発やサービスの運用ができません。独自ルールで自由に経営したい場合は、フランチャイズがあわない可能性があります。

営業時間や休日なども勝手に決めるのは難しく、本部の担当者とやり取りして決定するのが基本です。

ただし、すべてに従う必要があるかは本部の運営方針にもよります。例えば飲食関係のフランチャイズであれば、地域性や食材に応じたオリジナルメニューが認められる可能性もあります。

フランチャイズ契約ならではのトラブルが発生する

フランチャイズ契約による事業は、個人開業とは異なるトラブルが発生します。経済産業省や中小企業庁が公表する、よくあるトラブル事例の一部は次のとおりです。

  • 加盟店募集のときと加盟後で経営実態が異なる
  • フランチャイズに加盟できなくても、加盟料だけ請求される
  • ロイヤリティの算出方法が複雑で、想像以上に高額になった
  • 本部が無断で会計処理を実施し、覚えのない貸付や減額、発注がなされている
  • 自店舗の商圏内に本部直営店や別のフランチャイズ店舗が開店した
  • 解約を申し出たら、突然解約違約金を請求された

参考:中小企業庁|フランチャイズ事業を始めるにあたって

トラブルを避けるためには、フランチャイズ本部の評判・業績や契約内容、経営理念、債権債務関係などをしっかりと確認することが大切です。また、テリトリー権(商圏保護や地域制限など)の有無などもチェックしておきましょう。

フランチャイズ開業の際に意識したいポイント

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フランチャイズへの加盟を検討する際に大切なのは、経営やその他のことをすべて本部にまかせっきりにしないことです。加盟先が有名企業であっても、フランチャイズ契約においては、双方が対等なビジネスパートナーになります。本部の言いなりになるのではなく、お互いに業績向上を目指すことを目標にしましょう。

とはいえ実際のところ、力関係的に本部側への抗議が難しいケースもよく見られます。トラブルが発生したときは、経済産業局、公正取引委員会、商工会議所、商工会、一般社団法人フランチャイズチェーン協会といった相談窓口の利用も検討してください。契約に関するトラブルであれば、企業法務の専門家である弁護士への相談も効果的です。

また、フランチャイズ経営を成功させるためには、コンセプトや規則から逸脱しない範囲での運営努力が必要です。例えば同じメニュー・サービスでも、店舗の位置、従業員のモチベーション、商品配列、内装などで顧客満足度は大きく変わります。

ノウハウや実績を利用しつつ、オーナー自身が事業計画や企画を策定することが大切です。より売上・利益拡大を目指すなら、本部の経営理念やマーケティング戦略の方向性を理解して経営を行うように心がけましょう。

フランチャイズのメリット・デメリットを理解した開業を!

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本部のノウハウ・実績・設備や各種サポートを利用して開業できるフランチャイズ契約は、これまで経営経験がない人でも始めやすいビジネスモデルです。一方でフランチャイズならではのさまざまなデメリットがあることも事実です。

フランチャイズ契約の内容や開業の方法に不安があるときは、フランチャイズ本部と話し合ったり、企業法務の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

フランチャイズのメリットとデメリットを比較した上で、自分に合う開業方法なのかをしっかりと検討することが重要です。

企業の教科書
増山 晋哉
記事の監修者 増山 晋哉
弁護士法人 きわみ事務所 代表弁護士

日常生活では様々な面倒ごとに遭遇することがあります。 その中には、弁護士に依頼することで、面倒ごとから解放されることもあります。 弁護士は専門的な知識をもって様々な業務を行っておりますので、あなたが面倒だと思っていることも、意外とすぐに解決できるかもしれません。一度、ご相談してみませんか。

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