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グロース株の見分け方|バリュー株との違いや見るべき指標について解説

グロース株の見分け方|バリュー株との違いや見るべき指標について解説

グロース株とは、企業の継続的な成長によって将来的な株価上昇や、事業拡大が期待できる銘柄のことです。グロース株の見分け方を身につけて投資できれば、大きな利益を得られる可能性があります。グロース株かどうかを見分けるには、バリュー株との違いや指標の読み方などを理解することが大切です。

当記事ではグロース株とバリュー株との違いや、具体的な見分け方について解説します。

グロース株とは?バリュー株との違いについて

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グロース株とは、将来的に企業価値が大きく上昇して、株価の値上がりが見込まれる銘柄のことです。別名で成長株とも呼ばれます。

主に「A企業のサービスは将来流行るから、今のうちに株を購入しておく」「3年連続で売上が上昇しているから、今後はさらに成長するだろう」といった判断で購入されます。よく比較されるのが、企業価値に対して株価が割安であるバリュー株です。

グロース株の見分け方を確認する前に、グロース株とバリュー株それぞれの概要を見ていきましょう。

グロース株は今後の株価上昇が見込める成長企業

グロース株は現時点での企業価値や株価に関係なく、あくまで将来的に業績や株価の伸びが期待される企業を指します。

グロース株の代表的な特徴は次のとおりです。

  • 市場需要が大きく業績の急上昇が予想される
  • 競合他社が参入しにくく、独自性のあるサービスを提供している
  • IT・テクノロジー関連会社など、時代のトレンドに沿っている、革新的サービス・技術が生まれやすい業界である

過去の世界的に有名だったグロース株としては、Google、Apple、Facebook、Microsoft、Amazonが挙げられます。近年の日本であれば、メルカリ、サイバーエージェント、キーエンス、ANY COLORなどが挙げられるでしょう。

バリュー株は実際の価値より割安な企業

バリュー株とは、現在の企業価値と比較して安い株価で売買されている銘柄のことです。「業績がよいのに、株価に反映されず割安になっている」といったものを指します。

バリュー株の代表的な特徴は次のとおりです。

  • 株式市場にて売りの動きが強すぎて、一時的に株価が下がっている
  • 長期的に安定はしているが、今後の成長や革新があまり期待されていない
  • 知名度が低い

東証プライム(旧東証一部)市場に長年上場している、創業数十年レベルで運営しているなど、ベンチャー企業のように成長性や将来性があるというよりも、成熟した企業に多く見られます。

株価が本来の企業価値に戻ったり、一時的な売りの動きが止まったりしたときなどに、現在の割安な株価が元の価値に戻るため利益を得られやすくなります。

株価が上下しにくいことから、低リスクで運用できる銘柄です。インカムゲイン(配当金や株主優待)を得やすいのも特徴と言えるでしょう。

グロース株の見分け方1|おおまかな特徴を掴む

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グロース株の見分け方で大切なのは、グロース株がどのような銘柄なのかを理解しておくことです。グロース株の主な特徴は次のとおりです。

  • 企業の成長率が継続的に高い
  • 株価の水準が割高である
  • ハイリスクハイリターンになる可能性がある

それぞれの詳細を解説します。

企業の成長率が継続的に高い

成長性・将来性が期待されるグロース株は、実際の高い成長率や、成長が期待できる経営の実行など、ポテンシャルをビジョンや数値として確認できます。

革新的なサービスだから、創業間もない新しい企業だからといった理由で投資するのではなく、「市場需要に合っている事業か」「売上や利益を継続的に出しているのか」「配当割合や株価は上昇しているか」などを確認・分析しましょう。

例えば利益が計上されていない企業でも、利益を設備投資や事業拡大などに回している場合であれば、将来的により大きな売上・利益を出す可能性があります。逆に根拠なく業績が伸びている企業だと、事業の継続性やその後の経営ビジョンがなければ、一時的な株価上昇に終わるリスクがあるでしょう。

株価水準が割高である

グロース株はバリュー株とは反対に、現在の株価水準が割高になっているケースが多く見られます。これは投資家から成長性や将来性について、すでに高い評価を受けており、現在の企業価値と比較して高値で取引されているためです。現在の企業価値に、将来への期待を加味した株価になっていると言えるでしょう。

実際にグロース株のPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)は、平均よりも高い値を示すことがほとんどです。グロース株においては、これらの株価指標から成長性・将来性を除いた、現状の正しい企業価値の分析に用いるのが難しくなると言えるでしょう。

ハイリスクハイリターンになる可能性がある

グロース株は、継続的に成長すると株価が爆発的に伸びる可能性がある銘柄です。

バリュー株と比較して多額のキャピタルゲイン(値上がり益・売買益)を得られる可能性があり、数年単位で数倍・数十倍と株価が上昇するケースも珍しくありません。グロース株を購入するメリットの1つです。

一方で、グロース株を運用するにあたっては次のリスクに注意しなければなりません。

  • 事業利益を設備投資や人材獲得に回すことが多いので、インカムゲインが得にくい
  • 期待通りの事業成長がなければ、割高で購入した上に株価が大きく下落する可能性がある
  • 企業が成長するまでに数年レベルの長期的な目線が必要になるケースがある

グロース株を購入する際は、上記の注意点やデメリットを理解した上で分析・購入することをおすすめします。

グロース株の見分け方2|具体的な指標で見る

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グロース株の見分け方としてよく用いられる手法は、さまざまな財務指標・株価指標のチェックです。企業価値に投資家の期待や企業の成長性を加味した値が見えてくるので、グロース株か否かを見分けやすくなります。

グロース株や健全な銘柄かどうかを見分けるには、主に次の指標を参考にします。

  • PER(株価収益率)
  • PBR(株価純資産倍率)
  • 売上・利益の伸び率
  • ROE(自己資本利益率)
  • 自己資本比率

PER(株価収益率)で見る

PERとは、企業が出した利益に対して、どれだけの株価が付けられているかを表す指標です。計算式は次のとおりです。

PER=株価÷1株あたりの純利益(EPS)

PERが高いと、企業が出している利益に対して割高な株価になっていると判断できます。グロース株の場合だと、投資家による将来の利益への期待によって、PERは高くなる傾向があります。

基準となるのは15倍です。15倍以上で割高、15倍割れだと割安と判断されます。

日本取引所グループが公表する「規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧」によると、2023年3月末現在における上場企業1825社のPERの平均は14.8倍です。一方で、規模の小さいベンチャー企業などが上場するグロース市場単体だと、平均は91.9倍となっていました。

このようにグロース株のPERは、30~100倍になることも珍しくありません。バリュー株は利益に対して株価が割安になることから、PERが平均より低めに出るケースが多くなります。

PBR(株価純資産倍率)で見る

PBRとは、企業の純資産に対して、どれだけの株価が付けられているかを表す指標です。純資産は会社が倒産したときに株主へ分配される資産でもあるため、解散価値とも呼ばれます。計算式は次のとおりです。

PBR=株価÷1株あたりの純資産(BPS)

PBRが高いと、企業が保有する資産に対して株価が割高になっていると判断できます。グロース株の場合、PBRと同じく平均よりも高くなる傾向があります。

基準となるのは1倍です。1倍以上なら割高、1倍を割れば割安と判断されます。1倍なら、企業が持つ資産と株価が同じ価値になっているということです。

慢性的にPBRが1倍割れの企業は、ブランド力や信用力がなく、純資産に対して低い株価となっている可能性があります。

日本取引所グループが公表する「規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧」によると、2023年3月末現在で全平均が1.2倍です。グロース市場単体だと4.7倍となっていました。グロース株の見分け方として、PERだけでなくPBRも同時に分析することが大切です。

売上・利益の伸び率で見る

グロース株の見分け方において、売上・利益がどれくらい伸びているかを見るのことも重要です。過去3年以上をさかのぼり、売上高や利益が継続して上昇しているかを確認しましょう。

売上高成長率・営業利益(本業で得た利益のこと)成長率などが、前年比10%以上上昇が数年続いている場合、グロース株と判断できます。

売上高に対する営業利益を表す売上高営業利益率も見ておきましょう。売上高のうちメイン事業でどれだけ儲けているかがわかるので、商品・サービスの強さや市場競争力、独自性を測る指標になります。売上高営業利益率は10%以上が望ましいです。

ROE(自己資本利益率)で見る

ROEとは、企業の自己資本に対してどれくらいの利益を挙げられているのかという、経営の効率性を示す指標です。計算式は次のとおりです。

ROE=当期純利益÷自己資本✕100

ROEが高いほど、返済義務がない資本で効率よく利益を出す、投資価値ある企業だと予想できます。将来的な収益性・成長性の高さから、株主への還元も期待できるでしょう。

一般的にROEは、10%前後を超えると優良であると言われています。日本の上場企業の平均も、過去5年間は9~10%で推移しています。日本は海外に比べてROEが低い傾向にあるため、グロース株の見分け方として15%以上か否かを見るとよいでしょう。

自己資本比率で見る

自己資本比率とは、総資本に対する自己資本の割合です。計算式は次のとおりです。

自己資本比率=自己資本÷総資本✕100

自己資本比率は財務面の健全さを表すことから、中長期的にグロース株の成長を待ちたい投資家にとっては、投資先が途中で倒産や債務超過に陥らないかの判断材料になります。

将来性や成長性を見出した企業に投資しても、途中で倒産しては投資分が回収できません。企業の体力があるかどうかを自己資本比率で見ることも、優良なグロース株の見分け方として覚えておきましょう。

グロース株の値動きの基本|金利上昇局面との関係など

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グロース株の購入を検討する際は、市場が金利上昇局面かどうかを確認することが重要です。グロース株は、金利上昇局面だと株価が低下する傾向にあるからです。

PERが高い傾向にあるグロース株は、金利上昇局面だと金利と比較した益利回り(1株当たり税引利益を株価で割った、PERの逆数)の低さによって、投資魅力が相対的に低くなるためです。金利上昇局面では、グロース株の銘柄企業の借入コストが上昇し、経営や利益に影響を及ぼす点も理由として挙げられます。

金利上昇局面では、債券などの安全資産の人気が高くなりがちです。

また、摩擦貿易や日本経済の停滞など市場全体の先行きが不透明な場合も、グロース株は下落する可能性があります。成長性に期待するより、安定性を取りたい投資家がグロース株を売りに出す傾向があるからです。

とはいえ、上記はあくまで傾向の話です。金利上昇局面でも株価が上昇するグロース株はいくつも存在します。一時的に金利の影響を受けているだけで、経営が安定し市場に関係なく大きく成長する企業も存在します。

グロース株を見分けるコツ

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グロース株を適切に見分ける目を養うには、グロース株ならではの特徴や市場の動きを追うだけでなく、株式投資における基礎的な勉強が欠かせません。グロース株を見分けるために、意識すべき基礎的なコツは次のとおりです。

グロース株を見分けるコツ 概要
ファンダメンタルズ分析を勉強する
  • 前述したPERやPBRなど以外にも、さまざまな
    財務指標や株価指標、企業業績、その他
    財務情報などから企業価値を分析する
  • 具体的なデータに基づいた分析であれば、より正確に
    優良グロース株かどうかを判断できるようになる
正しい情報源を持つ
  • 証券会社のツール、四季報、Yahoo! ファイナンス
    などの一次情報や有識者の発信などをチェックする
  • 無資格の業者やインフルエンサーなどが
    根拠なしに勧める銘柄には細心の注意を払う
余剰資金で運用し精神的余裕を持つ
  • 余剰資金で運用を行い、生活に影響が出ないようにする
  • 生活資金不足は精神的焦りにつながり、
    冷静な判断ができなくなる可能性がある

グロース株の見分け方を身に付け投資に活かそう

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ここまでグロース株の見分け方として、グロース株の特徴やさまざまな財務指標をチェックすることが重要であると解説してきました。グロース株は大きなキャピタルゲインを得られるメリットがあるものの、ハイリスクハイリターンな面もあるので、優良なグロース株を見分けられる力を身につけて運用することが大切です。

グロース株の購入を検討する場合は、優良な銘柄を選定しつつ、分散投資となるようにバリュー株も含めたポートフォリオを組むのがよいでしょう。

企業の教科書
安藤 正道
記事の監修者 安藤 正道
きわみアセットマネジメント株式会社 取締役

金融商品仲介業「きわみアセットマネジメント株式会社」取締役。
きわみアセットマネジメント株式会社は特定の金融機関に属さず、お客さまのライフプランに最適なアドバイスができるIFA法人です。お客さまの一生涯のパートナーとなり、寄り添います。ご相談は無料ですのでお気軽にお問合せください。

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