税金・税務

法人で利益が出過ぎたときにできる対処法は?決算前でもできる節税対策

法人で利益が出過ぎたときにできる対処法は?決算前でもできる節税対策

法人で決算が近づき、利益が出過ぎるときは、そのまま高額の法人税等を支払うより、節税対策で税負担を減らしたい経営者も多いでしょう。一口に節税対策といってもさまざまな方法がありますが、決算前でもできる対応策は多くあります。ただ、どの方法も節税メリットだけでなく、気を付けたいポイントもあり、適切な節税対策をとれるようにしておきたいものです。この記事では利益が出過ぎそうなときにできる節税方法について解説します。

法人で利益が出すぎたときにできる節税対策

法人で利益が出過ぎたときの対応策には、主に控除を利用する方法と損金を計上する方法とがあります。控除は保険料などを活用する方法で、損金計上は決算賞与など従業員への還元、消耗品の購入、未払金や前払いできるものを支払うなど、経費を増やして利益を圧縮する方法です。具体的にどのような節税対策があるか、見ていきましょう。

利益が出過ぎたときにできる節税対策1 共済や法人保険への加入

利益が出過ぎたときの対応策として、中小企業向けの共済や保険に加入する法人は多いです。掛金や保険料は全額または一部が経費化できますし、法人税の課税対象から控除できるからです。

共済の場合、掛金は将来的に経営者や従業員の退職金に充てることもできますし、共済の種類によっては事業の悪化時に無利子で貸付をしてもらえることや、一定期間以上掛け続ければ、解約時に全額戻ってくる共済もあります。法人保険の場合は、解約時に支払った保険料以上の解約返戻金を受け取れるものもあります。また、共済も法人保険も、加入しておくことで、いざというときの安心感につながるでしょう。

なお、一般に中小企業などで加入される機会の多い共済制度は、下記の通りです。

  • 経営セーフティ共済
  • 中小企業退職金共済
  • 小規模企業共済

ただし、共済制度も法人保険も、解約時には法人税の課税対象となります。課税の先延ばし的な節税対策でもあるので、出口戦略をしっかり立てた上で活用しましょう。

利益が出過ぎたときにできる節税対策2 設備投資

法人で利益が出過ぎた場合の対策として、会社の今後を見据えて設備投資を行うのも手段のひとつです。設備の内容や期間によっては、設備投資にかかる設備費の一部が法人税から控除されるためです。

例えば、1台120万円以上(または30万円以上で年間合計が120万円以上)の工業設備品では、取得額の4%が控除税額となります。建物や建築物も対象となる場合があり、その場合控除税額は取得税額の2%とされています。

なお、新品で最新モデルであり、1台160万円以上の機械装置は、取得価額の7%が控除税額となるほか、1台120万円以上(または30万円以上で年間合計が120万円以上)の工業設備品は、取得額の4%が控除税額となります。建物や建築物も対象となる場合があり、その場合控除税額は取得税額の2%とされています。

注意点は、業種によって控除対象とならない場合もあることです。さらに、減価償却資産となるので、一度に経費化できないことにも気を付けましょう。

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利益が出過ぎたときにできる節税対策3 在庫や固定資産の削減

使っていない在庫や固定資産を減らすことも、利益が出過ぎたときの節税対策になります。庫の削減を行えば、上原価の値が高くなり、その分利益を減らすことにつながるからです。

固定資産は、今後一切資産使用がないことを条件に廃棄・売却・除却または除去することが認められています。それぞれ損金に計上することで、固定資産税を減らすことにつながります。

なお、廃棄は固定資産廃棄損、売却は固定資産売却損、除去は固定資産除却損として経費化します。さらに、建物などですぐに取り壊しができない場合は、現状のまま除却する「有姿除却」という方法もあります。例えば購入時の価格が高いものであれば、固定資産除却損として経費計上でき、繰越欠損金も生まれるため、長期的な節税にもなります。

在庫調整も固定資産の削減も、支出を伴わない節税対策です。決算期直前でも取り入れやすい対応策といえます。

利益が出過ぎたときにできる節税対策4 役員報酬の見直し

法人の場合、役員報酬の定期同額給与を活用することも、利益が出過ぎるときの対応策になります。定期同額給与は、従業員と同じように毎月一定額の役員報酬を支給するものです。役員報酬は税務上経費計上し損金算入できるので、会社の所得を減らすことにつながり 定期同額給与によって、長期的な節税効果も得られるでしょう。

注意したいのは、定期同額給与は毎月一定額を支給する必要があるため、決算期直前だけ役員報酬を増やしても税制上のメリットがないことです。金額については慎重に判断しましょう。

利益が出過ぎたときにできる節税対策5 決算賞与の支給

利益が出過ぎたときは、従業員に還元するのも方法のひとつです。決算賞与の支給は、経費化できる上、従業員のモチベーション向上効果も期待できる節税対策です。

決算賞与を支給する際の注意点は、下記の要件を満たす必要があることです。

  • 事業年度度が終了するまでに従業員全員に決算賞与の金額と支給日を通知すること
  • 翌事業年度の最初の1カ月以内に決算賞与を支給すること
  • 決算賞与の額を未払金として経費に計上していること

また、決算賞与を支給すれば、その分法人のキャッシュは少なくなります。賞与を支払ったあとにどの程度お金が残るか、資金繰りに影響ないかを検討した上で支給を決定しましょう。

なお、決算賞与以外にも、従業員へ還元する方法として、資金面に余裕があれば、従業員の数を増やす、給料をアップするなども節税になる可能性があります。

その他、健康診断やレクリエーションの実施、社員旅行などの福利厚生を検討するのもひとつです。従業員の健康維持のため、スポーツクラブの会費を法人で持ち、福利厚生費として計上するというのもいいかもしれません。また、社宅を用意することで、管理・維持費用や家賃の一部を経費化する方法もあります。

ただし、福利厚生費を計上する場合には、社内規定の整備や全従業員を対象とすること、社会通念上妥当な金額であることなど要件を満たす必要があります。キャッシュアウトも伴うので、どの程度福利厚生に充てるかは、顧問税理士と相談しながら進めたほうがよいでしょう。

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利益が出過ぎたときにできる節税対策6 減価償却の活用

法人の場合、減価償却の利用も、利益が出過ぎたときの対応策としてよく行われます。例えば不動産や自動車など固定資産を購入すれば、定められた耐用年数によって、数年に分けて損金算入ができます。さらに、中古車など中古資産を取得する場合は、法定耐用年数より短い期間で減価償却ができます。

例えば、自動車の場合は、新車の普通車だと法定耐用年数6年に合わせ、6年かけて減価償却しますが、4年落ちの中古車であれば1年で全額を経費化することも可能です。もし今期の利益が出過ぎる見込みであれば、新車より中古車の購入を検討してもいいかもしれません。ただし減価償却は月数按分計算になるため、たとえ決算月に中古車を購入しても、1年分の12分の1しか損金算入できないので注意が必要です。購入する場合は早めに動くようにしましょう。

利益が出過ぎたときにできる節税対策7 少額減価償却資産の活用

中小法人や個人事業主に対しては、固定資産の減価償却のうち、30万円未満または1年未満の使い切り資産を購入した場合は少額減価償却資産が認められています。これは取得期に取得価額全額を経費計上できるというものです。

利益が出過ぎたとき、例えば文房具などの日用品、パソコンやオフィス用品など、30万円未満で必要な物品があれば、まとめ買いや先に購入を検討するのも対応策のひとつです。

ちなみに、20万円未満の資産は3年で均等に減価償却する一括償却資産を利用することもできます。

利益が出過ぎたときにできる節税対策8 個人所有不動産を法人へ貸付

経営者やその家族が不動産を所有している場合、法人に対し貸付を行うのも利益が出過ぎたときの対策になります。個人の不動産を法人が使用することで、賃借料を法人から個人に支払うことで、経費計上ができるからです。

さらに、法人から賃借料を受け取る個人も、不動産所得扱いとなり、経費にできます。もし賃貸に住んでいる場合は、個人名義から法人名義で契約をすることで、家賃の何割かを経費にできるため、節税効果も期待できます。

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利益が出過ぎたときにできる節税対策9 短期前払費用の利用

利益が出過ぎたときの対応策として、短期前払費用を利用するのもひとつです。短期前払費用は、1年以内に期間が終了する短期的な前払費用を、便宜的に支払いベースで費用計上することを認めるものです。

例えば、家賃や従業員の給料、福利厚生費用、法人保険料など、サービスを利用した翌月に支払うものや、必ず利用するものが該当します。月払いではなく年払いにすることで、早めに損金計上することができ、法人税の一定の節税効果も期待できます。

なお、家賃は自宅兼事務所の場合や、賃貸の場合も法人契約にすることで家賃負担を経費化できます。福利厚生費用としては、従業員のための事務会費やサービス料、資格取得や書籍代などが該当します。その他、レンタルサーバー代やコンサルティング料なども短期前払費用として利用できるでしょう。

利益が出過ぎたときにできる節税対策10 未払い金の先払い

従業員の未払い給与や社会保険料も、決算前に先払いして経費化が可能です。

例えば月末締め・翌月払いの法人で、8月決算であれば8月1日から8月31日までの給料は9月に支払うことになり、決算時点ではまだ支払っていない8月分の未払い給与が生じます。実際にお金を支払うのは9月ですが、決算月での損金計上が認められているので、利益が出過ぎるときは忘れずに決算前に計上して、法人税の節税に活用しましょう。社会保険料についても同様です。ただし、この先払いは役員報酬には認められていません。

利益が出過ぎたときにできる節税対策11 出張旅費規程の作成

利益が出過ぎたときは、出張手当を損金算入するのも有効な手段のひとつです。出張手当は国内外の出張を行った場合に支給する手当で、全額経費化できます。さらに、手当を受け取る個人は所得扱いになりませんし、消費税の課税対象なので、法人にとっては消費税の節税にもつながります。ただし、出張手当の支給には、出張旅費規程を作成する必要があり、従業員への周知など要件を満たす必要もあります。

利益が出過ぎたときにできる節税対策12 別会社の設立

法人の場合、利益が出過ぎるときの対応策として、子会社など別会社を設立する選択肢もあります。

例えば資本金1億円以下の法人は、交際費が年間800万円まで全額経費計上できますし、年間800万円以内の所得については法人税や事業税が軽減されます。別会社を設立することで、税制上のメリットを得られるでしょう。別会社の設立には、設立が必要であることなどが必要なので、税務署から否認されないよう、設立には専門家と相談することをおすすめします。

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法人で利益が出過ぎたときの節税ポイント

利益が出過ぎたときに節税対策を取る場合は、一時的ではなく長期的に効果が続く対応策を取ることが大切です。また、法人にとって将来的に成長につながるような対策を選びましょう。

利益が出過ぎても段階的な節税対策の検討を

法人の節税対策は利益が出過ぎることを見越して早め早めに動き、徐々に進めるのがベターです。決算前に慌てて節税を行うと帳簿にも不自然さが出てしまい、税務調査で指摘されるきっかけになるかもしれません。すぐできる対策は普段から、大きな対策は半年くらいかけて行うなど経営計画もしっかり立てていきましょう。

利益が出過ぎたときの対策は顧問税理士に相談がおすすめ

利益が出過ぎたときの対応策は、それぞれ実施する際の注意点があります。さらに、税法は改正があるため、法人の節税対策については、顧問税理士等専門家に相談するのがおすすめです。不明な点や不安なことがあれば相談し、常に連携しながら適切な対処をしていきましょう。

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法人の利益が出過ぎたときの対策はキャッシュアウトに注意

法人の利益が出過ぎたとき、損金計上をして節税につなげる方法を行う際は、キャッシュアウトに注意しましょう。例えば、利益が出過ぎたからといって、経費を多く計上するために不要なものまで購入し、その結果現金を使い過ぎたら、ただの無駄遣いになってしまいます。

会社の経営を維持するためには、ある程度の運転資金は必要です。その場しのぎの節税対策で、会社のお金が減って借入をすることになったり、経営が悪化したりしたら元も子もありません。支出を伴う対応策では、資金繰りの状況も把握することが大切です。もし、手元の現金が少ない、あるいは今後の資金繰りに不安がある場合は節税対策を避けるなど、慎重に判断することが大切です。

利益が出過ぎたからといって脱税行為は厳禁

どんなに利益が出過ぎたからといって、脱税をするのはもってのほかです。

法人でよくみられる脱税行為は、売上の入金を法人用口座以外に振り込むケースです。ほかにも、売上請求書を翌期に回して計上するケースもありますが、基本的に売上は納品完了時に計上するものです。

売上だけでなく、経費も同様です。決算後に計上すべき費用を計上したり、決算日時点で事業用に供していない資産を計上したりしてはいけません。また、架空の人件費など経費を計上することも、当然脱税行為です。

故意に調整しても税務署は必ず見破ります。脱税行為が判明した場合は、厳しいペナルティが課せられることになります。悪質と判断された場合は、重加算税という最も重い罰金を支払うことにもなるので注意しましょう。

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利益が出過ぎたときの法人節税対策は顧問税理士とも相談を

利益が出過ぎたとき、法人には控除を利用する、あるいは経費を増やして損金計上するなどの節税対策が可能です。ただ、どのような対策を取るにしても、無計画に行うと資金繰りへの影響や、最悪は経営悪化のリスクがあります。顧問税理士とも相談しながらさまざまな選択肢の中から、適切な対処方法を検討していきましょう。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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