税金・税務

法人決算前にできる節税対策!知っておきたいコツや注意点

法人決算前にできる節税対策!知っておきたいコツや注意点

大幅な利益が出ても、決算前に十分な節税対策ができないまま、多額の法人税等が発生してしまった、というのはよくあるケースのひとつです。節税対策は早めから、中長期的に行うのが理想であり、慌てて行うのもよくありません。とはいえ、決算直前でもできる対応策もあるので、早く対処しておけばよかったと後悔するのはもったいないでしょう。この記事では、決算前にできる節税対策方法やそのコツなどについてまとめました。

決算前でも節税対策はできる

節税対策は早めに動き、実施するほうがいいですが、決算直前でもできる対応策もあります。利益が出過ぎたことが分かったときでもできる税金対策について見ていきましょう。

決算前の節税対策① 従業員に決算賞与を支給する

決算前の節税対策のひとつは、従業員に対し臨時に支給する決算賞与です。会社としては従業員へ賞与を支払うことで計上でき、法人税の節税効果が期待できます。従業員としても、臨時ボーナスがもらえることでモチベーションアップにもつながるでしょう。決算賞与は決算時に未払いでも経費計上できるのが特徴です。

ただし、決算賞与を支給するには下記の要件をすべて満たす必要があります。

  • 決算期末までに全従業員に対してあらかじめ支給額を通知していること
  • 翌事業年度の開始から1カ月以内に賞与を支給すること
  • 支給する決算賞与を未払金で計上していること

なお、役員に対する決算賞与や、役員賞与は基本的に損金算入できないので注意しましょう。また、決算賞与に対する社会保険については、その期の経費にはなりません。

決算前の節税対策② 交際費の見直し

決算前には、交際費の見直しもしてみましょう。中小法人の場合、交際費等の額のうち、接待等にかかる飲食費については、その年度あたり800万円まで、もしくはその年度分の全額の2分の1までを損金算入することが認められています。

もちろん、損金計上できるからといって、その目的のために無意味な接待をするのは会社のお金の無駄遣いです。しかし、見直す中で経費計上できるものが見つかれば、その分節税にもつながるでしょう。

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決算前の節税対策③ 少額減価償却資産の特例を活用

決算前にできる節税対策には、その期のうちに機械や備品などを購入し、減価償却する方法もあります。通常、減価償却は耐用年数に応じ、数年に分けて経費化しますが、青色申告をしている中小法人であれば、30万円まで全額経費化できる少額減価償却資産の特例が認められています。

少額減価償却資産を活用すれば、必要な備品が購入できる上に、比較的大きな経費を作ることも可能です。文房具など日用品はもちろん、パソコンやオフィス用品など、近い将来必要になるものがあれば、購入を検討してみてはいかがでしょうか。

ちなみに、20万円未満の備品については、3年に分けて3分の1ずつ均等に経費計上する一括償却資産も活用できます。例えば法定耐用年数が4年のパソコンであれば、1年早く経費計上できることになります。さらに一括償却資産は償却資産税の課税対象外となるのもメリットのひとつです。

決算前の節税対策④ 不良在庫の削減

決算前には、不良在庫がないかどうかも確認しましょう。在庫を削減すると、決算書上の売上原価の値が高くなって利益が減るため、法人税の節税効果も期待できるからです。在庫の処分方法は、決算セールや大売り出しのような、バーゲンセールが一般的です。原価より安く売却することで、差額分を売却損として損金に計上できます。

また、例として50万円で仕入れた商品を廃棄処分した場合は、50万円分の廃棄損として損金計上ができるほか、資産価値の評価を下げることで、評価損として損金算入できる場合もあります。ただし、廃棄損や評価損は税務調査の際に、妥当な理由に基づいて行われたかが確認されます。きちんと説明できるよう記録や証拠を残しておきましょう。

決算前の節税対策⑤ 固定資産を減らす

在庫とともに、固定資産を削減することも決算前の節税対策として有効です。使用していない固定資産や災害等で損傷した固定資産は、除却損や売却損、評価損として損金計上が可能です。

例えば、不要な固定資産を帳簿価額より安い金額で売却して現金化した場合、その差額を売却損として計上できます。含み損がある固定資産であれば、売却することで繰越欠損金も出るので、節税にもつながるでしょう。

不要な固定資産を廃棄した場合は、その資産の帳簿価額を除却損として計上できます。除却損は、帳簿には資産計上されていても、実際には使っていないパソコンや機械、机やロッカーなどを処分した場合も計上できるのが特徴です。有形資産だけでなく、パソコンのソフトなど、無形の固定資産も、今後使わないことが明らかである場合は除却損として損金計上することが認められています。

使っていない資産を処分することは、償却資産税も課税されなくなるというメリットもあります。ただし、廃棄する際は、税務調査が入ったときのために記録をきちんと残しておく必要があります。

その他、評価損は、災害などによって固定資産が著しい損傷を生じ、資産価値を低く見積もらないといけなくなった場合に限って損金算入できるようになっています。

固定資産の削減は、支出を伴わない節税対策です。決算前に確認し、不要な固定資産がある場合は、売却や廃棄を検討しましょう。

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決算前の節税対策⑥ 不良債権の損失計上

決算前には、不良債権がないかどうかも確認しておきましょう。もし回収不能な不良債権がある場合は、貸倒損失として計上することで節税につなげることができます。

損金算入できる不良債権は、下記のようなケースが該当します。

  • 裁判所の破産決定を受けている場合や、会社更生法や民事再生法の申請により債権が消滅、または回収不能に陥った場合
  • 取引先の経営状況や支払能力などを考慮し、債権の全額回収が困難と認められる場合
  • 取引停止などの状況が1年以上続いており、形式上の貸倒れとみなされる場合

ただし、貸倒れによる損失計上については、ごまかしが行われやすいことから、税務調査で指摘されやすく、客観的な証拠を残すことが大切です。例えば何度も請求書を送っているが回収ができていないなどの記録をつけておきましょう。

また、資本金や出資金が1億円以下の法人であれば、貸倒引当金を計上できるケースもあります。貸倒引当金とは、まだ貸し倒れには陥っていない状態でも、将来回収不能になることが確実である場合に、回収不能の自体に備え、事前に一定額を損金算入することが認められるものです。

決算前の節税対策⑦ 中古資産の活用

決算前までに少し期間がある場合は、節税対策として中古資産の購入を検討するのもひとつです。例えば自動車の場合、新車の普通自動車は法定耐用年数6年なので、6年かけて減価償却することになります。ですが、中古車の場合は、4年落ちであれば初年度に全額経費化することも可能です。

ただし、決算月に中古車を購入するのはおすすめできません。初年度に全額経費化できるといっても、購入した時点から1年をかけて経費計上するので、決算月に購入した場合は1年のうち、12分の1しか損金にできないためです。中古車の購入を検討する場合は、決算直前ではなく、早めの対策を心掛けましょう。

決算前の節税対策⑧ 未払金の先払い

未払いでも支払いが確定している費用については、先払いすることで未払金として計上でき、損金算入が認められています。例えば会社が負担する分の社会保険料、労働保険料、固定資産税、決算賞与、従業員の給料などです。

その他、すでにサービスの提供を受けているものや請求書が届いていて支払いが済んでいないものも、経費計上が可能です。未払金を先払いするときは、翌期に再度経費計上しないよう注意が必要ですが、決算前に計上することにより、節税効果が期待できるでしょう。

決算前の節税対策⑨ 短期前払費用の活用

決算前にできる節税対策として、短期前払費用も活用しましょう。短期前払費用とは、毎月支払うことが決まっているものを、月払いではなく年払いした場合に、早めに経費計上することが認められているものです。

短期前払費用が活用できる例としては、家賃や法人保険の保険料などがあげられます。また、従業員の福利厚生費として書籍代や資格取得代、英会話教室の費用、スポーツジムの会費などを支払っている場合も、先払いで経費計上が可能です。法人税の節税にもつながるので、前払いできそうなものがあれば1年分先に支払って計上しましょう。

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決算前の節税対策⑩ 減資を検討する

決算前の節税対策として、資本金を減らす「減資」を検討するのもひとつです。減資をすることにより、税制上の優遇を受けられる可能性があります。例えば資本金1,000万円未満の会社は、設立後2事業年度消費税の免税が認められています。また、資本金3,000万円未満だと中小企業投資促進税制の税額控除の適用があります。

決算前の節税対策は「早めに動く」のが成功のコツ

節税対策は決算直前でも対応できるものもありますが、必ずしもギリギリで間に合うものばかりではありません。決算前といっても、できれば3カ月くらい前までには収益や納税額の予測を立てて、取るべき対策の準備を進めましょう。

対策によっては、資金繰りの状況を確認する必要がありますし、節税のために慌てて対策をとって無駄なお金を使ってしまっては本末転倒です。少しでも早いうちから段階を踏んで税金対策を検討しましょう。

節税対策は信頼できる税理士とも相談を

節税対策はそれぞれ、実施する際に注意したいポイントがある上、税法は定期的に改正が行われます。適切で効果的な節税につなげるためにも、顧問税理士など信頼できる専門家に相談しながら対応を進めましょう。

決算前の節税対策は会社のお金の確保も忘れずに

決算前の節税対策を行う際に注意したいのは、必要な会社のお金を残しておくことです。資産の購入や、備品等のまとめ買いなどで経費を計上すれば節税にはなります。しかし安易な購入や不必要な支出を増やすことは、資金の無駄遣いになります。決算申告後の、税金の支払いをはじめ、今後の資金繰りに影響が出ないよう、きちんと会社のお金を確保しておきましょう。

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決算前の節税はキャッシュとのバランスも考慮して対策を

決算前でも、会社の状況を見直すことで節税につなげることは可能です。例えば不要な在庫や固定資産税があれば削減しましょう。ほかにも、交際費の見直しや決算賞与の支給、少額減価償却資産の特例の活用などにより、経費を計上することで節税効果を生み出すことも可能です。

ただ、決算前の節税対策は、できれば決算間際に対策を始めるよりも、少し余裕を持って検討しておくほうが、より多くの節税対策を取れる可能性があります。また、経費を増やせば節税にはなっても、会社のお金も減るため、安易な経費計上で、キャッシュを減らしすぎないよう注意が必要です。顧問税理士など信頼できる専門家に相談しながら、会社にお金を残しつつ、将来的なことも見据えた上で、効果的な税金対策を行っていきましょう。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

東京都千代田区にある税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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