会社を経営していると、接待交際費を使って取引との関係を良くするための出費が出てきます。
しかし、すべての接待交際費が損金扱いできるとは限りません。
今回は、接待交際費にあたる経費の区別や損金の範囲についてわかりやすく解説いたします。
接待交際費と間違いやすい会議費や福利厚生費との違いについても説明しているので、理解を深めるために役立ててください。損金算入させるためのルールを知って、正しい処理を行いましょう。
接待交際費とは?
接待交際費とは、事業に関わる人に対して接待や贈答などを行うために必要な費用のことです。
具体的には、取引先(顧客・仕入れ先など)、役員や従業員、その家族・親族に対して、以下のような行為をおなった場合の支出が該当します。
- 接待
- 供応
- 慰安
- 贈答
接待交際費は、円滑に事業を継続させるための費用であることがポイントです。
国税庁の「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」で下記のように記載されています。
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。
法人税を計算するときの損金と経費の違い
会計上の「経費」と、法人税の計算で使われる「損金」は似ているようで違います。
まず、会計と法人税の計算方法の違いを見てみましょう。
会計の利益計算 | 利益=収益-経費 |
---|---|
法人税の課税所得の計算 | 課税所得=益金-損金 |
経費も損金も会社の支出であることには変わりません。
しかし、会計と税金では内容に違いがあります。会計上の経費は会社の支出であれば計上することが可能です。
一方、税務上の損金はルールに沿っていなければ算入が認められません。
このように会計と税務で考え方の違いがあることを確認しておきましょう。
税務上の接待交際費とは
一般的な経費は、全額損金に算入することができます。
しかし、税法上では交際費を全額損金として扱うことができません。
なぜなら、無制限に交際費を損金として認めてしまうと、納税の回避に繋がるからです。接待をすればするほど納税額が下がるといった不公平さをなくすために、限度が定められています。
接待交際費は会計上の経費として全額計上できますが、税務上では全額を損金扱いすることを認められていないので注意しましょう。
税務上の接待交際費の上限は「接待交際費の損金算入の上限とは」にて後述します。
接待交際費に該当する経費とは
接待交際費に該当する経費と該当しない経費の区別がつきにくいので、解説していきます。
該当する経費を理解して、正しく処理しましょう。
接待交際費に該当する経費
以下のような経費は、接待交際費に該当します。
- 取引先等の従業員を接待した時に支払った飲食代(一人当たり5,000円を超える場合や交通費)
- 取引先等の従業員を接待するためのお弁当やお茶の代金
- 取引先等の従業員をもてなすためのパーティー代
- 取引先等の従業員との娯楽代(ゴルフ・旅行等)
- 取引先へのお歳暮・お中元などの贈答品代
- 取引先の従業員の冠婚葬祭時の費用
このように、取引を円滑に行うために事業に関係ある人を接待する費用であることが条件です。
接待交際費に該当しない経費
接待交際費に似ているけど該当しない経費はたくさんあります。
(1) 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
(2) 飲食その他これに類する行為(以下「飲食等」といいます。)のために要する費用(専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除きます。)であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が5,000円以下である費用
なお、この規定は次の事項を記載した書類を保存している場合に限り適用されます。
イ 飲食等のあった年月日
ロ 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
ハ 飲食等に参加した者の数
ニ その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称及び所在地(店舗がない等の理由で名称又は所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名又は名称、住所等)
ホ その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項
(3) その他の費用
イ カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
ロ 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
ハ 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用
(注) 上記(2)の費用の金額基準である5,000円の判定や交際費等の額の計算は、法人の適用している消費税等の経理処理(税抜経理方式又は税込経理方式)により算定した価額により行います。
接待交際費と間違われやすい経費には、以下のようなものが挙げられます。
- 会議費
- 福利厚生費
それぞれどのような経費のことを指すのか確認していきましょう。
会議費
会議で必要だった経費は、会議費として計上しましょう。
具体的には、2つの費用が会議費の経費と認められます。
- 会議で使って費用
- 接待をした内、一人当たり5,000円以下となった費用
会議で使った経費は、会議費となります。
- 会場のレンタル代
- 延長コードやプロジェクターなどのレンタル代
- 会議資料の制作費
- 会議で必要だったお弁当やお茶などの飲食代
- 会議のために必要だった交通費や宿泊費
一見、お弁当やお茶代は接待交際費に思うかもしれません。しかし、会議を行った場合の飲食代なので「会議費」となります。
次に、接待をした内一人当たり5,000円以下となった費用も会議費に該当します。
社外の人間に対しての接待のために支払った費用であっても、一人当たり5,000円以下となった場合は接待交際費からは除かれます。
たとえば、合計金額が21,000円と5,000円を超えていたとしても、人数で割って一人当たりの費用が5,000円を超えていなければ接待交際費となりません。4人での食事であれば一人当たり5,000円を超えるので接待交際費として処理できます。
しかし、5人での食事であれば一人当たり5,000円を下回るので接待交際費として認められません。
この場合、以下の情報を残しておけば会議費として計上できます。
- 飲食をした年月日
- 飲食に参加した人の氏名や法人名、会社との関係性
- 飲食に参加した人数
- 飲食にかかった費用の額面
- 飲食をした店などの名称と所在地
- そのほか飲食にかかった費用であることを証明する事項
領収書の裏に、一緒に食事をした人の名前と食事の目的を記入しておきましょう。
福利厚生費
福利厚生費は、従業員に対して提供する給与以外のサービスです。
たとえば、以下のようなものが当てはまります。
- 従業員の親睦を深めるための飲食代(全員に参加の機会があるもの)
- 従業員に参加資格のある旅行代やイベント代
- 従業員の慶弔見舞金
- 従業員の健康診断費用
福利厚生費にするには、以下の条件を満たす必要があります。
- 全従業員が対象である
- 支出金額が常識範囲以内である
- 現物支給でない
一部の従業員だけで行われたイベントや豪華すぎる慰安旅行は福利厚生費として認められません。
福利厚生費は全額損金に算入できるので、節税に役立てましょう。
接待交際費の勘定科目に該当するか判断する4つのポイント
「これって接待交際費の勘定科目で良いの?」と悩んだら、以下の4つのポイントを見て判断しましょう。
- 接待をした事実がある
- 事業に関係のある人のための接待である
- 支出の目的が明確である
- 社外の人間との飲食代の一人当たりの費用が5,000円を超えている
4つのポイント全てが当てはまっていれば、接待交際費であることがわかります。順番に見ていきましょう。
接待をした事実がある
接待交際費に該当するかの判断は、まず接待をした事実があることです。
事実を証明するために領収書を残しておきましょう。
事業に関係のある人のための接待である
次に取引先や仕入れ先など、事業に関係のある人に対する接待であることです。
外部のアドバイザーやコンサルタントも事業に関係があるので、接待をすれば接待交際費としての計上が可能です。また、従業員や役員、その家族であっても、事業に関係のある人であれば接待交際費となります。
領収書と一緒に、誰に対する接待なのかをメモで残しておきましょう。
支出の目的が明確である
支出の目的が明確であることも、接待交際費に該当するかの判断のポイントです。親睦を深めることで「取引が円滑になったり事業が拡大したりする相手なのか?」を見極める必要があります。
たとえば、納期の調整をしてもらったお礼や今後も無理をお願いするときに「社長とは仲良くしているから」と言って了承してもらえるのかを見極めましょう。
いくら接待をしても、ビジネスに良い影響を与えないのであれば接待交際費として認められないでしょう。
社外の人間との飲食代の一人当たりの費用が5,000円を超えている
社外の人間との飲食代の一人当たりの費用が5,000円を超えていると、接待交際費に該当します。
接待目的の飲食であっても、一人当たり5,000円以下であれば接待交際費とはなりません。ちなみに、社外の人との飲食代に限ります。
福利厚生費以外の社内の役員や従業員との飲食代であれば、一人当たりの費用が5,000円を下回っていても接待交際費と認められます。
交際費になるケースと会議費になるケース
交際費になるケース、会議費になるケースをそれぞれ確認しましょう。
飲食代の合計金額が、21,000円だったと仮定します。以下のように、何人での飲食代か・誰に対する費用かが判定の基準です。
何人での食事か(一人当たりの金額) | 誰と食事をしたか | 経費の区分 |
---|---|---|
4人(5,250円) | 社外(取引先など) | 接待交際費 |
一部の従業員 | 接待交際費 | |
5人(4.200円) | 社外(取引先など) | 会議費 |
一部の従業員 | 接待交際費 |
このように、同じ領収書であっても人数や誰との食事かによって経費の区分が変わります。領収書の裏には、誰と何のために食事をしたのか、一人当たりの金額を書いておくようにしましょう。
接待交際費を損金扱いできる2つの条件
接待交際費を損金扱いするためには、2つの条件があります。
- 領収書の保管
- 接待した相手の情報の保管
これを知らないままだと、税務調査で否定される可能性が高いです。
領収書の保管
領収書は必ず保管しましょう。
法人・青色申告の個人事業主なら7年間・白色申告なら5年間と決まっています。これは、正しく日々の取引情報を残すために必要な決まりです。
詳しくは国税庁の「帳簿書類等の保存期間及び保存方法」や「記帳や帳簿等保存・青色申告」で確認できます。接待のあった事実を証明するためにも、領収書の保管は必須です。
領収書がない場合はメモを残しておこう
もし、領収書がない場合は、出金伝票を残しておきましょう。
なぜなら、以下のような経費には領収書が出ないからです。
- 自動販売機のお茶
- 領収書のでない電車やバス
- 割り勘
ただし、出金伝票は自ら発行する書類のため、信憑性は低いです。そのため、どうしても領収書がない場合にのみ利用しましょう。
接待した相手の情報の保管
領収書と一緒に、接待した相手の情報を保管をしなければなりません。
具体的には、以下のような情報をメモしておくようにしましょう。
- 接待をした年月日
- 接待を伴う飲食等に参加した取引先の名称または氏名
- 接待を伴う飲食等に参加した人数
- 費用を支払った飲食店等の住所、名称等
これらの情報は、接待の事実の確認や接待費として認められるかの判定に必要です。領収書の裏にまとめて書いておきましょう。
接待交際費の損金算入の上限とは
接待交際費の条件を説明しましたが、すべての接待交際費が損金として認められるわけではありません。
そのため、多く使っても必ず節税対策になるとは限らないのです。
接待交際費の損金算入限度額について確認しましょう。
企業の損金算入限度額
企業には、接待交際費の損金算入に関して限度額が設けられています。
資本金や出資金の額によって、限度額が異なります。
- 期末の資本金の額又は出資金の額が1億円以下である等の法人
- 期末の資本金の額又は出資金の額が1億円を超える等の法人
期末の資本金の額又は出資金の額が1億円以下である等の法人
平成26年4月1日以後に開始する事業年度の場合、以下のいずれかを選べます。
- 実際の接待交際費の50%まで
- 年間800万円まで
ただし、「年間800万円まで」を選んだときに事業年度が12か月未満の場合、800万円を12で割って月数を乗じた数字が限度額となります。
たとえば、3月1日から事業を開始したとしたらその年の限度額は、以下のように計算しましょう。
800万円÷12×9か月=600万円
600万円が限度額となります。
しかし、接待交際費が1,600万円を超えるのであれば「実際の接待交際費の50%まで」の方が多く損金として扱えます。
1,600万円以下であれば、800万円までを損金とする方が多く損金として扱えます。
期末の資本金の額又は出資金の額が1億円を超える等の法人
期末の資本金の額又は出資金の額が1億円を超える大きな企業だと、実際の接待交際費の50%までが損金として認められます。
実際の接待交際費がいくらであったとしても、半分の金額しか損金として扱えないので注意しましょう。
個人事業主(青色申告・白色申告)には上限がない
個人事業主は、青色申告・白色申告に関係なく、接待交際費は全額経費として認められます。
ただし、「事業運営に必要不可欠なものであれば」という条件がつきます。単に友達や家族と食事をした費用は、接待交際費として計上できません。
- 事業を円滑・有利に運営するための支出である
- 得意先や仕入れ先など事業関係者に対する支出である
これら2つの条件が整っている必要があるため、注意しましょう。
条件が整っていることを証明するため、領収書には誰と飲食をしたのかメモしておくことをおすすめします。
使いすぎ注意!接待交際費は売り上げの何%が妥当?
節税になるからといっていくらでも接待交際費で計上すると、「本当に交際費なの?」と税務署に疑われてしまいます。
たとえば、月20万円の売り上げのうち10万円も交際費に使うことはありえないはずです。
昭和63年〜平成10年と古い統計結果ですが、交際費支出の割合は以下のようになっています。
引用:交際費と寄附金|国税庁
平成10年の区分を見ると、営業収入1,000円あたり3.19円の交際費を支出していることがわかります。たとえば、月に営業収入100万円であるなら、月あたりの交際費は3,190円程度が妥当です。
もちろん業種によって、接待交際費をたくさん使う必要のある仕事もあるでしょう。しかし、接待交際費にばかりお金をかけていると、納税逃れを疑われかねません。
妥当な金額を知っておき、使いすぎに注意しましょう。
おわりに
接待交際費とは、事業に関わる人に対して接待や贈答などを行うために必要な費用のことです。
取引先や得意先、役員や従業員、その家族なども事業に関わる人として認められています。
しかし、何でも接待交際費として損金算入できるわけではありません。
以下の4つのポイントを抑えた費用のみが、接待交際費として認められます。
- 接待をした事実がある
- 事業に関係のある人のための接待である
- 支出の目的が明確である
- 社外の人間との飲食代の一人当たりの費用が5,000円を超えている
さらに、法人には損金算入の限度があることも理解しておかなければなりません。
接待交際費の損金算入のルールを理解し、正しく経費を処理しましょう。