税金・税務

印紙税の基本ー印紙とは?貼らなければどうなる?

印紙税の基本ー印紙とは?貼らなければどうなる?

みなさんは「印紙」についてどのくらいご存知でしょうか?印紙税は課税文書を作成するときに必要になる税金です。日常生活では、高額の支払いをした領収書や家の賃貸借契約書などで利用する機会がありますよね。

印紙は前述した領収書と賃貸借契約書以外にも、さまざまな文書に添付をする必要があります。この印紙を添付すべき文書とはどのような文書なのでしょうか?印紙の種類や購入場所は?また、貼るべき文書に印紙を貼らなければどうなるのでしょうか?

今回はこのような印紙税の基本についてみていきましょう。

印紙税とは

印紙税とは課税文書を作成した際に課される税金です。課税文書に収入印紙をはり付けることで納付します。

法律からみる印紙税

印紙税法 第三条

別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。

引用:印紙税法|e-Gov

印紙税とは、課税文書を作成した際に印紙税法に基づいて課される税金です。どのような文書が課税文書に該当するのかは印紙税法によって定められています。課税文書の中には領収書や契約書といった文書が含まれ、主に金銭や資産に関する文書が指定されています。他にも、金銭借用証書や約束手形、株券、定款などが含まれます。

課税文書の作成者は印紙税を納める義務を負っています。たとえば、契約書を作成したときには、その契約書を作成した者が印紙税を納付することになります。

但し、印紙税法第三条の2にある通り契約者が2名以上の場合は一緒に印紙税を納める義務があります。

印紙税法 第三条2

一の課税文書を二以上の者が共同して作成した場合には、当該二以上の者は、その作成した課税文書につき、連帯して印紙税を納める義務がある。

引用:印紙税法|e-Gov

印紙税が納付される仕組み

印紙税の納付には2つの方法があります。印紙による納付と税印による納付です。

一般的な納付方法は印紙による納付です。あらかじめ金銭を支払って印紙を購入し、課税文書にはり付けることで納税します。印紙は郵便局や法務局をはじめとする全国の販売所にて販売されており、誰でも購入が可能です。

税印とは「財務省令で定める印影の形式を有する印」のこと。このような見た目をしています。

印紙税の基本ー印紙とは?貼らなければどうなる?の画像1

引用:税印押なつによる納付の特例|国税庁

税印を利用するためには、税印押なつ機が設置されている税務署を訪れる必要があります。あらかじめ印紙税額を国に納付した後、税印押なつ機を用いて課税文書に税印を押印します。

印紙の使用方法

(印紙による納付等)

第八条 課税文書の作成者は、次条から第十二条までの規定の適用を受ける場合を除き、当該課税文書に課されるべき印紙税に相当する金額の印紙(以下「相当印紙」という。)を、当該課税文書の作成の時までに、当該課税文書にはり付ける方法により、印紙税を納付しなければならない。

2 課税文書の作成者は、前項の規定により当該課税文書に印紙をはり付ける場合には、政令で定めるところにより、当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない。

引用:印紙税法|e-Gov

収入印紙は課税文書に直接貼り付けて使用します。添付場所に明確な決まりはありません。わかりやすいところに添付しましょう。複数ページに渡る課税文書の場合、1ページ目に添付することが多いです。

添付した収入印紙には消印を押印します。印鑑は収入印紙と課税文書のどちらにもまたがるように押印しましょう。

印紙税の課税文書とは

印紙税は課税文書を作成した際に課せられる税金です。では、この「課税文書」とはどのような文書を指すのでしょうか?また、逆に「課税文書」にあたらない文書とはどのような文書なのでしょうか?

印紙税の課税文書とは?

課税文書には3つの条件があります。

(1) 印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。

(2) 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。

(3) 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。

引用:No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断|国税庁

このすべてにあてはまる文書が課税文書となります。

まずひとつめの「印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書」とは、3.印紙の種類と購入場所にある画像内の文書です。消費賃借に関する契約書や請負に関する契約書、約束手形や保険証券などが該当します。

作成された文書の内容が20種類に該当し、かつ当事者間で課税事項の内容を証明することを目的とした文書が課税文書です。文書の題名ではなく、そこに記載された内容によって20種類に該当するかどうか判断する必要があります。

たとえば作成された文書の題名が「同意書」や「覚書」といったものでも、記載されている内容自体が20種類の文書に該当すると判断されるものは課税文書として取り扱われます。

尚、非課税文書に該当するものは課税文書に含まれません。

印紙税の非課税文書と不課税文書

非課税文書とは、印紙税法第5条により印紙税を課さないとされている文書のことです。

第五条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、次に掲げるものには、印紙税を課さない。

一 別表第一の非課税物件の欄に掲げる文書

二 国、地方公共団体又は別表第二に掲げる者が作成した文書

三 別表第三の上欄に掲げる文書で、同表の下欄に掲げる者が作成したもの

引用:印紙税法|e-Gov

国や地方公共団体、また外国大使館などの作成した文書は課税文書とはなりません。

しかし、国・地方公共団体などと一般の法人や個人などの二者間で文書を作成した場合は、国・地方公共団体などから法人や個人などに発行された文書のみ非課税となり、法人や個人などから国・地方公共団体などに発行された文書は課税文書となります。この点は注意しましょう。

課税文書の受領者 国、地方公共団体、外国大使館など 一般の法人、個人など
課税文書の発行者 国、地方公共団体、外国大使館など
一般の法人、個人など × ×

非課税となる場合:〇 非課税とならない場合:×

課税物件表に記載のある課税文書であっても、金額によっては非課税となる場合があります。たとえば、通常は課税文書となる売上代金に係る金銭の受取書であっても、対象金額が5万円未満の場合印紙の添付は不要となります。

また、課税文書に該当しない文書は不課税文書と呼ばれています。不課税文書には、継続の意思のない売買契約や雇用契約書などが該当します。

印紙の種類と購入場所

収入印紙は全部で31種類あります。文書の種類と金額ごとに添付すべき印紙は決められています。

印紙の種類

1円、2円、5円、10円、20円、30円、40円、50円、60円、80円、100円、120円、200円、300円、400円、500円、600円、1,000円、2,000円、3,000円、4,000円、5,000円、6,000円、8,000円、10,000円、20,000円、30,000円、40,000円、50,000円、60,000円、100,000円

全部で31種類です。一番利用頻度の高い印紙額は200円で、5万円~100万円以下の領収書に添付されています。

印紙の購入場所

収入印紙はコンビニや郵便局で購入できます。また、パスポートセンターや県税事務所、市役所、一部の銀行でも販売されています。

印紙税の課税物件表

具体的にどのような文書にいくらの印紙税が必要になるのかは国税庁のホームページに掲載されています。こちらを参考にするようにしましょう。

印紙税の基本ー印紙とは?貼らなければどうなる?の画像2
印紙税の基本ー印紙とは?貼らなければどうなる?の画像3
印紙税の基本ー印紙とは?貼らなければどうなる?の画像4

引用:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁

印紙税の基本ー印紙とは?貼らなければどうなる?の画像5
印紙税の基本ー印紙とは?貼らなければどうなる?の画像6

引用:No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで|国税庁

印紙税と領収書

日常生活において一番よく目にする課税文書は、領収書やレシートといった金銭の受け渡しを証明する証書でしょう。

これらは課税物件表の中では「17.売上代金に係る金銭または有価証券の受取書」「17.売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書」に該当します。

支払金額が5万円以上の領収書・レシートを発行する場合、印紙の添付が必要となります。領収書やレシートを受け取る側の消費者は、高額な買い物をしたときには証書に印紙が添付されているかどうか受け取ったときに確認をするようにしましょう。

ここでひとつ注意が必要なポイントがあります。それは、5万円以上の買い物をした場合でもクレジットカードでの支払いであれば印紙の添付が不要となる点です。

クレジットカード払いを行った際に受け取る領収書は金銭の授受を介していないため「17.売上代金に係る金銭または有価証券の受取書」には該当しません。そのため、印紙の添付は不要となっています。

印紙を間違えて貼ってしまった場合

印紙を間違えて貼ってしまった場合、交換または還付の対象となることがあります。

【交換の対象となるケース】

  • 未使用の収入印紙
  • 白紙や封筒に貼り付けた未使用の収入印紙
  • 行政機関に提出する申請書などに貼り付けた未使用の収入印紙

【還付の対象となるケース】

  • 貼るべき収入印紙の金額より多い額を添付してしまった
  • 課税文書でない文書に添付してしまった
  • 添付後にその課税文書を使用する予定がなくなってしまった

このようなケースが該当します。交換や還付を受けるためには、該当の収入印紙は汚れたり損傷していない綺麗な状態である必要があります。また、収入印紙を貼り付けた文書から切り取ったり剥がしたりしたものは還付・交換の対象とはなりませんので、注意が必要です。

交換の場合は郵便局へ該当の文書を持参します。交換手数料の5円を支払い交換請求をすると、新しい収入印紙と交換をすることができます。交換手数料の5円は、交換する元の収入印紙1枚に対し必要となる金額です。

たとえば持参した収入印紙1枚をより金額の小さな10枚の収入印紙と交換する場合、かかる手数料は5円です。逆に100枚の収入印紙をより金額の大きな1枚の収入印紙と交換する場合、かかる手数料は500円となります。

尚、収入印紙は例え未使用のものであっても現金と交換することはできません。

続いて還付のケースです。還付を受けるためには、納税地の税務署長に「印紙税過誤納確認申請書」を提出する必要があります。還付金は銀行または郵便局の口座へ送金となります。

印紙を添付しなかった場合

課税文書に収入印紙を添付しなかったときには過怠税が徴収されます。過怠税の金額は、本来添付すべきだった印紙額の3倍となります。この税金は経費計上することができませんので注意が必要です。

もし自ら自主的に不納付を申し出た場合は、過怠税は本来の金額×1.1倍に減額されます。そのため、もし印紙を添付し損なっている課税文書を発見したときには速やかに申し出た方がいいでしょう。

契約後に内容を変更する場合の印紙の取り扱い

契約後に内容を変更する場合は、その変更箇所が「金額」なのか「内容」なのかによって対応が異なってきます。

金額を変更する場合の印紙の取り扱い

契約書に記載された金額を変更する場合、変更前の金額が記載された契約書が変更後の契約書を確認することで明確に特定できるかどうかで扱い方が変わります。

特定できる場合

たとえば、変更後の契約書内に前契約書の文書番号や契約年月日などが記載されている場合が該当します。

増額

契約金額が前の契約から増額され、かつ前後の契約書を見比べることで増加額が算出できるときには、増加分にかかる金額のみ印紙を添付します。たとえば元の契約が100万円で変更後の金額が150万円の場合、差額の50万円分にかかる印紙を変更契約書に添付することになります。

減額

逆に変更前後で契約額が減額になっている場合は、変更契約書に印紙の添付は不要です。

変更金額が明らかでないとき

変更前の金額が不明なときは変更後の金額全額分に対する印紙を添付することになります。

特定できない場合

変更前の契約金額を確認できないため、差額がわからない場合は、変更契約書に記載されている金額全額分の収入印紙を添付することになります。

たとえば変更後の契約額 150万円と記載がある場合は、150万円にかかる印紙を添付します。もし変更契約書に記載されている金額が変更前後の差額のみの場合、その差額金額にかかる印紙を添付しましょう。

内容を変更する場合の印紙の取り扱い

変更契約書で変更をする項目が契約金額以外の場合は、契約内容がどのようなものなのかによって印紙の添付が必要になるケースとならないケースがあります。

印紙の添付が必要となるケースは、変更した内容が印紙税法基本通達別表第2で定められる「重要な事項の一覧表」に該当する場合です。たとえば、契約の目的物や契約期間、支払期日などが該当します。

電子メールや電子契約は印紙の添付が不要

電子契約や電子メール、またはFAXが原本となる文書は印紙の添付が不要です。契約書や領収書といった紙で作成されると課税文書にあたる内容の文書でも、電磁的記録を原本として発行された文書は課税文書とはみなされません。

印紙税法基本通達第44条

法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。

引用:第7節 作成者等|国税庁

上記にある通り、印紙税を納める必要があるのは課税文書となるべき「用紙」に課税事項を記載した場合です。電子契約や電子メールには用紙がないため、この基本通達には該当しないことになります。

また、福岡国税局が回答をした「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について」にも似た主旨の内容が記載されています。

注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。

引用:請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について(別紙1-3)|国税庁

こちらではより明確に電子メール・FAXが印紙税の課税対象とならないことが明言されています。

この回答には続きがあり、

ただし、電子メールで送信した後に本注文請書の現物を別途持参するなどの方法により相手方に交付した場合には、課税文書の作成に該当し、現物の注文請書に印紙税が課されるものと考える。

引用:請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について(別紙1-3)|国税庁

と述べられています。

つまり、元が電磁的記録の文書であっても、それを用紙等に印刷し相手方に交付した場合は課税文書となります。間違えないように注意しましょう。

これらのことから、電磁的記録で作成・交付された文書については用紙等に印刷しない限り、印紙の添付が不要であると判断できます。

おわりに

印紙税は課税文書を作成した際に課せられる税金です。収入印紙を課税文書に添付することで納税できます。課税文書は金銭や金銭的価値のあるものの受け渡しや契約にかかわる文書を中心に多岐にわたっています。

また、印紙を添付すべき課税文書に印紙の添付がなされていなかった場合、過怠金の対象となるケースがあります。

このように、印紙税には注意しなければならないポイントが複数存在します。必要に応じて法律や国税庁のサイトを確認しながら対応するようにしましょう。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

東京都千代田区にある税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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