税務のスペシャリストである税理士は、節税に関する相談にも対応できます。節税に強い税理士とパートナーシップを結ぶためには、税理士の探し方や見るべきポイントを押さえておくことが大切です。
当記事では税理士に節税に関する相談をするメリットや、節税に強い税理士に依頼するコツや見るべきポイントなどを解説します。
税理士に節税のことを相談するメリット
節税について税理士に相談するメリットは、主に次の2つです。
- 税制度や実務に基づいた最適な節税対策を提案してくれる
- 確定申告や記帳など節税以外の税務に対応している
税制度や実務に基づいた最適な節税対策を提案してくれる
税理士は、税法上に定められた税務関係の独占業務を実施できる唯一の職業です。難関である税理士試験を突破できるレベルの知識をしなければ、税理士を名乗ることすらできません。
税理士に相談すれば、税制度や実務経験に基づく最適な節税対策の提案を受けられるメリットがあります。税理士に依頼した際の、節税事例としては次のようなものが挙げられます。
- 財務状況を見直し、見込み利益分を設備投資やボーナスに回し、利益圧縮に加えて職場改善・エンゲージメントの向上などを行った
- 小規模企業共済への加入を勧め、経費計上しつつ退職金制度の設置や貸付制度の利用などができるようにした
- 生前贈与や退職金支払い、事業承継税制などを提案して節税と事業承継に対する備えを行った
上記のような大胆な節税は、税務・経営の知識や適切な施策であるかを判断できる経験則がなければ、取り組むこと自体が難しいものです。もし素人が知識・経験なくこうした節税を進めると、修正申告や追徴課税となったり、所得隠し・脱税と見なされたりする可能性があります。
確定申告や記帳など節税以外の税務に対応している
税理士は節税関係のアドバイスだけでなく、税務やその他税務関係の業務に対応してくれます。具体的には次のような業務に対応してくれる可能性があります。
- 確定申告書や決算書などの税務書類の作成
- 請求書や領収書に基づいた記帳代行
- 会計ソフトの導入支援
- 経理関係の書類作成、整理、保管などについてのコンサルティング
- 資金調達のサポート
- 相続・事業承継における税務関係のサポート
- 税務調査対応
いずれの業務も、企業経営と密接にかかわるものです。税理士は節税以外にもさまざまな面で企業経営をサポートをしてくれるのです。業務効率化や経営見直しによって、節税による資金捻出だけでなく経費削減につながる可能性があります。
節税に強い税理士へ依頼するコツ|見るべき6つのポイントとは
近隣の税理士に準備もなく相談するだけでは、理想の税理士と巡り会うことはできません。節税に強い税理士を見つけたり、節税に関する適切なサポートを受けたりするためには、以下に示した6つのポイントを意識して税理士を探す必要があります。
- 自身の節税の方向性と合う税理士を選ぶ
- 積極的にコミュニケーションを取る
- 税理士との契約状態を確認する
- 相談先の税理士の得意業種・事業を確認する
- 税理士としての実務経験や扱う税の種類を確認する
- 節税以外の部分で相性がよいか確認する
1.自身の節税の方向性と合う税理士を選ぶ
税理士の節税に対する取り組み方は、税理士事務所の方針や税理士個人の考え方によって異なります。依頼予定の税理士が、節税に関してどのような捉え方をしているのかを把握しておきましょう。
節税に積極的な税理士であれば、自身の経験や知識、対応した事例を基にしたさまざまな節税案を提案してくれます。費用対効果の高い提案を受けられれば、企業の財政状況改善も期待できるでしょう。
ただし、積極性が仇となってグレーな節税を提案してきたり、取引先に配慮しない無茶な節税策になったりなどのケースには注意が必要です。脱税上等の悪質な案を出す税理士と出会う可能性すらあります。
「最低限の節税で安全に経営したい」と考えている場合は、節税に対して保守的な税理士を選ぶとよいでしょう。適切な納税を大前提に、違法・脱法がない堅実な提案や指摘を行ってくれます。税務調査にも強くなるでしょう。
デメリットとして、問題なく節税できるところを見逃す、あえて提案を避けるなどのケースがあることも考慮しなければなりません。節税を求めて依頼したにもかかわらず、費用対効果に見合わない結果に終わるリスクがあります。
2.積極的にコミュニケーションを取る
税理士へ節税について相談する場合は、できる限り積極的にコミュニケーションを取るようにしましょう。こちらからしっかりとコミュニケーションを取らなければ、税理士側がどのようにサポートすべきか迷ってしまう可能性があるからです。
例えば、決算資料や経営状態をしっかり共有せずに節税を依頼しても、税理士側は経営状態に基づいた適切なアドバイスができません。節税に対してこちらが意見・要望を言わなければ、税理士側から積極的に提案してくれる可能性が低下してしまいます。
さらに、決算前後でようやく節税のアドバイスを求めた結果、すでに適用できる節税策がなくなっていたというパターンも考えられます。
以上のことから、税理士との情報共有や定期的な連絡交換、意見・要望の確認などが、節税の提案を受ける上で大切だと言えるでしょう。
3.税理士との契約状態を確認する
税理士が依頼者にどのようなサポートを行うかは、契約の範囲や掲示条件などで大きく変わります。契約締結前には節税対策の方針や節税アドバイス込みにした契約書の作成などを進めておき、節税について問題なく依頼できる体制を整えておきましょう。
税理士へ節税についてアドバイスをもらうときは、顧問契約を結ぶのがおすすめです。理由は次のとおりです。
- 定期的に経営状態や財務状況の詳細をチェックしてもらうことで、自社の内情や実態を知った上での効果的な節税対策の提案が受けやすい
- 都度のタイミングでの節税アドバイスを聞きやすく、適切な時期での制度適用や経費計上が進めやすくなる
- 経費のムダの発見や経理業務の見直しなど、節税面以外での経営に関する相談ができる
発生する税理士費用は、支払手数料や業務委託料として経費計上が可能です。
4.相談先の税理士の得意業種・事業を確認する
節税対策は、自社の業種や事業内容と密接に関わってきます。なぜなら同じ費用であっても、業種や事業によっては経費計上の扱いが変わる可能性があるからです。
税理士にも不得意分野が存在し、「A税理士は製造業に強い」「B税理士は事業承継の経験が豊富だが、小売業の実績が少ない」などの違いがあるのです。
例えば「〇〇業は90%、△△業は70%まで経費として認める」といった、経費率と呼ばれる概念があります。また、業界独自の課税や非課税制度なども存在しています。つまり特定の業種・事業に明るい税理士でないと、コアな節税アドバイスが期待できないケースは珍しくないということです。
もし依頼した税理士が自社の業種・事業に関する専門性がない場合、本当は経費にできるものを見逃したり、誤った経費計上を行ってしまう可能性があります。
税理士に節税を依頼する前に、依頼予定の税理士の得意業種・事業や業界知識が、自社と合致しているかを確認しておくことが重要です。
5.税理士としての実務経験や扱う税の種類を確認する
自社にとって有効な節税対策の提案を期待できるかは、税理士としての実務経験や税知識に大きく左右されます。
税理士は税に関するスペシャリストではあるものの、得意とする税の種類に違いがあります。これは税理士試験のときに選択した科目や、税理士事務所が受け付けている依頼の種類に違いがあるためです。
企業が節税について相談したい場合は、法人税や消費税など、法人の税金に関する知識が豊富な税理士を選びましょう。個人事業主やサラリーマンの場合は、所得税に強い税理士を選ぶことをおすすめします。
知識だけでなく、税理士事務所や税理士個人が、節税関係や税務調査対応の実務経験を持っているかを見ておくことも重要です。万が一税務調査が入ったときに、税務署に屈することなく堂々と話し合えるか(税務署の言いなりになって修正を行わないか)どうかも、依頼すべきかどうかの判断材料になるためです。
6.節税以外の部分で相性がよいか確認する
節税に関する知識や経験以外の部分で、自社と相性がよい税理士であるか確認することも大切です。具体的な確認すべきポイントは、次のとおりです。
- 事務所や自宅から距離はどれくらいあるのか
- オンラインでの相談に対応しているか
- 自社が利用している会計ソフトを取り扱っているか
- 担当する税理士の雰囲気や態度は問題ないか
いずれの事項も税理士事務所によって詳細が異なるので、無料相談などを利用して事前に確認しておきましょう。
大切なのは、税理士と一度は会って直接話を聞いてみることです。税理士事務所の公式サイトには載っていない条件や、担当予定の税理士の雰囲気など、直接会わなければ判別できない情報を得られるからです。
税理士以外に節税の相談はできる?
結論から言えば、税理士以外に節税の相談をするのはおすすめしません。節税に関する具体的な相談は立派な税務相談の一種であり、たとえ無料であっても違法行為に該当するためです。
例えばライフプランやお金に関する専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)であっても、税理士資格を取得していなければ、解説できるのは一般的な税知識や税制度に留まります。
税に関する相談なら税務署が思い浮かぶものの、税務署が対応してくれるのは税務手続き関係のみであり、節税についての相談は受け付けていません。
実務経験や専門知識量の違いを考えても、節税に関する相談は税理士に任せることをおすすめします。
一方で、資産形成やライフプランなど節税以外のお金に関する相談は、FPやIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)、経営に関する相談は経営コンサルタントや中小企業診断士などの専門家が対応できます。
節税について税理士に相談する際のQ&A
最後に、節税について税理士に相談する際のQ&Aについて紹介します。税理士に依頼する際の参考となれば幸いです。
資産や経営について相談できる?
税理士は税関係のスペシャリストではあるものの、資産形成全般についての知識が豊富とは限りません。財務や金融などの資産形成に関係する分野は、税務分野と異なっているためです。
とはいえ資産形成と税金には密接な関係があることから、資産や経営について知識を持つ税理士は豊富に存在します。「会社設立に強い税理士」「資金調達に強い税理士」などです。
税務と同時に資産や経営について相談したいときは、それらの分野を強みとしている税理士を選ぶとよいでしょう。中小企業診断士やFPなどのダブルライセンスである税理士は、資産や経営に強い可能性が高くなります。
脱税を指南する悪質な税理士は存在する?
税理士法第36条にて「脱税相談等の禁止」があるとおり、税理士が脱税に関する相談に応じたり指示したりすることは禁止されています。
第三十六条
税理士は、不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ、又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき、指示をし、相談に応じ、その他これらに類似する行為をしてはならない。
引用:e-Gov|税理士法
一方で意図的に脱税に関与する税理士は存在しており、実際に懲戒処分や刑事事件化などがされている事例は多数見られます。近年では脱税関与を指摘されたものの、税理士法が現役税理士のみに適用されることを悪用し、調査中に廃業して処分を逃れるケース(懲戒逃れ)が報道された事実もあります。
万が一脱税が疑われる事例を相談された場合は、他の税理士へのセカンドオピニオンを検討するなど対策が必要になるでしょう。あなた自身が脱税に関与してしまえば、重加算税といった重い追徴課税や、懲役・罰金といった刑罰の対象になります。
公認会計士との違いは?
公認会計士とは、税務ではなく会計に関する独占業務を行える者です。税務と似ているようで、まったく別の業務を担当しています。具体的には、財務諸表監査(企業が作成した財務省表が正しく作られているかチェックすること)を行います。
会計知識を活かした会計関係のコンサルティングや企業再生、M&A相談などに対応している公認会計士も珍しくありません。
業務内容から考えると、公認会計士のクライアントは上場企業や大企業がメインになってきます。この点も、中小企業・個人がメインクライアントとなる税理士と異なる部分と言えるでしょう。
税理士のセカンドオピニオンってあり?
医者と同じように、税理士がセカンドオピニオンの相談を受けて実施するケースは多数見られます。税理士にセカンドオピニオンを依頼するメリットは次のとおりです。
- 最初に依頼した税理士とサポート内容や料金を比較できる
- 1人の税理士からの意見だけでなく、多角的な意見を取り入れられる
- 「税務全般はA税理士」「スポット的な経営相談はB税理士」といった、機能別での使い分けができる
実際に弊社グループの税理士法人であるきわみ事務所では、弁護士や社労士と提携した多角的な視点によるセカンドオピニオンサービスを提供しています。
節税に強い税理士の探し方は?
節税に強い税理士の探し方として、主に次の方法が挙げられます。
節税に強い税理士の探し方 | 特徴 |
---|---|
知人・友人からの紹介 |
|
銀行や保険会社からの紹介 |
|
税理士検索のポータルサイト |
|
会計ソフトサービス |
|
商工会議所などに無料相談する |
|
節税の相談は自社業界や経営に強い税理士に依頼しよう!
本格的な節税対策を考えているときは、専門家である税理士に相談しましょう。専門知識や経験から、適切な節税対策を提案してくれます。自社にぴったりの節税対策の提案を受けるには、税理士の得意分野の確認や積極的なコミュニケーションなどを行うことが大切です。
弊社きわみ事務所では、節税対策を含めたさまざまな税務に対応できる税理士の紹介や、他の士業にも相談できるきわみグループとの連携を可能としています。税務や経営に関する総合的な相談であれば、ぜひお問い合わせください。