株式投資において、株価が高いか安いかを判断するには「株価チャート」をチェックするのが有効です。株価チャートを読むのはハードルが高いと思われがちですが、基本やパターンを覚えておけば、初心者でも簡単に読めるようになります。
当記事では株価チャートの読み方の基本やトレンドラインの概要、株価チャートの基本的なパターンなどを解説します。
なお、当記事で解説する内容は投資リスクの関係上、必ずしも正解と断言するものではありません。あくまで、これまでの傾向を考慮した参考情報との見方でご覧ください。
株価チャート分析は「テクニカル分析」の一種
株式やETF(上場投資信託)などにおける株価分析の手法として、過去の株価の値動きを見る「テクニカル分析(チャート分析)」と、経済状況・企業業績などを見る「ファンダメンタルズ分析」の2種類があります。
株価チャートをみて株価を分析する方法は、テクニカル分析の一種です。以下では、株価チャートの基本的な概要を解説します。
株価チャートとは一定期間の値動きをグラフ化したもの
株価チャートとは、株価の値動きを1日・1週間・1ヶ月といった一定の期間ごとにグラフ化したものです。
出典:Yahoo!ファイナンス 日経平均株価(2022年4月7日時点)
この株価チャートを分析することで、株価が割高か割安かどうかの判断や、将来的な値動きの予想などが可能になります。
テクニカル分析は、原則として「チャートの値動きに集中すればよい」「経済知識がなくても勉強しやすい」「視覚的に見やすい」といったメリットがあるため、ファンダメンタルズ分析より初心者向けと言われています。
現在は、証券会社が提供するツールなどによって、複雑な計算や分析が簡単になりました。これから株式投資を始めたい人は、まずはテクニカル分析の基本や見方から学ぶのも1つの選択肢です。
株価チャートは、証券会社が提供する無料ツールや、四季報オンライン・Yahoo!ファイナンスなどのWebサイトにて確認が可能です。
ファンダメンタルズ分析は専門家向け
ファンダメンタルズ分析とは、経済状況や政治動向、企業業績などから企業価値を分析して株価を予想する方法です。
ファンダメンタルズ分析を行うには、経済に関する知識や企業分析の手法など、専門知識が必要になります。そのため、投資初心者にとってはやや難易度が高くなっています。
とはいえ将来的には、テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の両方を使いこなせるのが理想的でしょう。
株価チャートの読み方・見方の基本
株価チャートは、主に「ローソク足」「移動平均線」「出来高」の3つで構成されています。株価チャートの読み方・見方として、まずはこの3要素の読み方を理解することから始めましょう。以下では、それぞれの概要を解説します。
ローソク足の読み方・見方の基本
株価チャートの読み方・見方を覚えるうえで、とくに重要な要素がローソク足です。ローソク足とは、一定期間の株価の値動きを、ローソクのような形で表したものです。
ローソク足には、白抜きの「陽線」と黒塗りの「陰線」の2種類が存在します。
陽線は「株価が取引開始時より高値で終了した売りが強い市場」、陰線は「取引開始時より安値で終了した売りが強い市場」を表します。
ローソク足を構成する要素は次のとおりです。
ローソク足の構成要素 | 概要 |
---|---|
始値(はじめね) | ある期間において最初に成立した売買価格 |
終値(おわりね) | ある期間において最後に成立した売買価格 |
高値 | ある期間においてもっとも高く取引された売買価格 |
安値 | ある期間においてもっとも安く取引された売買価格 |
上ひげ・下ひげ | ローソク足の柱(胴体部分)から伸びている高値および安値を表す線 |
ローソク足でわかることについて
ローソク足は、柱やひげの長さによって、株価におけるさまざまな性質を表します。
例えば陽線で柱が長い「太陽線」は投資家の強気を、陰線で上ひげが長い「上影陰線」は投資家の弱気のサインを表すと言われています。
また、ひげのない陽線は株価上昇継続、柱のない長い上ひげのみのローソク足は株価の暴落、長い下ヒゲのみのローソク足は高騰の兆候などです。
慣れてくるとローソク足の形を見て、株式市場の強気・弱気の度合いや転換の暗示などが、ある程度読めるようになるでしょう。
期間の長さによるローソク足の種類
ローソク足は表す期間の長さによって呼び名が変わります。主な呼び名は次のとおりです。
- 分足(ふんあし):分単位の相場の動きを表す
- 日足(ひあし):日々の相場の動きを表す
- 週足(しゅうあし):週の相場(月~金曜日)の動きを表す
- 月足(つきあし):1ヶ月ごとの相場の動きを表す
- 年足(ねんあし):年単位の相場の動きを表す
移動平均線の読み方・見方の基本
移動平均線とは、ある一定の期間中の株価を結び、期間中の平均株価をグラフ化したものです。集計期間の長さによって、一般的には短期線(5日・25日など)・中期線(13週・26週など)、長期線(52週など)に分類されます。
原則として移動平均線から大きく乖離した株価は、移動平均線に戻ろうとする働き(平均値に戻ろうとする働き)になる傾向が見られます。
そのため、株価が移動平均線を大きく上回っているときは売りのサイン、大きく下回っている場合は買いのサインとの判断も可能です。
また、移動平均線による売買のサインとして、「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」があります。以下ではそれぞれの読み方・見方を解説します。
ゴールデンクロス
ゴールデンクロスとは、移動平均線の短期線が、中・長期線を下から突き上げている状態です。直近の株価が上昇傾向であることを表しています。買いのサインの1つです。
デッドクロス
デッドクロスとは、移動平均線の短期線が、中・長期線を上から突き抜けている状態です。直近の株価が下降傾向であることを表しています。売りのサインの1つです。
出来高の読み方・見方の基本
株式市場における出来高とは、一定の期間中に成立した株式の売買数量(取引量)のことです。株価チャートでは、ローソク足チャート下に棒グラフとしてよく表されます。
出来高は、株式市場の活性度です。一般的には出来高の増加は、将来的な株価の上昇を示すと言われています。
また、株価が底値(株価が下落から上昇に転じた際、もっとも低い株価)のあたりで出来高が急増すると、株価が反転上昇する兆しとなる「セリングクライマックス」になる可能性があります。
チャートグラフだけでなく、出来高の読み方・見方まで見ておきましょう。
トレンドラインとは?基本用語と上昇・下降時の売買タイミング
株価は日々上下を繰り返していますが、特定の点同士を結んで線にすることで、当該銘柄の株価が上がっているのか下がっているのかを判断できます。判断にはトレンドラインを用います。
トレンドラインとは、株価の安値(谷)同士または高値(山)を結んだときにできる線です。一般的に下値同士を結んで右肩上がりになる線を「上昇トレンドライン」、上値同士を結んで右肩下がりになる線を「下降トレンドライン」と呼びます。
また、安値同士を結んだ線を「下値支持線(サポートライン)」、高値同士を結んだ線を「上値抵抗線(レジスタンスライン)」とも呼びます。
各種トレンドラインの信頼性を担保するには、必ず3点以上を結ぶようにしましょう。以下では、トレンドラインについての読み方・見方を解説します。
上昇トレンドは買いが基本
上昇トレンドとは、最新の安値が前回の安値を上回ることが、長期にわたって続いている状態のことです。継続的な株価上昇が見込まれるため、原則として買いのサインになります。とくに、安値付近での購入は「押し目買い」と呼ばれ、上昇トレンド中の買いポイントの1つです。
ただし、以下のように上昇トレンド中の安値が前回の安値が割り込んだときは、下降トレンドに転換する可能性があります。
この兆候が見られたときは、逆に売りのタイミングがきたとの判断が可能です。
下降トレンドは売りが基本
上昇トレンドとは、最新の高値が前回の高値を下回ることが、長期にわたって続いている状態のことです。継続的な株価下落が見込まれるため、原則として売りのサインになります。購入を検討する場合は、上昇トレンドに転じる兆候が見られるまで待つのが基本です。
以下のように下降トレンド中の高値が前回の高値を上回ったときは、上昇トレンドに転換する可能性があります。
この兆候が見られたときは、逆に買いのタイミングがきたとの判断が可能です。
変動が少ない三角保ち合いについて
株価の上昇および下降の値幅が小さくなり、値動きが大人しくなって三角形のような形になるタイミングがあります。この変動が少ないチャートのことを三角保ち合いと呼びます。
三角保ち合いの頂点の部分に達すると、直後に強烈な株価変動が発生するかもしれません。とくに、上記図のような二等辺三角形の計上は、頂点に達した後に上がるか下がるかが不透明なので注意しましょう。
一方で三角形の左上が直角に近い場合(上値抵抗線がまっすぐ)は上昇、左下が直角に近い場合(下値支持線がまっすぐ)は下降に向かう可能性が高いとされています。
基本となる株価チャートパターン
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これまでの株式相場の歴史や分析結果から、株価チャートの形にはある程度の決まった法則があるとわかっています。事前に株価チャートパターンを頭に入れておけば、株価の動きの予想が立てやすくなるはずです。
以下では、株価チャートパターンの中でも基本的な形のものを3つご紹介します。
ヘッド・アンド・ショルダー(逆パターン含む)
ヘッド・アンド・ショルダーとは、上昇トレンド中に天井に達して高値が3回付いたうち、3回目の高値が2回目の高値を抜けずに押し戻されるチャートです。
オレンジの点線であるネックラインを明確に下回ったときに、上昇トレンドから下降トレンドに転換するサインになります。売却するタイミングの1つです。
逆に、下降トレンド中に底を打って3回目の底値が2回目の底値より下がらない「逆ヘッド・アンド・ショルダー」の場合は、上昇トレンドに転換する可能性が高くなります。
なお、ヘッド・アンド・ショルダーは「三尊天井」、逆ヘッド・アンド・ショルダーは「逆三尊底」とも呼びます。
ダブル・トップ(ダブル・ボトム)
「ダブル・トップ」とは、上昇トレンド中の最新の高値が前回の高値とほぼ同じレベルに留まったとき、次の安値が前回の安値を下回った場合のチャートパターンです。2回目の天井を打ったあとは、そのまま下降トレンドに転換する可能性があります。
これは「上昇が一旦ストップするなら、これ以上保有していても値上がりはない」という投資家真理が働く結果、当該銘柄が売りに出されて株価が下落するからと考えられています。こちらも売却するタイミングの1つです。
一方でダブル・トップとは逆の「ダブル・ボトル」の形もあります。こちらは買いのタイミングです。
ソーサー・トップ(ソーサー・ボトム)
「ソーサー・トップ」とは、高値の付近で株価の小さな上下が繰り返しているチャートパターンです。コーヒーカップを置く受け皿であるソーサーから名前を取っています。
株価の上下を繰り返す中で、最新の安値が近隣の安値を明らかに割り込んだ際は、下降トレンドへの転換が考えられます。売りのタイミングの1つです。
ソーサー・トップも他のチャートパターンと同じく、底値付近で同じような動きをする「ソーサー・ボトム」の形があります。細かな上下を繰り返した後、近隣の高値より突き抜けた場合は、買いのタイミングになります。
ソーサー・トップおよびソーサー・ボトムは、出現頻度が比較的少ないチャートパターンです。しかし、見た目がわかりやすいので、覚えておくといざというときに役に立つはずです。
株価チャートの読み方を覚えて銘柄を判断しよう!
株価チャートの読み方・見方を覚えて分析ができるようになれば、株式投資の精度をより高められます。何より、購入した銘柄が分析した通りの値動きをしたときは、資産増加とはまた違った投資の楽しさを感じられるはずです。
ただし、株価チャートは世界経済の動向や企業の経営悪化・コンプライアンス違反などによって、これまでにない予想外の動きになることも珍しくありません。株価チャート以外にも経済誌や新聞、ネットニュースなどに目を通し、世の中の動きをある程度考慮するのも、株価チャートの読み方・見方のコツと言えるでしょう。
基本的なトレンドラインが読めるようになった後は、ファンダメンタルズ分析やオシレータ系のテクニカル分析も取り入れられれば、より深い株価分析が可能です。株式投資に慣れてきたら、ぜひ勉強してみてはいかがでしょうか。