将来的な資産形成を検討する際、金融商品をコツコツ積み上げる「積立投資」の手法が注目されつつあります。積立投資であれば、値動きのチェックや購入数を考える手間を減らせるため、投資初心者や忙しい人におすすめの投資方法です。
当記事では積立投資の概要やメリット・デメリット、積立投資に失敗しないコツなどを解説します。
積立投資とは?データから見る普及度合いの考察
積立投資とは、ある一定の金額を定期的に少しずつ買い増していき、コツコツと資産を増やしていく投資方法です。誰でも始めやすいうえに、投資リスクを低減できるメリットがあります。
一般社団法人 投資信託協会の「2021年度投資信託に関するアンケート調査報告書(2022年3月)」によると、20~79歳の男女20,000人のうち、積立投資利用率は62.7%と2020年度より9.7%高い数値となっていました。
とくに20代は80.9%、30代は80.1%と、年齢が若いほど積立投資利用率が高いという結果が出ています。
※2021年度投資信託に関するアンケート調査報告書をもとに編集部が作成
年金制度への信頼低下や老後資金2,000万円問題などの背景もあり、全年代での投資意識の高まりが見られます。
つみたてNISAの普及も相まり、今後も将来的に利用者は増えていくと予想されます。
積立投資はなぜ初心者向け?4つのメリットを解説
積立投資は、安全性の高さから初心者にもおすすめしやすい投資方法です。以下では、積立投資における4つのメリットを解説します。
メリット1.時間分散によって投資リスクを低減できる
積立投資はまとまった資金で一気に買い足さず、1年間で何回にも分けて購入する方法です。そのため自動的に「時間分散効果」のメリットが得られ、投資リスクを低減できます。
時間分散効果とは、金融商品の売買タイミングを少しずつズラすことで、高値で購入したり安値で売却したりするリスクを低減する効果です。金融商品の売買価格の平準化につながります。
代表的な積立投資の方法は「ドルコスト平均法(定額購入法)」です。ドルコスト平均法とは、定期的に同じ金額分の金融商品を買い増すことで、自動的に「安いときに多めに購入、高いときは少なめに購入」となる投資方法です。
ドルコスト平均法は、金融庁や大手証券会社などでも紹介されています。
ただし、ドルコスト平均法を含めた積立投資は、すでに価格が上昇にある金融商品だと高値で買い続けることになるため、リスク低減効果が小さくなるデメリットもあります。
ドルコスト平均法の実施は、金融商品の価格が下落する局面が1つのタイミングといえるでしょう。
なお、定期的に同じ口数を買い足していく方法を「定量購入法」といいます。
メリット2.少額から手軽に始められる
つみたてNISAや新NISA(2024年度よりスタート)による積立投資や、投資信託による積立投資であれば、月々100~1,000円の少額投資として始められます。
2022年現在では、通信会社やネットショップのポイントを現金化して投資に回す「ポイント投資」に対応したサービスも登場しています。手持ちの資金が少なくても始められるのが、積立投資のメリットの1つです。
メリット3.購入のタイミングに迷わない
積立投資は、原則として購入タイミングが決まっています。そのため、「いつ購入すればよいか」「株価チャートのどのタイミングで購入すべきか」などと悩む必要がなくなります。
また、売買タイミングを考える必要性や値動きをチェックする時間が少なくなることから、感情に左右されず、投資に対するストレスを減らせる点もメリットといえるでしょう。
メリット4.投資初心者の経験積みにもってこい
少額投資や分散投資となる積立投資は、投資初心者にとって経験と勉強を積み上げるにはもってこいです。
実際に投資を体験することは、投資初心者にとって非常に大きな経験になります。投資する金額には関係なく、口座開設や銘柄選定、目論見書のチェック、値動きの確認などを体験できます。
事前に体験しておけば、将来的に本格的な資産運用を行うときも落ち着いてスタートできるはずです。
逆に勉強する時間や値動きをチェックする時間が取れない人にとっても、自動的に買い付けてくれる積立投資はおすすめできます。
リスクは低いけど失敗することもある?積立投資4つのデメリット
リスクの低さが積立投資のメリットではあるものの、失敗する可能性やデメリットは存在します。以下では積立投資にまつわる4つのデメリットを解説します。
デメリット1.始める時期が遅いと見込める効果が低い
積立投資は、積み立てる時間が多いほど元本増加と複利効果(投資して発生した利益をさらに投資に回して増やすこと)が見込めます。
例えば定年後に向けての資産形成を考えたとき、20歳から始めると50歳から始めるのとでは30年もの差が生まれます。50歳からだと15年分の積立効果しか受けられず、投資効果が低くなるかもしれません。
デメリット2.確定申告や手数料支払いが必要になる可能性がある
長期的かつ何度も購入を繰り返す積立投資は、利益額や売買回数によって確定申告や売買手数料の支払いが必要になるデメリットがあります。具体的な例は次のとおりです。
- 長期保有による株式の配当金や投資信託の分配金の利益に関する確定申告が発生する
- 金融商品の売買取引の度に発生する売買手数料の支払いが発生する(手数料のかからない投資信託ノーロード・ファンドなどで回避可能)
- 投資信託を保有し続けることで発生する信託報酬の支払いが発生する など
確定申告が必要になるのは、原則としてサラリーマン(給与所得者)であれば利益が20万円を超える者です。利益に対して金融所得税20.315%が課せられ、利益分の税金を納めなければなりません。
ただし、NISA口座や源泉徴収ありの特定口座での取引であれば、確定申告は原則として必要なくなります。
デメリット3.短期間で大きな利益を得るのが難しい
積立投資は少額の金融商品を少しずつ積み立てる投資方法です。積み立てた投資金額や運用期間が短いと複利効果も低くなり、大きな利益を得るのが難しくなるデメリットがあります。
短期間で大きな利益を得やすい投資は、多額の投資や短期的な売買を行い売買益(キャピタルゲイン)を得る方法です。
デメリット4.元本割れする可能性がある
積立投資はリスクの低い投資方法とされますが、投資である限りは元本割れするデメリットが常に付きまといます。投資先の倒産や経営悪化、財政破綻などが起こると、大きな損失を免れないかもしれません。
リスクを低減するには、国債や定期預金などのリスクが低い金融商品を選びましょう。
積立投資の種類にはどんなものがある?
積立投資の代表的な方法として、「つみたてNISA」「iDeCo(個人確定拠出年金)」「るいとう(株式累積投資)」の3種類を解説します。
つみたてNISA
つみたてNISAとは、積立・分散・長期投資を支援するために、国が設けている非課税制度です。
つみたてNISA口座で発生した利益は、年間40万円まで非課税になります。最大20年間で合計800万円までが非課税の対象です。
つみたてNISAについては、「つみたてNISAとは?非課税になる仕組みやメリット・デメリットを解説!」の記事でわかりやすく解説しています。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、国民年金や厚生年金とは別に、確定拠出年金法にもとづいて積み立てられる私的年金制度です。自分で掛金額を設定し、自分で運用する金融商品を選びます。
iDeCoはサラリーマン個人が加入するタイプです。事業主が従業員の福利厚生として加入している「企業型DC」も存在します。
iDeCoに加入する税制上のメリットは次のとおりです。
- 掛金全額が所得控除の対象になる(毎月1万円積み立てであれば年間2.4万円税金が安い)
- 受け取る運用益はすべて非課税になる
- 年金形式で受け取る方法と一時金として受け取る方法を選択できる
- 年金で受け取る場合は公的年金等控除、一時金の場合は退職所得控除の対象になる
ただしiDeCoの受給権は60歳になるまで発生せず、原則として60歳になるまで受け取れません。また、運用実績によっては元本割れする可能性もあります。
株式累積投資(るいとう)
株式累積投資(るいとう)とは、株式を毎月定額で購入していく投資方法です。
本来、株式の購入は単元単位(100株など)が原則となるため、株式を運用するにはまとまった資金が必要です。しかし株式累積投資であれば、株式としては少額である毎月1万円から始められます。
また、ドルコスト平均法による分散効果が得られたり複数銘柄への投資に対応していたりなどのメリットがあり、より安全な株式投資が可能です。
積立投資のシミュレーションにおすすめのサイト
積立投資の簡単なシミュレーションは、金融庁の「資産運用シミュレーション」を用いて実施できます。方法は毎月の積立額・想定利回り・投資期間を入力するのみです。例えば、毎月3万円の投資、利回り3%、投資期間20年とした場合は、次の結果が出ました。
楽天証券やSBI証券などの大手証券会社のWebサイトでも、積立に関する簡単なシミュレーションツールが用意されています。
積立投資を失敗しないためのコツ
最後に、初心者が積立投資に失敗しないコツを紹介します。
余剰資金を見極めながら投資する
積み立てる金額が大きいほど積立投資の効果は大きいですが、生活資金を削ってまで実施するのはおすすめしません。身の丈に合わない投資は避けつつ、自身の投資目的やライフプランに応じた積立額の設定が大切です。
原則として毎月の積立金額は、インターネット上で簡単に変更できます。現状の資産状態に応じて積立金額を増減してください。
「今後のライフプランや資産形成の予定がまだはっきりしない」と悩んでいる場合は、中立的立場から実施してくれるIFAに相談するのもおすすめです。
アセットアロケーションとポートフォリオを考えておく
アセットアロケーションとは、複数ある資産(アセット)の配分のことです。「株式に30%」「債券に20%」といった割合を決定します。
ポートフォリオとは、より具体的な銘柄の配分のことです。「国内債権のうち債権Aを25%、Bを20%」といった割合を決定します。
アセットアロケーションやポートフォリオを事前に決めておくことで、中長期的な資産運用の方針が決まり、修正の方向性も決めやすくなります。年齢層や投資目的に応じた配分を意識しましょう。
長期投資と分散投資を意識する
長期投資とは、数年~数十年単位を見越した長期間の投資を行うことです。
投資は運用期間が長くなるほどリスクとリターンの率が平準化していき、安定した収益が出ると大手証券会社や各組織の調査結果からわかっています。複利効果や配当金・分配金などを考慮すると、最終的にはおおよそ+4%のリターン率に落ち着くとの結果が出ています。
分散投資とは、「時間の分散」「資産の分散」「地域の分散」などを行い、一括投資で発生するリスクを低減させる投資方法です。
- 時間の分散:購入タイミングをズラす方法(積立投資など)
- 資産の分散:購入する資産の種類や銘柄などをバラけさせて、別の値動きをする資産配分を行う方法
- 地域分散:投資先の国や地域をバラけさせる方法
積立投資に加えて長期投資と分散投資を意識することで、より大きなリスク低減効果が見込めます。とくに投資初心者は、積立・分散・長期の3視点を意識しましょう。
投資信託で積み立てを始めてみる
積立投資を行う場合は、投資信託を利用した積立投資をおすすめします。理由は次のとおりです。
- 少額の金融商品から始められる
- 複数の金融商品が集まっているので、すでに資産レベルでの分散効果が得られる(商品次第では地域分散も)
ただし信託報酬や信託財産留保額などの特有のコストがかかる点には注意が必要です。
投資信託については「【初心者向け】投資信託とは?仕組みや始め方などをわかりやすく解説!」の記事でわかりやすく解説しています。
利益を増やすにはリターン率より積立額を多くする
積立投資の成果を上げるにはリターン率を気にするより、積立額を多くして元本を増やしたほうが、結果的にリターンが大きくなる傾向があります。
例えば積立金額を0.5万円多くした場合と、リターン率が0.5%を上がったときの簡単なシミュレーションは次のとおりです。
- 3万円・3%の10年後:元本360万円・運用益59.2万円
- 2.5万円・3.5%の10年後:元本300万円・運用益58.6万円
運用成果が不確定なリターン率を指標にするより、確実な元本の積立が長期的にはよいかもしれません。
積立投資でコツコツと資産形成を進めよう!
積立投資は、少額かつ安全に始められる投資方法の1つです。投資初心者が投資経験を積みたい初心者や、値動きをチェックする時間が取れない人にもおすすめできます。
積立投資を成功させるには、長期・分散投資の意識やアセットアロケーションなどの設定が大切です。
もしアセットアロケーション・ポートフォリオの設定や資産形成プランなどについてお悩みの際は、資産運用のプロであるIFAに相談してみましょう。特定の金融機関に所属しないIFAは、中立的かつ客観的な目線で資産計画の作成や金融商品の提案を行ってくれます。