会社設立

合同会社のデメリットとは?個人事業、株式会社との比較やデメリットの解消法を解説

合同会社のデメリットとは?個人事業、株式会社との比較やデメリットの解消法を解説

スモールビジネスを運営するには最適な合同会社ですが、見方を変えると、その小ささゆえに株式会社とくらべてデメリットもあります。逆に小さいにも関わらず会社形態であるため、個人事業とくらべてデメリットがあります。

相続面、就業面についても合同会社のにはデメリットがあるものです。デメリットを踏まえて、どの事業形態が最適が探っていきます。

合同会社の個人事業とくらべてのデメリットとは?

個人事業からスタートして、順調にビジネスが育っていくと、いよいよ会社化が視野に入ってきます。会社化するなら、お手軽な合同会社が最適と思いがちです。
ただ、合同会社にするには個人事業とくらべてデメリットもたくさんあります。その点をちゃんとチェックして、よく検討してください。

【合同会社のデメリット】設立費用がかかる

個人事業主の場合、税務署に開業届けを提出すれば、ほぼ0円でで開業できます。
一方、合同会社を設立するには法人登記の手続きが必要です。

自力で行い、全てを電子申請で行った場合でも登録免許税の6万円が必要になります。
ネットの会社設立サービスなら5,000~8,000円、行政書士、司法書士などの専門家に依頼すると手数料が5万円から10万円発生します。

ネット申請でなく、紙での申請になるとさらに収入印紙代4万円が必要となります。 費用の総額は6から20万円になります。

【合同会社のデメリット】どんぶり勘定が効かない

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個人事業では、自分の給料が経費として認められず、事業所得が出たら約4割が所得税でとられてしまいます。なので、プライベートのお金もついつい経費に計上してしまいます。実際にほとんどの個人事業者がどんぶり勘定です。

会社組織にすると、経営者にも役員報酬として給与が支給されます。プライベートで使うお金は自分の給与から出さなければなりません。

個人事業のスタイルに慣れていたら、会社組織の窮屈さに戸惑ってしまうかもしれません。

【合同会社のデメリット】交際接待費に限度がある

飲食店ではプライベートでご飯を食べに来たのに領収書を求める個人事業主がいます。
個人事業主には接待交際費に限度がありません。

ほぼ外食した場合には領収書をとっておいて、経費にして事業所得を少なくしようとします。
会社化すると、接待費に限度ができて、個人事業のように思い通りに接待交際費が使えなくなります。

接待交際費を思いっきり活用してきた人は、ここで考え直さなくてはならなくなります。

【合同会社のデメリット】個人のお金と会社とのお金に明確な線引きができる

とある個人事業主一人で合同会社を設立したとします。
資本金を会社の口座に入れ、自分の給与は全部株式や自動車を購入して、手元には現金がありませんでした。

いざ、所得税の申告の時になると、個人の口座にお金がないことに気がつきます。しかし、会社の口座のお金を引き出すことはできません。

たとえ自分一人だけの会社だとしてもです。
現金がない場合は、借金をしてでも捻出しなければなりません。

個人事業の場合、全て自分のお金なので自由にできます。
ですが、会社化すると明確に個人のお金と会社のお金に線引きができます。
結局、税理士に相談して、個人で買った自動車を会社が購入した形をとりました。
会社の口座のお金を個人の口座に移して、無事納税することができましたというケースもあります。

【合同会社のデメリット】税理士への依頼が必須になる

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個人事業の場合は、白色申告か青色申告で、売上と経費を計上しておけば、記帳する手間と年に一度の申告の時の手間と年間8,000~16,000円の費用で申告できます。

ところが、会社組織になると記帳が複雑になるために、最低でも申告書の作成だけは税理士に依頼しなければなりません。

申告代行の相場は10万~20万円になります。また記帳が複雑になれば毎月の顧問契約を依頼することになります。顧問料の相場は1万円から5万円までです。

【合同会社のデメリット】法人住民税を必ず払う義務がある

個人事業で赤字決算になると、所得税は0円になります。
ところが、会社になると赤字でも、法人住民税7万円は必ず払う義務があります。

【合同会社のデメリット】社会保険料を払う義務がある

会社化されると社会保険に加入することが義務化されます。
厚生年金に加入できることは働く人にとってはメリットですが、保険料の半分は会社負担になりますので、経営者側には負担になります。

節税の意味なら、個人事業主から合同会社にするメリットはありますが、事業所得が低い段階で会社化するのはデメリットしかないようです。 会社化のタイミングは事業所得が1,000万から1,200万円になってからが目安と言われています。

株式会社とくらべてのデメリット

株式会社と比較しての合同会社のデメリットをお伝えします。
合同会社が株式会社より大きいメリットは設立費用が低くて済むという一点に尽きます。
合同会社の設立は前述の通り、6万円から20万円の費用がかかります。
株式会社の設立はそれよりも20万位高くなります。
税率の面では全く違いがありませんが、株式会社にはできても、合同会社にはできないこともたくさんあります。

【合同会社のデメリット】株式上場できない

株式会社は文字通り株式を持った会社なので、事業が発展すれば株式上場も夢ではありません。
逆に合同会社は株式上場はできません。

株式上場するには合同会社から株式会社に会社形態を変える必要があります。

【合同会社のデメリット】代表取締役社長と名乗れない

合同会社の代表の肩書は【代表社員】となります。
株式会社のように【代表取締役社長】の肩書が名乗れません。
【代表社員】の肩書がかっこ悪いと思われたり、【代表社員】と聞いて首を傾げられたりするのが気になる人は向いていないかも知れません。

【合同会社のデメリット】株式会社より信用度や認知度が低い

個人事業よりは会社と名前がつくだけ信用度が増すかもしれませんが、やはり株式会社よりも信用度は下がるようです。
信用の度合いは個人事業→合同会社→株式会社になります。
大口の取引の場合にも株式会社の方が信用度が増しますし、大口の融資を受ける場合も株式会社の方が有利のようです。

合同会社で有名なところではアマゾンジャパン合同会社があります。
しかしながら、一般にはまだまだ知名度が低いようです。

【合同会社のデメリット】株式会社に比べ人材が入ってこない

先の項目と同じように株式会社よりも、まだ信頼度が低いため、就職先候補の選択肢に入ったとしても、株式会社よりもポイントが低くなりがちです。

ブラックではないのか? ちゃんと雇用保険に加入しているのか、社会保険に加入しているのか。
さらに、事業が傾くことなくちゃんと継続していくのか。
個人事業だろうと、合同会社だろうと、事業が安定しているのは名前や外見じゃなくて、中身次第なんですが、合同会社という名前を耳慣れない人にとっては、先入観を与えていることは事実のようです。

【合同会社のデメリット】出資者が多いと意思決定がバラバラになりやすい

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合同会社を一人で設立した場合は全く問題がありませんが、問題は出資者が複数いた場合です。

出資者はみな社員という立場で、代表社員と同じ発言権があります。
重要事項は出資者全員の同意が必要となります。
意見が割れると、経営に不可欠な決定事項が放置されてしまうリスクがあります。小さな組織で、まとまっている時は問題ないのですが、意見が分かれてしまうと、取りまとめが困難になります。
会社定款で誰が意思決定権を持つか、というルールを定めれば、危険を回避することができます。

【合同会社のデメリット】株式会社と比べ相続が難しい

株式会社ならば株主が死去した場合、相続人は株を相続します。
合同会社の社員が死去した場合、相続人は社員の持分を相続することになります。
持分とは、その社員の地位と財産的権利を意味します。

となると、社員の一人が死亡した場合、相続人が社員になり、会社の中の社員の財産的権利を持ちます。
相続人は一人であるとは限らないので、相続人の数だけ社員が増える可能性もあります。

その場合、全く今まで経営に参加していなかった部外者が突如として、会社の中核を担うメンバーになります。
さらに、会社として使用している資金や不動産などの所有権も主張できます。

これは会社定款の内容によって左右されるようで、定款に【相続による持分承継の定め】が盛り込まれていたら、死亡社員と相続人の立場がそっくり入れ替わります。

突然、自分の意志に関わらず、全く関与していない会社の社員になってしまうワケで、望んでいなければ相続人にとっても迷惑な話です。

こういう場合は一端、社員として任命されて、その後、本人の意思決定で去就が決まります。

もし定款に定めがなければ、会社が相続人に対して金銭で持分を払い戻します。
いずれにしても、相続人の気持ち次第で、会社の資産が持ち出されてしまうと言う会社経営にとっては死活問題に直面します。

【合同会社のデメリット】合同会社は振込み先の名前が紛らわしい

細かいことですが、合同会社の振込際の表記が紛らわしいと言われています。
株式会社の場合はカタカナ半角のカ、有限会社は半角のユに前なら)真ん中なら()後なら)を漬けます。
なら合同会社ならゴ?と連想しますが、実際はドになります。
なんで? と思ってしまいますが、頭に合のつく会社は他にもあるんです。
合名会社、合資会社などで、混乱しないようにドになったようです。
合同会社の認知度が上がれば、こんな声は上がらないようになるでしょうね。

合同会社のデメリットを回避して、メリットだらけにする方法

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本来、個人事業の不便さを解消して、株式会社よりコンパクトに経営するために新たに作られた合同会社なのに、そこにデメリットしか感じないのはそもそも合同会社の活用のしかたを間違えています。

個人事業、株式会社の順に合同会社のデメリットを回避する方法を考察してみました。

個人事業の場合、合同会社にする時期が早すぎた

本来、会社化すれば所得税の税率に大きな開きができて、節税効果があるはずです。
しかしながら、事業所得がまだそこまででもないのにムリに会社化してしまうと、会社化に伴う経費が負担になります。

また、個人事業主の時は交際接待費が際限なく使えていたのに、会社化されて交際費は自由に使えなくなったと嘆くのは筋違いです。

事業所得的にも、会社を経営する覚悟的にもまだ時期尚早だったと言わざるを得ません。
繰り返しになりますが、会社化のタイミングは事業所得が1,000万から1,200万円になってからが目安と言われています。

先を急がず、長期的視野で見て、会社の成長を見極めてから会社化を検討しましょう。

合同会社のデメリットばかりを感じる人は、株式会社にするべき

株式会社とくらべての合同会社のデメリットは、株式会社にくらべて認知度・信頼度が落ちることでした。また、経営者なのに代表取締役の肩書が名乗れないこともあります。

合同会社はスモールビジネスのための会社なので、大きな取引、大きな融資をとりつけるのは向いていません。

設立費用が節約できるという合同会社のメリットだけに釣られて作ってみても、「やはり株式会社にしておけばよかった」
と後悔するでしょう。

どうせ会社化するなら、株式会社にしても設立費用や維持費がらくらく捻出できるくらい事業所得に余裕ができてからにしましょう。

また複数の出資者で会社を立ち上げる場合も、よほど馬が合う人か、配偶者、親族でなければ、株式会社化した方がいいと思います。

創業時には思いもかけないトラブルが発生します。
困難な時に、複数の意見を一致させるのはなかなか難しいです。
のちのちに経営の方向性がバラバラにならないためにも、誰かが決定権を持つ仕組みにしておくことをおすすめします。

まとめ

今回は合同会社のデメリットについて解説しました。

個人事業主に比べれば合同会社は大きすぎて自由度が少なく、株式会社と比べると合同会社は小さすぎて認知度信頼度に欠けるようです。

合同会社のデメリットばかりが気になる人は、個人事業主か株式会社の選択の方が向いているようです。

現実に合同会社は自分にぴったりと言う人もたくさんいます。

小さなビジネスをこじんまり継続していくにはこれほど、最適な会社形態はありません。
それぞれのメリットを最大限に活かして、自分に最適なビジネススタイルで、どんどん稼ぎましょう。

合同会社か株式会社で設立を迷っている方は、お気軽にご相談ください。

企業の教科書
高桑 哲生
記事の監修者 高桑 哲生
税理士法人 きわみ事務所 所属税理士

東京都千代田区にある税理士法人きわみ事務所の所属税理士。
「偉ぶらない税理士」をモットーに、お客さんに喜んでもらえるサービスを提供。
税務処理だけでは終わらない、プラスアルファの価値を提供できる税理士を目指す。

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