リモート勤務や週休3日制、ワーケーションなど近年サラリーマンの働く環境にはさまざまな変化が起こっています。その中の一つに「副業」があります。
本業の仕事の後や土日の余った時間で副業を行い、会社からの給与以外の収入を得る人が増えてきました。会社によっては公に「副業解禁」を宣言し、社員が複数の仕事に従事することを認めています。
今回は「サラリーマンの副業には何があるのか」、そして副業を始めた場合「どのように税金を申告すればいいのか」について解説していきます。副業で収入を得たならば、確定申告を行い税金を納める必要があります。
しかし、会社が年末調整を担当してくれるサラリーマンにとって、確定申告はあまりなじみ深い制度ではありません。この記事では、確定申告を始めとする「副業に関する税金」について詳しくみていきます。
【在宅多数】サラリーマンにおすすめの副業12選
「収入の足しに」「会社では得られない経験を得るため」など、サラリーマンが副業を始める理由はさまざまです。しかし、「土日で働ける」「本業と両立できる」といった働く条件については共通しています。
ここでは、サラリーマンとして本業を持っている方でもできるおすすめの副業を12選をご紹介します。副業として人気の高い在宅勤務の仕事もあるので、ぜひ参考にしてください。
【在宅】デザイン・イラスト制作
デザインやイラストの制作を行う副業です。SNSのアイコンやトップ画像制作したり、レイアウトを提案したり。本業でデザインやイラスト制作を行っている方であれば、本業のスキルを副業でも活かせます。
「本業は別の仕事をしている」という方でも、デザインやイラスト制作のスキルがある、または身に付けさえすれば、デザインやイラスト制作の副業を行うことが可能。コンペやクラウドソーシングで案件を募集したり、副業人材を募集している企業に応募するなどして仕事を得られます。
【在宅】動画編集
YouTubeやTikTok用の動画を編集したりテロップを付けたりする仕事です。個人でYouTubeを配信している方であれば、そのスキルをそのままニーズのある人に提供することで副業になります。
【在宅】ライティング
SEOライティングやコピーライティングの仕事です。企業のWebサイトやSNSに投稿する文章を作成します。
特別なスキルや道具を必要としないため、サラリーマンの方でも始めやすい副業です。クラウドソーシングサイトやSNSにて求人の募集がみられます。
【在宅】サイト制作
Webサイトを作成する仕事です。HTML、CSS、JavaScriptなどの専門知識を持つ人に向いています。Webサイトの見た目を整える必要があるため、デザインセンスも要求されます。
【在宅】コンサルティング、アドバイザリー
自らの知識を活かして、コンサルティングやアドバイザリーを行う仕事です。人材コンサルや会計コンサルなどの仕事についている方は個人でも同じ仕事ができます。
本業にしていなくとも、何か専門的な知識がある方・人より得意なことがある方には向いています。部屋の収納方法をアドバイスをしたり、TOEICの点数をアップできる勉強方法をアドバイスしたりするなど、自分が持っている知識を求めている人がいれば始められる副業です。
【在宅】テレアポ営業
企業に代わって営業の電話をするテレアポ営業です。自宅で仕事ができます。営業職のサラリーマンの方におすすめです。
【在宅】アフィリエイト、ブログ、YouTubeなどの広告収入
ブログや動画にアフィリエイト広告を掲載して収入を得る方法です。自ら発信できるコンテンツを何か持っている方に向いています。元手をかけず手軽に始めることができ、いつ働くか・どのくらい働くかも自分でコントロールができます。
【在宅】データ入力
企業から依頼を受けてデータ入力を行う仕事です。データの内容は企業によってさまざまな内容があります。パソコンを日常的に仕事で使用している人であれば、さほど戸惑うことなく挑戦できる副業でしょう。
デリバリーの配達員
お弁当のデリバリーの配達員です。自転車やバイク、そしてお弁当を持ち運ぶための専用のカバンを購入すれば始めることができます。専門的な知識を必要とせず、運動にもなる副業です。
アルバイト
本業とは別にアルバイトとして雇用してくれる会社を探すのも一つの手段です。夜だけの飲食店勤務や土日だけのイベントスタッフなど、本業以外の時間を勤務時間にできるアルバイトを探しましょう。
覆面モニター
レストランやショップを訪れ、接客内容やサービスをチェックして報告する仕事です。報酬は該当のレストランでの飲食費の一部負担となる場合や別途報酬がある場合など、募集要項によって異なっています。
家事代行
家事を代行するサービスです。部屋の掃除や片付け、料理の作り置きなどを行います。日頃から家事をし慣れている人には特別なスキルが必要なく、始めやすい副業です。クラウドソーシングサイトに登録したり、家事代行専門の会社の提携スタッフになるなどで仕事を始められます。
サラリーマンの副業で支払うべき税金
サラリーマンの副業に関わってくる税金は、所得税・住民税・消費税・個人事業税の4つです。
消費税と個人事業税は一定額以上稼いだ人のみ支払う必要があります。そのため、ほとんどの人に関係のある税金は所得税と住民税の2つです。
副業を行っている人のうち、次の人は所得税の確定申告をする必要があります。
- 本業+アルバイトなどで2か所以上から給与の支払いを受けている人
- 副業(アルバイト等を除く)の所得が20万円を超える人
「所得」とはおおまかに言うと、売上から必要経費を差し引いた「利益」の部分を指します。
アルバイト等を除く副業の所得が20万円以下であれば、所得税の確定申告は必要ありません。ただしこの規定は所得税に関するもので、住民税は別の取り扱いとなります。
つまり住民税については副業で所得を得た場合、金額に関わらず確定申告をする必要がある点にご注意ください。
所得税
所得税とは、個人が得た所得に対してかけられる税金のこと。本業でも給与明細から差し引かれているのを見たことがある方は多いでしょう。所得税は確定申告にて申告を行います。
所得の種類には10種類があり、そのうち副業に関係する所得は次の3つです。
- 給与所得
- 事業所得
- 雑所得
行った副業によって、どの種類に該当するかが変わってきます。アルバイトを行った方は給与所得に該当します。
事業所得とは対価を得て継続的に行う事業で、本業と同じくらいの高い専門性や時間をかける仕事を指す場合が多いです。
雑所得は事業所得ほどの規模やかけた時間がない場合などに当てはまるもの。週末やすき間時間に行われる副業の多くは雑所得に当てはまります。
たとえば、食事の宅配サービスをする場合でも週5日・1日8時間行う人は事業所得に該当しますが、週末の土日に5時間ずつだけ行う場合は雑所得に分類されるでしょう。
事業所得と雑所得の線引きは難しい部分が多く、労働にかけた時間のほかに専門性や設備なども考え、それぞれの実態を確認しながら判断することになります。
すき間時間や週末に行うアルバイト以外の副業であれば、雑所得とするのが無難といえるでしょう。
住民税
住民税とは、自分が住んでいる自治体の行政サービスにかかる費用のために納める税金です。
納税先は1月1日時点で住民票のある自治体になります。納税額は所得額に応じて決まり、確定申告を行うことで申告ができます。
消費税
基本的に副業のサラリーマンは消費税を納税する必要はありません。国税庁で下記の通り述べられています。
消費税では、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されます
引用:納税義務の免除|国税庁
上記からわかる通り、「その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下」の方は消費税の納税義務がありません。簡単に言ってしまうと、副業のみで1,000万円を超える額を稼いでいないのならば、原則として消費税は納税しなくて問題ありません。
逆に副業のみで1,000万円以上の課税売上高がある方は、消費税の納税が義務となります。
個人事業税
個人事業税とは、特定の事業所得または不動産所得が年間290万円以上ある個人事業主が納めるべき税金です。そのため、この条件に該当していない方は納税の義務はありません。
事業所得のある人とは、個人で事業を営んでいる人が該当します。また不動産所得とは、アパートや駐車場を貸し出して収益を得ている人が該当する所得です。
副業の税金は確定申告で申告しよう
副業で一定の所得を得たサラリーマンの方は確定申告をする必要があります。会社で年末調整を行っている人も確定申告を行う必要がありますので、忘れないように注意しましょう。
確定申告とは?
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間の所得額を申告し、納税額の算出を行う行為。毎年3月15日が申告・納付の期限となっています。(期限は年によって変わることがあります)
会社で年末調整をしていても確定申告は必要
会社で年末調整を行っているサラリーマンの方でも、副業で所得を得た方は確定申告の対象となります。年末調整で申告しているのは会社員としての給与所得のみであるため、別途副業の所得も合わせた額で確定申告をする必要があるのです。
ただし、副業の所得金額が20万円以下の方は確定申告は不要となります。申告が不要となるのは確定申告の主である「所得税」に関してのみです。確定申告の所得額を元に計算されている「住民税」については、別途住んでいる地域の役所にて申告を行う必要があります。申告漏れのないよう気を付けましょう。
副業の確定申告で必要になるもの
副業の確定申告で必要になるものは、本業の源泉徴収票と副業の所得がわかる書類です。本業の源泉徴収票は会社の給与担当者に依頼すれば発行してもらえます。
一方、副業の所得がわかるものは自分で用意する必要があります。いくら売上があり、何に費用を使ったのかわかるよう1年分の副業の収支は記録していくようにしましょう。
副業がアルバイトや他社での勤務の場合は、副業先の会社から源泉徴収票を発行してもらえます。
副業の税金の確定申告方法は2つある
確定申告の方法は「白色申告」と「青色申告」の2つがあります。
副業サラリーマンの方で多いのは、白色申告を利用する場合です。副業でも事業所得に該当し、さらに開業届を提出した場合は、青色申告を利用できるようになります。
白色申告
白色申告とは青色申告の承認を得ていない人が行う確定申告の方法です。青色申告に比べて簡単に確定申告を行える反面、控除額が青色申告に比べて不利になります。
副業で雑収入を得ているサラリーマンの方、アルバイトを行っているサラリーマンの方はこの白色申告を利用して確定申告を行うケースが一般的です。
青色申告
青色申告は事業所得や不動産所得を得ている方のうち、「青色申告承認申請書」を提出して青色申告の承認を受けている方のみ可能な申告方法です。白色申告に比べて申告に必要な手続きや書類の用意が煩雑になりますが、代わりに青色申告特別控除を利用して納税額を抑えることが可能。
青色申告を利用するためには、青色申告承認申請書および開業届を事前に税務署に提出して承認を得ている必要があります。
副業のサラリーマンの方の場合、自ら事業を営む副業を行っている方はこれらの書類を提出できます。例えば、個人でデザインやプログラミングの事務所を開いた場合が該当します。
青色申告をおすすめする理由3つ
青色申告は白色申告に比べておすすめです。その理由は、「青色申告特別控除」「欠損金の繰越」「減価償却の特例」「費用を経費にできる」からです。
この4つはどれも節税に繋がっており、納税額を抑えることができます。
青色申告特別控除
青色申告特別控除とは、青色申告を行うと得られる所得控除のこと。控除額は10万円・55万円・65万円の3種類があります。
65万円の控除を得るには、複式簿記での帳簿付けを行った上で、電子帳簿保存法の適用を受けて帳票を保存するか、またはe-Taxにて確定申告を行う必要があります。複式簿記での帳簿付けは行っているが、電子帳簿保存法を適用しての帳票保存・e-Tax利用のどちらにも該当しない場合、控除額は55万円になります。
また、55万円・65万円どちらの所得控除の要件にも該当しない場合の控除額は10万円です。
欠損金の繰越
青色申告では、欠損金を3年間にわたって繰り越せます。
そのため、開業時の赤字を3年の間であれば黒字が出た年と相殺できます。節税に効果的です。
減価償却の特例
通常、10万円を超える備品などは固定資産と呼ばれ、一定年数に費用を分けて計上しなければいけません。
青色申告の適用があると、購入した備品を30万円まで一括で費用化できます。副業のために購入したパソコンやカメラ、専用のソフトウェアなどがある場合、購入した金額が30万円以下であるならば購入した年に全額費用にできます。
青色申告を行う注意点
青色申告で確定申告をおこなうためには、事前に開業届と青色申告承認申請書を提出する必要があります。くわえて青色申告の適用を受けるためには、複式簿記での帳簿付けが必要不可欠です。
また、開業届を提出すると本業の会社を辞めても「失業」状態であるとは見なされなくなるため、失業保険の支給対象外となります。
開業届・青色申告承認申請書を事前に提出
青色申告を行うには、事前に開業届と青色申告承認申請書の提出が必要です。
開業届は、個人が事業を始めた際に提出する書類で事業開始から1か月以内に提出する必要があります。青色申告承認申請書は青色申告で確定申告をするために提出します。
複式簿記で帳簿付けが必要
青色申告で青色申告特別控除の恩恵を得るには、複式簿記での帳簿付けが必須です。
簡易簿記でも青色申告を行うことはできますが、そのときは控除額が10万円になってしまいます。55万円、もしくは65万円の控除を受けるには複式簿記で帳簿付けを行い、主要簿および補助簿を作成・保存する必要があります。
退職したとき失業保険がもらえない
開業届を提出すると、個人で事業を行っていると見なされます。そのため、本業の会社を退職したとしても「失業」状態にあるとは言えず、失業保険の受給資格を失います。
脱サラを前提に副業を始める方は、注意しましょう。
副業を会社にバレないようにする方法
副業が解禁されつつあるといっても、「副業していることを会社にバレたくない」という人もいますよね。
会社に副業していることをバレたくない人は確定申告の際、住民税の徴収方法は「普通徴収」を選択しましょう。特別徴収にしてしまうと、本業の所得額と通算された住民税額が会社の給与から天引きされることになります。
そのため、会社の給与額から予測される住民税額と自治体から通知される住民税額とに差額が発生すると、会社の給与担当者に副業を勘づかれるケースがあります。
副業のサラリーマンが法人を設立するメリット3つ
副業サラリーマンの方の中には、個人事業主として活動するより法人を設立した方が税金がお得になるケースがあります。
税金対策になる
個人の所得に課せられる所得税の額は、課税所得の額によって変わってきます。日本は累進課税制度という制度を導入しており、その制度では課税所得額が多ければ多いほど税金も多くなる仕組みです。
一方、法人税は資本金1億円以下の法人の場合、年800万円以下は19%、800万円を超えた部分には23.2%の法人税率が適用されます。
自らの課税所得額に応じた所得税率より、法人税率の方が下回る場合には法人化を検討することをおすすめします。実際に法人化する前には、詳細なシミュレーションを行い税金額の確認をしましょう。
役員報酬で節税できる
法人化をすると役員に対して役員報酬を支払えます。その役員に自分や家族を設定し報酬を支払えば、その報酬を法人の経費とできます。
経費にできる種類が増える
法人になると経費にできるものが増えます。例えば、賃貸のマンションやアパートを借りていると仮定しましょう。法人になると、賃貸マンションやアパートを社宅扱いにできます。その場合、家賃補助として家賃の一部を会社が支払い、残りを自分で支払うという構図を取ることが可能です。家賃のおおよそ50%程度が経費計上可能になります。
他にも従業員への福利厚生を充実させ、さまざまな支出を福利厚生費として経費計上しやすくなるといったメリットも。個人事業主であったときより経費にできる支出の幅が広がります。
おわりに
サラリーマンができる副業にはさまざまな種類があります。副業で収入を得たときには、サラリーマンであっても確定申告が必要です。会社で行われる年末調整には本業の給与所得しか含まれていないため、副業の所得額も通算した所得額で新たに申告し直す必要があるからです。
確定申告には、白色申告と青色申告の2種類があります。青色申告は白色申告に比べて節税効果が期待できます。そのため、開業届を提出できるような個人事業を営んでいる方は、青色申告での確定申告に挑戦してみましょう。
副業の収益額によっては、法人化をした方が税金額がお得になるケースがあります。どちらが得かは個人によって異なります。所得税を納めた場合と法人税を納めた場合で税金額を比較し、どちらが自分にとって有利なのか見極めましょう。