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法人化するデメリット一覧|法人成りは必ずしも得ではありません

法人化するデメリット一覧|法人成りは必ずしも得ではありません

「法人化を考えているんだけどデメリットがかなり多そうだな・・」
「法人化したらどんなことが面倒になるの?具体的に知りたい!」

こういった悩みを抱えている方はいませんか。

事業が軌道に乗って上手く成長してきたら、個人事業主の中には法人化を考え始めることが非常に多くなりますよね。

ただ、法人化を考えている方の中には、法人化する際のデメリットについて、しっかり把握できている人は少ないのではないでしょうか。

そこで今回は、個人事業主が法人化する際のデメリットについて詳しく解説していきます。

法人化におけるリスクを回避できる記事となっているため、個人事業主から法人化を検討されている方はぜひご一読ください。

法人化するデメリット

法人化すると節税対策ができたり、信用力が上がったりと色々なメリットがあります。

その反面デメリットも非常に多いため、あらかじめ把握しておかないと、後から大きく損をすることにつながりかねません。

では、法人化するデメリットは主に次の9つございます。どんなものがあるのか実際に見ていきましょう。

  • 1.毎年7万円の法人住民税が必要
  • 2.社会保険への加入が必須
  • 3.決算作業・法人税申告の事務負担が増加する
  • 4.交際費の全額を損金にできるわけではない
  • 5.会社設立時に費用が約20万円かかる
  • 6.経営者個人と法人のお金が区別される
  • 7.許認可・税務上の届出等で手間がかかる
  • 8.譲渡資産に不動産等の金額が含まれると所得税負担・登記費用が大きくなる
  • 9.株式会社を解散させた場合でも税金はかかる

1.赤字でも毎年7万円の法人住民税が必要

個人事業主であれば、1年間の利益が赤字であれば所得税や住民税は発生することがありません。

一方、法人化してしまうと年間の利益が赤字であっても、必ず毎年7万円の法人住民税が必要となります。

法人住民税の7万円が惜しいと思う方は、法人化しない方が安価に事業を継続できるかもしれません。

ただ、法人化を検討している個人事業主の方はすでにある程度の売り上げを上げていることが多いため、法人住民税の7万円はさほど気にしなくても良いかもしれません。

2.社会保険への加入が必須

個人事業主として仕事をしている方は、従業員を5名以上雇っている方以外は、社会保険へ加入していませんよね。

しかし、法人化によって株式会社を設立した場合には、たとえ社長1人であっても役員報酬を支給する際には社会保険への加入が義務付けられています。

社会保険に加入していなかった個人事業主の方は、法人化してしまうと従業員の保険料や自分の保険料を支払わなければなりません。

社会保険に加入していない個人事業主の方は、社会保険料もコストとして試算してから法人化にする判定を行うようにしましょう。

3.決算作業・法人税申告の事務負担が増加する

個人事業主の方の多くは、毎年の確定申告などを税理士に依頼することなく、自分でやっている人も多いはずです。 しかし法人化すると、毎年会社の決算を組んで法人税申告書を作成する必要が出てきます。

法人税申告書は確定申告書よりも専門性が高く作成が非常に難しいため、税理士に法人顧問という形で決算や税務申告作業をお願いするのが一般的です。

会社の売り上げや規模によって顧問税理士報酬が決りますが、少なくとも年間30万円以上の税理士費用がかかってしまうと考えておいたほうが良いでしょう。

ただ、トータルで見ると消費税が設立後2年間支払いの必要がなかったり、給与所得控除の恩恵が受けられたりと法人化は非常にメリットが大きいです。

4.交際費の全額を損金にできるわけではない

所得税では、交際費などの経費は業務上必要であれば、その損金算入額に限度はありません。しかし法人税では一部の金額が損金不算入になる場合もあります。

つまり、個人事業主は交際費を全額損金に計上できるのに対し、法人化をすることにより交際費の一部しか損金にできなる可能性もあります。

5.会社設立時に費用が約20万円かかる

平成18年に会社法が施行されたことによって、会社を設立する際の資本金は1円からでも可能になりました。

以前までは、株式会社の最低資本金は1,000万円という規定がありましたが、これは廃止され誰でも簡単に会社を設立することが出来るようになっていきました。

しかし、資本金が1円から設立できるようになったと言っても、1円で会社を設立することは不可能です。

株式会社の設立には、公証人の手数料5万円と登録免許税15万円の合計20万円が必ずかかってしまうためです。

資本金の額は設立する人が自由に決定出来るため、株式会社設立に必要な費用は下記の算式で覚えておくと非常に分かりやすいです。

株式会社の設立に必要な費用=資本金(自由)+20万円

ただ、それでも「たった20万円」で株式会社を作ることが出来るため、ある程度の利益を上げている個人事業主の方であれば不可能な話ではありません。

6.経営者個人と法人のお金が区別される

経営者にとって個人と会社の財布が区別されるのは、場合により大きなデメリットになりかねません。

自営業者では個人と事業のお金は区別がなく、自由にお金を使うことができました。

しかし、会社の場合は自己都合で会社のお金を使うことは横領行為にあたります。

個人でお金が必要ならばきちんと会社と契約書をつくり、契約に従い一定の利息も支払っていかなければなりません。

7.許認可・税務上の届出等で手間がかかる

事業内容が同じでも個人事業(自営業)から法人化(法人成り)すると、自営業(個人事業)の廃業の届出と会社設立の届出が必要となります。

許認可業種であれば許認可を法人として受けなければなりません。

さらに法人化(法人成り)する際の手続きも個々人によって異なりますが、コンサルタント・公認会計士・税理士等でないと非常に複雑で難しいです。

ただ、法人化手続きの手間がかかるのは法人化(法人成り)するときだけであり、長期的に面倒がかかる訳ではないため、それほどに気にする必要はないと言えます。

8.譲渡資産に不動産等の金額が含まれると所得税負担・登記費用が大きくなる

法人化(法人成り)の際に事業用不動産を個人から法人に売却すると通常は金額が大きくなってしまいます。

不動産の譲渡は譲渡所得になってしまうため、所得税負担・登記費用対策をしなくてはなりません。

特に事業目的が不動産経営であったり、事業用不動産が含まれていたりする場合は法人化(法人成り)の際に、所得税の譲渡所得の負担が大きくなるため注意が必要です。

9.株式会社を解散させた場合でも税金はかかる

株式会社を解散する場合には、解散登記を行う必要があります。

解散登記を行えば、解散の日付を決算日として、期首から解散の日までの、法人税、消費税、地方税などの申告手続きが必要になります。

また、その後については残余財産が確定するまで解散の日の翌日から1年ごとに清算事業年度の申告が必要になり、清算が終わったときには残余財産確定事業年度の申告を行います。

この場合も法人税と地方税の申告、さらに消費税の納税義務者であれば消費税の申告が必要となります。

計画的に廃業する場合、解散をして1年経たない間に残余財産が確定します。

また解散事業年度の確定申告と残余財産確定事業年度の確定申告をして終わりにするケースが多いです。

最低限覚えておきたい法人化のメリット

では、今度は逆に法人化する上でのメリットについて解説していきます。法人化することによる主なメリットは次の通りです。

  • 節税対策できる
  • 信用力が上がる
  • 有限責任にできる

人によっては、法人化した方がはるかにお得になる方もいます。

ここでは、法人化する場合のメリットについて、具体的な数値も用いて解説しているため、実際に自分はどのくらい節税できるのか把握してみましょう。

節税対策をすることが出来る

法人化する際の最大のメリットが、節税対策です。

目安としては、年間500万円以上の利益があれば法人化によるメリットが十分にあると言われています。

個人事業主の方は、事業が順調に軌道に乗ってくると売り上げを上げることができ、利益に対して毎年納税する必要があります。

個人事業主の場合は、利益に対して「所得税+住民税」が課されます。

以下が個人事業主に課税される所得金額と所得税率の比率になります。

個人事業主に課税される所得金額と所得税率の比率
195万円以下 5%
195万円超 330万円以下 10%
330万円超 695万円以下 20%
695万円超 900万円以下 23%
900万円超 1,800万円以下 33%
1,800万円超 4,000万円以下 40%
4,000万円超 45%

個人事業主の場合、所得税は利益が増加するにつれて5%~45%まで増えていきます。

上記は所得税率なので、これに対してさらに住民税10%が税金としてかかります。

これに対して法人の利益に対しては「法人税」がかかります。法人税は個人の所得税とは異なり、利益に比例した増え幅が非常に少なく、ほぼ一定の税率となります。

法人に課税される利益と所得税
800万円以下 15%
800万円超 23.2%

利益が500万円以上ある個人事業主の方であれば、比較的簡単に税率を下げることも可能になるため法人化を検討してみてもいいでしょう。

取引先への信用力が上がる

メリットの2つ目は、取引先への信用力が圧倒的に上がるということです。

一般的に個人よりも法人の方が信用度が高く、取引先を法人に限定している企業もあります。

法人化することで取引先を確保しやすくなり、取引先の幅が大幅に広がります。

金融機関からの借り入れを行う際でも、個人の場合は事業目的の融資が受けにくく、借り入れできても保証人を求められるケースが多いです。

その点、法人化することで信用力が大きく上がるため、金融機関などからの融資など資金調達がしやすいこともメリットに挙げられます。

有限責任にできる

個人事業では、経営が悪化した時に仕入れ先の未払金や金融機関などからの借入金、滞納している税金などは個人の負債として背負うことになります。

一方で法人化して株式会社や合同会社にした場合には、個人保証による借り入れを除くと出資金の範囲内での責任となります。

法人化する前に検討すべきこと

法人化する前に検討すべきこととしては、そもそも法人化することが、自分の算出した損益を基に判断したときに最適なのかどうかです。

ここでは、法人化する前に検討しておくべきことについて詳しく解説していきます。

法人にお金を残してどうするのか?

上述したように法人化に踏み切る1番のメリットは「法人税率の方が所得税率よりも節税できる」というものです。

確かに、法人税率のほうが所得税率よりも安いという魅力はありますが、法人にお金を残して何の意味があるのか考えていない人が非常に多いです。

法人化した場合、子供にもお金を残しやすくなるため、資産形成の面でも非常に有利に働きます。

しかし、お金を全く残さない場合は、法人化しても毎年「税理士への支払い」「法人住民税」などがかかってしまいます。

税理士目線では「会社に残したお金を毎年少しずつ給与として出して無くせばいいのでは?」という話もあります。

節税できることは確かですが、そのための支出が大きく増えてしまったり、煩雑な作業が増えてしまったりするため、人によってはあまりメリットを感じない方も多いです。

法人化すべきかは税理士に相談しましょう

今回は法人化する際のデメリットを中心に解説してきました。

法人化する際の最大のメリットは節税ができるという点ですが、売り上げが500万円に届いていない人にとっては煩雑な作業が増えるだけです。

ただし、会社を設立した方が信用は増すため、より大きな取引をしやすくなり、結果的に売り上げが増していく、ということもあり得ます。

これから法人化すべきか悩んでいる個人事業主の方は、本記事を参考にして、じっくり検討してみてください。

企業の教科書
高桑 哲生
記事の監修者 高桑 哲生
税理士法人 きわみ事務所 所属税理士

税理士法人きわみ事務所の所属税理士。
「偉ぶらない税理士」をモットーに、お客さんに喜んでもらえるサービスを提供。
税務処理だけでは終わらない、プラスアルファの価値を提供できる税理士を目指す。

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