会社を設立するにあたり、正しい知識を身に着ける必要があります。例えば、「資本金」「発起人」「株式発行」「取締役会」という言葉。一度は耳にしたことがあっても、細かい内容まで把握している方はそう多くないのではないでしょうか?
そこで、今回は「資本金」「発起人」「株式発行」「取締役会」について、正しい知識と位置づけについて解説していきます。
そのうえで、会社設立の申請に重要な「会社の所在地と連絡先」「会社設立日と事業年度」「会社の銀行口座の開設」「会社設立登記の申請」もご紹介します。
資本金の理想的な設定額
今までは、資本金には下限が設定されていましたが、会社法が改正されたことで、資本金が1円でも会社を設立できるようになりました。
資本金が1円でも設立できるようになったと言っても、本当に1円でも問題ないのでしょうか?資本金とはそもそも何のためにあるのか、理想的な設定額について見ていきましょう。
資本金とは
資本金とは、株式会社を運営する際に発行される株式と交換することで手に入れた資金のことです。
会社設立時の運転資金がどのくらいかを意味しているものであるため、「資本金の大きさ=会社の規模=会社の信用力」とも言えます。
そのため、1円で会社を設立できるとは言っても、1円だと会社の信用力がないので最低限度の資本金は必要です。
数か月間の運用資金を基準にする
資本金を決める基準は、以下の2つです。
- 事業が軌道に乗るまでの運転資金
- 取引先からの印象
事業が軌道に乗るまでは、ある程度の時間がかかるため、資本金を切り崩す必要が生じる場合があります。また、資本金がある程度多い方が取引先からの印象が良いことも忘れてはいけません。
これらを加味して、3か月~半年分の運用資金程度を資本金として設定するのが良いと言えるでしょう。
なるべく1,000万円未満に抑える
資本金の多さが信用力と関連していると言っても、何でも高く設定すればいいというものではありません。1,000万円以上になると、消費税の免税が受けられません。
また、1000万円を超えると法人住民税が高額になるので、よく考えてから設定しましょう。
会社設立の発起人
会社の設立について調べると、「発起人」という言葉を耳にすることがありますが、何なのでしょうか?
発起人とは
発起人とは、会社を設立する際に資本金の出資を行った人のこと。発起人は出資金に応じて会社の株式を取得するだけでなく、会社を設立する際の手続きなど重要な役目を担います。
発起人は会社設立の関係者であるため、会社が設立されるまでに生じたトラブルに関して責任を負わなければなりません。会社が設立された後は、株主という立場で会社の意思決定に関与します。
発起人は多すぎても良くない
発起人が多く集まるほど、資本金が増えることになります。しかし、必要書類を作成する手間が増えるほか、意見をまとめることが困難になりやすいです。
会社設立をスムーズに行うためにも、発起人の選定にこだわった方が良いと言えるでしょう。
株式発行時の注意点
発起人には、出資金の割合に応じて株式を発行しますが、どのような点に気をつける必要があるのでしょうか?
株式発行時の注意点について見ていきましょう。
株式の所有割合に注意
発起人は会社を設立したあとは、株主という立場で会社の運営に関わっていくことになります。
会社運営を決める際は、議決権によって多数決などの決定方法を取るのが一般的です。つまり、議決権の過半数を有していれば、運営を有利に進められるということになります。
発起人の株式の所有割合を誤ってしまうと、会社の実権を握られてしまう可能性もあります。そのため、創始者が株式の過半数を所有するなど、所有割合をどうするのかあらかじめ決めておくようにしましょう。
取締役会の意義と位置づけ
会社法が改正されるまでは、全ての会社に取締役会が設置されていましたが、今は取締役会が設置されていない会社も存在しています。そもそも取締役会とはどんなもので、設置する必要があるのでしょうか?
取締役会の意義と位置づけについて見ていきましょう。
会社の意思決定機関
会社の意思決定を行う際に、わざわざ株主全員が集まってその都度多数決を取るとなると、円滑な運営を行うことができません。そこで登場するのが取締役会です。
取締役会とは、株主総会という株主が集まって開催する会議の中で、決定された3人以上の取締役で構成される会社の意思決定機関です。
会社法で定められている範囲の業務に関しては、株主の意見を聞かずに取締役会の判断で進められるため、円滑な運営が期待できます。
会社の住所と電話番号
会社を設立する際に、「会社の住所地は自宅でもいいの?」「固定電話じゃなくて携帯電話じゃダメなの?」と疑問を抱いている人も多いのではないでしょうか?
会社の住所と電話番号を決める際のポイントについて見ていきましょう。
会社の住所は社会的信用
会社を設立する際の住所地は、自己所有の自宅やビル、会社設立が認められているマンションやレンタルオフィスなど、どこでも問題ありません。
そのため、会社設立で賃料などのランニングコストを少しでも抑えたい場合には、自宅を会社の住所地にすれば費用を抑えられるでしょう。
しかし、会社が成長して大きな取引が発生してくると、取引先から調査が入る場合があります。自宅を住所地にしていると、オフィス街に住所地がある場合よりも信頼度が低くなる可能性があるので注意しましょう。
固定電話番号は必須
1人1台以上、携帯電話を持つのが当たり前の時代となっていますが、会社の電話は携帯電話ではダメなのでしょうか?
もちろん、携帯電話でも登録できますが、以下のようなデメリットがあります。
- プライバシーがなくなる
- 会社の信頼度が低くなる
さらに、私用携帯の場合には、営業電話がかかってくるなど、プライバシーがなくなります。
また、「090」や「080」の番号だと相手に不安を与える場合があります。そのため、余程の理由がない限りは固定電話をひいた方が良いと言えるでしょう。
事業年度と会社設立日
「事業年度と会社設立日はどのように決めればいいんだろう」と疑問を抱いている人も多いのではないでしょうか?
事業年度と会社設立日の関係性、決める際のポイントについて見ていきましょう。
事業年度と会社設立日の関係性とは
事業年度とは、会社がどんな経営状態でどんな財務状態にあるのかを知るために、一定の期間(12か月以内)で区切っているものです。決算月が3月の会社は、事業年度が4月1日~翌年3月31日になります。
また、設立日とは、法務局に登記申請を行った日のことです。設立日を基準として、1年以内に決算月を設定します。
会社を新規に設立すると、消費税が免税される場合があります。期間は2期間であるため、9月に設立して3月を決算月にすると、免税期間が短くなるため損をします。事業年度をいつにするか決めてから、登記申請を行うようにしましょう。
繁忙期や売り上げの多い月は避ける
事業年度や設立日を決める際は、以下の点に注意する必要があります。
- 繁忙期を避ける
- 売上の多い月を避ける
12月や3月などは、キリがいいこともあって、多くの会社が決算月にしています。そのため、同じ月にすると書類手続きに時間がかかるので避けるべきと言えます。
また、売上の多い月を決算月にすると、節税対策の時間を十分に確保できません。余裕を持って決算処理できる月にするなど、よく考えてから決めましょう。
銀行口座の開設
銀行口座を開設する場合、個人と法人では違いがあるのでしょうか?法人が銀行口座を開設する際に必要なものと注意点について見ていきましょう。
口座開設に必要なもの
法人が口座を開設する場合は以下のような書類が必要になります。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 定款
- 印鑑証明書
- 法人銀行印
- 代表者の本人確認書類
- その他一定の書類
口座開設が完了するまでに、会社設立から1か月かかる可能性もあるため、余裕を持ったスケジュールを立てておきましょう。
口座開設の注意点
法人が口座開設する場合には、以下の点に注意が必要です。
- 資本金の額が低い
- 事務所の実態が不明瞭
- 事業目的が曖昧
これらの条件に該当すると、口座開設ができない場合もあります。速やかに口座を開設するためにも事前にしっかり準備しておくようにしましょう。
会社設立登記を申請
会社設立登記が完了すれば、いよいよ法人が誕生することになりますが、その手続きの仕方がわからない人も多いのではないでしょうか?
会社設立登記に必要なものと注意点について見ていきましょう。
会社設立登記に必要なもの
会社設立登記に必要なものには以下のようなものがあります。
- 登記申請書
- 「登記すべき事項」をまとめたデータディスク
- 公証役場の認証を受けた定款
- 印鑑届書
会社設立登記に必要なものは、会社の形態によって異なります。不備があるとやり直しになるので、何が必要かよく確認してから申請しましょう。
会社設立登記の注意点
会社設立登記を行う際は、提出しなければならないものが多いだけでなく、費用もかかります。
公証役場での認証手数料・謄本代、定款に貼付する収入印紙代、登録免許税など、様々な費用が発生するので、何にどのくらいの費用が発生するのか、事前に確認しておきましょう。