会社設立

活路は常に目の前に。数多の試練を乗り越えた会社が描く「ホワイト」な世界

活路は常に目の前に。数多の試練を乗り越えた会社が描く「ホワイト」な世界

Signite(シグナイト)株式会社。『世界のニーズにスマートな火をともす ~Smart, Ignition, Technology~ 』という思いを込めて、夢のあるサービスを提供するというビジョンを掲げる。Google Maps API等を利用した地図ソリューション、Webデータベースを活用したシステム開発を展開している。地図を使って現地調査や物件情報の管理ができる「 GeoReco Map 」は、業界問わず多くのクライアントに導入されているという。

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また、働き方改革にも取り組んでおり、積極的にリモートワークや時短勤務も導入。YouTubeチャンネルでPR活動も展開している。

テクノロジーのトレンドを掴んだスマートな企業。そんな第一印象だった。ただ、話を聞けば聞くほど、ここまでの道のりは決して平坦なものではないことがわかった。原田智行社長と取締役の山田建太郎氏、逆境を超え続けた2人の男の熱意を感じてほしい。

売り上げが起業時の半分に

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学生時代からの友人だという2人。「夫婦みたい」と社員から言われることも。(左が山田氏、右が原田氏)

起業のきっかけを教えてください。

原田:私と山田は学生時代からの友だちで、当時私はプログラムの会社にいて、山田はwebデザイン会社にいた。この二人でできることを考えた結果、ホームページ制作会社を起業しようと決意しました。

ただ、1年目は地獄でしたね(笑)。給料もほとんどない状態でしたが、起業したからには会社を大きくしていこうという信念があった。3年目からようやく利益も得られるようになりました。

多少の浮き沈みがあったものの、何とか会社は経営できていました。ところが、起業して10年目にして、東日本大震災が起きた。その影響で売り上げは起業当時の半分ぐらいまで落ちてしまったんです。家族にも、従業員にも「(会社は)もって2か月」と伝えなければならない状況に追い込まれてしまって。

ただ、震災後の復興事業として、データベースの開発案件が舞い込んできた。例えば、避難所管理システムをすぐに作ってほしい、というような案件が増えたんです。専門外の領域ではあるものの、困っているお客様を何とかしたいと思って引き受けていたら、案件が徐々に増えてきた。被災地の現状をみて、何かできることはないかという思いもありました。

山田:今思えば、震災が事業転換のきっかけになりましたね。震災復興の事業が急激に膨れて、本業のホームページ制作どころではなくなり、復興事業に注力したほうがいいだろうという判断にいたりました。

無理難題に全力で応える

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ホームページ制作がメインの御社に、復興のシステム案件を任せる。一見関連がないような依頼が来るのはなぜだったのでしょうか?

原田:当時のお客様の言葉を引用すると、「うちならやってくれそう」と信じてくれた。緊急かつボリュームの大きい案件ばかりで、普通の会社なら断られると思って、弊社を頼ってくれたんでしょう。

山田:過去の案件から、お客様の無理難題に全力で応えてきたのが一番大きかったと思います。私も原田も、「来る者は拒まず」の精神があって。「これがやりたい」っていうお客様がいるなら、何らかの形で具現化したいっていう気持ちが強いんです。難しい仕事を任されたとき、単純に「それができない」って答えるのではなくて、「こういうやり方だったらできるかもしれない」と提案を毎回するようにしています。

原田:とにかく、お客様のやりたいことにプラスアルファを常に意識していた。そこで信頼を得て、関係が継続していく場合が多いです。

山田:そうすると、お客様との付き合いも深くなっていく。そんな仲間が相談してくれているのに、何も返せないというのが悔しい。何らかの結果を出したいっていう思いが原動力になっていましたね。

当時の被災地の現状を教えてください。

山田:震災後から2年後に石巻市に行ったときには驚きましたね。陸上に船が流れ着いていたり、巨大な建造物が転がっていたりした。そんな状況なので、緊急度の高い案件ばかりが舞い込んでくる。会社に泊まり込みする毎日でしたね。さらに、売り上げが下降してた時期なので、人員削減もしなければならなかった。

原田:社員は十数人はいたんですけど、5人まで減りましたから。

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緊急案件があるなかで売り上げも減少したうえ、メンバーの解雇となると、社内の雰囲気は厳しいものだったのではないでしょうか?

山田:それが不思議なことに、疲弊感より「乗り切らないといけない」っていう使命感がありましたね。不眠不休でつらい状態ではあったんですけど、それ以上に「復興に対して何か協力したい、力になりたい」っていう思いが強くて。そういう意味では、やりたくないとかはなかったよね?

原田:全くなかった。お客様もオフィスに泊まっていた日もあって。震災という危機を一緒に乗り切るんだ、という連帯感が生まれていました。

山田:復興関係の事業をやるうちに、今のメイン事業である地図システムと出会ったんです。お客様の問題解決を必死にやるうちに出会った、偶然の産物でした。このビジネスに手ごたえを感じて、これ(地図システム)ならいけると思って。それまでは何でも屋さんだったので、特徴のない集団だった。目の前のお客様のために真摯に対応したことが、結果的に地図システムという強みにつながったんです。

苦労から本質を見出す

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今後の展望を教えてください。

山田:会社全体を効率よく回していくためのツールを販売していきたい。どのプロジェクトで利益が出ているかどうかが、すぐに可視化できるようなものをイメージしています。最終的には健全な経営を世の中にもたらしたいですね。

この事業をやろうと思ったのも、復興事業に取り組んだことがきっかけで。緊急案件かつ人も少ない状況だったので、プロジェクト管理ツールは必要だと痛感したんです。過去苦労したものから、どれだけ使えるエッセンスを引っ張ってこれるか。それが今につながるんだと思うんですよね。不眠不休で働いた経験があるからこそ、その大変さをどう解決するかが具体的にイメージできるんです。

「働き方改革」についての考えを教えてください。

ちょっと異常な話だと思うんです。働く時間を減らして、生産性はもっと上げましょうという考え方じゃないですか。絶対的な時間がないのに、生産性を上げるっていう真逆のことをやろうとしてるわけですよ。

真逆のことをやるためには、さまざまな情報を仕入れなけばいけない。でも、それを達成したときの感動はすごく大きいし、チャレンジングなことだと思うんですよね。これまでも、難しいものに挑戦して、達成してきた。その価値を社内で共有してきての今がある。そういう意味では、これからもいろいろなことにチャレンジしていきたいっていう思いは今も一緒です。

あなたは何回「失敗」している?

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これから起業しようとする人にメッセージをお願いします。

原田:起業するときの夢をずっと忘れずに、覚悟をもって突き進んでほしいですね。

山田:まずやってみることが一番重要です。海外では、「新しく事業をやりたい」って言った人に対して、「あなたは何回失敗してますか」を問う文化がある。失敗の回数が多ければ多いほど、失敗の理由を幾つも持っているわけです。新しいことにチャレンジして、また失敗して、またやり直してっていう環境づくりが大事ですね。

また、いざ起業するとなると、「そんなのできるわけないじゃん」って誰かにこっぴどく言われて落ち込むこともある。それでも、まだやりたいっていう意欲の方が高かったら、それは「覚悟がある」と言える状態でしょうね。

だから、事業を始める前にいろいろな人に意見を聞いたほうがいい。自分の考えだけではなくて、他の人の考えを聞くだけでも、新しい道が開けることもある。いろいろな人とつながっておくのが、事業を成功させる一つの鍵になると思います。

企業の教科書
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