株主名簿は難しく思われがちですが、株式会社の経営者としてやるべきことは簡単です。
本記事を読めば、株主名簿に関する法律や書き方、一連の手続き、管理方法をマスターできます。
株式名簿に困ることなく会社を経営するために知っておくべきことを解説します。
株主名簿とは?
株主名簿とは何でしょうか。株主名簿は、会社法第121条に定義されています。
株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下「株主名簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。
出典:会社法
以降では、株主名簿とは何か、詳細を解説していきます。
株主名簿は株式会社を設立したら必ず作らなければならない書類
前述の条文の通り、株式会社である以上は株主名簿に必要事項を記載し、記録しなければなりません。
株主が一人の場合でも例外なく、株式会社であるため、作成は義務となります。
株主名簿は株主の把握・管理のための重要なもの
株主名簿は、その名の通り株主が記された名簿です。
株主名簿がない場合、誰が株式の持ち主であるかわからなくなってしまいます。
そのため、会社法に記されている通り、株主名簿を作成しなければなりません。
株主名簿はいつ作らないといけないのか?必要なタイミング・提出期限は?
株主名簿は、必要となるタイミングが多々あります。その都度、すぐに利用できるよう作成・保管しておく必要があります。
株主名簿が必要になるタイミングについて解説していきます。
設立時に作らなければならない
この点は、多くの Webサイトでは設立時に必要なものとして株主名簿を挙げていませんが、設立後すぐに必要です。
実際には、設立後2カ月以内に『法人設立届出書』を税務署に提出する際に、添付書類として提出しなければなりません。
もし株主名簿を作成しない場合には、罰則が科せられる場合があります。詳細については後述します。
株主から開示請求された場合に必要
会社法第122条にて株主名簿を株主から請求されることが記されています。
前条第一号の株主は、株式会社に対し、当該株主についての株主名簿に記載され、若しくは記録された株主名簿記載事項を記載した書面の交付又は当該株主名簿記載事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。
出典:会社法
登記事項の変更の際に必要
実際に登記事項の変更の際に添付書類として必要であるのは”株主リスト”ですが、株主名簿があれば簡単に株主リストを作成できます。
登記事項の変更の際に”株主リスト”が添付書類として必要になる場合の詳細については、以下の参考リンクから参照ください。
会社に出資したい人から株主名簿を求められる
会社への出資を希望している人から、株主名簿の開示を求められる場合があります。
いつ求められても困らないように、定期的に株主名簿を整備しておくと良いでしょう。
株主名簿はどう書けば良いの?株主名簿の書き方・見本
株式会社を設立した以上、必ず株主名簿を作成しなければならないことは解説しました。
では、どのように書けば良いのでしょうか。株主名簿の書き方について解説します。
株主名簿に決められた書式・様式はない
まず初めに、決められた書式・様式がないかを確認すると思いますが、株主名簿には、『この書式・様式を使って作成してください』という指定はありません。
よって、手書きで作成したり、Wordソフトを用いて作成したりすることは自由です。
しかしながら、開示や変更するなどの用途を考えると、Wordなどのソフトを用いて電磁的に記録・保存することが望まれます。
株主名簿に書かなければならないもの・記載事項
自由な書式・様式で書いて良いものの、その中で記載しなければならない事項は会社法第121条で定められています。
一 株主の氏名又は名称及び住所
二 前号の株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
三 第一号の株主が株式を取得した日
四 株式会社が株券発行会社である場合には、第二号の株式(株券が発行されているものに限る。)に係る株券の番号”出典:会社法
株主名簿はどのように管理すれば良いのか|株主名簿の管理方法
作った株主名簿も、適切に保管する必要があります。どこにでも保管して良いわけではありません。株主名簿の管理方法を解説していきます。
株主名簿は本店で保管しなければならない
株主名簿の保管については、会社法第125条にて以下のように定められています。
株式会社は、株主名簿をその本店(株主名簿管理人がある場合にあっては、その営業所)に備え置かなければならない。
出典:会社法
つまり、株主名簿を支店で保管する方が都合がよい場合であっても、支店で保管することは禁止されており、必ず本店で保管する必要があります。
作成や保管など株主名簿に関する事務を委託できる
先ほどの会社法第125条の条文において”株主名簿管理人”という言葉が出てきました。株式会社は、自己に代わって作成や保管など株主名簿に関する事務を株主名簿管理人に委託できます。
また、上場企業では金融証券取引所の規定により、株主名簿管理人に委託することが必要です。
実際には、証券代行専門会社もしくは信託銀行が株主名簿管理人とされています。
いつまで保管しておかなければいけないのか|株主名簿の保管期限
株主名簿の保管期限は、その性質上、永久です。というのも、株主が存在している時点で株主を記録しておかなければならないためです。
会社法にある通り、株式会社である時点で作成・保管が義務付けられていますから、株式会社であるかぎり継続して保管しなければなりません。
株主名簿を見るためには?|株主名簿の閲覧方法
株主名簿を閲覧できる権限などは会社法第125条に定められています。
株主名簿の閲覧を株式会社に請求できる権限は”株主”と”債権者”にあります。
株主名簿の閲覧には特別に手数料などはかかりません。
閲覧の請求は、株式会社の”営業時間内”に行えます。
なお、株主や債権者としての権利の確保および調査以外での請求等であれば、株式会社はその請求を拒むことができます。
株主名簿を作らなかったらどうなる?|株主名簿の罰則となければ困ること
株式会社において、株主名簿の作成と保管は義務だと解説してきましたが、もし作らなければどうなるのでしょうか。困ることは何でしょうか。罰則や困ることについて解説していきます。
100万円以下の罰金が科せられる場合がある
会社法第976条では、”過料に処すべき行為”として、株主名簿の作成や保管を怠ったとき、もしくは虚偽の記載が挙げられています。
条文ではこのように記されていますが、実際に罰則を科せられた例はほぼないようです。そもそも、設立時や株式会社の運営時にどうしても必要になりますので、意図して作らないといったケースはないでしょう。
登記変更の際に必要な”株主リスト”がすぐに作成できない
株主リストと株主名簿は似ていますが、求められている記載事項が異なります。
株主名簿の記載事項は既に解説している通りですが、株主リストの記載事項は以下です。
- 株主の氏名又は名称
- 住所
- 株式数(種類株発行会社は種類株式の種類及び数)
- 議決権数
- 議決権数割合
- 代表者の証明
株主名簿の記載事項に加え、議決権数、議決権数割合、代表者の証明が必要です。
実務上は、株主名簿と株主リストの記載事項を網羅したものを電磁的に保存(WordやExcelファイル)し、必要に応じて出力できる環境にしておくと良いでしょう。
そうすることで、株主名簿から株主リストをすぐに作成できます。
もしこのような株主名簿を作成していなかった場合、登記変更の際に0から作らなければならないので手間になります。もちろん、設立時に株主名簿を作成していることが大前提です。
株主の記録がない場合紛争になることがある
株式の譲渡などにより株主が変わった場合など、突然『株主の◯◯ですが…』と連絡が来た場合、株式会社として把握できておらず対応に困ることになります。
株主名簿を作成しただけで管理・更新しない場合、このようなことが起こるリスクがあります。
少なくとも年に1度は見直しをしましょう。
株主名簿まとめ
株主名簿とは何かから、株主名簿に関するさまざまな事例について解説しました。
株主名簿に関する規則などは難しいものですが、株主名簿の作成自体は簡単だと感じていただけましたでしょうか。
本記事を通して、株主名簿に関して困ることなく法人設立・運営にお役に立てれば幸いです。