Facebook、Twitter、Instagramー。SNSはさまざまなプラットフォームが生まれ続け、飽和状態だ。「インフルエンサー」とよばれる影響力の高い人たちも生まれてきた。
ただインフルエンサーのように影響力を持っているのは一部で、多くの方はSNSの活用をうまくできていないのではないだろうか?
こうした問題の解決を目指すのが、Whoever株式会社。「誰しもに、喜びと感動を」をビジョンに掲げる。2019年5月にはSNS上でクイズやアンケートなど、オリジナルな質問を作成できる「LINQ」をリリースした。
CEOの見目智也氏(26)は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券でキャリアをスタートしている。業界が大きく違うITの分野でなぜ起業したのか? その理由を聞いてみた。
起業への最短ルート
起業の経緯を教えてください。
学生時代から漠然と起業をしたいと思っていましたが、新卒では三菱UFJモルガン・スタンレー証券に入社しました。すぐにでも起業したかったのですが、学生時代はバンド活動に明け暮れていたので、経営知識があまりにも乏しかった。決算書の一つも読めないのはまずいなと(笑)。まずは金融のノウハウやセールスのスキルを学びたかった。幅広い年齢層の経営者や税理士、資産家・投資家の方々と効率よく出会える場を求めていたんです。一番自分のなりたい像に近い存在に身を置けそうな場として、入社を決めました。
金融から、IT業界へと大きくフィールドを変えましたね。
その点はすごいよく言われます。あくまで起業のプロセスとして金融業界を選んだだけで、金融にこだわりがあったわけではありません。それよりも、これまでの人生で感動した分野で、起業したいと思っていて。心動かされたのが多い出来事って何だろう? と自問したときに、Webサービスが多いことに気が付きました。
わかりやすいところでいえば、YoutubeやAmazon。今でこそ当たり前ですが、初めて使ったときの感動は今でも覚えています。「自分に全然ノウハウはないけど、ITで何かを生み出したい」と思っていました。
だから「IT業界出身じゃないと成功できない」って考え方は一切してません。作れる人を探せばいいだけです。ITスキルの高い方と僕のビジョンを一緒に描いていけたら、できないことは絶対ないと考えています。 「1対1の会話」を全員に
「1対1の会話」を全員に
現在はどんなサービスを展開されていますか?
LINQというサービスを5月にローンチしました。
引用:繋がる楽しみ!『LINQ』登場!~クイズやアンケートなどの質問をSNS等のWebサイト上に投稿することができるサービス~
SNS上で有名になりたい人は、コンテンツの中身で勝負をしています。例えばダイエットなら「鍛え上げた体」「痩せてかわいい服を着ている女性」とかがそうです。ただこうしたコンテンツはもう飽和していて、見ている側も飽きていますよね。
でも、コンテンツの中身で勝てないのであれば、伝え方を工夫すれば、有名になれる可能性がある。そのサポートをLINQがします。
LINQと、TwitterやFacebookなどSNSとの関係を教えてもらえますか?
イメージとして、Twitter、Facebookは空間。LINQはその空間に存在する2者をつなぐイメージです。写真や動画のリンクを単純に載せるより、クイズやアンケート形式でコンテンツを出すなど、導線の部分を工夫して目立たせていきます。
また、LINQでは1対1のやり取りを疑似的に体験できる。たとえば堀江貴文さんのファンがLINQのユーザーだと想定します。堀江さんが「この先10年後に流行るビジネスは何だと思う?」という問いを投げかける。それを見たファンの人が「介護ビジネス」って答えたら「そうなんだ。俺はAI関連のビジネスだと思う」と回答する。一瞬ですけど、まるで会話してるような形にとれる。堀江さんのTwitterは現在330万のフォロワーがいますが、全員が堀江さんと1対1で会話をしているような体験ができるんです。
LINQでどんな世界を目指されますか?
優れたコンテンツを効果的に伝えるお役立ちをしたい。最高においしいラーメン屋さんがあっても、山奥にあったら気付かれない。だったら僕たちが山奥から道路のほうに持っていくイメージです。
SNSは、これからもっと細かいコミュニティに分裂していくと思います。いかなるコミュニティが生まれたとしても、やり取りを補完できるツールとして、LINQも生き残りたい。最終的には、SNS上のQ&Aアプリの中で、ナンバーワンをとりたいです。モデルや芸能人など影響力のある人が、「なんでLINQやってないの?」っていう立ち位置にしたいです。
失敗を俯瞰し、感謝する
起業家に必要な力はなんだと思いますか?
矛盾するようですが、謙虚さと、どん欲さだと思います。
まず謙虚さとは、物腰低く、常に学ぶ姿勢ですね。起業すると、誰かに相談しなければいけない瞬間が多い。では、相談される側は、どんな企業なら、相談しがいがあるでしょうか? ビジネススキームの良さ、優秀なメンバーが多いなど、色々な要素があると思います。ただ大事なのは、やっぱり自分を好きになってもらえるかどうか。そのためにどうするかを常に考えています。
ただ、教えてもらうだけで終わるのもダメです。数年後には相手と同じレベルになっていたい、という意味で貪欲さも必要と思っています。
起業してから一番の失敗はありますか?
起業してすぐ約300万円でエンジニアにジョインしてもらったものの、結果的に3か月で辞めてもらうことになってしまいました。
チーム作りをぼくが間違えていたんです。ITでプロダクトを作る際、どうしてもエンジニアの方は必要ですよね。そこで、フルスタック(すべての開発を自分一人で手がけられる)のエンジニアの方を仲間にしました。
ただ、プロダクト開発の議論のときに、自分がリーダーシップをはかれなかった。自分の知見の無さもあって、結局エンジニアの方に依存した発想にしかならなかったんです。僕が作りたいものを彼に伝えきれていなかった。次第に、お互いやりたいことがずれていってしまい、そのプロダクトは世に出すことはできませんでした。
少なくない金額を失って、プロダクトも完成せずに3か月が経ったのは事実です。ただ裏を返せば、3か月でたった300万の投資で、失敗を経験できた。チームビルディングの難しさを学べました。10年後じゃなくてよかったなと思っています。
起業する人へのメッセージをお願いします。
嫌なこと、理不尽なことが立て続けに起こったとしても、感謝できる人になってほしいと思います。「成功」や「失敗」っていう言葉がありますが、僕はあまり気にしません。起業すると、とくに思い知らされるのですが、自分より優秀な方は周りに山ほどいます。いかに自分が「井の中の蛙」だったかを思い知らされる。自信過剰でいくと、出鼻をくじかれることが多いと思います。
あとは、自分自身を冷静に俯瞰する機会を持ってほしいです。なにか問題が起きたときに、自分の物差しで測って「駄目だ」「辞めたい」って思ってしまうものです。でも、「この現状を他の人だったらどう見るんだろう?」と想像すると、冷静になれます。
だから、自分の勝手な物差しで成功や失敗を定義しないこと。成功や失敗はものの見方でどうとても捉えられる。まずは自分のやるべきことに集中してほしいと思います。