テレワークとは情報通信技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。 今まで会社に毎日通勤していた人が自宅で仕事をするようになれば、電車やバスに乗らなくなり、通勤手当は支給する必要がなくなります。
一方で、在宅勤務をしていれば水道・光熱費やインターネット環境の整備に費用がかかります。テレワークについて詳しく知り、企業のコスト面から従業員の給与額に影響する手当について説明します。
テレワークが手当にどう影響するか
画像引用:テレワーク「導入率」緊急調査結果|東京都
東京都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率は、2020年3月と4月を比較すると2.6倍に増えています。企業規模が大きいほど導入率は高くなりますが、従業員数が30~99人の小規模企業でも東京都では54.3%が導入しています。テレワークとはどういう勤務形態なのか、企業の経費にどのような影響があるのかをみてみましょう。
テレワークとは
テレワークは場所や時間にとらわれない働き方です。テレワークのテレは、Telephone(電話)のテレと同じで「遠い」「離れた」という意味を持ちます。したがって、テレワークは「離れた場所で働く」となります。働く場所によって3つの種類にわけられます。
- 自宅利用型テレワーク
- モバイルワーク(顧客先や移動中)
- 施設利用型テレワーク(サテライトオフィスなど)
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から広がったテレワークは、他人との接触を避けることが目的のため、自宅利用型テレワークを想定します。必要に迫られて2020年4月から導入した企業が多いのですが、さまざまな効果があるため、今後も継続の方向に進むでしょう。
テレワークの経費削減効果
画像引用:テレワークとは「テレワークの効果」|一般社団法人日本テレワーク協会
テレワークを導入する効果は主に7つあります。働き方改革を進める企業にとっては「ワーク・ライフ・バランスの実現」は有益です。「雇用創出と労働力創造」は企業に新たな活力を生むでしょう。
7つのなかで特に経費に影響しそうな項目が「オフィスコスト削減」です。スペースが小さくてすむため、コンパクトなオフィスに移転すれば家賃負担が減ります。社内で使うコピー用紙や文具類などの消耗品費も抑えられます。さらに通勤・交通コストが削減できるのです。
テレワークで給与の手当はどう変わる?
テレワークで在宅勤務になれば、給与の手当に変化が現れる場合が多いです。テレワークの効果のひとつに「オフィスコストの削減」がありますが、定額で支給していた通勤交通費は必要なくなります。
一方で、在宅になると家庭での水道・光熱費やネット環境整備が従業員個人の負担になってしまうのです。そこで、テレワーク手当を支給する企業が増えています。何社かの導入例の紹介と待遇や給与を変えるために必要な就業規則の整備について説明します。
テレワーク手当の導入事例
多くの企業がテレワークを導入し、通勤交通費を廃止し、テレワーク手当などの整備に着手しています。以下がいくつかの企業の導入例です。
テレワーク手当の導入事例:カルビー
通勤定期券代の支給停止とモバイルワーク手当の支給
- 通勤定期券代に替わり、オフィス出社時の交通費を実費で支給(出社日数に応じた交通費を通勤手当とする)
- 「モバイルワーク手当」(一時金)を新設し、モバイルワークの環境整備に必要な費用を一部補助。
テレワーク手当の導入事例:ヤフー
<概要>
- リモートワーク(※2)の回数制限を解除(※3)
- フレックスタイム勤務のコアタイムを廃止(※3)
- 最大月7,000円の補助(どこでもオフィス手当4,000円+通信費補助3,000円)(※4)
- 通勤定期券代の支給停止(通勤交通費は実費支給)
- 副業人材の募集(ヤフー以外で本業に従事する方の受け入れ)
テレワーク手当の導入事例:NTTデータ
2020年10月から通勤手当を廃止。代わりにリモートワーク手当の創設を予定
引用:IT企業の通勤手当が「絶滅寸前」、代わるテレワーク手当の月額相場は?|日経クロステック(xTECH)2020.09.10
テレワーク手当の導入事例:富士通
2020年7月から通勤手当を廃止。同時に月5000円のスマートワーキング手当を支給開始
引用:IT企業の通勤手当が「絶滅寸前」、代わるテレワーク手当の月額相場は?|日経クロステック(xTECH)2020.09.10
多くの企業が通勤手当を廃止して、名称は各社で異なりますが「テレワーク手当」を導入していることがわかります。通勤手当は会社から支給されていても従業員の手元には残らず、源泉所得税は非課税です。ですが、社会保険料の算定基礎にはふくまれるため、社会保険料分手取りは減ることになります。
テレワーク手当は課税対象で社会保険料も控除されますが、手取りは増えます。日本でも名だたる企業が牽引し、今後は中小企業でもテレワーク手当の導入を進めることが予想されます。
テレワークのための就業規則
テレワークを導入した企業は、在宅勤務者のために就業規則を作る必要があります。会社に通勤しているときと待遇が同じかどうか従業員は気になりますし、安心して働けるよう整備することは大切なことです。
テレワーク導入で就業規則の変更が必要な場合
従来の勤務とテレワーク勤務で、労働時間制度や労働条件などが同じであれば、就業規則の変更は必要ありません。ですが、従業員が通信費や消耗品費を負担するなど、今までにはなかったことが生じれば、就業規則を変更して対応します。また、費用面だけでなくフレックスタイム制にした場合も従来の就業規則に定められていなければ変更します。
テレワーク導入で就業規則にふくめる項目
厚生労働省の「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」には、就業規則にふくめる項目として以下があげられています。
- テレワーク勤務を命じることに関する規定
- テレワーク勤務用の労働時間を設ける場合、その労働時間に関する規定
- 通信費などの負担に関する規定
テレワークによって従業員が不公平感を抱かないためにも、給与や待遇面での整備をおこない、就業規則に定めることは重要です。
テレワークで手当が変わる
テレワークを多くの企業が導入し、勤務形態が変わったことで給与の手当も変わりつつあります。既にIT企業を中心にテレワーク手当を取り入れています。勤務形態の違いで従業員の間に不公平が生じ、モチベーションが下がっては元も子もなくなります。手当を変えるために、まず必要なのは就業規則や社内規定の整備です。テレワークの効果を最大限にするようきめ細かい対応をおこなっていきましょう。