会社の得る利益には経常利益や営業利益などいくつか種類があり、当然意味合いも違います。特に営業利益や経常利益を理解することは、会社の置かれている状況を正確に把握することにもつながるでしょう。
それぞれの利益の基本的な定義を押さえることにより、決算書に記載される内容の理解もより深まるはずです。今回はこの記事で、経常利益と営業利益に焦点を当て、どんな違いや関係性があるのかなどについて解説します。
経常利益と営業利益との違い
まずは経常利益、営業利益の違いについて、それぞれどんな意味を持つのか見ていきましょう。また、経常利益や営業利益と混同しやすい純利益についても解説します。
営業利益は会社が「本業で稼いだ利益」
営業利益は、会社が本業で稼いだ利益を意味します。本業とは、会社の中心となる事業です。例えばクリーニング店ならクリーニングのサービス、スーパーなら食品等の販売をすることなどが本業にあたり、そこで得た利益が営業利益となります。
経常利益は「事業全体で経常的に得た利益」
経常利益は、本業と本業以外の事業全体で会社が経常的に得た利益です。「経常」とは、「平常」であり、「特別な出来事がなかった場合」の利益が経常利益といえます。
経常利益と営業利益との大きな違いは、営業外収益・費用を加えるか加えないかにあります。営業外収益や営業外費用は、本業以外で得た収入や費用のことです。例えば貸付金の利息(受取利息)や借入金の利息(支払利息)などがあります。
営業利益は本業だけで見た場合の利益です。しかし会社は本業以外でも収入や支出があるものです。例えば、受取利息や借入金の返済、利息の支払いなどです。この場合、受取利息は「営業外収益」、金融機関への借入金返済や支払利息などは「営業外費用」になります。経常利益は営業外収益を加え、営業外費用を引いて算出します。ただし、銀行の場合、利息は本業の収益として扱います。
また、例えば不動産業を営むかたわら、飲食店を経営しているとします。この場合、本業は不動産業であり、不動産業による利益だけを見るのが営業利益です。一方、本業以外の飲食店の利益まで含めて考えるのが経常利益ということになります。
なお、経常利益では本業で営業利益が出ていても、営業外収益や営業外費用を足し引きするので、借入金の返済、利息の支払い負担が大きくなると、経常利益は小さくなります。会社全体の売上から、経費や利息の支払いを差し引いた数字だからです。したがって経常利益は、会社の経営成績について、最も把握しやすい利益といわれています。
経常利益や営業利益の計算方法の違い
経常利益と営業利益との違いを踏まえた上で、それぞれの計算方法についても押さえておきましょう。当然ながら、経常利益と営業利益とでは割り出し方にも違いがあります。
営業利益の算出方法
営業利益は、まず売上高から売上原価を差し引いて、その事業年度中の会社の儲けである、売上総利益を出します。その後、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引くことで、営業利益を割り出すことができます。
売上総利益を算出する際に差し引く売上原価とは、販売する商品やサービスなどの仕入れにかかった費用です。売上総利益は、粗利益や粗利と呼ばれることもあります。
また、販売費や一般管理費は、会社の本業に関する費用のうち、商品を販売するために仕入れた、仕入れ代以外の費用をいいます。
具体的に販売費は、営業活動のための費用のことで、人件費や広告宣伝費、販売手数料などが販売費となります。一般管理費は会社の運営や管理にかかる費用で、役員報酬や水道光熱費、家賃などを指します。
他にも、販売費及び一般管理費には下記のような費用が含まれます。当然ながら、販売費及び一般管理費の費用が多ければ多いほど、営業利益は少なくなります。
<販売費及び一般管理費に含まれる経費例>
- 販売手数料
- 運搬費
- 人件費(給与、賞与)
- 広告宣伝費
- 保管費
- 納入試験費
- 旅費交通費
- 接待交際費
- 通信費
- 役員報酬
- オフィス、店舗の家賃
- 水道光熱費
- 消耗品費
- 租税公課
- 減価償却費
- 修繕費
- 保険料
具体例とともに営業利益を算出してみましょう。
<営業利益の計算式>
- 営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費
例えば、売上総利益が2,000万円、販売費及び一般管理費が800万円だったとします。計算式に当てはめると、営業利益は「2,000万円-800万円=1,200万円」となり、会社の本業は黒字であると判断できます。
反対に、売上総利益が800万円しかなく、販売費及び一般管理費が2,000万円だった場合は、「800万円-2,000万円=▲1,200万円」となります。つまり会社の本業は赤字ということになります。
経常利益の算出方法
営業利益を算出すると、経常利益も割り出せるようになります。経常利益は、営業利益に営業外収益を足し、営業外費用を差し引いて算出するからです。
経常利益は、営業外収益が多く営業外費用が少なければ経常利益も大きくなりますし、営業外費用が大きければ大きいほど、経常利益は少なくなります。
なお、営業外収益と営業外費用は、具体的に下記のような費用が該当します。
<営業外収益に該当する費用>
- 受取利息
- 受取手数料
- 受取配当金
- 仕入割引
- 有価証券売却益
- 雑収入など
<営業外費用に該当する費用>
- 支払利息
- 社債利息
- 売上割引
- 手形売却損
- 手形割引料
- 有価証券売却損
- 有価証券評価損
- 雑損失など
では、具体例とともに営業利益を算出してみましょう。
<経常利益の計算式>
- 経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
例えば、ある事業年度の営業利益が500万円、営業外収益が300万円、営業外費用が100万円だったとします。この場合の経常利益は、「500万円+300万円-100万円=700万円」となり、経常利益は700万円の黒字であると判断できます。
反対に営業利益が300万円、営業外収益が100万円、営業外費用が500万円だと、「300万円+100万円-500万円=▲100万円」となります。つまり、マイナス100万円の赤字ということになります。
経常利益と営業利益との違いを理解した上で見えてくる関係性
営業利益と経常利益との違いが分かると、より会社の正確な状況把握にもつながります。ポイントは、営業利益は本業の状況を、経常利益は会社全体の状況を表すということです。
例えば営業利益が赤字で経常黒字が黒字だった場合、営業利益が黒字で経常利益が赤字だった場合との状況の違いを見ていきましょう。
営業利益が赤字で経常利益が黒字だったとき
営業利益が赤字で経常利益が黒字の場合は、本業に課題があるものの、会社全体で見た場合黒字の状態であると判断できます。
営業利益が赤字ということは、本業がうまくいっていない、あるいは悪化している状態ということです。しかし、経常利益が黒字であれば、本業以外の事業で何かしら収益があるといえるからです。例えば資産運用が順調である場合や、本業以外の別の事業が好調で収益があがった場合、貸付金の受取利息が大きかった場合などが考えられます。
営業利益が黒字で経常利益が赤字だったとき
営業利益が黒字でも、経常利益が赤字だった場合は、会社全体の経営状況としては赤字と判断できます。
営業利益が黒字ということは、本業自体は順調と判断できます。しかし、経常利益が赤字だと、本業以外の事業や資産運用、借入金の支払利息が大きいなどで事業全体がうまくいっていないと考えられます。
純利益と経常利益、営業利益との違い
営業利益が本業で得た利益、経常利益が事業全体で得た利益であるのに対し、純利益は事業年度内で発生したすべての収益から、すべての費用の支払いを差し引いた利益です。つまり、純利益は最終的に会社に残ったお金を意味します。
具体的に純利益は、経常利益から「特別収益」や「特別損失を」を足し引きし、さらに法人税等の税金の支払い分を差し引いて算出します。「特別収益」や「特別損失」は通常の経営活動には含まれない臨時的あるいは例外的な収益、損失のことです。
法人税等の支払い分を差し引いた利益であるため、純利益は、「当期純利益」、「税引後利益」、「最終利益」「当期純利益」といわれることもあります。
経常利益や営業利益、純利益の違いを理解した上でそれぞれを比較すると、最終的に会社に残る純利益が最も重要な指標に見えるかもしれません。ですが、事業全体の経常的な経営成績を把握するのであれば、経常利益が効率的といわれています。また、本業の業績だけを見るのであれば営業利益のほうが適しているケースもあるでしょう。
純利益より経常利益のほうが経営成績の把握に適しているとされるのは、純利益には特別収益・特別損失という臨時的、例外的な損益が加味されるためです。経常利益であれば、会社の資産運用益や借金利息なども把握でき、より正確な会社の収益力を判断することが可能です。
例えば、たとえ純利益が赤字になっても、経常利益が黒字の状態であれば、会社としては臨時の損失が出たものの、事業自体は順調だと判断することができます。反対に、純利益が黒字でも、経常利益が赤字だと何かの例外的な収益があって黒字になっただけで、事業自体は収益が悪化しており、改善策を講じる必要があると判断できるでしょう。
経常利益が継続して赤字の状態になると、会社として赤字体質になっている可能性があると考えられます。
まとめ
営業利益と経常利益との違いは、営業利益は単純に会社の売上から仕入れや経費を差し引いた利益を表すといえます。対する経常利益は、本業以外の収益も含めた事業全体の利益といえるでしょう。
それぞれの利益の違いを把握すると、例えば本業の利益だけを知りたい場合は営業利益、あるいは会社全体の経営成績は経常利益を見るなど使い分けることができるでしょう。また、営業利益と経常利益とを比較することで、会社の状況で「今何が順調か」、「どこを改善すればいいか」なども気づくことができます。
それぞれの利益の違いをしっかり理解した上で、見比べ、事業の状況を正しく把握していきましょう。