税金・税務

スタートアップ・ベンチャー企業に税理士は必要?依頼できる業務や費用を解説

スタートアップ・ベンチャー企業に税理士は必要?依頼できる業務や費用を解説

「スタートアップに税理士は必要なのかな?」とお悩みではありませんか。結論からいうと、どんな小さな会社であっても決算時には税理士の力が必要となります。

しかし、スタートアップと同時に税理士を頼るべきかは会社の状況によって異なります。

今回は、どのようなスタートアップ企業に税理士が必要なのかをわかりやすく解説します。税理士に依頼できる業務内容や、スタートアップで雇うメリット・デメリットにも言及しています。

スタートアップに強い税理士と契約を結び、さらに会社を発展させていきましょう。

スタートアップ・ベンチャー企業に税理士は必要?

スタートアップ企業やベンチャー企業であっても、決算時には税理士の力が必要となります。というのも、かならず確定申告をしなければならないからです。

法人の確定申告には多くの添付書類が必要となり、個人と比べて複雑になっています。どんな規模の企業であっても、決算期には税理士と契約をするべきと言えるでしょう。

また以下のような場合は、スタートアップと同時に税理士に依頼することをおすすめします。

  • 本業に集中したい経営者
  • 社内に経理・税務の専門知識のない会社
  • 決算時期や節税について専門家からアドバイスがほしい会社

上記にあてはまる会社は、税理士がいたほうが安心して事業拡大をしていけます。とくに経営者に税務知識がないのであれば、スタートアップの時点でアドバイスをもらった方が後々大きな節税につながります。

スタートアップ時にしかできないアドバイスもあるので、税理士との契約を前向きに検討しましょう。

スタートアップ時に税理士に依頼できる5つの業務

スタートアップ時に税理士に依頼できる業務は、主に5つの業務です。

  • 会社設立の手続きのサポート
  • 節税のアドバイス
  • 税務署へ届け出る書類作成・代行
  • 経理業務の代行
  • 融資や助成金のアドバイス

(1)会社設立の手続きのサポート

スタートアップを決めた段階で税理士に相談すれば、会社設立の手続きをサポートしてもらえます。定款の作り方や登記書類の作り方、申請方法についてアドバイスしてもらえるのです。

ただし、書類作成や登記申請の代理を税理士が請け負うことはできません。なぜなら、会社設立の手続きの代行は司法書士の独占業務だからです。

税理士に手続きの依頼をしても、書き方のアドバイスや流れの説明にとどまります。

なかには税理士によっては司法書士と連携して、すべて請け負ってくれることもあります。会社設立の手続きを全て任せたいと考えているなら、司法書士と連携している税理士を選びましょう。

(2)節税のアドバイス

早期に節税のアドバイスをしてもらえます。

とくにスタートアップ時に決めなければならない以下の2つのことは、税務に大きく関わってきます。

  • 資本金の額
  • 決算時期

資本金の額は消費税と住民税に影響

資本金の額は、会社設立後に支払う税金に大きく関わるため、慎重に決めなければなりません。というのも、資本金の額は消費税課税事業者の判定や法人税の税額に大きく影響するからです。

資本金1,000万円以上で会社設立をすると、事業初年度から消費税の納税義務が発生します。資本金1,000万円未満の事業者は、会社設立後2事業年度は原則として免税事業者として取り扱われます。

また、資本金の額は住民税にも影響します。住民税の均等割は資本金の額と従業員の数で変わるためです。

住民税の均等割とは、都道府県と市町村にそれぞれ定額で納める税金のこと。

都道府県や市町村によって税額は異なりますが、参考として大阪市・大阪府の税額を見てみましょう。

資本金 従業員数 市町村民税(大阪市) 道府県民税(大阪府)
1,000万円以下 50人以上 12万円 2万円
50人以下 5万円
1,000万円〜1億円以下 50人以上 15万円 7万5,000円
50人以下 13万円

資本金1,000万円以下で従業員が50人以下であれば、合計7万円の支払いで済みます。

しかし、資本金1,000万円を超えてしまうと従業員が50人以下であっても、合計22万5,000円支払わなければなりません。

赤字であっても法人税の均等割を納付する義務が発生するので、スタートアップ時には痛い支出となるでしょう。スタートアップで決めなければならない資本金の額は税務に大きな影響を与えます。

一方で、資本金が低すぎる額だと資金調達が難しくなるため、税理士のアドバイスをもらいながら資本金の額を決定することをおすすめします。

決算時期

決算時期をいつにすれば節税になるかをアドバイスしてもらえます。

決算期によって、消費税の課税事業者となる時期を1年ずらせるからです。繁忙期や大きな支出のある時期は避けるべきです。

しかし、税務面からのアドバイスを受けた上で決算期を決めることで、節税対策できることも覚えておきましょう。

(3)税務署へ届け出る書類作成・代行

スタートアップするときは、税務署や税金事務所への届出がたくさんありますが、すべて税理士が代行してもらえます。

具体的には、以下のような書類の提出が求められます。

  • 法人設立届出
  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 青色申告の承認申告書
  • 棚卸資産の評価方法の届出書
  • 減価償却資産の償却方法の届出書
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
  • 消費税新設法人に該当する旨の届出書

会社によっては必要のない書類もあり、必要書類を見極めることも労力を使います。また提出の期限も書類によって異なるため、管理に苦労するでしょう。

しかし、税務関係の書類はすべて税理士が代行して作成・提出できます。面倒に感じる方は、税理士を頼りましょう。

(4)経理業務の代行

経理業務の代理も税理士に任せることができます。たとえば、日々の記帳代行や財務諸表・試算表の作成などです。

税理士の独占業務ではありませんが、税務業務に近い内容といえます。というのも、日々の記帳に基づいて確定申告を行うため、ミスのない確定申告につながります。

面倒な会計業務をすべて任せられれば、経営者の負担を減らせるでしょう。

(5)融資や助成金のアドバイス

融資や助成金など、資金調達のアドバイスもお願いできます。

資金調達をしようとしても、必ず希望通りの資金が集まるとは限りません。融資や助成金を受けるためには、審査があるからです。

審査にあたり創業計画書や事業計画書、決算書などを揃えなくてはなりません。

創業計画書や事業計画書には助成金を出す行政が好む書き方があり、一定の経験やコツが必要です。税理士の力を借りることで、希望に近い額の資金調達がしやすくなります。

スタートアップでは、まだ実績のない状況で資金調達をしなければなりません。税理士の知恵を借りることで、資金調達の成功率を高められるでしょう。

スタートアップに税理士を雇う3つのメリット

スタートアップで税理士を雇うか迷っているのであれば、メリット・デメリットを知った上で判断すべきです。

スタートアップに税理士を雇うメリットは、3つあります。

  • 経営者が本業に集中できる
  • 税の正しい知識を得られる
  • 経営におけるアドバイスをしてもらえる

(1)経営者が本業に集中できる

税理士を雇えば、経営者は本業に集中できます。

会社を設立すれば、多くの税務関係の届出や日々の記帳をしなければなりません。経理や税務の知識を持った役員や従業員がいれば任せられますが、いない場合は経営者が行うことになります。

しかし、実際のところスタートアップ時期は本業に集中したいものです。

顧客を開拓したり、サービスや商品を開発したり、やらなければならないことがたくさんあります。一番本業に集中したい時期に税務関係の業務を任せられることは、大きなメリットといえるでしょう。

(2)税の正しい知識を得られる

税理士から税の正しい知識を得ることができます。つまり、早々に節税対策や正しい確定申告をする準備ができるのです。

インターネットで調べれば多くの情報が出てきますが、なかには間違った情報もあるのも事実です。間違った情報を鵜呑みにすると、節税をしていたつもりが脱税とみなされる恐れもあります。

税理士を雇えば、自社にあった節税対策のアドバイスを受けられるので、正しい確定申告ができるのです。

(3)経営におけるアドバイスをしてもらえる

税理士目線で経営アドバイスをもらえることは、大きなメリットです。

事業を継続していく上でキャッシュフローや財務状況を詳しく知ることは、欠かせません。日々記帳をしていても、知識がなければ見逃してしまう課題は多々あります。

税理士であれば月々のキャッシュフローを見て、以下のようなアドバイスをくれるはずです。

  • 最適な在庫量
  • 売掛金・買掛金の管理方法
  • キャッシュを多く残す方法

また、資金調達の方法や他の企業との協業など、経営者だけでは把握できないことも教えてもらえるでしょう。税理士ならではの目線で、会社の安定・発展につながるアドバイスが期待できます。

税理士を雇うデメリットは一定の費用がかかる

税理士を雇うデメリットは、一定の費用がかかってしまうことです。

スタートアップ時に税理士に業務を依頼する場合、顧問税理士を前提とするケースが多いです。顧問税理士を雇うのであれば、最低でも月々2万円の報酬が発生します。

売り上げの目処が立っていなければ、大きな負担になるかもしれません。というのも、売り上げが少なければ大きな節税につながることが少なく、顧問料の方が高くなるからです。

顧問契約のメリットが少ないと感じるのであれば、スタートアップ時から顧問税理士を雇う必要はないでしょう。

会社設立でかかる費用

会社設立の手続き自体にも、費用が発生するので注意しなければなりません。

株式会社と合同会社で必要な費用が変わります。税理士や司法書士に依頼しなくても、必ず発生する費用です。

会社の種類 費用 費用の内訳
株式会社 24万円程度
  • 定款認証手数料(50,000円)
  • 定款印紙代(40,000円)
  • 定款謄本(2冊で2,000円程度)
  • 登録免許税(150,000円〜)
合同会社 10万円程度
  • 定款印紙代(40,000円)
  • 登録免許税(60,000円〜)

※電子認証なら無料

スタートアップには、多くの費用が必要であることを理解しておきましょう。

顧問契約するなら月額費用が発生する

税理士と顧問契約をするのであれば、月額費用が発生します。

記帳代行も依頼するなら、業務量によって月々1万円〜の費用が必要です。

依頼内容 費用の相場
顧問契約
  • 売上1億円未満:月々2万円〜3万円程度
  • 売上1億円以上:月々5万円以上
記帳代理 仕訳量に応じて月々1万~3万円以上

財務状況レポート・経営アドバイスを受けたいときは、顧問契約を結ぶことになります。不要だと判断するのであれば、決算時期にスポット契約を結びましょう。

顧問契約を結ぶなら低コストで会社設立サポートが受けられることも

税理士と顧問契約を結ぶのであれば、低コストで会社設立のサポートが受けられるかもしれません。

司法書士に会社設立の手続き代行を依頼すれば、10万円程度の報酬が発生します。しかし、顧問契約を結んだ税理士に司法書士とのパイプがあれば、会社設立の手続き代行も顧問契約に含まれていることがあるのです。

もちろん、税理士によって顧問契約の内容は異なります。事前に確認をした上で、会社設立のサポートも依頼しましょう。

スタートアップ支援に強い税理士を見極める4つのポイント

メリット・デメリットを見た上で、「税理士の力を借りたい」と考える経営者もいらっしゃるでしょう。せっかく契約をするのであれば、スタートアップ支援に強い税理士選びたいですよね。

スタートアップ支援に強い税理士を見極めるには、以下の4つのポイントを確認しましょう。

  • 会社設立の手続きをサポートしてくれる
  • 業界知識を持っている
  • 節税方法を具体的に教えてくれる
  • ほかの士業とのつながりがある

(1)会社設立の手続きをサポートしてくれる

会社設立の手続きをサポートしてくれる税理士を選びましょう。

登記申請や定款認証は、会社設立に不可欠な手続きです。書類の作成方法や申請までの流れを教えてもらうことで、経営者の負担は大幅に軽減します。

顧問契約を結ぶ前に、会社設立の手続きのサポートを受けられるのか確認しましょう。

(2)業界知識を持っている

自社が参入していく業界知識を持っている税理士を選びましょう。なぜなら、業界によって税金対策や会計処理方法が異なるからです。

とくに、近年活発になってきたインターネットを使った広告収入やIT・AI業界は、一定の知識がなければ誤った会計処理をしてしまいます。さらに、経営や融資のアドバイスをしてもらいたい場合、詳しい人でなければ的確なアドバイスをもらえません。

自社と同じ業種の会社の顧問をしているか質問し、業界知識があることをチェックしておきましょう。

(3)節税方法を具体的に教えてくれる

会社の節税方法を具体的に教えてくれる税理士を選びましょう。

決算時期や資本金についてアドバイスをしてくれる税理士であれば、スタートアップから契約を結ぶメリットが最大化されます。というのも、事業開始年度から税金の額に大きな影響を与えるからです。

なかには、質問されたことしか答えてくれない税理士もいます。「今から税金のために対策できることはありますか?」と質問をして、具体的なアドバイスがもらえるか確認しましょう。

(4)ほかの士業とのつながりがある

ほかの士業とのつながりを持っている税理士を選びましょう。というのも、効率よくさまざまな専門家の力を借りれるからです。

新しい専門家が必要となるたびに探したり契約を交わしたりしていれば、時間と労力がかかってしまいます。

しかし、1人の税理士から紹介してもらえば、すぐに課題を解決できるのです。

税理士と契約を結ぶのであれば、以下のような専門家とのつながりがあるか確認してみましょう。

  • 司法書士
  • 行政書士
  • 社労士
  • 弁護士

とくに、会社設立の手続きを代行できる司法書士の力は不可欠です。許認可の取得をする予定であれば、行政書士の力も必要となるでしょう。

スタートアップ時期だからこそ、ほかの士業とのつながりを重視して税理士を選ぶべきです。

税理士法人きわみ事務所ならスタートアップ支援が充実!

税理士法人きわみ事務所では、スタートアップ支援が充実しています。

理由として、以下の3つの特徴が挙げられます。

  • 会社設立サポートが充実
  • 会社経営に特化
  • 他の士業とのワンストップサービスを実現

会社設立サポートが充実

税理士法人きわみ事務所は、会社設立のサポートを充実させています。

司法書士や社会保険労務士とのネットワークがあるため、会社設立に必要な手続きは代行することが可能です。手続きだけでなく、資金調達や事業計画書の作成についてもアドバイス。

事業内容に見合った会社体系についても助言いたしますので、最適な形でスタートアップできます。

会社経営に特化

税理士法人きわみ事務所は、会社経営に特化した税理士事務所です。税理士の専門である税金だけでなく、経営全般についてアドバイスもいたします。

代表税理士は、ITベンチャーを経験してさまざまな問題を解決してきました。スタートアップの苦労もよく理解しているので、経営者に寄り添ったアドバイスをいたします。

頭で思い描いている事業計画を数値に落とし込むことで可視化し、不安を一掃した状態で経営をしていくことが可能です。困ったときに思い浮かべていただけるような、身近な存在として経営者に寄り添います。

他の士業とのワンストップサービスを実現

税理士法人きわみ事務所には、きわみグループとして税理士・弁護士・社労保険労士といった専門家も所属しています。顧問税理士1つの窓口で、会社経営をワンストップでサポートすることが可能です。

税理士だけでなく、ほかの士業と連携をすることで、税務・会計・労務・法務といった観点から経営状態を分析いたします。

顧問税理士だけでなく、他の専門家の意見を聞くことで会社経営の可能性を広げましょう。

おわりに

スタートアップにおける税理士の主な役割は、3つあります。

  • 会社設立の手続きのサポート
  • 節税のアドバイス
  • 税務署へ届け出る書類作成・代行

上記が不要であれば、起業と同時に契約する必要ありません。というのも、スタートアップ時にはお金が必要なので負担が増えるからです。

ただし、税務知識がないと会社の根幹に悪影響を与えることも。決算時には確定申告をしなければならないため、いずれ税理士を雇うことになります。

売り上げが多かったり本業に専念したい場合は、早めに税理士と契約を交わしましょう。スタートアップから税理士の力を借りることで、賢く税金と向き合えます。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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