会社を設立したものの、どのような節税対策を行えばいいのか分からず、何もできずにいる人も少なくありません。しかし、「社会保険料」「役員退職金」「出張旅費」「福利厚生」などは比較的誰でも取り組みやすい節税対策の方法として挙げられます。
今回は、実際に節税できる事例として「社会保険料」「役員退職金」「出張旅費」「福利厚生」の4つの具体例について解説していきます。
事例①社会保険料
法人税の税率が下がっていることから、会社を設立したいという人も増えてきていますが、一方でどうしても必要な費用が発生します。
まず、社会保険の加入があります。社会保険料は会社と社員が折半で支払うため、社員にとってはメリットのある制度です。
しかし、オーナー側からすると、全額自分で負担しているようなものなので、いかに社会保険料を抑えるかが重要と言えます。社会保険料率を抑える方法について見ていきましょう。
社会保険料を抑える4つの方法
社会保険料は、報酬を支払うことで発生するほか、報酬の額で変動するものです。社会保険料を抑えるには以下の4つの方法があります。
- 報酬をゼロにする(法人税を負担する)
- 非常勤役員を活用する
- 給与以外で支払う(非課税)
- 給与以外で支払う(課税)
役員報酬が支払われると、社会保険の負担が発生します。しかし、役員報酬を支払わないことで社会保険の負担がなくなります。報酬が支払われない分、会社に利益が残ることになりますが、法人税率が低いため節税効果が期待できます。
役員の中でも、非常勤役員は社会保険の加入が任意です。勤務実態で非常勤および常勤の区別が行われるので注意しましょう。
会社で生命保険を掛ける、自宅を社宅利用する場合などには、会社から給与以外の報酬としてお金を受け取りますが、法人税は非課税です。また、個人がお金を会社に貸している場合には、給与以外の報酬として利息を受け取りますが、所得税の課税対象である点には注意しましょう。
事例②役員退職金
節税対策として役員退職金を一時的な経費として計上する方法があります。
役員退職金とは何なのか、またどのような節税効果が見込めるのかについて見ていきましょう。
役員退職金とは
役員退職金とは、役員が退職する場合に受け取ることができる退職金のことです。退職金は、給与所得ではなく退職所得として扱われるため、損金として会社の利益削減や社会保険料の軽減につなげることができます。
また、役員退職金を受け取った役員も勤続年数に応じて、退職所得控除額で大きく控除できるほか、一定の場合には控除後の所得も半分にできるというメリットがあります。
しかし、これらの役員退職金は、会社で事前に退職金規定などを作っておく必要があるので注意しましょう。
事例③出張旅費
節税対策として、出張旅費を一時的な経費として計上するという方法があります。
出張旅費とは何なのか、またどのような節税効果があるのか見ていきましょう。
出張旅費とは
出張旅費とは、出張に出かけた際に日当を払うというものです。出張旅費は、通常支払われる給料とは扱いが異なり所得税が非課税になるうえ、損金として会社の利益削減や社会保険料の軽減につなげることができます。
こちらも先ほどの役員退職金のケースと同様、出張旅費に対して会社であらかじめ出張旅費規定などを作っておく必要があります。
出張旅費規程を定める際は、「支払いの対象者が一部ではなく全社員であること」「支給金額の設定が妥当であること」「出張報告書を作成すること」などの条件を含んでいる必要があります。
出張旅費の支払い対象が一部だけ、出張旅費が常識の範囲外、報告書も適当である場合は、税務調査で損金算入を認めてもらえない場合もあるので注意しましょう。
事例④福利厚生
福利厚生という言葉を多くの人が耳にしたことがあると思いますが、どう節税と関わっているのか知らない人は多いはず。
福利厚生とは何なのか、またどのような節税効果があるのか見ていきましょう。
福利厚生とは
福利厚生とは、会社から支給される給与や交通費以外の給付や何らかのサービスを受けられるもので、従業員の生活を向上させ、労働意欲を高めるものです。
この中でも、福利厚生費は、条件を満たした場合に、会社は経費として算入できるほか、受け取る側も給与以外の所得として非課税になるメリットがあります。
例えば、社員に対する社宅や寮の貸与、社員のレクリエーション旅行や研修旅行、慶弔見舞金、健康診断費用などが福利厚生費として認められます。
福利厚生費として認めてもらうには、出張旅費のケースと同様、社内規定の整備ができているか、対象者が社員全員か、常識の範囲内の金額かなどの条件を満たしているかが問われるため、しっかりと福利厚生費について定めておきましょう。
まとめ
節税対策の中には、難しい知識が必要になるものもあれば、「社会保険料」「役員退職金」「出張旅費」「福利厚生」などのように、比較的多くの会社が取り入れている簡単にできる節税対策もあります。
簡単にできるとは言っても、あらかじめ規定を定めておかなくてはならないものもあるため、しっかりとチェックして、規定に漏れがないか確認しておきましょう。