経理担当者の人は、決算が終われば消費税の処理に終われ、気が休まる時期がありません。さらに消費税率が変わったともなれば、納める消費税や地方消費税の金額にも変化がでてきます。
また、地方消費税の計算を行う上で注意したいこともいくつかあります。計算に含まないものなどがありますので記事内で詳しく紹介します。
コロナウイルスによる給付金支給後は消費税率が上がるとも言われています。今回は地方消費税の計算方法などを詳しく紹介していきます。
地方消費税とは?
「地方消費税と消費税の違いがいまいちわからない」と悩む経理担当者は多いのではないでしょうか。実はどちらも商品やサービスの取引にかかってくる税金です。
- 消費税:国に納付する(国税)で納税義務のある業者は全て納付
- 地方消費税:都道府県や市町村に納付する(地方税)
納付する場所が違うだけで、どちらも消費税と呼ばれます。特に地方消費税は消費税と共に税務署に納付しているので、気づかない人も多いです。
売上や、会社の規模によっては軽減もしくは免除される場合もあります。昨年の納税状況などを合わせてチェックすればどれほど納税するのかなどはわかりますが、詳しいことは担当税理士に聞くのがよいでしょう。
地方消費税も一定条件を満たしていれば払うことが義務付けられているので、払いもれなどが無いように普段から経理担当者たちで話し合っておくことが大切です。また、期限もありますので早めに準備しておくとよいでしょう。
地方消費税の計算方法
実際に地方消費税の計算方法をチェックしていきましょう。
適用時期 | 令和元年10月1日以後 | (参考)令和元年9月30日以前 | |
---|---|---|---|
標準税率 | 軽減税率 | ||
消費税率 | 7.8% | 6.24% | 6.3% |
地方消費税率 | 2.2% (消費税額の22/78) |
1.76% (消費税額の22/78) |
1.7% (消費税額の17/63) |
合計 | 10.0% | 8.0% | 8.0% |
一覧表をみてもわかることですが、令和元年の9/30以前と10/1で税率には変わりがあるので、計算する時には注意が必要でした。
- 国内取引
課税売上高(税抜き) × 税率 - 課税仕入高(税抜き) × 税率 - 輸入取引
(関税課税価格+関税等) × 税率
上記のように計算すれば地方消費税を計算できるのでチェックしてみてください。
また、地方消費税を算出する際には軽減税率が適用されるのか、標準税率が適用されるのかしっかり確認してから計算するようにしましょう。間違った金額で納税すると後々の処理が面倒になってしまいます。
地方消費税を納付するタイミング
地方消費税を納付するタイミングを明確にしていきましょう。
- 個人事業者…翌年1月1日~12月31日の期間分として税務署に申告して納める
- 法人…原則として税務署に申告して納める
上記の通りで、個人事業主と法人化している会社とでは、消費税率を納付するタイミングに違いがあります。
納付の必要がある場合には、期限が過ぎてしまわないよう注意してください。
納税は義務です、この処理が適切に行われない場合は企業としてペナルティをうける原因にもつながります。ですので、納税タイミングを逃さぬよう早め早めに処理しておくことが大切です。
中間納付方法
納付するタイミングは基本的に年に1回とされていますが、一定額を超える場合は中間申告(中間納付)が必要になります。
具体的な金額としては前年度の年税額が48万円以上の場合です。ただし、これには地方消費税は含まれていませんので経理担当者として覚えておく程度で問題ありません。
直前の課税期間の確定消費税額 | 48万円以下 | 48万円超から 400万円以下 |
400万円超から 4,800万円以下 |
4,800万円超 |
---|---|---|---|---|
中間申告の回数 | 原則、中間申告不要 ただし、任意の中間申告制度あり(注2) |
年1回 | 年3回 | 年11回 |
中間申告提出・納付期限 | 各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2月以内 | (図1のとおり) | ||
中間納付税額(注3) | 直前の課税期間 の確定消費税額(注1)の6/12(注4 ) |
直前の課税期間 の確定消費税額(注1)の3/12(注4 ) |
直前の課税期間 の確定消費税額(注1)の1/12(注4 ) |
|
1年の合計申告回数 | 確定申告1回 | 確定申告1回 中間申告1回 |
確定申告1回 中間申告3回 |
確定申告1回 中間申告11回 |
引用:国税庁 中間申告の方法
具体的な金額や申告対象者は国税庁のホームページをチェックすればすぐにわかるので参考にしてください。
また、納付する際には消費税および地方消費税の確定申告書と納付書を使う必要がありますので、もし中間納付が必要な場合はギリギリに紙をもらうのではなく早めにもらっておきましょう。
先に資料をもらっておいて日付などを記載しておけば忘れることはありませんし、なにより早めの処理を心がけるはずです。
また、中間申告はあくまでこのくらいの金額になるだろうというものなので、仮払いとして処理されることがほとんどでです。また、消費税及び地方消費税の確定申告書を利用して納税処理を行った場合税額がマイナスでも還付されることはないので注意してください。
地方消費税と消費税の違いとは?
明確な違いは、国税なのか地方税なのかという点でどちらも消費税等とまとめて呼ばれています。
- 消費税:国に納付する(国税)で納税義務のある業者は全て納付
- 地方消費税:都道府県や市町村に納付する(地方税)
冒頭でも紹介した通りですが、上記のような違いがあります。
地方消費税は1997年に税率を5%に引き上げた時に導入されました。国の財政だけでなく地方の財政も厳しくなったことから新しく導入され、現在では消費税等というくくりで呼ばれているのです。
そのため、実務でなんとなく行っていることでも、実際には聞いたことがなく違いがよくわからないという人が多いのではないでしょうか。
納付する場所が違うだけで、同じ消費税ですので業者が申告するタイミングは同じになります。ただし、国税と地方税は別々に計算して申告する必要があるので、計算方法は覚えておきましょう。
冒頭からも紹介してきた通り、納税義務のある税金ですので適当に処理せず適切に処理をしておきましょう。
地方消費税で知っておきたいこと
地方消費税についての知識が高まったと思いますが、経理担当者として地方消費税を計算、算出する上でしっておきたいことがいくつかあります。
- 非課税対象
- 輸出免税
それぞれ解説していきます。地方消費税を計上する際に必ず必要になるので覚えておいてください。
地方消費税で知っておくべきこと:非課税対象
消費税は基本的にサービスや商品などを取引した際にかかる税金ですが、取引内容や社会的に配慮された取引もあり、そういったものは非課税対象となります。
「とはいえそれはどんなもの?」と疑問に思う担当者もいるでしょう。具体的には以下のようなものが非課税対象となってきます。
- 土地の譲渡・貸付け
- 有価証券等の譲渡
- プリペイドカ-ド・商品券の譲渡
- 行政手数料
- 介護保険サービス等
その他にもありますが「これはどうなんだろう?」と思い悩んでしまった時にはしっかりとした知識のある税理士か、国税庁に問い合わせを行うのがおすすめです。
ちなみに、非課税取引のものだけでなく不課税取引の給与や株の配当などにかかる経費も対象にはなりませんので注意してください。
地方消費税で知っておくべきこと:輸出免税
輸出や国際輸送などの取引を課税事業者が行っていても、消費税が免除される輸出免除というものもあります。
- 国内からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け(典型的な輸出取引)
- 国内と国外との間の通信又は郵便若しくは信書便
- 非居住者に対する鉱業権、工業所有権、著作権、営業権等の無体財産権の譲渡又は貸付け
- 非居住者に対する役務の提供
ただ、上記に当てはまるからという理由で勝手に免税処理にすることはできません。輸出免税に当たる取引であるという証明書が必要になるので注意してください。
もしわからない場合は、勝手に判断するのではなく顧問の税理士など専門的な知識を持ち合わせている人に聞くのがよいでしょう。
適当な判断で処理を進めてしまうと、後々数字が違うなどの問題になりかねませんし、たとえそれで納税義務を果たしたとしても金額が間違っていますので、機になること間違いなしです。
特に多く支払ってしまった場合は、その旨を伝える必要もあることや、どこが間違っていたのかなどチェックの必要が出てくるので注意してください。
地方消費税も適切な管理を
地方消費税は消費税等として普段まとめられているので、あまり耳にする機会がないかもしれませんが、経理担当者としては必ず知っておく必要のある税金の一種です。
大きな違いは、国に納付するのか地方に納付するのかという点です。同じように申告を行いますが、計算はそれぞれ別に行う必要がありますので覚えておきましょう。
申告回数も企業や個人事業主の売上によって中間申告をしたり、しなかったりと様々な違いがあります。
また、取引によっては免除されるものもありますのでもしわからないことがある場合は国税庁に問い合わせるとよいでしょう。
地方消費税の計算などは大体年に1度〜2度しかおこなわないため、処理がわかりにくくなっている人も多いはずです。経理的負担を少なくするためには、普段からの帳簿の付け方などを丁寧におこなうことが大切です。