税金・税務

税務調査がよく来る時期は?入られやすい事業主の特徴と調査方法を解説

税務調査がよく来る時期は?入られやすい事業主の特徴と調査方法を解説

税務調査には、「入りやすい時期」と「入りにくい時期」があります。本記事では「税務調査が入る時期やタイミングについて詳しく知りたい」という人に向けて次のポイントを解説していきます。

  • 税務調査が入りやすい時期と入りにくい時期
  • 税務調査が入る場合の連絡方法とタイミング
  • 税務調査が入りやすい個人事業主・法人の特徴

本記事を読むことで、税務調査に関することを網羅的に把握することができるため、余裕を持って申告の対策を行うことが可能になるでしょう。まずは税務調査が入りやすい時期と入りにくい時期について詳しく見ていきます。

税務調査が入りやすい時期と入りにくい時期

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税務調査は、入りやすい時期と入りにくい時期に分けられます。以下にて、詳しく見てみましょう。

税務調査が入りやすい時期

税務調査は基本的に、全期間を通して入る可能性はあるのですが、7月~12月にかけては特に税務調査が多い傾向にあります。税務調査官にとって、7月~12月の間に不正事案を見つけることが人事評価アップにつながりやすくなるからです。

税務調査官の仕事は多岐にわたります。不正事案の発見は営業職でいうところの成約になるため、いかに多くの調査をするかが税務調査官にとっての肝になるのです。特に7月10日は税務調査官の人事異動の日であるため、「転勤したばかりだから早く結果を出したい」と気合いの入った税務調査官が多くなりがちです。

実際、税務調査官のまとめ役にあたる統括国税調査官は、7月から12月にかけて集中的に調査の指示を出しています。したがって、税務調査が入りやすい時期は7月~12月であるといえるのです。

相続税の場合は申告から1~2年目

相続税の場合は、申告から1~2年目に税務調査が入りやすく、基本的に5年を超えると税務調査が入る可能性はほとんどありません。相続税は5年を超えると、たとえ税務調査の対象であったとしても「時効」とみなされるため、法的に支払う義務がなくなるからです。

ただし、脱税等の悪質な税務処理をしている場合は時効が7年に延長されるケースもあります。例えば、2021年11月1日に相続税の申告をした場合、2022年11月1日~2023年10月1日までは税務調査が入る可能性が高く、2026年11月1日までは可能性が低いものの税務調査が入る可能性があります。

国税庁が公表している数字によると、年間約1万2,500件ほどの税務調査が行われているのに対し、相続税の申告は11万件を超えています。つまり、申告者のおよそ10%が税務調査の対象になっているということです。

参考:国税庁『平成30事務年度における相続税の調査等の状況』

税務調査が入りにくい時期

税務調査が入りにくい時期は2月~3月です。この期間はよほどの悪質な事案でない限り、税務調査に入られることがありません。なぜなら、2月~3月は税務調査官と税理士にとって最も忙しい時期だからです。

税務調査を行う場合は、税理士の立ち会いが必要になります。税務調査官と税理士の双方が繁忙期である確定申告の期間に、わざわざ税務調査を行うメリットがないという点も理由に挙げられるでしょう。

開業して3年経過すると税務調査が入りやすい!多いのは何月?

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税務調査は、どのような時期であっても入る可能性はあります。「○年経過すると必ず調査が行われる」といった断定はできませんが、一つの目安として、開業から3年経つと税務調査が入りやすくなる傾向にあります。

月単位で最も多いのはやはり7月~12月の期間です。その中でもピークの時期について詳しく解説していきます。

税務調査が行われるピーク時期は8月中旬~11月中旬

先ほどから7月~12月にかけて税務調査が多いと述べましたが、さらに詳しく言うと8月中旬~11月中旬にかけてが税務調査のピーク時期になります。

前述した通り、7月10日から人事異動で新しい税務調査官が加わり、税務調査先の選定作業が開始するのですが、「税理士の都合」「選定作業の工数」などを考慮すると実質的には8月中旬から調査が本格化します。

そして税務調査官は、遅くとも年末までに「補完調査の実施」「決議書の提出」などを実施して署長や副署長に報告する必要があるため、必然的に8月中旬~11月中旬にかけて税務調査先が決まることが多くなるのです。

税務調査が入った場合の調査期間

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税務調査が入った場合の調査期間は、個人事業主と法人とで期間が異なります。個人事業主の場合は、半日もしくは1日のあいだ事務所に臨場したのち、最終的な調査を行うために大体1~2ヶ月を要します。法人の場合は、税務調査官が2日間、事務所に臨場したのち、最終的な調査を行うために大体2~3ヶ月間を要します。

税務調査の期間が3ヶ月を超える場合は、税務署内の幹部に調査が長引いている理由を説明しなければいけなくなるため、相対的に3ヶ月以内で税務調査が終了する可能性が高くなるのです。

もちろん事案によっては3ヶ月を超える場合もあります。どのような場合に3ヶ月を超える可能性があるのか、詳しく見てみましょう。

税務調査が3ヶ月を超える場合もあり!その理由とは

税務調査が3ヶ月を超える場合の理由として、次のケースが挙げられます。

  • 納税した側が調査に協力的ではない
  • 調査先が多岐にわたるような困難な事案になっている
  • そもそも申告をしていない

これらの中でも特に、申告をしていないケースは調査が長引く可能性が高いです。

また、担当する税務調査官の調査能力によっても期間にバラつきが生まれることもあります。

税務調査が決定するとどんな連絡がくる?

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税務署で調査先が決定した場合は、事前に電話がきたり、顧問税理士を通して税務調査決定の通知がきたりします。証拠隠滅が疑われている場合は突然、税務調査官が事務所に来る場合もありますが、基本的には「資料が揃っていない」「申告に関係する社員の不在」などで時間をロスしてしまわないように事前の連絡がきます。

ただし、どのタイミングで税務調査官から連絡がくるかはわかりません。事前連絡に関しては法律の規定がなく、調査対象の状況によって連絡をするべきタイミングが異なるからです。こういった旨を国税庁は公式に回答しています。

参考:国税庁『税務調査手続に関するFAQ』

調査方法は「任意調査」「強制調査」の2種類がある

任意調査は、税務署にグレーと判定されている事業者に関わらず、申告に問題がないケースでも対象となる場合があります。強制調査は、税務署に困難な事案であると判定されている場合が多いです。以下にて詳しく見てみましょう。

任意調査

任意調査は、あくまでも任意であるため「受ける」「受けない」を事業者が選択することができます。しかし、拒否すると何らかの罰則を受ける可能性があるため、実質的には拒否をするという選択肢が取りづらいです。

査方法としては、書類をもとに税務調査官や税理士と話し合いをする形で進めていきます。

調査結果によっては追徴課税を課される場合もありますが、適切な申告を行っているという判定を受ければ確認だけで調査を終えられます。また、最初から適切に申告を行っていると判定を受けた事業主であっても「念のための確認」として調査が実施されることもあります。

強制調査

強制調査は、税務署が「悪質で困難な事案である」と定めた事業者に対して行われる強制的な税務調査です。強制調査の場合、税務署は裁判所から強制調査許可令状を受け取っているため、調査を拒否することができません。また、事前連絡もないため突然、事務所や会社に税務調査官がやってきます。

調査により悪質であると認定された事業者は、追徴課税に加え、刑事告発を受ける可能性もあるため注意が必要です。

税務調査の対象になりやすい個人事業主・法人の特徴

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以下では、税務調査の対象になりやすい個人事業主・法人の特徴を紹介していきます。対象になりやすい業種についても解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

税務調査が入りやすい個人事業主の特徴

税務調査が入りやすい個人事業主の特徴は次の通りです。順番は調査が入りやすい順になっています。

  • 開業から3年が経過している
  • 売上が多く、事業の規模が法人並みに大きい
  • 顧問税理士をつけていない
  • 事業所得以外にも複数の所得がある
  • 所得金額が著しく少ない

税務調査が入りやすい業種は次の通りです。

  • 畜産業
  • 風俗業
  • 飲食業
  • 美容業

これらの業種であることに加え、上述した特徴にあてはまる場合は、税務調査が入りやすいと思っておきましょう。

税務調査が入りやすい法人の特徴

税務調査が入りやすい法人の特徴は次の通りです。順番は調査が入りやすい順になっています。

  • 一部上場など事業規模の大きい法人
  • 過去に追徴課税があった法人
  • 同業他社と比較して利益率などが異常に高い法人
  • 売上や所得に大きな波がある法人
  • 特別利益・特別損失が多額の法人

税務調査が入りやすい業種は次の通りです。

  • 賃貸業
  • 不動産売買業
  • 電気・通信工事業

これらの業種に加え、業務委託が多数発生する土木・建築業も税務調査が入りやすい傾向にあります。

税務調査には常に備えておくことが重要

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本記事では、「税務調査が入りやすい時期」「税務調査が入りやすい法人の特徴」などについて解説してきました。

税務調査は、開業して3年後の7月~12月の間に入ることが多いです。個人・法人に関わらず、個々のケースにより調査期間や調査通知のタイミングなどが異なることもわかっています。ですから、事業者はどのようなタイミングに税務調査が来ても対応できるよう、常に備えておく必要があるのです。

よくある誤解として「税務調査は恐ろしいものだ」というイメージを持った人がいますが、税務調査の目的は申告の誤りを直すための指導であるため、怯えながら待つことはありません。税務調査官が強制的に書類を押収したり、あらゆる引き出しを開けられたりすることもありません。税務調査の通知を受けた場合は、税理士と相談して冷静に対応することが重要です。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

東京都千代田区にある税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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