税務調査は法人・個人問わず緊張が走る場面です。
業務にも影響が出るため、その期間を気にする方も多いでしょう。
この記事では税務調査を実施する期間や、調査の対象となる年数、帳簿書類を保存しなければいけない期間、税務調査の頻度などの「期間」に注目して詳しく解説していきます。
税務調査が実施される期間(日数)は?
まずは税務調査が実施される日数について説明します。
ひとくちに税務調査といっても、個人と法人、そして規模によって実施日数が異なります。
個人の場合
個人に対する税務調査の場合、相続税や所得税などが中心。
一部の高額所得者を除いて、個人に対する税務調査は半日から1日で済むことが多いです。
というのも、個人の場合は法人よりも事業規模が小さいため、長い間調査を行っても税金をあまりとることが出来ません。そのため事前に申告書などを調べて、誤りがある点などに目星をつけてきます。
ある程度論点がはっきりしているため短期間で調査が終わることが多いといえるでしょう。
法人の場合
法人の場合、税務調査の日数は2~3日間とすることが多いです。
たとえば3日間の税務調査の場合、次のように調査が進みます。
- 1日目午前:調査官と社長、経理部長や税理士が会議室に集まり顔合わせ。調査官から社長に対して、事業の概要や社長個人の経歴などの聞き取り
- 1日目午後:調査官から経理部長や事業責任者に対して事業の詳しい内容や、経理の状況などの聞き取り。聞き取りに並行して、帳簿や資料の確認。
- 2日目:引き続き関係者の聞き取りと資料の確認。調査官から随時書類を追加で出すように求められます。事業の詳しい確認のため、係長や担当者クラスまで聞き取りすることもあります。
- 3日目:2日目の内容を継続。調査の最後には調査官から総括という形で報告があることも。
基本的に調査官は1日目で会社の事業内容を把握し、経験上どこに税務処理の間違いが起きやすいか見当をつけます。
そして2日目以降の詳しい聞き取りや書類確認などを通じて、どんどん核心に迫っていきます。
税務調査の対象期間は?
つぎは税務調査の対象になる期間(年数)について。
結論から言いますと、税務調査はまず直近3~5年間を対象にし、もし脱税などが疑われた場合には、さらに2年さかのぼって合計7年間を対象にします。
税務調査には2種類ある
税務調査には大きくわけて任意調査と強制調査の2つの種類があります。
- 任意調査:一般的な税務調査で、大半の調査が任意調査にあたります。
- 強制調査:脱税などの疑いのある法人や個人が対象。国税査察官と呼ばれる専門官が強制力をもって調査や証拠の押収をしていきます。
強制調査はかなり悪質と思われる企業を対象にするので、調査の対象期間も長くなりがち。しかし一般的に行われる税務調査は任意調査が大半ですので、以降は任意調査を中心に説明していきます。
調査の対象は3~5年が基本
任意調査ではまず見るのは直近の3~5年間。
税務署には「更正決定」という、「納税者から正しい申告がなかったときに正しい金額に改める権利」が認められています。
税法には「5年経った税金は更正決定できない」旨の規定があるため、調査の対象も原則として5年が限度となります。
更正決定等は、当該各号に定める期限又は日から五年(第二号に規定する課税標準申告書の提出を要する国税で当該申告書の提出があつたものに係る賦課決定(納付すべき税額を減少させるものを除く。)については、三年)を経過した日以後においては、することができない。
(法令の根拠:国税通則法70条)
なおこの3~5年というのは、申告書の申告期限で考えます。
たとえば3月決算法人の場合で、2021年8月に調査が入ったと仮定。
申告が済んでいるのは2021年3月までですので、この場合の調査の対象になるのは2016年4月から2021年3月の各事業年度となります。
また、すべての調査で5年間みるというわけではなく、多くの調査ではまず3年間をみます。調査官にとっても調査にかけられる日数が限られているので、対象の期間を絞っているともいえるでしょう。
3年分の調査で申告内容に誤りがない、あるいは軽い誤りしか見当たらない場合には3年分で調査が終わりになることも少なくありません。
ただし、3年分の調査で大きな誤りなどが見つかった場合は、範囲を広げて5年分を調査します。
さらに脱税などの不正行為が疑われる場合には調査の対象を7年間に広げます。
疑わしい場合の調査の対象は7年
さきほど調査の対象は5年までとお伝えしました。
実は税法には「不正行為などで税金を逃れている場合は7年間追及できる」という規定もあり、調査の結果、脱税などが疑われる場合には税務署は最大7年間追及できます。
調査範囲を広げた場合には調査の日数も延長となり、長い時間を調査対応に割かれる可能性があります。加えて税務署からの厳しい追及もあるでしょう。
(法令の根拠:国税通則法70条5項)
帳簿などの書類の保存期間は7~10年間
青色申告法人の場合、帳簿書類の保存が義務付けられており、税務調査においても3~5年分の決算書や総勘定元帳などの帳簿書類を用意しておくよう求められます。
では帳簿書類などの保存はどの程度の期間必要かというと、次の場合に応じて7~10年間の保存が必要です。
- 赤字が出ていない事業年度は7年間
- 平成30年3月31日以前に開始する、赤字が出た事業年度は9年間
- 平成30年4月1日以後に開始する、赤字が出た事業年度は10年間
(法令の根拠:法人税法57条、126条)
まず帳簿の保存期間は7年が原則です。
一方で法人税法には「繰越欠損金」という、赤字を翌事業年度以降に持ち越して、その翌事業年度の黒字と相殺させる処理が税金計算上、認められています。
黒字となった事業年度の税負担を軽減できるので、便利な制度といえます。
この赤字の繰越は9年間有効であったのですが、平成30年4月1日以降は10年間有効と法律が改められました。
赤字の繰越期間が9年→10年と延長されたことに伴い、帳簿書類についても同様に保存期間が延長されたといえます。
出典:国税庁 帳簿書類等の保存期間及び保存方法
税務調査はどれくらいの頻度でくる?
「税務調査は何年おきにくるのか?」というのは気になるところ。
税務調査の頻度ですが、法人については3~5年に1度が1つの目安です。
というのも、税務署は5年間調査や督促といったアクションをなにも取らないでいると、税金を徴収する権利を失います(法令の根拠:国税通則法72条)。
税務署としては税金の取り忘れは何としても避けたいところなので、5年に1度はなんらかのアクションを取る必要があるでしょう。
そのため、調査1回あたりの負担も考えて3~5年としていると考えられます。実際に実務をしていると、前回の調査から4年・5年経ったあたりで税務署から調査の連絡がくることが多いです。
ただし、つぎのような場合には3年より短い期間で調査が再びやってくることがあります。
- 取引先の税務調査などにより、脱税などの情報をキャッチした
- 過去に脱税などを行い、税務署から目をつけられている
税務調査にも慌てないよう、優秀な税理士を味方に!
税務調査は税金の追加納付があるのではないか、という心配に加え、調査官の対応で業務にも影響が出るなど、負担の大きなものといえます。
できれば調査に来る頻度や調査の日数は最低限に済ませたいもの。
一方で普段の経理処理や申告書の作成など、細かな部分をフォローしておけば調査においてもアラが出ないため、調査にも「負けない」対応が可能です。
SHIRIIZEには税務調査対応のノウハウが豊富な税理士がいます。ぜひ顧問税理士に迎え、税金や会計に不安のない事業運営に役立ててください。