スタートアップ企業はその成長に応じていくつかのステージに分けられています。
なぜこのようなステージ分けがされているかというと、各ステージごとに資金調達のスタイル変化があり、資金調達をどの段階の企業に行うかを決める指標として分けられているからです。
各ステージの調達目的や、課題の解決などをチェックする際に、どのような論点でチェックしていけばいいかが設定されています。
では、スタートアップの成長ステージに応じてどのような形で出資が行われるのでしょうか。
また、ステージごとにどのような課題や特徴などがあるのでしょうか。
当記事ではステージごとに網羅的にご紹介いたします。
スタートアップ成長の4ステージとは
さっそくスタートアップの成長の4ステージについて御説明をさせていただきます
ただし、各ステージがどのようなものかだけを見ても今後資金調達をする際などにあまり役には立たないため、ここではきちんと各ステージが持っている当面の目的から課題、さらには融資を受ける際の注意点などについて御説明をさせていただきます。
安宅和人さん著の「イシューからはじめよ」の中に、ストーリーラインという言葉が出てきます。
各イシューを立て、それらにそれぞれ仮説をつけ、さらにサブイシューに対しても仮説をつけた後で行うものですが、全ての仮説に対してストーリーを立てる事で、最終目的までの道筋を明確にします。
スタートアップの4ステージもこのストーリーラインですので、その点を踏まえてご確認いただけると理解はより深まるでしょう。
シードステージ
それではまず最も初期段階にあたる、シードステージを見ていきましょう。
シードステージとは
シードステージの定義は、以下です。
スタートアップやベンチャー企業への投資をする際の検討ステージの区分の最初の段階を表しています。事業をこれから立ち上げる準備段階にあるか、事業計画までは立てているが、これから資金繰りをして市場テストを始めるような状態です。
最初の段階という事で、シードは種子のことを表しています。ビジネスとしても種子の段階で、これから養分を与え水を与えて、育てていく必要がある段階です。
シードステージの目的
では、シードステージの最大の目的とは何でしょうか。
それは、まずは具体的なプロダクトやソリューションに落とし込み、プロダクトマーケットフィット(PMF)へと導いていくことです。
プロダクトやソリューションは、「なんとなく売れそう」や、「市場で必要とされている」などの視点で決めるのではなく、やはり「イシュー」から決めていく必要があります。
適切な「イシュー」を導き出し、そこから仮説を立て、ストーリーラインを決めていくいわゆる「イシュードリブン」なプロダクト・ソリューションの設定の仕方をとらなければ、大きく的を外す事になってしまうからです。
そうした「イシュードリブン」なプロダクト・ソリューションを決めるには、やはりある程度の資金が必要になります。
この資金繰りをする際に、まさにシードステージとしての区分の価値があると言えるでしょう。
近年はこのシードステージからの融資が増加しています。
シードステージの課題
それでは、シードステージ期によくある課題とはどのようなものがあるでしょうか。 いくつか確認をしていきましょう。
チームビルディング
シード期のスタートアップはまだ1〜5人程度で事業を立ち上げたばかりなどの状態で、チームとして目的感を共有し、全員が同じ方向で仕事ができていないことが多いです。
このため、実際にプロトタイプを製作し市場投入できるための人的リソースの確保と、チームビルディングが最も重要な課題になっています。
資金繰り
小さい規模であり、事業をそれなりに進める分には、それほどシードステージは融資を受けなければならないことが多い訳ではありません。
しかし、先述の通りPMFを目指してまずはプロダクトやソリューションのプロトタイプを立ち上げてテストしていかなければなりません。
そのためには、初期からある程度のコンサルティングやアドバイザーなどの介入を受ける必要があるでしょう。
この点で、シードステージには苦しい資金繰りのせめぎ合いがあります。
シードステージ期にはこうした2点の課題があります。
細かくいうとシード期は課題だらけですが、まずはプロダクトやソリューションの市場投入という最大の目標に向けて進んでいくというのが当面の目標となるでしょう。
シードステージへの融資
課題でも出てきましたが、シードステージだからこそ融資を受け、PMFに向けて最適なプロダクトやソリューションを目指すべきです。
10年ほど前から、シード期の融資方法として、コンバーティブル・ノート、いわゆる新株予約権付社債による融資が行われてきました。
しかし、社債という仕組みを採用しているため、いきなりシード期から負債を追うことになり、金融機関からのエクイティでの借り入れが困難になるという問題がありました。
そこで、近年では、こうした問題を解決するコンバーティブル・エクイティという社債形式をとらない融資方法が検討され、最終的には優先株式、普通株式、有償新株予約権やみなし優先株式という4形式が採用されています。
アーリーステージ
続いてアーリーステージについて確認をしていきましょう。
アーリーステージとは
アーリーステージとは、シードステージに続き2段階目のステージです。
以下定義です。
スタートアップやベンチャー企業への投資をする際の検討ステージ区分の2番目の段階を表しています。スタートアップとベンチャー企業の状態としては、事業立ち上げからPMFまでの軌道に乗るまでの段階です。
企業としてはこのステージは多くのスタートアップが赤字であり、運転資金や設備投資のための資金が必要です。
アーリーステージという言い方の他に、スタートアップ期などとも呼ばれることがあります。
アーリーステージの目的
アーリーステージの目的は、シードステージよりやや進んでPMFを具体的に目指すところにあります。
シードステージはこの点まだプロトタイプも完成していない状況でしたが、アーリーステージでは既にプロトタイプの市場投入は進んでいることが多く、それを市場テスト、PDCAを繰り返してPMFを目指していく段階です。
アーリーステージの課題
続いてアーリーステージ段階の課題について理解していきましょう。
アーリーステージ段階の課題は以下です。
アーリーステージの課題1.資金繰りの課題
アーリーステージでは、設備投資や人件費、さらには既に進んでいるプロジェクトをマーケティングによって広めていくためのマーケティング予算などの費用が莫大に必要となります。
購買ファネル毎に見れば、認知にも力を入れなければなりませんし、インサイドセールスや営業にも力をいれなければなりません。
また、シードステージ同様に外部の力を借りてグロースしていく必要もあります。
こうした場合に、やはり資金調達が最大の課題になります。
アーリーステージの課題2.ピボット
アーリーステージを超えてしまうと、プロダクトやソリューションについてマーケットフィットしない判断をし、ピボットする決断をするのが難しくなります。
そこで、この段階でピボットする事業かどうかは見極めなければなりません。
しかし、見極めができず、莫大な資金をかけた手前引くに引けないといったスタートアップも多く存在しています。
事業はトレードオフです。この局面を打開するかどうか、それがアーリーステージの最大の課題でしょう。
アーリーステージへの融資
それでは、アーリーステージへの融資についてはどのようになっているのでしょうか。
アーリーステージではまだ事業がそれほど進展していないこともあり、親族やうまくいけばベンチャーキャピタル、さらにはアクセラレーターなどの融資を受けることになります。
またシード期と同様に、4つのパターンで融資を受けることもできます。
いずれにしても、青写真をしっかりと描け、かつそれがサステイナブルなものでなければ、融資を得ることはできないでしょう。
エクスパンションステージ
続いてのステージは、エクスパンションステージです。いよいよ、ステージが上がり、第3段階です。具体的に見ていきましょう。
エクスパンションステージとは
エクスパンションステージの定義は以下の通りです。
スタートアップやベンチャー企業への投資をする際の検討ステージの区分の第3段階を表しています。スターとアップやベンチャー企業の状態としては、アーリーステージからさらに進み、PMFが一定程度成し遂げられていて、少人数のチームがあり、サービスや製品に対してユーザーが広がり始めている段階です。
シードステージやアーリーステージの先に位置しているので安心感があるように見えますが、まだまだ油断できない状況です。具体的な目的と課題について見ていきましょう。
エクスパンションステージの目的
エクスパンションステージの目的は、PMF後のグロース及びサステイナブルです。
事業が加速度的に成長していくようにプロダクトやソリューションをよりマーケティングしていく段階にあり、ここで手を休めるとPMFしていても5フォースなどの競争要因などによって、一気に衰退へと向かいます。
ここでやるべきは、優秀な人材を確保し、さらに商品を開発し、サステイナブルな事業への発展を遂げることです。
エクスパンションステージの課題
エクスパンションステージでの課題はいくつかありますが、その最大の課題は資金繰りとリソースの確保です。上記のように間断なくPDCAを行なっていく必要があるため、その分資金やさまざまなリソースを確保することが最大の課題です。
エクスパンションステージでの課題を解決するには、日本政策金融公庫などの政府機関からの融資制度を利用したり、あるいは積極的に投資や支援をしているエンジェル投資家やアクセラレーターとのつながりを作ることです。
シードステージやアーリーステージからこうしたつながりをつくり、将来に備えることが肝要です。
エクスパンションステージへの融資
エクスパンションステージでの投資家には、シードステージやアーリーステージの融資方法に加えて、先に挙げたようなエンジェル投資家などの存在があります。
確実にIPOができそうだと判断されないとこうした投資家を動かす事もできませんので、やはりシードステージやアーリーステージでのPMFまでがとても重要になるでしょう。
レイターステージ
最後にレイターステージについてご説明します。
レイターステージは最後のステージであり、ある程度土台の整った企業でさらに追加融資を受けたい段階の事です。
では、詳しく見ていきましょう。
レイターステージとは
レイターステージの定義は以下です。
スタートアップやベンチャー企業への投資をする際の検討ステージの区分の最終である4段階目を表しています。この段階になるとキャッシュフローも黒字になり、累積損失も解消されている状態です。
レイターステージでは、IPOも既にしているか、あるいはIPOをする段階にあると言えるでしょう。
レイターステージの目的
レイターステージの目的は、エクスパンションステージとあまり変わりませんが、サステイナブルな事業にするためにもさらなるチャレンジをしていくのが最大の目的です。
レイターステージから融資をする側に周り、逆にアクセラレーターなどを経て、さまざまなイノベーションを世に展開していきます。
そういう意味で、サステイナブルからイノベーティブな企業へと進化を遂げていくことも一つの目的です。
レイターステージの課題
レイターステージまでくればある程度融資については受けやすく、課題もより未来に向かったものとなります。
新たな事業を多く手掛け、グロースさせていくためにどうすべきか。
そのためにどのくらいの融資を受ける必要があるかなど、さらなるスケールアップをすることが最大の課題でしょう。
レイターステージへの融資
レイターステージではこれまでの3ステージより投資が受けやすい状況となります。
銀行や金融機関に通常の借り入れをする他、シンジケートローンと呼ばれる方法やストラクチャードファイナンスと呼ばれる方法など、様々な選択肢が増えます。
そうした選択肢を有効に活用し、確実に事業を伸ばしていくためのストーリーラインを、描いた上で実行することが求められるでしょう。
まとめ
事業にはその融資対象となる区分ごとに、4つのステージに分かれていることを具体的に説明しました。
それぞれのステージごとの課題に対して、どのように融資を受け、そしてどう事業をサステイナブルなものにしていくかが、結局最も重要なのだと言うことがおわかりいただけたのではないでしょうか。