税金・税務

役員報酬の決め方や変更方法とは?|役員報酬・税金・給与との違いも解説

役員報酬の決め方や変更方法とは?|役員報酬・税金・給与との違いも解説

役員報酬がどのくらいもらえて、どのような手続きを経る必要があるのか、役員になった事がなければ知る機会も少ないですよね。

実は役員報酬については、決め方や変更の仕方、税金などさまざまな決まりごとがあります。

当記事では、役員報酬に関する情報を網羅的に記載し、これから起業をお考えの皆様にとって役員報酬を決める際の手引きになるよう順を追って解説します。

役員報酬の定義

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役員報酬は役員が貰う給料のことを指すものですが、それではなぜ従業員の給与と別に定められているのでしょうか。また会社の取締役や監査役に該当する人達も役員報酬としてもらう事ができるのでしょうか。ここでは、そういった役員報酬の定義について確認していきます。

役員報酬とは

まずは役員報酬の定義を再確認したいと思います。

会社の役員とは会社法で以下のように規定されています。 会社法329条:会社法上の役員とは、取締役・監査役・会計参与のことを言う。

つまり、主に取締役や監査役などに支払う給与を役員報酬や役員賞与と呼んでいます。

では、役員報酬と役員賞与の違いとはなんでしょうか。比較してみたいと思います。

役員報酬と役員賞与とは

役員報酬→役員に対する給与のうち、賞与および退職給与以外のものを言います。 役員賞与→名目の如何を問わず、原則として臨時的に支給される給与で退職給与以外のものを言います。 ※いずれも、債務の免除、その他の経済的な利益含む。無利息や通常金利より低い金利での配当なども含む。

役員報酬とは、役員賞与とこのように差別化されています。そして、一般従業員の給与とは別に決めておく必要があります。役員の報酬を上げることで、税金を減らすことができてしまうからです。そのため、会社法では役員の報酬に期限や決め方を規定して、一定の制約をしています。

役員報酬の決め方

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ここまで、役員報酬の定義についてご説明させていただきました。ここからは、具体的な役員報酬についての決定機関や期限、手順についてご紹介いたします。

役員報酬の決定・変更期限

役員報酬の決定、変更期限は原則として事業年度開始日から3ヶ月以内とされています。事業年度開始日が4/1であれば、6/30までに手続きを終了する必要があります。

どうしてこのような決まりがあるのでしょうか。それは、もし自由にいつでも役員の報酬が変更可能であるとすれば、売り上げに応じて節税対策で役員報酬を高く設定する事ができてしまうからです。

ただ、例外が無い訳ではありません。経営が著しく悪化して、株主や債権者、取引先などとの関係上でどうしても役員報酬の変更が必要だと認められれば、その際は臨時株主総会などを経て認められることになっています。

役員報酬を決める機関とは?

次に役員報酬を決定するための機関についてご説明します。

会社法では、役員報酬は定款に定めていなければ、株主総会で決定するものと定められています。 (会社法361条1項:取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。)

なぜこのような規定になっているかといえば、お手盛り、つまりは自分で自分の報酬を高く吊り上げる事ができたり、それによって節税対策ができたりしてしまうからです。

役員報酬決定までの手順

次に、上記の役員報酬を決定する機関がどのような手順で決定していくのかをご説明します。今回は定款で定める場合以外を想定しています。

役員報酬の決定手順1.株主総会での役員報酬に関する決議

まずは会社法361条の規定通り、株主総会の決議で普通決議が必要となります。 普通決議とは、会社法の309条1項にある通りで、議決権総数の過半数の株式を有する株主が出席し、かつ出席株主の議決権の過半数で決議します。

役員報酬の決定手順2.株主総会議事録若しくは同意書の作成

株主総会の内容を議事録にしておく事で、税務調査が入った際に証明書として出す事ができます。具体的な記載内容としては、開催日時、場所、出席した株主の発行済み株式総数、そしていくらに報酬が変更になったかを明記します。加えて、出席者の署名と捺印も忘れずに記載します。 合同会社の場合は、株主総会議事録の代わりに同意書を作成して、署名と捺印をすることになっています。

役員報酬の決定手順3.必要に応じて被保険者報酬月額変更届の提出等が必要

だいたいの企業は、健康保険と厚生年金に加入しています。その場合に役員報酬が変更された場合で標準報酬月額において2等級以上増減する場合は、日本年金機構に対して「被保険者報酬月額変更届」の提出が必要です。

その他、5等級以上下がる場合には株主総会議事録や同意書とともに所得税源泉徴収簿または税金台帳の写しの提出も必須です。

以上3つの手順を経て、役員報酬は決定されます。では、役員報酬を損金として計上するには、どうしたらいいでしょうか。次は損金計上の方法についてご説明します。

役員報酬を損金に計上する支払方法3つの方法

役員報酬を損金に計上するとはそもそも何?

そもそも会社の損金に計上するとはどういうことでしょうか。 簡単に言えば、会社が支払うべき法人税を減らすことをいいます。具体的に言えば、法人税がかかる金額から損金(費用)を引く事で、法人税額が減る事を言います。

役員報酬もこの損金として計上されるように支払い方法を選択することで、法人税を抑えられます。具体的な支払い方法をご紹介します。

役員報酬の支払い方法①定期同額給与

定期同額給与とは、1ヶ月以下の期間を定めて毎回定期的に支払われる給与の事を言います。ただし、事業年度ごとに同一金額が支払われるのでなければ、定期同額給与として認められません。定期同額給与で役員報酬を支払う場合は、税務署への届け出は不要です。

役員報酬の支払い方法②事前確定届出給与

簡単に言えば、ボーナス(賞与)のことです。具体的には、以下の3つを決めておくことで、損金に計上する事ができます。

  • ボーナス(賞与)の金額
  • ボーナス(賞与)の支給日
  • 上記1と2を1ヶ月以内に税務署に届ける。

もし1日でも、1円でも支払いがずれたら全額損金計上が認められなくなります。

役員報酬の支払い方法③業績連動給与

簡単に言うと、会社が得た利益(業績)に連動して決まる給与です。算定の基礎となる業績は、有価証券報告書に記載される、利益に関する指標です。主に、利益の状況、株式の市場価格の状況などの客観的な指標で評価されます。

業績連動給与を損金に計上する要件は以下です。※平成29年税制改正

  • 原則非同族法人の業務執行役員のみ。但し、同族会社であっても非同族法人の完全子会社であれば可能。
  • 支給は金銭のほか、株式や新株予約権。
  • 交付時期が給与の支給方法ごとに定められています。例えば金銭給付の場合は指標の数値の確定後1ヶ月以内。
  • 算定方法と算定に用いる指標が決められています。

以上、4つの指標を満たして始めて損金に計上できる事前確定届出給与になります。 平成29年の税制改正で改正されたポイントも多いので、よくご確認をいただければと思います。

以上のとおり、役員報酬を損金に計上させるには3つの支払い方法がありました。それぞれ、要件を満たす必要があると同時にメリット、デメリットもそれぞれありますので、注意が必要です。

役員報酬と社会保険

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役員報酬を損金として計上する事で、法人税を下げることは先述しましたが、もう一つ意識しなければいけないことがあります。それが社会保険料です。

社会保険料も役員報酬の金額で増減します。そのため、役員報酬の支払い方にも工夫が必要です。

一例ですが、役員報酬を役員賞与として支払う方法で社会保険料を抑える事ができます。これは、役員賞与については社会保険料の上限額が決められているからです。

このようにして、役員報酬については社会保険料の支払いも意識して決定する事が求められます。

役員報酬と従業員のモチベーション

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役員報酬の決定をする際には、こうした対外的な意識を持つのと同時に、社内にも目を向けなければなりません。

ある役員だけが、とてつもない金額の役員報酬を受け取っていたとします。しかし、それに見合った仕事ができていないと社内従業員に見られてしまえば、社員のモチベーションは下がる一方です。

逆に、とても業績は好調なのに、謙虚な報酬に設定し、社内に還元をしている経営者は、社内でも好評となり、会社全体のモチベーションを上げる事になるだけでなく、さらなる業績上昇にもつながります。

このように、対外的に法人税を下げることや社会保険料のことだけを考えるのではなく、最も大事なのは会社全体としての利益をあげ、会社にも還元していく事です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。役員報酬の定義や決定する手続き、そして損金に計上するための方法などをご紹介してきました。実際これから起業をお考えの方は役員報酬をどうするか悩んでいる方も多いと思います。そうした際は、ここでまとめた事項を中心に確認しながら最適な報酬を決めていただければと思います。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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