「デリバリーやテイクアウトを検討していて、東京都から助成金があると聞いたけどどのような制度なの?」
「ウィズコロナ」、「アフターコロナ」などが提唱されてきてもう久しくなりました。東京都では新規感染者の数が2020年7月12日時点で4日連続200人台となるなど、「巣ごもり」などにより飲食店にとって非常に苦しい状況は継続しています。
そこで、東京都はデリバリーやテイクアウト、移動販売を新しく行う飲食店に対しての支援策を発表しました。それが「業態転換支援」事業です。
本記事では、東京都が行う業態転換支援について以下のポイントを解説します。
- 業態転換支援とは
- 業態転換支援事業助成金の申請方法
- 申請受付期間と交付決定予定日スケジュール
- 業態転換支援事業助成金の注意点・よくある質問
その他、飲食店経営において、「小規模事業者持続化補助金」「IT導入補助金」「雇用調整助成金」7月14日から受付スタートが予定されている「家賃支援給付金」もあわせて検討しましょう。
ぜひこの苦境を乗り越えるための参考としていただければと思います。
なお、新型コロナウイルスの支援策は日々情報が更新されており、執筆時点(2020年7月12日)から状況が変化する可能性もあります。申請時は最新の情報をチェックするようにしましょう。
業態転換支援とは
「業態転換支援」とは、新たなサービスとして「テイクアウト」、「宅配」、「移動販売」を始める方への支援策として、「公益財団法人 東京都中小企業振興公社」が運営する事業です。
助成事業の概要は以下のとおりで、助成金額100万円を上限として、対象経費の80%を後払いで交付するものです。
画像引用元:業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)事業 | 事業
ここでは、以下のポイントについて解説します。
- 業態転換支援事業の予算
- 申請対象事業者
- 助成対象経費
- 最大助成額・助成限度額
- 助成率
- 助成対象期間
業態転換支援事業の予算
東京都中小企業振興公社の業態転換支援事業紹介ページでは、以下の記載が赤字であります。
予算終了の場合は、受付期間中であっても終了します。
そのため、申請すれば必ず助成金の交付が受けられるというものではありません。あくまでも予算の枠内までです。
そこで気になる点が、本事業の予算はいくらなのかという点です。結論から言えば、業態転換支援事業に割り当てられた予算は「4億円」です。
参考:別紙 経済活動と都民生活を支えるセーフティネットの強化|東京都
4億円という額は、最大助成額が100万円であることから、400件の申請で満枠となって終了となってしまう計算です。助成額が1件10万円とすると4,000件です。
申請対象事業者
業態転換支援の対象となる事業者は、「東京都内で飲食業を営む中小企業者(個人事業主含む)」です。具体的には次のポイントを満たしている必要があります。
- 都内に店舗を有する
- 調理した飲食料品を提供できる
- 飲食可能なスペースを有する
また、「中小企業者」は「資本金・出資金が5,000万円以下の法人または常時使用する従業員が50人以下の個人・法人」です。
例えば、東京都が本拠地であっても上記飲食店が東京都でない場合は対象とはなりません。
また、東京都に納める税金である「法人/個人事業税」、「法人/個人住民税」を納めていない場合や、食品関係の許可を得ていない場合は助成金の支給が認められない場合があります。
助成対象経費
申請対象事業者であれば申請できますが、すべての経費を助成してくれるわけではありません。具体的には以下のような経費が助成対象です。
(1) 販売促進費(印刷物制作費、PR映像制作費、広告掲載費 等)
(2) 車両費(宅配用バイクリース料、台車 等)
(3) 器具備品費(WiFi導入費、タブレット端末、梱包・包装資材 等)
(4) その他(宅配代行サービスに係る初期登録料、月額使用料、配送手数料 等)
さらに、助成対象として決定を受けた取組みを実施するための「必要最小限の経費」のみしか助成対象として認められない点には注意が必要です。
最大助成額・助成限度額
業態転換支援で助成される金額は、最大で「100万円」です。
助成率
助成率は、助成対象経費の4/5(80%)以内です。
助成対象期間
助成対象期間は、業態転換支援の申請を行い、「交付決定日から令和3(2021)年1月31日までの内、最長3ヶ月間」です。
つまり、最大3ヶ月間の助成対象期間となる「ギリギリの交付決定日」期限は「2020年10月31日」です。申請すればすぐに交付決定となるわけではない点と予算に限りがある点から、可能な限り早めの申請を推奨します。
さらに、画像内にあるとおり最長3ヶ月の対象期間内で契約、実施、支払いを完了しなければなりません。申請後は速やかに契約から実施、支払い、実績報告を行いましょう。
業態転換支援事業助成金の申請方法
以降では業態転換支援事業助成金を得るための申請方法を、以下のポイントに沿って解説します。
- 申請可否の確認
- 申請に必要な書類
- 手続きの流れ
申請可否の確認
申請の前に、ご自身の事業状況などから申請ができるのかできないのか、申請可否を確認しましょう。
東京都中小企業振興公社は、以下の「簡易確認シート」を公表しています。事前にこの簡易確認シートで申請可否を確認します。
申請に必要な書類
申請に必要な書類は上の画像4のとおりです。注意すべきポイントがあるため、事前に確認しておきましょう。
手続きの流れ
画像引用元:業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)事業 | 事業
手続きの流れは上の画像6のとおりで、まずは「簡易書留などの記録が残る方法」で申請書類を以下の送付先へ送付します。なお、持参やFAX、メールでの送付は受け付けていません。
<送付先>
〒101-0024
東京都千代田区神田和泉町1-13
住友商事神田和泉町ビル9F
公益財団法人東京都中小企業振興公社
事業戦略部 経営戦略課 業態転換担当
審査後、交付決定となれば対象となる取り組みを実施し、実績報告を行います。この報告をしてから助成金額が確定され、その額に基づいて請求し、ようやく助成金の交付となります。
申請受付期間と交付決定予定日スケジュール
申請を受け付けている期間、交付決定予定日は以下のとおり予定されています。
申請受付期間 | 交付決定予定日 | |
第1回 | 令和2年4月23日(木)~令和2年5月18日(月) | 令和2年6月1日(月) |
第2回 | 令和2年5月19日(火)~令和2年6月1日(月) | 令和2年6月15日(月) |
第3回 | 令和2年6月2日(火)~令和2年6月15日(月) | 令和2年6月29日(月) |
第4回 | 令和2年6月16日(火)~令和2年6月29日(月) | 令和2年7月13日(月) |
第5回 | 令和2年6月30日(火)~令和2年7月13日(月) | 令和2年7月27日(月) |
第6回 | 令和2年7月14日(火)~令和2年7月27日(月) | 令和2年8月11日(火) |
第7回 | 令和2年7月28日(火)~令和2年8月11日(火) | 令和2年8月24日(月) |
第8回 | 令和2年8月12日(水)~令和2年8月24日(月) | 令和2年9月7日(月) |
第9回 | 令和2年8月25日(火)~令和2年9月7日(月) | 令和2年9月23日(水) |
第10回 | 令和2年9月8日(火)~令和2年9月23日(水) | 令和2年10月5日(月) |
第11回 | 令和2年9月24日(木)~令和2年10月5日(月) | 令和2年10月19日(月) |
第12回 | 令和2年10月6日(火)~令和2年10月19日(月) | 令和2年11月2日(月) |
第13回 | 令和2年10月20日(火)~令和2年11月2日(月) | 令和2年11月10日(月) |
第14回 | 令和2年11月3日(火)~令和2年11月16日(月) | 令和2年11月30日(月) |
第15回 | 令和2年11月17日(火)~令和2年11月25日(水) | 令和2年12月7日(月) |
引用元:業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)事業 | 事業
業態転換支援事業助成金の注意点・よくある質問
業態転換支援の概要はこれまでのとおりですが、ここでは注意点とよくある質問について紹介します。
経費計上限度額が定められている
助成の対象となる経費は、あらかじめ定められています。また、その上限額も定められています。具体的には以下のとおりです。
大分類 | 中分類 | 計上限度額 |
販売促進費 | チラシ等印刷物の制作委託費 | 30万円 |
販売促進費 | PRするための広告掲載費 | 20万円 |
販売促進費 | PR動画制作委託費 | 20万円 |
販売促進費 | WEBサイト等制作委託費 | 50万円 |
販売促進費 | 看板・POP・のぼり制作費 | 20万円 |
車両費 | 自転車等の購入費 | 20万円 |
器具備品費 | 通信環境設備導入費 | 10万円 |
器具備品費 | タブレット端末等の購入 | 15万円 |
器具備品費 | 梱包・包装資材等の購入費 | 15万円 |
工事費 | 新たな取組みに必要となる店舗等内装工事費 | 50万円 |
申請の前に、新たな取組みにかかる経費に関してある程度見積もりをとっておくと良いでしょう。
予算に限りがある
前述したように、本事業の予算枠は4億円です。この枠がなくなり次第、中止になります。
可能な限り早めの申請を行いましょう。
取組み完了後に後払いで交付される
一部勘違いしている人もいますが、業態転換支援の助成金は計画時に交付されるものではなく、実施前に申請をして交付決定を経てから取組みを検査された後に交付されるものです。
そのため、資金繰りが厳しい事業者は、そもそも新たな取組みに動くことすらできない場合もありえます。そこで、本記事で紹介している業態転換支援ではなく、雇用調整助成金や持続化給付金、家賃支援給付金、生産性革命推進事業(補助金)などの活用もあわせて検討ください。
交付決定から支払いまでは約4ヶ月
業態転換支援事業の制度上、交付決定から支払いまでは約4ヶ月かかります。先ほど解説したように、新たな取組みに対して投資した後に助成金が交付されますので、直近のお資金繰りが危ういといった事業者にとっては厳しい状況になることもあります。
もし申請してできる限り早く交付を受けたいのであれば、新たな取組みを素早く契約、実施し実績報告書を提出しましょう。
助成の対象となる期間は最長3ヶ月ですが、3ヶ月以内に新たな取組みに関する支払いと報告書の提出が終わる見込みがあれば1ヶ月で申請しても良いでしょう。
クレジットカードで支払ったものは対象経費として認められない場合もある
新たな取組みに関して、クレジットカードで支払ったものは対象経費として認められない場合もあります。
具体的には、銀行口座からの引き落としが助成対象期間中に確認できない場合や、代表者以外の名義の場合などです。そのため、クレジットカードで支払う際には注意が必要です。
その他、助成対象経費として認められない細かい例が「募集要項」に記載されていますので、事前に確認しておきましょう。
持続化給付金などとの併用は可能
業態転換支援の助成金は、持続化給付金、感染拡大防止協力金を受け取っていても問題ありません。
しかし、業態転換支援の助成対象として申請した内容(経費)については他の制度から支援を受けていないことが求められます。もし同等の内容で支援を受けていた場合、申請しても交付決定がされません。
業態転換支援事業助成金まとめ
東京都中小企業振興公社が運営する業態転換支援事業について解説してきました。
業態転換支援は、新たなサービスとして「テイクアウト」、「宅配」、「移動販売」を始める方への支援策で、助成金額が最大100万円、助成率は80%です。
交付決定日から最長3ヶ月間が助成の対象とされ、実施後には報告書の提出が義務付けられています。助成金はその後に交付されるため、後払いであることに注意しなければなりません。また、対象経費の計上に上限があることも紹介しました。
ぜひ本記事を新たな取組みを行う際の参考としていただければ幸いです。