資金調達をすれば事業を少ない資産で大きくスケールさせることも可能です。しかし、実際に資金調達をするにはどのような手続きを取ればよいでしょうか。またそもそも資金調達とはどのようなものでしょうか。 当記事では、資金調達を進めるにあたっての前提知識から、しっかりと解説をします。
はじめに
資金調達をすれば、事業を少ない資産で大きくスケールさせることも可能です。
しかし、実際に資金調達をするにはどのような手続きを取ればよいでしょうか。
またそもそも資金調達とはどのようなものでしょうか。当記事では、資金調達を進めるにあたっての前提知識から、しっかりと解説をします。
投資ラウンドとは?
まず、「投資ラウンド」とはどういうものなのか、概要を解説します。
投資ラウンドとは「投資家が企業に対して投資をする段階」を指す言葉です。
スタートアップ企業に投資する代表的な存在がベンチャーキャピタルですが、ベンチャーキャピタルは利益を最大化するため、「自分の投資目的を果たしやすい時期」の会社に投資を行うという特徴があります。
自分の投資の目的とは、例えば投資時よりも値上がりした株価を売却することによって発生する資金が目的だったり、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)などのように、自社の領域で、高いシナジー効果が狙いで出資を決めたりする場合もあります。
そこで、投資家に向けてスタートアップ企業がどのような段階あるかを分かりやすく示すために生まれたのが、「投資ラウンド」という考え方です。
主に、IT企業がひしめくアメリカのシリコンバレーで使われている用語ですが、起業意識の高まりも後押しして、日本でもよく耳にするようになりました。
投資側によって、名称に多少の誤差はありますが、一般的に次の5つのステージに分けて説明されることが多いです。
- シード→起業前の段階
- アーリー→起業直後の段階。いわゆる「スタートアップ」
- エクスパンション→事業を本格開始する段階
- グロース→事業がやや軌道に乗り始めた段階
- レイター→黒字になり、経営が安定しつつある段階
それぞれのラウンドのことを「フェーズ」とも言います
資金調達とは?
資金調達とは、企業が活動するための資金を外部から得ることを言います。 株式市場でも「転換社債発行」、「公募増資」などが話題になりますが「IPO」(新規公開)も忘れてはならない企業の資金調達の形式の一つです。
企業の資金調達には、さまざまな分類の仕方がありますが、代表的なものとして直接金融と間接金融があります。
まず直接金融は、企業が株式や社債を発行して一般投資家から株式市場や債券市場を通じて、直接的に資金を調達することです。 資金を必要としている側と資金を提供する側が直接つながっている形になっているので、「直接金融」と呼ばれています。
一方、間接金融は企業と一般投資家の間に銀行などの金融機関が仲介者として入ります。 形式的には銀行などが間に入っているだけのように見えますが、ここには大きな違いがあります。
それは直接金融の場合、資金提供者である一般投資家は、例えば「NTTの公募株」を買ったとすれば、出資先を自分自身の判断で決めますが、間接金融の場合は、仲介者である銀行に預金をしているだけなので、どこに自分のお金が回っているかは一般的に意識することはないと思います。
また、直接金融は企業の倒産などのリスクを投資家が直接負うことも大きな特徴となります。
直接金融とは
直接金融とは、資金の需要者と供給者が互いの条件などを見ながらダイレクトに貸借や投資を行うモデルのことです。とはいえ、企業が国民の一人ひとりに貸借や投資を呼びかけたり、個人が投資先を探し歩くことはできませんから、市場(マーケット)を活用して相手を探します。
その際、市場への取次や取引成立に向けたサポートを行うのが証券会社です。
ところで、直接金融においては「債券」や「株券」といった「証券(財産権など記した証書)」が取引に用いられ、その多くは流通市場で自由に売買を行うことができます。 直接金融において重要なことは、資金の供給者(投資家と呼びます)が行う投資の責任はすべて投資家が負うというところです。
投資へのアドバイスやサポートを提供する金融機関が、結果責任を負うことはありません。つまり、証券投資を行うためには金融や投資についての理解や知識が少なからず必要であり、国や金融機関にはそうした教育機会の提供や、公正でわかりやすい説明、投資家のレベルに見合ったアドバイスなどが求められます。
証券投資には預金などの利回りを上回る配当や売買益が期待できる反面、投資元本が大きく毀損するというリスクもあります。
一方、資金の需要者にとっては、資金の利用目的に合った条件などで調達することが可能になるほか、間接金融モデルでは供給が難しい場合でも、投資家の理解を得やすいスキームの構築などによって調達が可能になるメリットもあります。
今から数十年前まではどこの国でも間接金融の比重が高く、銀行が金融の主役と言われました。なかでも、日本やドイツは戦後の復興期において間接金融の機能を徹底的に活用して国民から資金を集め、それを産業界に送り込むことによって、世界が驚く経済成長を実現しました。
一方、イギリスやアメリカでは市場を利用して資金調達を行う制度などが早くから整い、直接金融を担う証券会社や投資銀行といった金融機関が、金融のもうひとつの主役として存在感を示していました。
1980年代に入ると、大手企業などが社債や株式によって資金調達をするケースが増え、各国の政策も直接金融の活用を推進させる方向へと移ります。コンピュータや、通信技術の進化によって市場の機能がより高まり、使いやすくなったことも市場取引の拡大を後押ししました。
信用力の高い企業は従来の借入よりも低いコストで資金調達ができるようになり、また金融技術の発達によって調達や投資の仕組みにいろいろなアイデアを加えられようになったことも、直接金融の拡大につながったと考えることができます。
間接金融と直接金融の併用が進む現在では、企業などが資金調達を行う場合の選択肢がより広がり、銀行や証券会社などがさまざまな提案を展開しています。また、投資のための金融商品のメニューも、かつてとは比べられないほど増加しています。
間接金融とは
間接金融とは、貸し手と借り手に対して金融機関が相手方となる取引のことです。 日常的な言葉に置き換えると、貸し手の立場からは「預金」、借り手の立場からは「借入」となります。
取引の相手方となる金融機関は主に銀行です。 銀行は、貸し手から預かっているお金を使って、資金を調達したい企業にお金を貸します。
また、間接金融の場合は個人にもお金を貸しており、住宅ローン等が該当します。 貸し手は預けているお金がどこに貸し出されているか分かりません。
そのため、借り手が破綻しても貸し手には損失が発生せず、銀行が損失を被ります。 貸し手に損失が発生する可能性があるのは預金先の銀行が破綻した場合です。
ただし、この場合でも預金保険制度により一定の範囲内の預金は保護されています。
投資(直接金融)と預金(間接金融)の比較
資産運用を考えている方にとって、投資と預金の違いをしっかり把握しておくことは重要な観点です。そこで、両者を比較してみたいと思います。
比較の軸は、収益性、安全性、換金性の3点です。
収益性
収益性は投資の方が優れています。 株式投資であれば、非常に短期間で大きな値上がりが期待でき、決算時に保有していれば配当金を受け取れるチャンスもあります。
債券投資でも1%以上の利回りが期待できることもあります。 一方、預金については超低金利が長らく続いており、現状では収益性に期待することは難しいと言えます。
ただし、今後の状況次第では金利が上昇する可能性もあるので、預金金利は定期的に確認すると良いでしょう。
安全性
安全性は預金の方が優れています。 投資は収益性が高い反面、元本が保証されていることはなく、大きな損失が発生することもあります。
特に株式投資の場合は値動きが大きく、数日間で大きな損失が発生することもあります。 債券の場合は多少の値動きはありますが、事前に定められた期日まで借り手が破綻しなければ投資したお金が返ってくるので株式投資よりも安全性は高いと言えます。
一方、預金は投資と比較すると圧倒的に安全性が高いです。 先述した通り、預金先の銀行が破綻しても、預金保険制度により元本1,000万円とその利息分までが保護されているためです。
換金性(流動性)
換金性については、両者とも大きな問題が発生する可能性は低いと言えます。 例外的に、流通量の少ない株式や債券に投資する場合には注意が必要です。
直接金融において流動性を確保する上で証券会社が担う役割は大きく、企業の資金調達にとって欠かせない存在です。
一方、間接金融においては企業だけでなく個人の資金調達にも関与する銀行が中心的な役割を担っています。
投資家の視点で考えると、両者の最大の違いは資金の借り手が破綻した場合の損失です。 直接金融の場合は資金の貸し手が損失を被るのに対して、間接金融の場合は銀行が損失を被ります。
つまり、安全性を重視するのであれば間接金融(預金)を利用するのが得策と言えます。 しかし、超低金利が続く中で直接金融(投資)の重要性も高まっています。 そのため、今後は両者の違いを理解し、直接金融と間接金融の適切に使い分けることが重要です。
資金調達の方法とメリット・デメリット
資金調達の種類別のメリットとデメリットをここではご紹介します。
エクイティ・ファイナンスのメリットとデメリット
メリット
- 原則として返済の義務がない
- 負債ではなく資本のため利息がかからない
- 自己資本比率が増える
- 投資家の人脈やコネクション、知見を利用しやすい
- 将来性を投資家に認められたことになるため箔がつく
デメリット
- 株主による経営への口出しにより経営がコントロールしにくくなる
- 本業以外に株主への配当政策を検討する必要がある
デット・ファイナンスのメリットとデメリット
メリット
- 出資者(金融機関)が経営に口出ししてこない
- 株主への配当政策が不要なので本業に集中できる
デメリット
- 利息込みの借入金を期限までに返済しなければならない
- 自己資本比率が下がる
アセットファイナンスのメリットとデメリット
メリット
企業の信用力が低下している場合などでも、保有資産の信用力をもとに低コストで資金を得られます。
また、資産の売却は、保有する資産をオフバランス化(貸借対照表から切り離す)することにもなります。 これにより、財務体質の改善ができ、経営効率が高まる期待が持てます。
デメリット
「将来キャッシュを生み出せる」など、信用力のある資産を保有していなければ、この方法は使えません。
クラウドファンディングのメリットとデメリット
メリット
- 投資家や金融機関とは異なった評価により出資を集められる可能性がある
- 仕組みによっては金銭の返済義務がないこともある
- 手数料以外の自己資金は不要
- テストマーケティング/ファンマーケティングの側面も持たせられる
- 成立した場合、対外的に誇れる実績とできる
- 自己資本比率が下がる
デメリット
- プロジェクトが多数起案されてきており差別化に腐心する必要がある
- 秘匿性の高い事業は実施しにくい
補助金のメリットとデメリット
メリット
- 返済義務がない
- 採択率も決して低くはない
デメリット
- 募集期間が短い
- 情報に触れる機会が限られている
- 申請書類の準備が煩雑
- 公募のため競合と比較される
【徹底解説】資金調達とは?資金調達の目的と方法まとめ
本記事をまとめると以下になります。
- 投資家に向けてスタートアップ企業がどのような段階あるかを分かりやすく示すために生まれたのが、「投資ラウンド」と言い、5つのステージに分かれている。
- 資金調達には直接金融と間接金融がある。
- 直接金融と間接金融は安全性、収益性、換金性の3点で比較できる。
- 安全性を重視するのであれば間接金融(預金)を利用するのが得策。しかし、超低金利が続く中で直接金融(投資)の重要性も高まっている。
- 資金調達には方法ごとにメリットとデメリットがある。
以上です。資金調達は計画的に行いましょう。