資金調達

開業・起業時の資金調達はどうすればよい?具体的な方法や開業資金の目安

開業・起業時の資金調達はどうすればよい?具体的な方法や開業資金の目安

新しい事業を開業・起業する際、事務所の準備や店舗の設備関連に使う「設備資金」や、開業後の仕入れ、水道光熱費、債権回収までの運転に使う「運転資金」が必要です。

日本政策金融公庫の「2020年度新規開業実態調査」によると、開業1年目以内の企業が開業時に苦労した点は、「資金繰り・資金調達」が55.0%と一番高くなりました。同じ悩みを持つ経営者・フリーランスも多いのではないでしょうか。

当記事では開業・起業時の資金調達方法や業種ごとに必要な開業資金の平均、資金調達を成功させるために必要なことを解説します。

開業前・開業後にできる具体的な資金調達の方法

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開業時にできる資金調達の方法として、主に以下の4種類に分けて解説します。

開業時の資金調達の方法 概要
融資制度
  • 国の機関や金融機関が実施する貸付
  • 審査基準は高いが金利(利息)が低い
借入
  • 親族・知人や消費者金融からの借入
  • 審査基準は低いがトラブルや高金利のリスクあり
補助金・助成金
  • 国や地方公共団体が公的資金を用いて資金支援する制度
  • 審査ハードルは非常に高いが原則として返済がない
出資
  • 自己資金の利用や出資者からの出資
  • 出資割合によっては経営権が移る可能性がある

以下では融資制度、借入、補助金・助成金、出資に分けて、具体的な方法を解説します。

融資制度|金融機関や公的機関から受ける事業用の資金調達

2020年度新規開業実態調査」では、資金調達先として一番多かったのは「金融機関等からの融資・借入(日本政策金融金庫、民間金融機関、制度融資など)」でした。資金調達額の平均は1,194万円です。

開業前や開業直後に利用できる融資は主に次のとおりです。

  • 日本政策金融公庫の融資制度
  • 制度融資
  • 大手銀行、地方銀行、信用金庫からの融資

融資制度1.日本政策金融公庫の融資制度

日本政策金融公庫とは、民間金融機関の取り組みを補完する目的で、さまざまな支援を提供する政策金融機関です。

なかでも開業時の融資として有名なのは「新創業融資制度」です。融資を受けるための担保や保証人が原則必要なく、金利も最高3%未満と安くなっています。開業前から利用できる点も、開業資金として最適です。

基本情報は次のとおりです。

新創業融資制度について 概要
利用できる人
  • 「新しく事業を始める人」もしくは「税務申告を2期終えていない人」
  • 新しく事業を始める人もしくは税務申告1期終えていない場合は開業資金の総額が自己資金の割合が1/10以上であること
融資限度額
  • 3,000万円
  • 上記のうち運転資金1,500万円
基準金利(無担保・無保証人
  • 2.36~2.85%
  • 担保ありだと金利が下がる
返済期限 各融資制度に定める返済期限以内
審査期間 1ヶ月以内

融資を受けるには詳細な事業計画書が必要になるので、事前にしっかりと準備しておきましょう。

また日本政策金融公庫は、他にも以下の融資制度を提供しています。

融資制度2.制度融資

制度融資とは、「融資する金融機関」と「融資を受ける起業家」の間に「信用保証協会」が入ることで、開業したての起業家でも融資を受けやすくした3者連携の制度です。

信用保証協会とは、融資の返済が滞った起業家の債務を代わりに保証する組織です。

この信用保証協会がいざというときの債務を引き受けることで、金融機関は起業家へ融資を実行しやすくなります。自治体と金融機関が連携して実現した、中小企業および個人事業主向けの制度です。

特徴は次のとおりです。

  • 無担保・無保証人で受けられる
  • 開業前でも受けられる
  • 10年以上の長期融資にできる可能性がある
  • 低金利かつ固定金利である
  • 審査期間が1ヶ月以上と長い傾向がある

詳細は各都道府県の公式サイトや、最寄りの金融機関にてご確認ください。

融資制度3.大手銀行、地方銀行、信用金庫からの融資

銀行や信用金庫から直接融資を受けるのも、資金調達の方法の1つです。

事業実績が1年未満の場合だと、大手銀行からは難しいものの、地方銀行や信用金庫からであればハードルが下がります。

とくに信用金庫は「地域の新興や繁栄のための相互幇助」を目的である関係で、小規模事業者やフリーランスでも受けやすいのが特徴です。

ただしその分だけ金利も高めに設定されているケースがほとんどなので注意しましょう。

借入|個人借入や消費者金融を利用した資金調達

調達額や金利の融通が利きやすく、場合によっては即日融資もできるのは親族・知人からの借入です。

とはいえ何百万・何千万円と知り合いから借りるのは現実的ではなく、金銭のやり取り次第では大切な人との関係が壊れる可能性もあります。実行する場合でも、正式な契約書を作っておくのがベターです。

また消費者金融からの資金調達も方法の1つですが、法律上の貸付金利の上限(15~20%)になっていることがあります。

個人や消費者金融からの借入は、緊急的に資金調達が必要になったときのみにとどめたほうがよいでしょう。事業の見通しが見えない開業時にフル活用するのはおすすめしません。

補助金・助成金|審査ハードルは高いが返済不要の資金調達

補助金・助成金とは、原則として国や地方公共団体から支給される、返済不要の資金のことです。非常にハードルの高い審査基準や審査資格のクリアが必要ですが、受けられれば開業時の資金調達としては非常にありがたいといえます。

開業時の資金として利用できるのは、以下の補助金・助成金です。

補助金・助成金 概要
創業補助金(地域創造的起業補助金)
  • 新たな需要や雇用の創出を促して国経済を活性化させる目的で起業家を助成する
  • 申込期限がある点や、不定期募集である点がデメリット
小規模事業者持続化補助金
  • 小規模事業者(個人事業主・フリーランス)を対象にした最高50万円まで受け取れる補助金
  • 従業員21人以上では受けられない
再就職手当
  • 雇用保険支払者かつ失業保険の受給条件を満たす人が期限内に起業・開業することで受け取れる手当
  • 失業保険は停止になるので注意

補助金・助成金については、事業を行う地域の商工会議所にも問い合わせてみることをおすすめします。

出資|自己資金や他者からの出資を利用した資金調達

自分の個人資産である自己資金や他者からの出資(返済不要の資金)を開業時の資金にするのは、資金調達の基本です。

自己資金には預貯金や退職金、金融商品の売却額が当てはまります。当然ながら返済の義務や金利はなく、そもそも資金調達先がないことから、自己資金を起因とした金銭トラブルや経営権の譲渡などのリスクをほぼゼロに抑えられます。

自己資金は融資の審査基準として見られるケースもあるため、金額が多いに越したことはないでしょう。ただし自己資金がゼロになると事業どころか生活面も危ぶまれるので、出資のバランスが重要です。

一方他者から出資を受ける方法は、出資金の返済義務がないうえに、自分1人で準備するより多額の資金を得られます。直接資金を受けたり、株式を発行したりする方法が主です。

ただし出資額の割合次第では、経営への深入りや経営権の明け渡しを出資者に許すことになります。注意が必要です。

また出資者は「事業の将来性」に投資するため、あなたの事業に成長性や魅力がなければ出資が受けられない可能性があります。

出資の資金調達方法としては、主に以下のものがあります。

  • 知人や親族
  • 従業員(社員持株制度)
  • 他企業
  • ベンチャーキャピタル(VC)
  • エンジェル投資家(個人投資家)
  • クラウドファンディング

【業種別】開業時に必要な資金はいくらか?

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日本政策金融公庫の「2020年度新規開業実態調査」によると、開業時に用意していた資金額は、500万円未満の43.7%が一番高い割合でした。平均値は989万円と調査以来もっとも低い数値です。

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法改正で1円起業、在宅起業で設備資金が安い、不景気で資金調達が難しいなど、さまざまな要因で開業資金の平均も下がっていると推測されます。とはいえ店舗型の事業や広告宣伝費などを考えると、資金調達の重要性は変わりません。

以下では業種別の開業資金の大体の目安額を記載します。参考にしてください。

業界 開業に必要な目安額
飲食店 900万~1,100万円
医院・クリニック 1,000万~2億円以上(診療科目ごとに必要な医療機器による)
美容院 1,000万~1,500万円
士業(弁護士、行政書士、税理士など) 50万円~500万円(自宅開業か事務所を構えるかによる)
ネットショップ(自宅・無店舗開業) 50万円以下

開業時の資金調達を受けるには「事業の信用度」が大切!高める方法は?

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資金調達を成功させるには、個人・法人問わず「事業の信用度」が重要なファクターになります。金融機関や投資者にとって、信用度の低い事業への投資は、不渡りや貸倒れのリスクがあるためです。

事業の信用度を高める方法をみていきます。

  • 詳細な創業計画書・事業計画書の作成
  • これまでのあなた個人の信用情報にキズがない
  • 豊富な自己資金や資本金(いくら出資されたか)
  • 安定した、または今後の安定性が見込める経営実績や収入
  • 開業前に同様の仕事をしていた、などの業務実績
  • 青色申告による正確な帳簿付けや損益計算書・貸借対照表の作成

とはいえ補助金・助成金や融資の申請に必要な書類を自分だけで準備するのは難しいです。もし作り込みの甘さや不備があると、申請が通らなかったり希望の金額より低くなったりが考えられます。

開業資金の相談は資金調達に強い税理士へ!

自己資金をしっかり準備し、さまざまなリスクを抑えつつ起業するのも基本となります。もし開業資金が必要なときは、日本政策金融公庫からの融資や制度融資を利用した資金調達が金利や信用面でもおすすめです。

もし資金調達の成功可能性を上げたいなら、資金調達の実績がある税理士へ相談を推奨します。税やお金の専門家である税理士なら、資金調達から開業に関してさまざまな知見や経験を持っているためです。

税理士に依頼する具体的なメリットは次のとおりです。

  • 税務や財務知識による適切な資金調達方法の選定ができる
  • 融資実行前の融資先との面談に同行できる(専門家のお墨付きがもらえる)
  • 創業計画書や事業計画書などの書類作成について適切なアドバイスができる
  • 税の独占業務を行える税理士なら、確定申告書や決算書に関して具体的にサポートできる

たとえば日本政策金融公庫の審査に落ちてしまうと、その後6ヶ月間は再審査を受けられません。

確実な資金調達を成功させたいなら、税理士に一度相談してみてはいかがでしょうか。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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