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会社代表者にかかる制限とは?利益相反取引や競業について解説

会社代表者にかかる制限とは?利益相反取引や競業について解説

起業をして、会社の代表者になろうと思うのであれば、事業の方針やその戦略などだけではなく法令違反とならないように配慮しなければなりません。個人事業から法人化した会社も多くありますが、個人事業と違い株式会社では株主の利害を考慮しなければなりません。そこで代表者にはいくつかの制約が課せられます。

代表者の利益相反取引および競業の禁止

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起業者の多くは取締役となり会社を代表する立場になることでしょう。この場合、代表者としていくつか禁止される行為があることを知っておかなければなりません。また会社法で規定されている多くの規制や義務は、厳密には代表者に限られたものではなく取締役に対する規定です。実質的には代表者が注意すべき内容ではありますが、ともに起業し、取締役としての立場を共有する者がいるのであれば、その者についてもここで紹介する規制が適用されることを覚えておきましょう。

禁止される行為をしてしまった場合、会社に対する損害賠償によってその責任を取ることになるでしょう。そしてその過程では株主による「株主代表訴訟」が提起されることがあります。それほど頻繁に提起されるものではありませんが、毎年数十件は国内で起こっています。実際どの程度提起されているのか、株主代表訴訟年別件数が記された下の図表を見てみましょう。

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出典:公益社団法人商事法務研究会

年によって違いはありますが新受件数は毎年およそ60から90ほどで推移していることが分かります。株主代表訴訟によって多額の損害賠償を請求されることもあるため、会社を経営している代表者、もしくはこれから会社を立ち上げようと考えている人はルールに従った活動をするようにしましょう。

利益相反取引とは

会社法では「利益相反取引」および「競業」について制限をかける規定が設けられています。利益相反とは、取締役個人にとって利益のある行為が会社にとっては損となる取引、または会社が利益を得る行為によって取締役個人が損をするような取引のことを言います。そしてここで言う利益相反取引の禁止は会社財産の保護という観点のもと定められているため、会社が損をする取引に限られます。

利益相反取引の例としては、会社から取締役個人が物を買うようなケースが典型的と言えるでしょう。代表という立場を利用して自分で売買価格を決められるからです。 もう少し具体的な例としては、社用車の買い替えにあたりこれまでの社用車を下取りに出さず、個人的に買い取るような行為が利益相反取引にあたることがあります。この場合、自分だけが得をしようとする意思がなかったとしても利益相反取引となってしまうことがあるため注意しなければなりません。またこのような代表者個人と会社との関係では「直接取引」による利益相反取引と言われますが、これに対して「間接取引」という形で利益相反にあたることもあると覚えておきましょう。代表者個人が持つ債務について会社に保証してもらう場合などです。

競業とは

「競業」とは、取締役が自分のため、もしくは第三者のために会社の事業の部類に属する取引をする行為を言います。例えば株式会社の運営をしていく中で身につけたノウハウを活かして個人的に同種の事業を始める場合などです。また、新しいアイデアで利益を生み出そうとしても同じ事業の部類に属する場合にはやはり競業となってしまいます。会社として活動をしていると代表者であっても決められた報酬で職務の執行をしなければならず、個人の手元に入る利益は限られてしまいます。そこで会社には黙って個人事業を立ち上げて大きな利益を得ようとすることが考えられますが、そうすると会社は損害を被ることにもなりかねません。そこで会社法によって競業を禁止しています。

「第三者のため」という文言でも多くの場合は、その個人が立ち上げた別会社で活動するケースに該当するでしょう。競業を行う主体が形式的に異なるだけであり、どちらも禁止されている行為、そして会社に対する裏切り行為であるため控えなければなりません。

また、退職後の起業が競業にあたるとして問題になるケースがあります。以前働いていた会社で身につけたスキルを使い、新しく立ち上げた会社でその事業を始める場合などです。以前勤めていた会社から「いつか退職をしたとしても競業となるような仕事はしない」といった誓約書を書かされていることもあるかもしれません。ただしこのような誓約が必ずしも有効であるとは限りません。実際、こうした競業禁止を否定した裁判も存在します。 その裁判において、元従業員は退職後の競業禁止と違約金についての誓約書を会社に提出していましたが、裁判所は競業禁止規定が地理的範囲や禁止期間など具体的な制限がなされておらず無効であると判断したのです。自分が訴えられないためにも、あからさまな行為を除き、どの行為が競業に該当するのかについては専門家の判断を煽る必要があるかもしれません。

株主総会の承認があれば認められる

利益相反取引や競業は絶対的に禁止されるわけではありません。利害をともにしている株主の許しを得ればこれらの行為をしてもいいのです。ただし株主総会という手続を経る必要があります。取締役はその取引について重要な事実を開示し、株主総会の普通決議により「承認」を得なければなりません。 普通決議の要件は原則「総議決権の過半数を有する株主の出席と、出席した株主の議決権の過半数」となっています。 そこで仮に代表者である自分が株式のすべてを保有する場合、利益が相反することもないため一般に利益相反取引となりうる行為でも承認は必要ありません。また、代表者個人が会社に対して貸し付けを行うとし、それが無利息・無担保でなされるものであれば会社にとっても有利に働きます。結果、この場合でも株主総会の承認は必要ありません。

取締役会の承認でも認められる

基本的には利益相反取引および競業取引をするには株主総会の承認が求められますが、取締役会設置会社であれば取締役会の承認でもいいとされています。専門性が高い内容など一部の取り決めについては、取締役だけの話し合いの場である取締役会において決議をすることが許されており、この場合の承認についても取締役会に判断が任されています。しかもこの場合、利益相反取引等を行った取締役は事後報告でも良いとされています。ただし事後報告の場合は取引をした後すぐ、その取引について取締役会に報告をしなければなりません。

取締役会の決議要件も株主総会の場合と似ており、原則は「決議に加わることのできる取締役の過半数が出席し、その過半数の賛成」をもって決議されます。

他の役員等における利益相反取引および競業

ここまでで説明してきた禁止行為および関連する規定は取締役に適用されるものです。そのため同じ役員等である監査役や会計参与、会計監査人には適用されません。これらの役員等と取締役との大きな違いは業務執行をする立場にあるかどうかという点です。もとより監査役などは会社の業務執行をしておらず意思決定は取締役がその役割を担っています。そのためそもそも利益相反取引や競業取引をすることができる立場にないのです。

ただし、業務執行をするかどうかという観点から言えば「執行役」や「清算人」と呼ばれる立場の者については取締役と同様の規定が準用されることになります。執行役はまさに業務執行機関であり当然に準用されます。清算人とは、破産手続開始決定を受けて清算会社となった場合、その清算をする範囲で業務の執行が求められますがその職務を担当する者のことを言います。そのためやはりこの規定を準用させる必要性があると言えます。

代表者が負う責任

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取締役が利益相反取引や競業取引をしてはいけないというのは、取締役の職務内容を考えれば当然のことであるとも言えます。そこで取締役の責任や、利益相反取引などで負う具体的な責任について言及していきます。

委任関係に基づく責任

取締役のような代表者に限らず役員は従業員とは異なり、会社と委任関係にあります。信頼関係を基礎に仕事の依頼をしているのです。そのため委任契約上の善良な管理者としての注意義務が発生します。そこでその義務違反があると会社に対する責任を負うこととなり、損害賠償の請求を受ける可能性が出てきます。

代表者の忠実義務

役員には会社との委任契約に基づく善管注意義務を負い、さらに取締役の場合だと会社への忠実義務が会社法上に条文として定められています。逆に言えば役員等であるにもかかわらず監査役や会計参与、会見監査人には忠実義務はないということになります。彼らは基本的に取締役の職務を見張る監査機関として機能するため、会社に対する忠実義務で制約をかけることは望ましくないのです。そしてこの場合でもやはり執行役や清算人には忠実義務が準用されます。

利益相反・競業で負う責任

利益相反取引などにより会社に損害を与えた場合、取締役は自身が忠実に遂行すべきであった任務を怠ったと推定されてしまいます。ただし取締役としてしっかり仕事をしていたことの立証をすれば責任が免れる可能性は残されています。 ここで注意が必要なのは、実際に取引をした取締役だけでなく取締役会の承認決議で賛成をした取締役も同様に責任を負うということです。

その他禁止事項

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代表者にとって禁止行為とされるものの代表例は利益相反取引や競業取引です。しかしこれ以外にも禁止行為があります。

特定株主への利益供与

当たり前のことではありますが、株主に対しては全て平等に扱う必要があります。特定の株主に対して会社のお金を分け与えるような行為をしてはいけません。このことは法律でもはっきりと定められています。もともと総会屋と呼ばれる者を廃除するためにできた規定です。

総会屋とは株主の権利を濫用して株主総会を荒らす行為をする者のことを言い、その行為をしないように会社がお金を払うということが行われていたのです。また、会社もこの総会屋を利用して株主総会の進行をしていたという実態もありました。そこで総会屋に限らず、特定の株主に無償で財産を供与した取締役は連帯してその金額を支払う義務を負うと定められました。これは無償でなければいいという話でもなく、有償であったとしてもその対価が供与した利益とあまりにつり合っていない場合には無償で供与した場合と同様に扱われてしまいます。

剰余金の不当な配当

本来の利益より多く見積もり、儲かっていると見せかけて剰余金の分配を行った場合もその責任を追及される可能性があります。いわゆる「蛸配当」と呼ばれるものです。この場合には上記のように株主間の不平等は生じませんが、会社債権者に対して損害を生じさせるおそれがあるため許されていません。

支配人との兼任

基本的に取締役であっても支配人等、従業員としての立場を兼ねることは認められます。ただし代表者(代表取締役)にはこのことが許されていませんので注意しましょう。

任期を超えた職務執行

意外と周知されていないことに取締役の「任期」というものがあります。通常取締役は2年で任期を迎え再び選任をしなくてはなりません。株式の譲渡に制限を設けている非公開会社であればこの規制が緩和され、定款の定めをもって10年まで伸長することができます。しかし無制限に伸ばせるわけではありません。場合によっては1年に限られる場合もありますので注意が必要です。さらに、退任した場合には登記が必要ですがこれを放置していると過料に処されてしまうこともあります。知らなかったでは通用しないため、忘れないようにしましょう。

まとめ

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会社の代表者として禁止されている行為について紹介してきました。具体的には取締役に課せられる利益相反取引・競業への制限です。取締役にはこのように、会社とは別の個人的な活動についても一定の制約が付くということは覚えておかなくてはなりません。株主総会または取締役会の承認を得ずにこれらの取引をしてしまうと損害賠償責任を負うことになるかもしれません。

新しい会社の立ち上げもしくは会社と個人的に取引をするという場合、トラブルにならないか不安に感じているのであれば専門家に相談をしてみると良いでしょう。

企業の教科書
高桑 哲生
記事の監修者 高桑 哲生
税理士法人 きわみ事務所 所属税理士

税理士法人きわみ事務所の所属税理士。
「偉ぶらない税理士」をモットーに、お客さんに喜んでもらえるサービスを提供。
税務処理だけでは終わらない、プラスアルファの価値を提供できる税理士を目指す。

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