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相続登記の義務化|2024年4月施行の内容や手続きの流れなどを解説

相続登記の義務化|2024年4月施行の内容や手続きの流れなどを解説

相続登記(相続による所有権登記)とは、土地や建物などの不動産を所有していた方が亡くなったとき、当該不動産の名義を相続人へ変更する手続きのことです。この相続登記は以前までされない方も多くいましたが、法改正の影響で義務化されたことをご存知でしょうか?

当記事では相続登記の義務化の概要やその他の法改正、相続登記をしないリスク、相続登記を行う流れなどを解説します。

相続登記の義務化は2024年4月1日よりスタート

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不動産登記法の改正により、相続登記の義務化が2024年4月1日よりスタートします。相続登記の義務化によって、新しい制度や罰則が設けられました。

また同時に、住所変更登記の改正と相続土地国庫帰属法の成立など、登記に関するさまざまな法整備が行われました。以下より、それらの概要を解説します。

相続登記が義務化された背景

今回の不動産登記法の改正が行われた背景には、「所有者がわからない土地の発生」が挙げられます。国土交通省の「地籍調査における土地所有者等に関する調査」によると、日本の土地のうち約22%において、所有者がわからない状態となっていました。

その22%のうち不明となっている原因だったのが、相続登記の未了が約66%・住所変更登記の未了が34%です。つまり相続登記がなされないことが、所有者不明の土地が発生する大きな要因となっていたのです。

相続登記がされない原因は次のとおりです。

  • もともと義務化されておらず、申請しなくても不利益を被らなかったから
  • 相続予定の土地の価値が低く、売却や運用で得られるメリットに対して、費用や手間をかけてまで登記する必要性がなかったから

しかし所有者がわからない不動産の放置は、公共事業や復旧・復興事業、民間取引などで土地の利用を阻害する原因となります。

そこで2021年4月21日に成立した法改正により、相続登記および住所変更登記の義務化がされました。また義務化に伴い、登記手続きの一部簡略化や特例の新設などが行われています。

住所変更登記の改正について

住所変更登記とは、住宅を購入したり引っ越したりしたりして住所変更があった際に、登記住所を現在のものへ変更することです。住所変更登記の未了が原因で所有者不明となった土地も多いことから、相続登記と同じく住所変更登記も義務化されました。

「住所等の変更日から2年以内に申請の義務」「正当な理由のない申請漏れは5万円以下の過料の罰則」「実効性確保のための環境整備策の導入」などが改正内容です。

相続土地国庫帰属法の成立について

不動産登記法の改正に加え、相続土地国庫帰属法(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律)が成立しました。2023年4月よりスタートする見込みです。

相続土地国庫帰属法とは、相続によって得た土地を国庫に帰属させることを国に承認を求めることについて定めた法律です。つまりは、相続した土地を国に引き取ってもらえるようになりました。

相続した土地を受け取らずに済む方法として、他にも相続放棄があります。ただし、相続放棄の場合はプラス・マイナスの財産のいずれも、すべて放棄しなければなりません。そういった意味でも、相続土地国庫帰属法は相続放棄と差別化がなされています。

相続登記の義務化によって変わることは?

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相続登記の義務化によって変わる点は、具体的には次のとおりです。

  • 相続登記の義務化に伴う期限と罰則の新設
  • 相続申告登記制度の新設
  • 所有不動産記録証明制度の新設
  • 所有権の登記名義人の死亡情報についての符号の表示制度の新設

相続登記の義務化に伴う期限と罰則の新設

相続登記の義務化に伴い、「不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内」という登記期限が設けられました。また、法改正前に相続した不動産についても同様に、改正法の施行日から3年以内に登記手続きを済ませなければなりません。

もし正当な理由なく期限内に登記しなかった場合は、10万円以下の過料の支払いが命じられます。

正当な理由の例として、法務省では以下のものを挙げています。

  1. 数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
  2. 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
  3. 申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース など

参考 法務省 不動産登記法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について

また、遺産分割が成立した場合、その内容を踏まえての相続登記も同じく義務化されています。

相続人申告登記制度の新設

相続登記が義務化されても、遺産分割やその他の問題が原因で、3年以内では相続人同士で話し合いがまとまらないケースが発生することが考えられます。

また、登記手続きには必要な資料(戸籍謄本や被相続人の住民票の除票など)の準備があるため、経験や知識がない方にとって非常に難しい作業となります。

そうした問題を解決するのが、今回の法改正で新設された「相続申告登記制度」です。

相続申告登記制度とは、「相続の発生と、自分が相続人であることを3年以内に登記官へ申し出ること」により、登記ができなくても一旦は申請義務をクリアしたとみなすルールです。

申出を受けた登記官は、審査後に申出をした人の氏名・住所などを、職権で登記に付記します。この付記内容は登記簿にて確認できます。

ただし、相続申告登記制度は正式な登記手続きではありません。正式な登記は、後に別途で行う必要があります。

所有不動産記録証明制度の新設

所有不動産記録証明制度とは、相続人や被相続人が登記名義人である不動産の一覧を、証明書として取得できる制度です。この証明書を所有不動産記録証明書といいます。交付請求を受けた法務局は、申請者に対して所有不動産記録証明書を発行します。

交付対象となる不動産は、「自分が登記名義人となっているもの」「被相続人その他の被承継人にかかるもの(相続関係のもの)」です。

この制度の設立により、被相続人が持っていた不動産を見逃したり、相続人が把握しきれなかったりするケースを防ぎやすくなりました。相続登記漏れの防止や、相続人による相続登記手続きの負担軽減などの効果が期待されています。

所有権の登記名義人の死亡情報の符号の表示制度の新設

「所有権の登記名義人の死亡情報の符号の表示制度」とは、登記官が住基ネットなどの他の公的機関から取得した死亡情報に基づいて、死亡の事実を符号によって不動産登記に表示する制度です。

現行法では、相続登記などの特定の申請をしない限り、不動産所有権を持つ登記名義人が亡くなっても不動産登記簿に公示されません。

すると登記記録から登記名義人の死亡情報が確認できないため、民間事業や公共事業などにおいて、当該不動産の所有者の特定が困難でした。そのため、計画を進める上での交渉に手間やコストがかかるという問題があります。

今回新設された当制度のおかげで、登記を確認すれば、不動産の所有権の登記名義人が存命かそうでないかを判断できます。

相続登記をしない罰則以外のリスクとは

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今回の法改正で過料の罰則が新設されましたが、相続登記をしないリスクは他にも存在します。相続登記をしない主なリスクは次のとおりです。

  • 権利関係が複雑となり、遺産分割協議や代襲相続などが困難となる可能性がある
  • 所有者不明の不動産では、不動産売却や不動産を担保としたローン組みなどの活用・運用ができない
  • 他の共同相続人の借金が原因で、不動産が差し押さえられる可能性がある
  • 保管期限の関係で、戸籍謄本や住民票の除票などの公的書類の入手が難しくなる

普段の生活をおくる上でのデメリットは少ないものの、いざというときの手続きで苦労する可能性が高いです。10万円の過料の存在と合わせて考えても、相続登記は必ず行うようにしましょう。

相続登記の手続きの流れ

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相続登記の義務化が決定されている以上、今後不動産の相続が見込まれる方は、相続登記の手続きの流れをある程度知っておきましょう。相続登記の主な流れは次のとおりです。

  • 相続財産の調査を行う
  • 相続登記に必要な書類を収集する
  • 登記申請書を作成し申請を行う
  • 登記完了後に完了書類を受け取る

相続財産の調査や相続人の特定を行う

不動産の相続登記においては、まず相続財産となる不動産についての調査を行い、所在地・面積・権利関係などを特定します。必要となる書類は次のとおりです。

  • 登記事項証明書
  • 登記済権利書(登記識別情報)
  • 固定資産税の課税通知書
  • 土地の名寄帳

また、相続登記を行うには「誰が正式な法定相続人であるか」を特定する必要があります。戸籍や除籍などを確認し、相続人全員分の特定を行いましょう。

相続登記に必要な書類を収集する

相続登記の申請には、さまざまな書類を収集し作成しなければなりません。相続登記において必要となる書類は次のとおりです。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産を相続する人(新しく登記名義人となる人)の住民票
  • 相続予定の不動産の固定資産税評価額がわかるもの(固定資産税納税通知書など)
  • 収入印紙
  • 登記申請書
  • 返信用の封筒
  • 相続人全員の本人確認資料
  • 遺産分割協議を行う場合に必要な書類(遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書など)
  • 遺言書によって法定相続人以外の人が相続する場合に必要な書類(遺言書や遺言執行者の印鑑証明書など)
  • 委任によって代理人が申請する場合は代理権限情報(委任状)

登記申請書を作成し申請を行う

必要書類が準備できた後は登記申請書を作成し、法務局にて相続登記の申請を行います。申請先は、名義変更する不動産の所在地がある法務局です。

登記申請書の様式は、法務局の公式ホームページよりダウンロードできます。登記の種類によってさまざまな種類の様式があるので、異なる書式を使わないように注意しましょう。

また、申請時には登録免許税の納付が必要です。登録免許税とは、あらゆる登記手続きの際に発生する税金です。金額は、相続する不動産の評価額(固定資産税評価額)に税率0.4%をかけた数値です。納付は現金または収入印紙にて行ってください。

登記完了後に完了書類を受け取る

相続登記手続きが完了した後は、登記完了書や登記識別情報通知書など、登記完了を知らせる書類を受け取ります。

このうち重要なのは、登記識別情報通知書です。登記識別情報通知書とは、従来の登記済権利証に代わるもので、登記識別情報通知(アラビア数字その他の符号の組み合わせからなる12桁の符号)を知らせる書類です。不動産の売却や抵当権の設定などの手続きにおいて、必要な情報となります。

登記識別情報通知書は、他人に内容が盗み見られぬよう、目隠しシールを貼り付けた状態で交付されます。届いた後は、金庫などで大切に保管しましょう。

相続登記の手続きは専門家のサポートを受けるのもおすすめ

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相続登記の手続きは、必要な手順さえ踏めば専門家の力を借りることなく自分だけで進められます。相続人や不動産の数が少なかったり相続人と簡単に連絡ができたりなど、手続きがシンプルになる場合は、自分だけで手続きするのも手です。

とはいえ相続人全員の戸籍謄本の収集、相続不動産の権利関係の確認、疎遠な相続人同士の連携などは想像以上の労力と時間が必要となります。また、手続きに不備があったり必要書類が足りなかったりすると、登記自体が認められず何度も法務局とやり取りする可能性も出てきます。
何度も法務局とやりとりしている間に、手配した書類の有効期限が切れてしまい、取得しなおさなければならなくなることも。

そのため相続登記を行う際は、司法書士などの専門家へ協力を依頼するのがおすすめです。司法書士であれば登記手続きだけでなく、戸籍謄本の取得や遺産分割協議書の作成などについてもサポートしてくれます。書類作成や手続きの不備も心配する必要がなくなるでしょう。

かかる費用の相場は、おおよそ5~15万円です。詳細な費用は司法書士事務所ごとに異なるので、無料相談などを利用しつつ、一度当該の司法書士事務所へお問い合わせください。

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増山 晋哉
記事の監修者 増山 晋哉
弁護士法人 きわみ事務所 代表弁護士

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