会社設立

会社設立時の資本金額の決め方と決める際の5つのポイント

会社設立時の資本金額の決め方と決める際の5つのポイント

現在は法律の改正によって、会社を設立する際に必要になる最低資本金額は、株式会社でも、合同会社でも1円と定められています。

しかし、実際に資本金1円で法人化してしまうと、会社経営において、さまざまな点で問題が起きてしまいます。

では、会社を設立するための最適な資本金額はいくらなのでしょうか?

今回は、会社を設立する時の理想の資本金額と資本金の決める時のポイントを解説していきます。

資本金とは

資本金とは、株式会社を運営する際に発行される株式と交換することで手に入れた資金のことです。

会社設立時の運転資金がどのくらいかを意味しているものであるため、「資本金の大きさ=会社の規模=会社の信用力」とも言えます。

以前は株式会社を設立する際には資本金額は1,000万円以上、有限会社を設立する際には資本金額は300万円以上と最低額が定められていました。

しかし、法改正により現在では株式会社も合同会社も資本金1円から登記することができます。

会社は発起人と呼ばれる、資本金の出資、定款の作成など手続きを行う人によって作られています。発起人は会社が設立された後、出資された資本金に応じて株式が発行されて株主となります。

発起人は、基本的に誰でもいいのですが、大体の場合、その会社の代表取締役、つまり社長が発起人になります。

発起人は必ず1株を引き受けて、株主となり会社の経営に携わらなくてはならない存在で、必ずしも代表取締役が発起人になる必要はないということを覚えておきましょう。

資本金は会社の規模、信用力を表す

資本金は会社の規模を表しています。 基本的に資本金が多ければ多いほど、企業として運営していく体力があると判断され、それだけ信用があるということになります。

どの企業もそうですが、設立したての頃は、実績も信用もないので、他の企業からの評価としては、「資本金」を見て、どのくらい信用できそうな企業なのかを判断することが多いです。

資本金額はそのまま経営資金にも影響するため、資本金が少ない場合には対外的な信用力が低いと判断されてしまいます。

会社としての信用が低いと、まず資本金を大きくしたい時に、再度増資が集まりにくいというデメリットがあります。

金融機関側からしても、設立時の資本金が1円の企業の場合、「すぐに潰れてしまうのでは・・・」と不安になり、融資を申し込んでも貸し渋ってしまうケースが多いです。

事業を始めて営業をすることになった時に、相手の企業はあなたの会社について色々と調べるはずです。その時に資本金が1円しかなかったら、なんとなく怪しく感じてしまいますよね。

こういった理由から、法律上は資本金1円でも会社を設立することが出来るようになりましたが、資本金1円で起業するのはあまりいいことではないということが分かります。

資本金は会社の経営資金

資本金は開業時の会社の運転資金であるため、たとえ代表者といえども自由に出し入れしたり、使ったりすることはできません。

資本金はあくまでも会社のお金であり、出資者や代表者のものではないので、会社として使うこと以外はできなくなってしまいます。

個人事業主の場合は、「自分のお金=事業のお金」ですが、法人化すると自分のお金と会社のお金は明確に区別されます。

資本金は、会社の経営を動かすための経費として、いくらでも使うことが出来ますが、私用で使う洋服や生活費として利用したりすることはできないのです。

ただ、反対に自分のお金を、一時的に資本金として投入するということは可能です。

この場合は、役員借入金という形で経営資金を代表者が貸し付けることで、資本金としてお金を増やすことが可能になります。

この借入金は経営資金分が戻ってきた際に自分の元に返ってくるものなので、資本金が底をついてしまいそうな時に非常におすすめです。

理想的な資本金額はいくら?

理想的な資本金額とは、いったいいくらなのでしょうか。

先ほど、資本金額が少なすぎると、どのようなことが起こるのかについて解説しましたが、起業する方の全員が潤沢な資本金を準備できるわけではありません。

では、どういった基準で資本金を設定して、融資して貰えば良いのでしょうか?ここでは、具体的に理由を見ていきます。

資本金として数か月分の運転資金は必要

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資本金を集める目安としては、少なくとも数ヶ月分の運転資金を想定しておくことが必要です。

個人事業主として独立して、何年か後に法人になるのであればともかく、会社設立当初は売り上げが立たないというケースも十分にあります。

会社設立時に借りる資本金は、売り上げがきっちり立つまでの運転資金として考えておくべきです。

業種にもよりますが、設立してサービスを開始した当初から売り上げが上がる企業はほとんどありません。数ヶ月の間は、売り上げがゼロであったとしても会社として維持していける予算を確保しておく必要があるのです。

また、事業を始める前の経費として使うことも出来ます。

たとえば、事務所・店舗の賃貸費用、設備・備品・消耗品の購入費用や商品・営業資料の準備費用、人件費、広告宣伝費、通信費などが挙げられます。

もし売上が立たずに、資本金がなくなれば再度増資を考える必要があります。万が一に備えて、なるべく多めに資金を集めておくことをオススメします。

資本金を1,000万円未満にする理由

資本金を設定する上で気をつけなければならないポイントの1つに、「資本金は1,000万円未満に抑えたほうがよい」というものがあります。

通常、資本金が1,000万円未満の場合は、設立1年目と2年目の消費税が免除されます。これがもし仮に、資本金を1,000万円以上にしてしまうと、消費税が免除されなくなってしまうのです。

初年度から消費税が課税されてしまうのは、利益が出るかどうかわからない状態、安定しているかどうか定かではない状態で不要な出費を払わなくてはならないことになり、とても大きなデメリットです。

それに加えて、資本金が1,000万円を超えると法人住民税まで高くなってしまいます。

資本金を1,000万円以上にしてしまうと、本来は免除されるはずの税金を支払わなければならないので、資金調達をする際には気をつけてください。

資本金は公開されることを意識し、取引先からの見え方を考える

資本金は会社の運転資金であり、会社自身の体力でもあります。先ほども触れましたが、特にBtoBの企業の場合は、取引先からの見え方を考えておく必要があるのです。

大企業の中には、個人や一定基準以下の規模の会社とは取引をしないという会社もあり、ビジネスチャンスを逃してしまうことにもつながりかねません。

また、金融機関からお金を借りる時も同様です。

銀行から融資を受けるとき、会社の返済能力を見て、貸すかどうかを考えています。資本金は融資額を決める基準にもなり得るのです。

また銀行に法人口座を作る場合にも、資本金が低すぎると審査に通らず口座開設をすることが出来ないということもあるので気をつけましょう。

許認可が必要な事業を行う場合には一定の資本金が必須

許認可を受ける必要がある事業の中には、資本金の最低金額を定めているものも存在します。

あなたがやろうとしている事業が、もし資本金不足で開業することが出来ないのであれば、再度資金調達を行うことになってしまうので、あらかじめ確認しておくようにしましょう。

許認可を受ける必要がある事業の最低資金額の例

  • 有料職業紹介業:500万円
  • 一般建設業:500万円
  • 一般労働者派遣事業:2,000万円
  • 第一種旅行業:3,000万円

資本金を決める5つのポイント

ポイント1.銀行融資を前提に資本金額を決める

実際に多い資本金の決め方が銀行融資を基準に考える方法です。

銀行の融資では資本金額を基準に融資するかどうかや、融資額を決めることが多く、非常に重要です。そのため、融資が必要ということであればある程度の資本金がなければ融資を受けることは難しくなります。

事業形態により適切な資本金額は異なりますが、総務省統計局の「企業産業大分類,資本金階級別企業数の割合」によると300万円~500万円が一番多く、次いで、1,000万円~3,000万円の企業も多くあります。これから会社設立をする際には融資のためには100万円は用意してほしいところです。

ポイント2.出資できる最大額を資本金とする

資本金は会社の規模、信用力を表します。特にインターネットで事業を興す場合には、一般的な事業に比べ判断基準が少なく、会社概要を参照に会社を調べることがよくあります。

会社概要の中でも資本金は特に重視される項目ですので、事業を円滑に進めるために可能な限り多くの額を資本金にするという考え方があります。

ただし、一度資本金としてしまうと簡単には減らすことはできませんし、個人に戻すことはできませんので注意が必要です。

ポイント3.最小の資本金額にする

ポイント2とは反対に融資を受ける必要がない場合、資本金は少なくても大きなデメリットはありません。

今では資本金1円でも会社設立は可能ですが、当面の経営資金としてある程度まとまった金額は必要です。この場合には、出資してもよく、経営にも問題ない範囲の少額を資本金にすることをおすすめいたします。

資本金額は後から増資することも可能ですが、増資のための手続きの手間や費用を考えると最初から多めに設定するようにしましょう。

ポイント4.株主で協議して決定する

何人かが集まって会社を設立する場合には、誰がいくら出すのか、誰が株主になるのかを決めることになります。この場合には自然と資本金が決まります。

ただし、出資割合によって経営する上での権利関係に関わります。

出資割合が多い株主は当然、経営にも強く口を出すことができますし、株式の過半数を持っている場合には取締役の選任や解任をすることができます。

ポイント5.許認可事業の最低額を基準に決める

許認可を受ける事業によっては最低資本金額が定められております。

例えば、一般建設業では500万円、第一種旅行業では3,000万円が必要です。

許認可を受ける場合には必要な資本金額も事前に確認しておきましょう。

資本金が十分に集まらない時はどうしたらよいのか?

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事業を運営していて、資金繰りに困ってしまった時、どうしたらいいのか分からないですよね。資金を集めたいですが誰も貸してくれない・・・そんな時にオススメなのが、「現物出資」という方法です。

現物出資とは、会社の設立や新しい株の発行のタイミングで、金銭以外の財産を出資に充てることを指しています。

現物出資として、納めることができるものとしては、パソコンや不動産、車や債券、有価証券などが存在しており、金銭以外で一定の価値を担保することができるものであれば、ほぼなんでも現物出資として扱うことが可能になります。

現物出資のメリット・デメリット

現物出資は、手持ちのお金が不足している時に簡単に資金として、担保に入れることが出来るという点で、非常に大きなメリットがあります。

一方で、財産引継書や調査報告書を作成しなければならなかったり、現物出資の価値が足りていないと判断された場合、不足分を支払わなければならなかったり、課税対象になり得てしまったりと意外と不便なことが多いのです。

こういった理由から、現物出資は、簡単に出資金を集めるには非常に適していますが、デメリットも非常に大きいということが分かります。

資本金は代表者が100%出資するのが理想

どのくらいの企業にしようとしているのか、また、事業のスケールによっても異なりますが、資本金はなるべく代表者が100%出資するのが理想です。

資本金を代表が1人で全て出資することによって、株の保有割合が100%個人のものとなるので、経営に口を出されたりする心配がなくなります。

自分のお金で会社を作っているため、返さなくてはならないお金が無いというのも非常に大きな魅力の1つです。

ただ、100%資本金を個人負担するというのは、なかなか難しいですよね。

そんな時は出資してもらい、その資金を元手に事業を運営していくというスタンスを取ることになるでしょう。

しかし、複数人で出資をしてしまうと会社の経営に関しても色々と口出しをされてしまうので気をつけましょう。資本金を含まないで出資した場合のトラブルとしてよくあるのは、経営方針の違いからくるイザコザです。

また、全く代表者を含まない出資者で資本金を用意してしまった場合は、会社の経営の決定権が皆無であるということなので、あくまでも株主の言うことに従って経営を進めていいかなければならないのです。

資本金1円で会社を設立するリスク

資本金が少なすぎると会社を運営していく際に、様々なリスクを負わなければなりません。

2006年の法律改正で資本金1円から起業ができるようになりましたが、1円の資本金では何かトラブルがあった時に経営を続けていくことが難しくなります。

本当に1円で起業を考えている場合は、役員借入金と言う形で会社に事業資金を入れることはできるので、自分のお金を会社の資本金として入れることは十分に可能です。

1円起業のデメリットとしては、銀行口座の開設や融資はまず不可能であるということです。

先ほども触れたように銀行口座の開設を行う場合、金融機関側としては融資を検討する際に、会社にどのくらいの資本金があるのかを見ます。

この時に資本金が1円しかなかった場合、銀行口座として貸し出しをしてくれる可能性はまずないでしょう。口座開設や融資を行うのであれば、最低でも100万円以上の資本金を入れておく必要があるとお考えください。

会社設立時の資本金払込とは?

資本金払込とは、会社設立時に定めた資本金の金額を、所定の口座に振り込む手続きです。

ここでは、会社設立時に行う資本金の払込を行う手順を順番にご紹介していきます。

発起人個人の銀行口座を用意(事前に会社の実印を用意すること)

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最初に用意するのは発起人個人の銀行口座です。

資本金払込を行う段階では、まだ会社は設立されておらず、会社自体の口座も作成されていないので、発起人個人の銀行口座にて資本金を振込みます。

銀行口座の種別は普通口座で問題ありません。ただ、会社の口座の場合は通帳をコピーする必要があるので、ネット銀行ではなく通帳のある口座を作成するようにしましょう。

会社の設立にあたって、銀行口座を開設する必要は一切なく、発起人が現在利用している銀行口座でも問題ありません。

この際、1つ覚えておいてほしいのが、会社の口座を作る前に印鑑を作っておかなければならないことです。

会社の実印は、資本金であることを確認するために重要な証拠となるので、必ず用意しておくことが重要です。

ネット銀行を使うメリットと注意点

資本金を振り込む際にネット銀行を使うと、どこからでも振り込みができる、24時間いつでも振り込みできる、手数料が安いなどのメリットがあります。

また、同じネット銀行間での取引であれば営業日や営業時間を気にせずに入金が完了するため大変便利です。

一方、ネット銀行には通帳がないため、会社設立の際に必要な書類である通帳のコピーを行うことができません。通帳をコピーする際には預金通帳の表紙、支店名・口座番号・口座名義がわかるページ、振込人・振込日・振込金額が確認できるページの3ページが必要です。

ネット銀行でも同様の箇所がわかる画面を印刷すればよいのですが、画面構成が銀行によって異なりますので、具体的にどの画面かというが分かりづらいため注意が必要です。

資本金を振り込む(定款認証日以降に行うこと)

銀行の口座を用意することができたら、次は資本金を払込みましょう。 資本金の払込みを行う場合に発起人が複数人いる時は、必ず「預け入れ」ではなく「振込み」を行うことが重要です。

各発起人は、設立事項の段階で誰がいくら出資を行うのか決められています。この時に定められた金額を各々が確実にいくら払っているか確認するためには、この時に決めた金額と同額か、それ以上の金額を各発起人が確かに支払っているかどうか証明する必要があります。

そのため、通帳に払い込んだ発起人の氏名が記載される「振込み」でなければならないのです。ただし、発起人が1人の場合は預け入れをしても問題はありません。

通帳の写しを作成する

次に行うのが、通帳のコピーです。通帳のコピーは、発起人が銀行口座に所定の金額を確かに振り込んだということを証明するために作成します。

この時のために、発起人個人の銀行口座は、通帳のある銀行口座でなくてはなりません。通帳のうちコピーしなければならないのは、次の3点です。

  • 表紙
  • 表紙の裏
  • 振込内容が記載されているページ

表紙の裏は、支店名・支店番号・銀行印などが記載されているページを指しています。 コピー用紙のサイズに特に決まりはありませんが、会社設立登記の書類と同じA4で作成するのが一般的な方法です。

また、「振込内容が記載されているページ」は、わかりやすいように発起人の名前をマーカーで印しをつけておくといいでしょう。

払込証明書を作成する(会社設立時の必要書類)

最後に払込証明書を作成します。払込証明書に記載が必要なものは、以下の7点です。

  • 払込があった金額の総額
  • 払込があった株数
  • 1株の払込金額
  • 日付
  • 本店所在地
  • 会社名(商号)
  • 代表取締役氏名

払込があった金額の総額と、払込があった株数は定款に記載されていた通りの数字を、「1株の払込額」には「払込があった金額の総額」を「払込があった株数」で割った数字を記載しておきます。

「日付」に入るのは、資本金が振り込まれた最も遅い日付です。

「本店所在地」は、会社設立時に決めたものを記載します。

この7つを記載することが出来たら、会社代表印が2カ所必要となります。 払込証明書の左上に1つ、代表取締役氏名の右側に1つです。左上の印は、通帳コピーと綴る際に隠れないようにして、判を押すようにしましょう。

会社設立時の資本金額の決め方まとめ

今回は、会社を設立する時の資本金は、いったいいくらが理想なのかについて解説してきました。

会社を設立する時の資本金としては、1円でも可能ですが、事業を継続していく可能性を考えておくと、300万円〜1,000万円未満の範囲が理想的です。

ただ、事業の業種などによって、この金額は異なるので、自分の事業スケールを考えて資本金を決定しましょう。

会社の設立を検討されている方は、ぜひ本記事を参考にして資本金を集めてみてください。

企業の教科書
高桑 哲生
記事の監修者 高桑 哲生
税理士法人 きわみ事務所 所属税理士

税理士法人きわみ事務所の所属税理士。
「偉ぶらない税理士」をモットーに、お客さんに喜んでもらえるサービスを提供。
税務処理だけでは終わらない、プラスアルファの価値を提供できる税理士を目指す。

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