コロナ禍の中に事業を立ち上げることは不利に感じますが、コロナ禍でも起業や会社設立をする人は意外と多いです。
今回は、コロナ禍でも起業・会社設立をする理由や実際の事例について詳しく解説します。コロナ禍で起業・会社設立をしたいと考える方向けの資金調達方法も紹介しているので、ぜひ活用してください。
コロナ禍による不況に負けず、起業・会社設立をして日本を明るくしましょう。
コロナ禍でも起業・会社設立する人は意外と多い
コロナ禍でも起業や会社設立をする人は意外と多いです。
2020年から新型コロナウイルス感染が流行し、2020年4月には一回目の緊急事態宣言が発令されました。感染症対策のため、私たちの生活は一変。外出自粛による経済的ダメージは大きいものです。
引用:2020年1-8月「全国新設法人動向」調査(速報値)|東京商工リサーチ
しかし、東京商工リサーチによるとコロナ禍である2020年1月〜8月の全国新設法人は84,718社でした。前年同期比で3%減となっていますが、意外にも減少幅はそこまで大きくありません。
業種によっては、前年よりも開業数が増えているケースもありました。コロナ禍でも起業・会社設立をする企業は少なくありません。
コロナ禍に起業・会社設立をする2つの理由
コロナ禍の中、新たに起業・会社設立をする理由は2つ考えられます。
- ニーズが掴みやすい
- 新たな取り組みを試みる企業が増えた
ニーズが掴みやすい
コロナ禍では、人々のニーズが掴みやすいです。なぜなら、行動の基準は「飛沫感染しないこと」だからです。
さらに、家で過ごす時間を「いかに快適にするか」「いかに楽しく過ごすか」に焦点が当たります。行動に制限がかけられているからこそ、人々の心理は同じ方向に働きやすいです。
結果的に、多くの人が同じニーズを求めることとなり、収益につながる事業のアイディアが湧きやすくなります。今だからこそ成り立つビジネスに着目し、起業・会社設立をするのです。
新たな取り組みを試みる企業が増えた
大企業でも、新たな取り組みを試みる企業が増えました。そのため、新たな需要が生まれたのです。
たとえば、従業員のリモート・テレワークの環境を整えるために、パソコンやオンライン会議システム、セキュリティソフトが売れました。個人ではリモート・テレワークに対応するために、簡単に個室が作れるパーテーションや高機能椅子なども売れています。
また、空いているライブ会場や映画館を活用するために、アーティストを呼んでオンライン配信ライブを行うためのシステムや機材も売れました。
ライブを感染対策しながら見られることから、カラオケルームでライブ鑑賞をするサービスも始まっています。
今までとは違う生活様式にマッチしたサービスを提供するため、企業はさまざまな画策をして収益を得なければなりません。新たな取り組みを試みる企業の支援のため、新たな商品や技術が開発されました。
時代が急激に変化したコロナ禍だからこそ革新的な商品やサービスを売り出そうと、起業・会社設立する方がいるのです。
コロナ禍のニーズを察知して業績を伸ばした会社4選
コロナ禍では人の動きが制限され、大きく経済にダメージをもたらしました。
しかし、景気が落ち込む中でも業績を上方修正した会社もあります。上場企業では、2020年9月16日に186社が上方修正をしました。
なかには、コロナ禍の人々のニーズをいち早く察知し、事業転換したり新しいチャレンジをして業績を伸ばした会社もあります。
以下の4社は、コロナ禍でも事業転換・新サービスの展開をして業績を伸ばした会社です。
- にしたんクリニック(エクスコムグローバル・グループ)
- freee
- ティップネス
- OhmniLabs社
にしたんクリニック(エクスコムグローバル・グループ)
にしたんクリニックとは、民間でPCR検査のキットを販売するクリニックです。実は、にしたんクリニックを運営するエクスコムグローバル・グループは、「イモトのWiFi」を展開する会社でもあります。
イモトのWiFiを中心としたWiFiルーターレンタルサービスがメイン事業でしたが、新型コロナウイルスの影響で売り上げが激減したのです。2020年3月は前年同月比で半減、4月月は98%減にまで売り上げは落ち込みました。
「なんとか赤字をカバーできる事業を」と打ち出したのが、PCR検査だったのです。元々、運営に携わっていた東京都内の「にしたんクリニック」を生かしました。
にしたんクリニックのPCR検査は、自宅に届いたキットに唾液を採取して送り返す仕組みです。今までWiFiルーターのレンタル事業を行っていたため、持っていた物流を活かすことができました。
2020年8月にPCR検査事業を開始させ、2020年12月には1日の売り上げ1億円を突破し、1年未満で会社の業績を回復させたのです。
freee
freeeとは、会計ソフトや人事労務などの基幹業務のソフトを販売する会社です。freeeではクラウドソフトを推進しており、会社設立や開業、マイナンバー管理などのクラウドサービスも展開しています。
コロナ禍でfreeeは企業のリモート化の推進にまい進しました。というのも、freeeは2020年3月の全国一斉休校の要請を受け、全社フルリモート・原則出社禁止へと移行させた会社です。事実、全社員の99%がリモートワークを実現しています。
freeeは2020年4月21日には、スモールビジネスに向けた新型コロナ対策支援プロジェクト「PowerToスモールビジネス」を開始。リモートワークのノウハウや助成金・融資についてのオンラインセミナーをスタートさせました。
その後も以下のようなサービスを提供しています。
- 資金調達のプラットフォーム「資金調達freee」
- バックオフィス業務を効率化する「福利厚生freee」
- 発注請求プロセスを簡素化した「freee スマート受発注」
ウィズコロナ・アフターコロナ時代の働き方に一石を投じることとなったのです。
ティップネス
ティップネスは、関東・関西・東海エリアに61店舗のフィットネスクラブを展開する会社です。2020年8月より新事業として、独自オンラインシステムにてオンラインフィットネス配信サービス「torcia」をスタートさせました。
ティップネスのインストラクターによる質の高いレッスンを自宅で受けられるサービスです。今まで運動に興味のなかった人でも満足できるよう多彩なプログラムを揃え、月間600本ものレッスンをライブ形式で配信しています。
コロナ禍では家で過ごす時間の増えた人が多く、フィットネスに行かない人が増えました。また、「コロナ太り」という言葉も流行り、今までダイエットに興味のなかった人も運動をしたいと思うように。新しい生活様式に馴染むフィットネスのあり方を提言したのです。
OhmniLabs社
OhmniLabs社とは、アメリカ・シリコンバレーのスタートアップ企業です。新型コロナウイルス感染症対策におけるオンライン診療・非接触医療の需要が高まる中、OhmniLabs社はいち早くOhmni Robotを開発しました。
Ohmni Robotは自立移動が可能なカメラ・モニター付きテレビ電話です。従来のテレビ電話に加えて移動やカメラ角度の操作ができるので、幅広い視野を確保。Ohmni Robotを使うことで遠隔とは思えない対人コミュニケーションが実現します。
遠隔操作ができる上に5時間以上バッテリーを持続させられるため、医療従事者と患者の接触を避けることを可能としました。
コロナ禍の起業は、アメリカにおいても顕著です。新たなニーズに答えるために、ベンチャー企業が柔軟に技術や商品を開発しています。海外の新しい技術やビジネスにも目を向け、敏感になっていればあなたも起業を成功させられるかもしれません。
日本はもちろん、海外にもアンテナを張って情報をいち早くキャッチしましょう。
コロナ禍に起業・会社設立するなら知っておきたい資金調達の4つの方法
コロナ禍の中、少しでも経済発展を促したいという思いから、起業や開業に向けての補助金や支援制度があります。
なかでも利用しやすい資金調達方法は、以下の4つです。
補助金・支援制度 | 支援機関 |
---|---|
新規開業資金 | 日本政策金融公庫 |
女性、若者/シニア起業家支援資金 | 日本政策金融公庫 |
小規模事業者持続化補助金 | 日本商工会議所 |
地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業補助金 | 経済産業省 |
(1)日本政策金融公庫の「新規開業資金」
日本政策金融公庫では、新規開業資金という融資制度を設けています。新起業育成貸付とも呼ばれており、新しく事業を始める方や事業開始後7年以内の方に向けた融資制度です。
融資対象は、新しく事業を始めるため、または事業開始後に必要な設備資金や運転資金です。
利用対象者 |
|
---|---|
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
返済期間 |
|
融資の活用方法
まずは、事業資金相談ダイヤルへ相談しましょう。
借入申込書と以下の添付書類を準備しましょう。
書類は来店でも郵送でも問題ありません。面談を経て、融資の審査がなされます。
(2)日本政策金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金」
日本政策金融公庫には、女性、若者/シニア起業家支援資金という融資制度も設けられています。
融資対象は新しく事業を始めるため、または事業開始後に必要となる資金です。対象の幅が狭く、限られた人にしか利用できません。
利用対象者 | 新しく事業を始める方、事業開始後7年以内の方で以下に当てはまる場合
|
---|---|
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
返済期間 |
|
融資の活用方法
まずは、事業資金相談ダイヤルへ相談しましょう。
借入申込書と以下の添付書類を準備しましょう。
書類は来店でも郵送でも問題ありません。面談を経て、融資の審査がなされます。
(3)日本商工会議所の「小規模事業者持続化補助金」
日本商工会議所では、小規模事業者持続化補助金の制度を設けています。商工会議所の管轄地域内で事業を営む小規模事業者や、一定の要件を満たした特定非営利活動法人に対しての補助金制度です。
小規模事業者が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更に対応するために必要な経費の一部を支援してもらえます。
対象となる事業は、策定した経営計画書に基づいて商工会議所の支援を受けながら実施する以下の2つです。
- 地道な販路開拓等(生産性向上)のための取り組み
- 販路開拓等の取り組みと合わせて行う業務効率化(生産性向上)のための取り組み
たとえば、以下のような取り組みは補助対象となりえます。
- 新商品を陳列するための棚の購入
- 新商品の開発
- 店舗改装
- 新たな販促用PR
- 新商品の開発にあたって必要な図書の購入
- 長時間労働の削減のための業務改善の専門家からの指導
- 売上管理業務を効率化のための新たなPOSレジソフトウェア
対象事業者
以下にあてはまる小規模事業者が対象です。
- 会社および会社に準ずる営利法人
- 個人事業主(商工業者である)
- 特定非営利活動法人(認定特定非営利法人ではなく、法人税法上の収益事業を行っている)
小規模事業者の定義は、以下の通り定められています。
業種 | 常時使用する従業員の人数 |
---|---|
商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
補助対象の経費
以下の条件すべてを満たす経費が、補助対象経費です。
- 使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確である経費
- 交付決定日以降に発生し対象期間中に支払った経費
- 証拠資料等によって支払金額が確認できる経費
具体的な用途は、以下のように限られます。
- 機械装置等費
- 広報費
- 展示会等出展費
- 旅費
- 開発費
- 資料購入費
- 雑役務費
- 借料
- 専門家謝金
- 専門家旅費
- 設備処分費(補助対象経費総額の1/2が上限)
- 委託費
- 外注費
申請から補助金受領までの流れ
引用:小規模事業者持続化補助金<一般型>について|小規模事業者持続化補助金
申請に必要な様式は、日本商工会議所の小規模事業者持続化補助金に掲載されています。ダウンロードして活用しましょう。
また、2022年までの公募の期間は以下のとおりです。第8回受付締め切り以降については、改めて案内が出るので確認しましょう。
公募開始 | 2020年3月10日 |
---|---|
申請受付開始 | 2020年3月13日 |
第5回受付締め切り | 2021年6月4日 |
第6回受付締め切り | 2021年10月1日 |
第7回受付締め切り | 2022年2月4日 |
(4)経済産業省の「地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業補助金」
経済産業省では、地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業補助金の制度を設けています。地域の中小企業が複数の地域に共通する地域・社会課題について、一体的に複数地域で行う取り組みに対する経費を支援する制度です。
令和3年度についての公募は終わっていますが、毎年実施されることが見込まれます。そのため、来年度に向けて参考にしてください。
対象事業者
令和3年度の対象事業者は、以下の全ての条件を満たす法人格を有する民間事業者とされています。
- 日本に拠点をおく事業者
- 本事業を的確に遂行する組織と人員を有している事業者
- 本事業を円滑に遂行するために必要な経営基盤を持っており、資金において管理能力を有している事業者
- 経済産業省からの補助金交付等停止措置又は指名停止措置が講じられている事業者でない
補助対象の経費
地域と企業の持続的共生を促進したり、地域経済を活性化するような事業が対象です。
単独もしくは複数の中小企業等が、複数の地域に共通する地域・社会課題について、技術やビジネスの視点を取り入れながら、複数地域で一体的に解決しようとする事業(実証プロジェクト)について、その経費の一部を補助する
令和2年度においては、120件の応募があり24件の採択となりました。どのような事業が採択されたのかは「令和2年度「地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業補助金」採択事業者一覧」を参考にしてください。
補助金額の範囲
会社の種類 | 補助金額の範囲 |
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|
上限:3,500万円 下限:100万円 ※補助対象経費の2/3以内 |
みなし大企業(ただし、みなし大企業を除く中小企業等との連名申請が必要) | 上限:3,500万円 下限:100万円 ※補助対象経費の1/2以内 |
申請方法
申請は、以下の2つの方法から選べます。
- 補助金申請システム「Jグランツ」からオンライン申請
- 電子メールでの申請
申請に必要な書類は、経済産業省よりダウンロードできます。
申請方法についても、「令和3年度「地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業」に係る補助事業者(執行管理団体)公募要領」から確認可能です。
また毎年公募期間は異なるため、令和4年度分は経済産業省を随時確認しましょう。
自治体による起業支援事業も確認しよう
自治体によっては、起業支援事業を行っていることがあります。会社や店舗の所在地の都道府県や市町村で補助金や支援金の事業がないか確認してみましょう。
例えば、東京・大阪では以下のような支援を行っています。
県単位・市町村単位などで実施しているため、ぜひ起業予定地で補助金や支援金の事業を調べてみましょう。調べ方が分からない場合は、市町村役所や最寄りの商工会議所へ相談するのも良いアイディアです。
コロナ禍で資金繰りが心配な方は、大いに活用しましょう。
融資や補助金の申請は税理士にお任せ
「融資や補助金の申請が初めてで不安」という方は、ぜひ税理士にご相談ください。というのも、税理士は融資・補助金のサポート業務も行っているからです。
とくに税理士法人きわみ事務所は、起業や会社設立の支援に力を入れています。そのため、創業時の資金調達についても的確なアドバイスができます。もちろん、税務の観点からの経営アドバイスも可能です。
他の士業事務所と連携し、ワンストップで貴社の起業のお役に立ちます。コロナ禍で不安のある経営者の方は、お気軽にご相談ください。
おわりに
不況と言われるコロナ禍でも、起業や会社設立をするケースは少なくありません。なぜなら、以下のような理由があるからです。
- ニーズが掴みやすい
- 新たな取り組みを試みる企業が増えた
実際、大手企業でも人々のニーズを汲み取り、事業変換をして成功した会社もあります。
資金に不安があるのであれば、補助金制度や融資制度を活用することも選択肢として考えるべきです。コロナ禍という人類のピンチをチャンスに変えて、起業・会社設立で成功させましょう。