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創業者間契約とは?友人同士の起業のリスクと注意点について解説

創業者間契約とは?友人同士の起業のリスクと注意点について解説

1人で起業するのに不安がある場合、友人の力を借りたい場合もあるでしょう。友人同士で起業するとメンバー全員が株主になりますが、これが原因でトラブルが起きることがあります。それを回避するためには、「創業者株主間契約」を締結するのが有効な方法です。今回は、創業者株主間契約の詳細と、友人同士で起業するリスクについて解説します。

創業者間契約とは

創業者株主間契約とは、「友人同士で起業した会社をメンバーが辞めてしまった場合に、他のメンバーが自社の株式を買い取ることができる」、という契約のことです。

友人同士でベンチャー企業を起こすのが簡単になった反面、メンバー全員が株式を所有するケースが一般的です。従来の会社のように社長が大半の株式を所有する場合は問題ありませんが、全員が株主のベンチャー企業において、この契約を結んでいないと以下のようなトラブルに発展する可能性があります。

創業者間契約をしていないと起こること

創業者株主間契約を締結していない場合、以下のトラブルが起こることがあります。

  • 辞めた役員が自社の株を保有したまま連絡が付かなくなり、株を買い取ることが困難になる
  • 株主の1人が会社から離れることで、全株主の同意が必要な手続きが進まない
  • 辞めた役員から株を買い取りたいが、買い取り価格の合意が得られない
  • 買い取りが成功しても、買い取った側が多額の借金を背負ってしまう

このように、株式を買い取れないことに加え、全株主の合意が必要な場面が立ち行かなくなったり、買い取り価格で揉めたりするケースがあります。

はじめての起業ではビジネスモデルやサービスの研究などに追われ、株式などの法務は後回しにしがちです。また、仲のいい友人同士で起業したとしても、仲違いや病気、家族の事情、結婚・出産などのライフスタイルの変化といった理由で会社を去ることは十分あり得ます。

起業時からネガティブな内容の契約を結ぶのは気が引けるかもしれませんが、株式に関する問題はベンチャー企業で頻発することを理解しておかなければなりません。また、役員などの役職は辞めれば消滅しますが、株式のトラブルを解決するにはお金と時間を消費する上に、精神的なストレスも生じます。

すなわち、創業者株主間契約を結んでおくと株式の問題を回避できるだけでなく、会社を辞めたとしても友人関係を保つのに有効です。

創業者間契約でなにを契約するべきなのかポイントを解説

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友人同士で起業する際に重要な契約となりますが、どのような内容で契約を結べばいいか分からない方も多いはずです。そこで、創業者株主間契約を作成するにあたり、次のポイントを踏まえましょう。

創業者間契約のポイント①創業者間契約書の雛形を利用する

はじめて創業者株主間契約書を作成するにあたり、条文が記載されている雛形を利用するのも1つの方法です。これらの雛形は一部の法律事務所のホームページからダウンロードができるため、創業者株主間契約書を作成する際に利用するといいでしょう。

そして、雛形にある条文のおおまかな内容は次の通りです。

  • 【目的】会社の地位を失った場合、株式を保有する理由はなくなる
  • 【株式譲渡】会社の地位を失った場合、指定する株式数を譲渡する、譲渡価格の記載
  • 【相続】死亡で地位を喪失した場合、相続人に譲渡請求ができる
  • 【譲渡手続等】株式の譲渡請求を行った際、直ちに株券を交付する
  • 【譲渡等の禁止】書面の承諾なしに、所有する株式を譲渡、貸借、担保などの処分をしてはいけない
  • 【有効期間】本契約書が有効な期間について
  • 【通知】株式譲渡に関する通知書の交付方法
  • 【譲渡禁止】相手方の書面による同意なしに、第三者への譲渡、貸借、担保などの処分をしてはいけない
  • 【秘密保持】契約書の内容を第三者に開示しない
  • 【準拠法及び合意管轄】契約に関連して生じた紛争の管轄裁判所

このような雛形を利用することで、難しい条文を1から作成する手間を省くことができます。ただし、最も重要な株式の譲渡価格は、雛形のままでは問題に発展する可能性も否定できません。そもそも契約の内容は「株式を確実に買い取る」ことなので、買い取る価格は慎重に決めることが重要です。

創業者間契約のポイント②株式を誰が買い取ることができるかルールを作る

会社を辞めた役員に対し、保有する株式を「誰が」買い取れるかを決めることは外せません。なぜなら、会社を去るのは役員だけに限らず、「創業社長が退任する」ケースもあるからです。

誰が株式を買い取るかを明確しないまま社長が退任した場合、社長に対して株式譲渡の請求ができません。自主的に売却してもらう以外に方法がないので、結果的に株式を買い取れないリスクがあります。 また、創業者が2名で同等数の株式を保有しているケースも同様に、社長以外の「在任創業者」が買い取れるように創業者株主間契約を結ぶことが重要です。

創業者間契約のポイント③何株いくらで買い取ることができるか

創業者株主間契約において最も重要なのが、買い取る株数と株の価格を明確にすることです。

創業からビジネスに携わり会社への貢献を評価できる場合、すべての株を強制的に買い取るのではなく、退任する理由によって株数を変える必要があります。たとえば、病気などのやむを得ない理由では株式数を少なく、競合他社への出資や転職などの「裏切り行為」に関しては所有するすべての株式を強制的に買い取ると定めるケースです。前者の場合、辞めた時期を1年ごとに買い取る率が1年単位で減っていく、「リバースべスティング」を契約書に導入するという方法もあります。

また、ベンチャー企業のような非上場企業の株式は市場価格が不明なことから、時価を評価するのが難しいという点があります。創業者株主間契約では、時価の算定方法をあらかじめ決めておく必要があります。価格設定を最も明確にできる方法として、「取得したときの価格」で契約するケースが一般的です。

ただし、取得当初よりも企業価値が上がっている場合、時価よりも低額で売買することで、買い取る側に贈与税が課税される場合があるので注意しましょう。

まとめ

友人同士で起業する場合、メンバーの誰かが退任することを想定し、創業者株主間契約を結ぶことが重要です。ベンチャー企業では株式のトラブルが多く発生するため、創業者株主間契約がいかに重要な役割を果たすかが理解できるでしょう。実際に契約書を作成する場合は雛形を利用すると便利ですが、「誰が買い取るか・買い取る株数・買い取る価格」の項目は、会社の事情や希望に合わせて書き換えることが重要です。

企業の教科書
高桑 哲生
記事の監修者 高桑 哲生
税理士法人 きわみ事務所 所属税理士

東京都千代田区にある税理士法人きわみ事務所の所属税理士。
「偉ぶらない税理士」をモットーに、お客さんに喜んでもらえるサービスを提供。
税務処理だけでは終わらない、プラスアルファの価値を提供できる税理士を目指す。

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