「家業がある」「後継者である」という状況ではあるものの、「事業内容が自分のやりたいことではない」「重荷である」などの理由で、後を継ぐことに興味がないという人も多いのではないでしょうか?そこで登場したのがベンチャー型事業承継です。
今回は、会社設立の方法の1つであるベンチャー型事業承継とは何か、メリットとデメリット、一般財団法人ベンチャー型事業承継の取り組みや支援について詳しく解説していきます。
ベンチャー型事業承継とは
中小企業庁が発表しているデータによると、中小企業経営者の高齢化が進み、今後5年間で30万人以上の経営者が70歳になると言われています。(参考:中小企業庁)
しかし、そのような状況を迎えているにも関わらず、6割の企業の後継者が未定の状態であるほか、事業承継の準備を進めている経営者は半数に留まるなど、事業承継への意識が低いのが現状です。
そこで登場したのがベンチャー型事業承継です。ベンチャー型事業承継が何なのか見ていきましょう。
ベンチャー企業ではない
ベンチャーという言葉を聞くと、時代のニーズに合わせて新規事業を立ち上げる企業をイメージする人も多いと思います。実は、ベンチャー型事業承継は、そのように新規に起業するわけではありません。
ベンチャー型事業承継とは、家業の経営資源を活かし、新規事業、業態転換、市場開拓など、新たな領域に後継者がチャレンジしていくことを指します。
この考え方を広げていくことで、後継ぎに悩む中小企業の事業承継を円滑にし、経済の停滞を防ぐことができるでしょう。
ベンチャー型事業承継のメリット
ベンチャー型事業承継のメリットには以下の2つがあります。
- 業界の知見がある
- 商流や信用がある
業界の知見がある
後継者である身内は、小さなから家業の中で育ってきているため、業界に対する知見があります。
そのため、外部の知見のない後継者が事業承継を行うよりも、安定した企業経営が期待できると言えるでしょう。
商流や信用がある
新規に起業する場合には、材料や商品などの仕入れ先や卸先を確保していく必要がありますが、事業承継であれば仕入れ先や卸先が確保できているため、新規開拓の手間を省くことができます。
また、金融機関の信用や取引先の信用などもあるため、融資を受けやすかったり、商談を進めやすかったりするなどのメリットがあります。
ベンチャー型事業承継のデメリット
ベンチャー型事業承継のデメリットには以下の3つがあります。
-
- 自分の意思で始めるわけではない
- 先代の負の遺産を引き継ぐ可能性がある
- 内側から改善していく必要がある
自分の意思で始めるわけではない
自分がやりたいと思って事業を始めるわけではなく「事業を承継しなければ周りに迷惑がかかるので…」など、自分の意思と裏腹な気持ちで事業を始めている場合があります。
「自分で始める」と心機一転取り組んでいるわけではないので、気持ちが不安定になりやすいと言えるでしょう。
先代の負の遺産を引き継ぐ可能性がある
事業承継が必ず良いものばかりとは言えません。先代の経営がうまくいっていない場合には、借金や取引先とのしがらみなど、負の遺産を引き継ぐことになる可能性もあります。
内側から改善していく必要がある
事業承継にあたり、先代のやり方を見直していくとなると、内側から改善していく必要があります。
従業員の意識改革など組織を改善していくには時間がかかるため、新規に起業した方が楽に感じる場合もあるでしょう。
一般財団法人ベンチャー型事業承継の支援とその取り組み
事業承継と一口に言っても、今日明日で事業承継が完了するというものではありません。事業承継をスムーズに進めるには、ある程度の時間とノウハウが必要です。そこで登場するのが一般財団法人ベンチャー型事業承継です。
一般財団法人ベンチャー型事業承継がどのような支援と取り組みを行っているのか詳しく見ていきましょう。
一般財団法人ベンチャー型事業承継の事業内容とは
一般財団法人ベンチャー型事業承継の主な事業内容は以下の通りです。
- 若手後継者を対象とした研修事業
- 若手後継者を対象とした新規事業開発支援
- 若手後継者を対象とした事業化サポート
- ベンチャー型事業承継の事例収集や蓄積、発信
- ベンチャー型事業承継政策に対する提言
まとめ
中小企業の経営者の高齢化問題が深刻化しているにも関わらず、事業承継に対する意識が低いという現状があります。
経営者の意識が低いという問題だけでなく、後継者が事業承継に対して前向きではないという問題もあります。
こうした問題の解決策のひとつとして、ベンチャー型事業承継が誕生しました。新しい会社設立の手段として、ぜひ検討してみると良いでしょう。