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「求めるのではなく、求められるものを」食べログ4点超えの名店「器楽亭」店主が料理の真髄を語る

「求めるのではなく、求められるものを」食べログ4点超えの名店「器楽亭」店主が料理の真髄を語る

開業以来、多くの食通を唸らせている名店、器楽亭(久我山)。グルメサイト「食べログ」に寄せられた評価のうち、きわめて高い評価を獲得しつづけたお店を毎年表彰する「The Tabelog Awerd」に2017年から3年連続で選出されるなど、都内でも有数の老舗だ。食べログの点数は4.09(2019年2月1日時点)。地元の客を中心に舌鼓を打たせてきた。

姉妹店の「水炊き鼓次郎」(田町)も、グルメ芸能人として有名なアンジャッシュ・渡部健氏に絶賛されるなど、各種メディアからも引っ張りだこ。さらに、2020年には大型商業ビルに新店舗も出すという。

今回は、そんな破竹の勢いで躍進を続ける器楽亭の店主・浅倉鼓太郎氏に、飲食店にかける思いを聞いてみた。

「接客8割、料理2割」の心意気

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「The Tabelog Award」、3年連続でBronzeの獲得おめでとうございます。率直なご感想を教えてください

お客様のリスペクトが形となっていただけたもので、とてもうれしいです。周りのスタッフにも支えられました。本当にありがたいという言葉につきます。

常に心掛けているのは、お客様に楽しんでもらうこと。料理・お酒・接客・お店の雰囲気など含めて、トータルで楽しかったと思われるお店を目指しています。

料理だけではなく、接客も重要と。

そうですね。独立したてのころは、人と話すことが得意ではないので、苦労しました。こういう言葉は言わない方がいい、逆にこの言葉は喜ばれるんだ、っていうのを日々学んでましたね。会話の糸口をつかむために、お客様の記念日や誕生日を全て、メモ帳や名刺の裏に書き込んだりもしました。

スタッフのみんなにもよく伝えているのが、「接客が8割、料理が2割」だと喜ばれるということ。料理は食べる方がいて、はじめて成り立つものです。まずはお客様と向き合わないと、料理に気持ちがこもりません。いい料理をつくり、そのうえで「誰が食べるか」を理解したほうがいいんです。

「料理をやりたい!」「すごい料理職人になりたい!」という思いは大切です。ただ、それだけでは、食べる人が想定されていない。食べ手を喜ばせるのが、僕らの仕事です。だから、「接客8割ぐらいの感覚でいなさい」と伝えています。

そのためには、料理の腕だけでなく、人としてのスキルもあげる必要があります。そうしてはじめて、お客様が心から楽しんでくれると考えています。

足で稼ぐ情報に価値がある

独学でここまでお店を拡大したと伺っているが、どうやって料理を学んだのですか?

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とにかく食べ歩きまくること。京都・福岡・金沢など全国各地を飛び回ってますね。本やインターネットではなく、実際に足を運んで、情報をインプットする。気に入ったお店があれば、ストーカーと思われるぐらい足繫く通います。

また、足を運ぶのは料理だけでなく、港・漁場、畑など生産の現場もです。何度も足を運んで、顔を合わして思ったのは、「餅は餅屋」に任せようということ。それぞれの現場にはプロがいるから、自分で全てやらなくてもいいんです。

むしろ、大切なのは、何かを任せる・任せないという判断より、その過程です。自分のお金と時間を犠牲にして得られる学びほど、価値があると思います。「会社の研修だから仕方なく」という理由で現場見学をしても、学びは少ないかもしれません。自分の意志で行動しないと、道は開けないと思いますね。

日本酒がスタンダードに

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器楽亭を開業して、手ごたえを感じ始めたのはいつごろですか?

自分のお店をもって2年目ごろ、グルメ雑誌「dancyu」に掲載されてから、一気にお客様が増えましたね。当時は雑誌の影響力が強く、「料理人ならdancyuに一回載ってみたい」というぐらい、憧れの雑誌でした。

また、日本酒にこだわりを持つコンセプトでお店を経営していたことも大きかったです。僕が独立したころは焼酎ブームが全盛期で、日本酒は下火でした。日本酒の酒蔵が2000~2010年の間で半減したというデータもあります。そんな状況なので、日本酒の特集を組んだとしても、当時は年配の店主ばかりが掲載されていた。その点、僕は若いから珍しかったのが重宝されたんだと思います。

日本酒へのこだわりをくわしく教えてください。

当時は酒蔵に飛び込んでいました。アポもとらずに、突然「見学させてほしい」って。断られることも多かったですが、その中で、「どうしたら入れてもらえるんだろう」と自分なりに考えて。酒蔵に行くのではなく、まず「酒屋」に足を運ぶように作戦を変えたりもしました。酒屋さんを通して、もともと行きたかった酒蔵にいけるようになったこともありましたね。

今は時代が変わって日本酒が人気です。当時憧れたような酒蔵さんから、逆に「鼓太郎さんきてくれ」ってオファーもあります。前は情報を取りに行ってたのが、今では自然と入るようになりました。その結果、お客様から見れば、「僕のところに来たら絶対いい酒が飲める」という流れにつながりました。地道に足を運ぶことを続けてきたことが、やっと実ってきたんだなと感じます。

何より、日本酒がスタンダードになっていくことがうれしいですね。今、日本酒が海外で、特に富裕層に人気で、値段もすごい跳ね上がってきています。それを求めてくる外国の方もすごく増えてきているから、そういう意味では本当に意義深いことができていますね。

「来てください」ではなく「行きたい」と言われるお店に

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どんな理想をもって今のお店をもって経営していますか?

「お店にきてください」じゃなくて、「(お客様が)行きたい」っていうお店にしたいですね。「うちは日本酒のお店だから、日本酒飲んでください」というお店にはしたくないです。料理を食べていたら、「これなら、日本酒が合うね」ってなるのが本来の形。日本酒を売りたいんだったら、言葉ではなく、食べ物で日本酒に誘導したい。「こうしてほしい」と求めるのではなく、自然と求められることができるお店は強いと思います。

自分に的確なダメ出しを

飲食店を開いて成功する人と、そうでない人の違いはなんでしょうか?

「地元で開業すれば、友達が来てくれる」っていうお店は難しいと思います。なんでもそうですが、安易な考えではうまくいかないことが多いのではないでしょうか。

例えば、単価5000円のお店を開業するとします。そうすると、インターネットで評価の高い同単価の店の真似をしようとする人は多いですが、その時点で厳しいかもしれません。独立しようとしているのに、他の人と同じものを真似するだけでは、差別化ができないと思います。

何かをやりだすこと、0から1を生み出すことに向き合わないといけない。何かを「生み出す」努力は、すごく大事だと思います。その努力を理解しようとせず、表面だけを真似しても、成功は難しいと思います。

これから起業をする人にメッセージを。

求めるのではなく、求められるような人になってほしいです。求められる=期待に応えないといけないから、もちろん楽ではないです。でも、それを上回るやりがいがある。だから、認めてもらうような人になったり、求めてもらえるような商品・お店を創ってほしいです。

「雑誌にきてほしい」「取材されたい」それは全部逆で、それをしてもらえる人になってほしい。結果ばかり求めるのではなくて、自分と他人をちゃんと比べて、自分の立ち位置が判断ができるくらいに経験を積んでから、独立を志してほしいです。

誰でもそうですが、どうしても自分に甘くなってしまうもの。「ここまでできてるよね」って。ただ、自分に的確にダメ出しをして、対策を練る。それを繰り返していけば、成功に近づけると考えています。

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