株式会社の作り方を準備段階から設立後の手続きまで丁寧に解説します。株式会社を作るのは安くて簡単になったと聞きますが本当でしょうか?【1円会社】や【1円起業】の言葉も飛び交いますが、本当に1円で起業できるのでしょうか?この記事を読めば、誰でも株式会社を作れるようになります。
【結論】1円では株式会社は作れない!株式会社の設立費用は?
結論から言うと、1円では株式会社は作れません。
【1円会社】【1円起業】という言葉があるので、誤解されがちですが、この1円と言うのはあくまでも資本金のことです。
昔は株式会社で1千万円、有限会社で300万円の資本金が必要でした。2007年にその制度が撤廃され資本金1円でも株式会社の設立ができるようになりました。
たしかに個人事業主は開業届を税務署に届けるだけで開業できるので、費用は0円です。しかし、株式会社は、
- 登録免許税6万円
- 定款認証費用5万2千円
- 定款に貼付する印紙代4万円
といった費用がかかります。
印紙代のいらない電子申請で20万2千円。印紙代がかかる紙の申請だと24万2千円かかります。
できるだけ少ない費用で起業したい方はまず個人事業主からスタートするのをおすすめします。事業所得が出るようになってから、法人化しても遅くはありません。
すでに個人事業主で、法人化を検討している方はより設立費用が少い合同会社設立の選択肢もあります。
法人化して会社のためにかかる費用は設立費用だけではありません。社会保険料や、法人住民税などの支払い、複雑な税務の処理もしなければなりません。
コストに見合う節税ができなければ、逆に個人事業主よりも損してしまう場合もあります。
事業に見合った経営形態を選択するようによく検討してください。
個人事業主、合同会社、株式会社の各メリット・デメリットは過去記事で解説しているので、参考にしてください。
株式会社の設立は専門家に任せるのがおすすめ
株式会社の設立なら司法書士や行政書士などの専門家に依頼するのをおすすめします。
自力で電子定款を作り、電子申請すればもっとも安く株式会社を作ることができます。
しかし、電子申請を自力で行うのは大変な手間がかかります。
その上、電子申請を行うためには条件があり、安定して動作するパソコンやインターネット環境と、特定のソフトと機材が必要になります。
つまずくことなく申請できるのはパソコンスキルと、ITスキルが優れた人に限ります。
その条件が揃ったとしても、定款づくりからソフトの導入・活用まで全部自己責任で遂行しなければなりません。
専門家に依頼すれば、前述の株式会社の設立費用に、専門家の代行手数料がかかります。専門家の手数料の相場は5万円から10万円です。
手数料がかかっても、結果的には専門家に頼んだ方が得になります。
ソフトや機材だけで、専門家の手数料と変わらないくらいになり、スムーズに手順が踏めて申請が通る保証はありません。
経営者にとってもっとも大事なのは時間です。
専門家に頼めるものは任して、経営者は本来のビジネスにとって重要な行動に集中したいものです。
株式会社を格安で作ることができるサービス
【会社設立freee】や【会社格安サービス】などを利用すれば、5,000円から8,000円で株式会社の設立をサポートしてくれます。
また、特定の税理士事務所では無料で株式会社の法人登記ができるサービスを行っています。
月額の顧問契約を結ぶ条件付きですが、会社化すると個人事業主と違い、税務処理が複雑化して、いずれにせよ税理士の顧問契約が必要になります。
気に入った税理士事務所が無料の会社設立サービスを行っていたら検討してみましょう。
【株式会社の作り方】株式会社作りの流れ
株式会社を作るには以下の手順があります。
- 株式会社のビジョン・計画
- 許認可手続き
- 株式会社の基本事項の設定
- 会社の印鑑作り
- 出資金を設定
- 出資金払込みの証明
- 定款の作成・認証
- 登記申請
- 役所への届け出
株式会社のビジョン・計画
会社の名前、事業の方向性やコンセプト、立地、集客プランなどを練っていきます。
最初は大まかなイメージからはじめて、次第に具体的な数字で経営計画を立てていきます。
後の会社の基本事項の設定の時に必要になります。
資金調達する場合、融資や助成金・補助金を受けるためには経営計画書の提出が不可欠です。かならずしも計画通りには行きませんが、資金調達のためにも作っておきましょう。
許認可手続き
業種によって各官庁の許認可が必要な登録・届出が必要な場合があります。
手続きをせずに営業をしてしまうと、罰則、営業停止などになってしまうので必ず行いましょう。
許認可には許可、認可、登録、届出、などがあり業種により手続き、所管官庁が違うのでチェックしてください。
株式会社の基本事項の設定
【会社のビジョン・計画】で考えた事柄を具体的な会社の基本事項に決定します。 【会社定款の作成】【登記申請】に必要です。
定款の記載事項になるので、そのまま登記に反映されます。
変更する場合はまた登録免許税が必要です。簡単に変更ができないので、しっかりと吟味しましょう。
株式会社の主な決定事項
- 会社名
- 会社の事業目的
- 本店住所
- 事業年度
- 資本金総額
- 株主
- 1株の金額
- 発行する株式数
- 代表取締役
- 取締役
- 監査役
株式会社の印鑑作り
株式会社を設立するときには3つの印鑑が必要です。
代表者印、銀行印、角印になります。 ネットの印鑑作成サービスに発注すれば、3~6千円で数日で作ることができます。
また、株式会社の発起人は全員、個人の印鑑証明が必要です
個人の印鑑と印鑑証明の準備をしておきましょう
出資金を設定
出資金は、株式会社を設立する発起人から出資されます。
発起人は株式会社のさまざまな事項を決定し、また全員が出資者になります。
もちろん1円だけでは、会社は回りません。開業時の設備資金と3ヶ月の運転資金が目安とされています。
現金がなければ、会社で使用する土地建物、社用車、有価証券、設立後に販売する製品などの現物出資もできます。
出資金を一千万円以上にすると、初年度から2年間の消費税納付が免除が受けられません。初年度から消費税を申告しなければならないので注意しましょう。
発起人全員で決めたことは【発起人会議議事録】として記録し、公証役場に定款を提出する時に添付します。
定款の作り方を初心者でもわかりやすく徹底解説
株式会社の定款の作成・認証
発起人会議議事録で決定したことを株式会社の定款に記入していきます。
定款のフォーマットは、【法務局】のホームページの【商業法人登記申請手続き】の項目の【商業・法人登記の申請書様式】から【会社設立】から入手できます。
取締役会議を設置するかしないかで様式が違うので注意してください。
一人で設立する場合は1-3【(取締役会を設置しない会社の発起設立)】を選んでください。
定款が作成できたら、最寄りの公証役場にメールかFAXを送ります。
問題があったら修正し、問題がなければ認証日を予約して認証を受けます。
紙の定款の場合は収入印紙代4万円が必要になります。電子定款の場合は定款に電子署名をして、PDFデータとして公証役場に送信して、データを持参したCD-RかUSBメモリに保存します。
紙の定款、電子定款のいずれにせよ、公証役場には発起人の最低一人は
実際に出向く必要があります。公証役場に行けない発起人は委任状が必要です。
出資金払込みの証明
出資金払込みの証明は株式会社の登記申請に必要な書類の一つです。
この証明は定款が承認された後でないと、作成できません。
登記申請をする前に出資者が本当に出資金を出したのかを証明するために、いずれかの出資者の口座にに出資金を振り込みます。まだ、会社の口座を作ることができないので、個人の口座に振り込みます。
振り込みが完了すると記帳し、口座名義人がはっきりわかる取引明細書や預金通帳払込みを完了させた口座の画像4を撮影して、PDFファイル化します。
株式会社の登記申請
定款ができたら、法務局に定款や定款に必要な書類を申請して、法人登記します。
専門家に依頼した場合は、本人が出向く必要があるのは公証役場だけで、あとは必要書類を出すだけです。
自分で株式会社を電子申請したい場合は、公証役場でもらった電子定款を使って電子申請をします。
電子申請をするには、マイナンバーカードが必要になります。会社設立する前に、発起人全員のマイナンバーカードを取得しておきましょう。
株式会社と合同会社の電子申請の違いは、公証役場の定款の承認添付だけです。あとは全て合同会社と同じす。
電子申請の方法は【合同会社の設立費用】合同会社は6万円で設立できる!という記事で細かく解説しています。
法務省のホームページから一人会社の設立登記申請は完全オンライン申請がおすすめです!
を参考にし電子申請を実行しましょう。
印鑑届出・株式会社の印鑑カードを作成する
登記申請が受理され、登録免許税の納付を確認されたら、会社代表印を法務局に登録します。
【印鑑届書】に必要事項を記入し、【登記申請書】と一緒に法務局に登録します。
会社の登記が完了したら、印鑑カードの交付を受けます。
【印鑑カード交付申請書】を提出します。提出後、数十分程度で発行されます。
郵送での交付申請でも可能ですが、返送まで日数がかかり、返信用封筒は書留か特定記録にしないといけないので直接法務局に提出した方が簡単です。
法務局では【登記事項証明書】を取得します。
【登記事項証明書】は金融機関の口座開設、社会保険の手続き、税務手続き、許認可の際の官公署、事務所の賃貸契約にも必要になります。
役所への届け出
登記が完了したら、各官庁へ届け出を行います。 届け出は大きく2種類あります。【税金に関するもの】と【労務に関わるもの】になります。
税金に関わるもの
税務署の提出する書類
- 法人設立届出書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納期の納期の特例の承認に関する申請書
- 青色申告の承認申請書
- 消費税課税事業者選択届出書
- 消費税簡易課税制度選択届出書
都道府県、市町村への届出
【法人設立届出書】を【株式会社定款】と【登記事項証明書】を添付して、 都道府県の税事務所と、市町村役場の2ヶ所に提出します。
労務に関わるもの届出
年金事務所に届ける書類
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
- 健康保険扶養者異動届
- 健康保険第3号被保険者資格取得届
さらに従業員やパートを設立してすぐに雇用した場合下記の官庁への届け出も必要です
労働基準監督署に提出する書類
- 適用事業報告
- 労働保険関係成立届け
- 労働保険概算保険料申告書
ハローワークに提出する書類
- 雇用保険適用事業所設置届
- 雇用保険資格取得届
以上、法人登記以外にも役所に出さなければならない書類は山積みです。
創業時の忙しい時期を少ない人数でこなすのは過酷です。ここは、頼れる専門家にお願いして、本業のビジネスに集中しましょう
会社設立や手続きは行政書士や司法書士、税務関係は税理士、労務関係は社会保険労務士。
開業前に相談できる専門家を見つけておきましょう
まとめ
今回は株式会社の作り方を0からお伝えしました。
お伝えの通り、自力で株式会社登記や書類を役所に提出するのはかなり大変です。
株式会社設立する時は、専門家を上手に活用して、あなたの理想とする会社やビジネスを構築するのに全力を傾けてください。