会社設立

有限会社から株式会社に変更するときのやり方とは?変えるメリットも解説!

有限会社から株式会社に変更するときのやり方とは?変えるメリットも解説!

平成18年の会社法改正で、新規に有限会社を設立することができなくなりました。もちろん、既存の有限会社についてはそのまま経営することもできますし、社名に有限会社を付けていても問題ありません。

昨今では法改正により有限会社から株式会社への組織変更に伴う手続きも簡素化され、株式会社へ移行する法人も増加傾向にあります。有限会社のままでは、社外的な信用度が低くないか心配だけど、変更手続きについて不安を抱えている経営者もいらっしゃるでしょう。

「株式会社にすると税金面が心配」
「組織変更の手続きって難しくないのかな」
「決算公告が面倒では?」

「そもそも株式会社に変更する必要性ってあるの?」

ここでは、このようなお疑問にお答えしながら、株式会社へ変更したときのメリット、デメリットについて検証していきます。

有限会社から株式会社へ商号変更するには?

有限会社から株式会社へ商号変更するために、まずこの項目では、そもそも有限会社の会社形態とはどういったものなのか詳しく説明していきます。有限会社の形態を理解することで、株式会社へなぜ移行すべきかがわかってくるはずです。

有限会社とは

有限会社とは、資本金300万円、出資社員が50名以下で取締役は1名以上という組織のことを指します。平成18年に会社法が新しく成立し、有限会社の新規設立ができなくなったため、既存の有限会社は、特例有限会社と呼ばれています。

では、どうして有限会社はいまなお、株式会社へと姿を変えず特例有限会社として残っているのでしょうか。有限会社であり続けることのメリットはあるのか次の項目で検証していきます。

有限会社のメリット

以前の会社法では、株式会社設立には、1,000万円の資本金が必要でした。つまり、「株式会社」を設立するには、少なくとも1,000万円は用意する必要があり会社設立のハードルがとても高かったのです。その反面、有限会社は資本金額が少なく、設立しやすいメリットがありました。具体的には次の通りです。

  • 資本金300万円で設立できる、
  • 社長が一人で立ち上げられる
  • 役員登記しなくてよい
  • 決算公告もしなくてよい

ただ現在では、株式会社においても、有限会社と変わらずに、資本金の額は自由に設定できて、役員も取締役一人でも設立可能となりました。

有限会社のメリットをすべて取り込んだ会社形態が、現在の株式会社なのです。

ただ、上記にもありますように、役員登記と決算公告をしなくて良いのは有限会社特有のメリットと言えます。役員登記は登記するごとに印紙代がかかります。また、2年ごとに登記更新が必要など期間も決まっていて、これをうっかり失念してしまうと罰金を科せられる危険性もあるので、注意が必要な事務手続きなのです。このことから特例有限会社がなくならない理由が少しわかってきます。

しかし、株式会社へ変わることで享受できるメリットも少なくありません。次の項目では、株式会社へ移行することでのメリットをご説明しましょう。

有限会社から株式会社へ変更するメリット5つを解説!

株式会社へと変更してどんなメリットがあるのかを確認していきます。

有限会社から株式会社へ変更するメリット①信用度が高い

先ほどの登記のところでもお話しましたが、やはり社名に株式会社が付くのは、取引先、金融機関など社外に対しての信用度が高くなります。

会社法改正で、有限会社も株式会社も資本金、役員の数は変わらない、むしろ300万円必要な有限会社のほうが高い資本金を用意している場合もあるのですが、まだまだ日本は、株式会社の信頼度が高くなっています。

商号を変えるだけで、信頼度上がるのなら、手軽なイメージアップにつながるというものです。

有限会社から株式会社へ変更するメリット②優秀な人材が集まりやすい

有限会社と株式会社では、株式会社のほうに対して規模が大きいと企業応募者が感じてしまい、応募の人数にも影響が出てきます。優秀な人材が集まりやすいと考えても良いでしょう。

有限会社から株式会社へ変更するメリット③会計参与をおける

会計参与がいることで信頼度が高くなり、融資が受けやすくなります。会計参与には、公認会計士、税理士のみが就任することができます。

有限会社から株式会社へ変更するメリット④株式の譲渡制限ができる

有限会社の場合ですと、出資者の間で、自由に株式譲渡ができます。

ただ、これは一概にメリットがあるとは言い切れません。代表者の知らない間に、出資者間で株の譲渡が行われていると議決権に影響がでてきます。会社を運営するうえで株を多く保有してほしくない人もいるかもしれません。そういう人に株を持たせないようにすることが有限会社ではできないのです。

株式会社ですと譲渡制限が行えるので、一人の株主に権限が集中してしまうこともありません。

有限会社から株式会社へ変更するメリット⑤M&Aがしやすくなる

少子化問題が深刻化してきて、後継者不足に悩む経営者も多いと思います。そんな場合にも株式会社に変更することで、株式交換、株式譲渡などができるようになり、経営権の移行をしやすくすることが可能になります。

M&Aのスキームを使った事業承継や会社売却も可能です。自営業者には退職金というものはありませんので、第三者へ事業を譲渡することで、手元に譲渡代金を残すことも可能となります。また、M&A市場においても、有限会社よりも株式会社のほうに買い手が付きやすくなる傾向にあります。

有限会社から株式会社変更のデメリットはある?

メリットがあれば、デメリットがあります。ここでは、有限会社から株式会社に変更することで起こりうるデメリットをご説明します。

有限会社から株式会社変更のデメリット①役員に任期がある

役員には、取締役で最短2年、監査役で最短4年の任期が会社法で定められています。

定款作成時に、役員任期を最長で10年と定めることも可能です。役員変更登記は例え同じ人物が同じ役職に継続してつく場合にも行う必要があり、役員変更登記を行う際には、印紙代や登録免許税がかかります。また、これらの登記申請を忘れてしまうと罰金が処されることや、それが長期間にわたるとみなし解散といって、解散したものとして法務局へ認識されてしまいます。

有限会社ですと、この役員登記をしなくてよいので、みなし解散という事態にはなりません。

株式会社の役員変更登記

役員登記というと、なんだか面倒に思いますが、有限会社から株式会社へ変更したての会社だとまだ規模小さく、役員数も社長を合わせて1~2人というところです。株主総会、役員会も議事録を用意すれば大丈夫なので、1年目にきっちり作っておけば、次の役員変更時は、日時、役員名を修正するだけで申告業務が可能となります。それほど面倒な業務ではないにもかかわらず、これらの登記業務などを行うことによって、社外的にも信用度は高めることができます。

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有限会社から株式会社変更のデメリット②決算公告の義務がある

有限会社には決算を公告する必要はありませんが、株式会社になると決算を公告しなくてはいけません。

ただ、この決算公告に必要な決算関係書類は、金融機関など対外的な交渉において、非常に重要です。有限会社であっても自社の財務状況を常に経営者が把握しておく必要はあります。

先ほどのメリットの項目でも少しお話したM&Aですが、M&Aで事業譲渡などを進めていく上で、買収監査というステップがあります。これは買い手企業が売り手企業の財務状況などを徹底的に監査するというステップなのですが、多くの経営者が自社の財務状況を把握しておらず、会社を安く買いたたかれるという事態に陥ることがあります。

財務状況を知るということは、会社が持っている事業価値を正確に把握することです。決算公告が必要なことはデメリットととらえがちですが、会社を大きく成長させるには不可欠だということをご理解ください。

また、M&Aだけを想定しなくても、金融機関からの融資を取り付ける、または、新規の取引先の開拓する際にも、この財務状況を経営者が把握することは不可欠なのです。

有限会社から株式会社への変更手続きとは?

有限会社から株式会社への変更手続きって複雑なのでは?と不安になる方もいるかもしれませんが、会社法改正に伴い、有限会社も株式会社も会社形態がほとんど変わらなくなりました。意外にシンプルな手続きで移行が可能です。 どんな手続きが必要か解説していきます。

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有限会社から株式会社への変更手続きはたった2ステップ

  • 定款変更(社名変更のため)
  • 有限会社解散と株式会社設立の登記

実にシンプル、この2ステップとなります。

もうすでに、法律上では有限会社は株式会社として扱われているので、まずとりかからなければならないのは、社名変更を行うための定款を変更するという手続きです。定款変更の議決、承認は株主総会で行われます。

取締役が一人の場合は、その一人が株主総会開催の1週間前までに招集通知をし、株主を招集します。二人以上いる場合は、取締役会の過半数で株主総会開催を決めてから招集します。定款変更の議決は、株主の過半数で、議決権の4分の3以上の賛成が必要となります。

ほとんどの有限会社では、取締役一人、または二人で、身内の場合もあります。そして、ほとんど取締役が出資者であることが多い(株主=取締役)ので、この株主総会というのは、議事録作成のみということが実務面では多く行われます。

定款の変更ができたら、今度は特例有限会社の解散と株式会社設立の登記をしなければいけません。これは定款を変更して、2週間以内に登記する必要があります。(本社、本店の場合、支店、営業所は3週間以内に登記)

特例有限会社を解散登記しても、法人格が消滅するわけでなく、株式会社へそのまま移行するだけです。

  • 特例有限会社の登記は、30,000円
  • 株式会社の登記には、資本金額の1000分の1.5(30,000円に満たない場合は、30,000万円)

資本金1,000万円の株式会社設立ならば、1000分の1.5をかけたら、 15,000円ですので、30,000円かかることになります。資本金2,000万円以上になると、登録免許税は60,000円になります。

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有限会社から株式会社への変更の流れ

ここまで説明してきたことをまとめます。

  • 定款の社名を変更する
  • 株主総会開催の通知
  • 株主総会開催 社名変更について決議、承認
  • 指定期限までに、変更登記を行う

流れが4工程ありますが、②③に関しては、前述したとおり、社内で行うことが多く、議事録作成のみで済むことが大半です。

つまり、有限会社から株式会社になるには、定款を作成→同時に議事録も作成→変更内容を登記というシンプルな工程だけでよいということですね。

有限会社から株式会社に定款を変更すると、当然のことながら有限会社○○から株式会社○○というように、法人名が変わります。もしこれに伴って○○の社名部分も変えてしまおうということがあれば、一緒に変更しておいた方が登録免許税30,000円だけで済みます。他に同時変更できるのは、

  • 目的変更
  • 取締役変更
  • 取締役会の設置
  • 監査役の設置
  • 発行可能株式総数の変更
  • 株式の譲渡制限に関する規定を変更する
  • 増資をする

これらの7つが社名変更と同時に行えます。

ただし、7の増資に関しては、登録免許税が30,000円で収まる範囲までの増額です。(最低資本金制度の撤廃により、増資を行う法人は減少傾向)

有限会社から株式会社へ変更での注意点

登記にも印紙代がかかり、印鑑、会社の封筒、名刺、ホームページなど変更するための費用もかかります。また、一度有限会社から株式会社へ移行すると元の有限会社に戻すことはできない点も注意が必要です。

本当に株式会社の変更が必要かどうか、直近の財務諸表類から、収支のバランスなどをチェックして厳正な審査を社内で行っておくことが必要です。

株式会社の設立なら税理士にご相談を!

有限会社を運営する経営者の方の中には、役員登記や決算公告を行う必要性がないため、税理士に依頼することなく経理業務、申告業を行ってきたという方も少なくありません。ですが、株式会社に変更していくのであれば、税理士の関与は必要です。株式会社移行を検討した時点で税理士に相談してみてください。

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税理士を依頼することで、享受できるメリットとは

  • 株式会社での煩雑な経理業務を代行してもらえる
  • 節税のアドバイスを受けられる
  • 資金繰りについて相談できる

などが挙げられます。

日常的な経理業務だけでなく、決算業務、税務申告など、ベテランの経理事務員でも対応はできますが、かなりの経験と知識が必要です。 税務申告の書類には、関与税理士が署名と捺印をしますので、申告書の信頼度も高くなります。

また、売上が上がってきて、事業年度もすすんでくると、税務調査が入ることもありますが、経理担当者だけで税務調査を受けることは、心理的にも知識的にも少し不安があります。

そういった場合にも税理士がいれば、経営者も税務署側としても安心ができます。 あらゆる経理面のトラブルを想定して、対応してくれる経験値の高い税理士を探して依頼することをお勧めします。

経営者が一人で、経営、営業、経理まで担うのはかなりの負担です。税理士と顧問契約をすることで、経理業務はもちろん、経営面までサポートしてもらえます。また、最近の税理士は様々なサービスを提供していて、従来の記帳代行だけでなく、コンサルティングまで対応してくれます。

なお、きわみ事務所では会社設立や資金調達の相談を受け付けています。代表税理士はITベンチャーで役員を務めた経験があるという、業界でも数少ない「経営者目線」のアドバイスができる税理士です。まずはお気軽にお問い合わせください。

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高桑 哲生
記事の監修者 高桑 哲生
税理士法人 きわみ事務所 所属税理士

東京都千代田区にある税理士法人きわみ事務所の所属税理士。
「偉ぶらない税理士」をモットーに、お客さんに喜んでもらえるサービスを提供。
税務処理だけでは終わらない、プラスアルファの価値を提供できる税理士を目指す。

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