税金・税務

備品の勘定科目は固定資産?費用?勘定科目選びの基準を徹底解説!

備品の勘定科目は固定資産?費用?勘定科目選びの基準を徹底解説!

企業において資産を購入する際、「消耗品」であれば経費としてその期の費用になります。そして、「備品」であれば固定資産として計上されます。「費用とする」か「固定資産に計上する」かについては後の損益に影響します。固定資産の取得になるかどうかについては、法人税で細やかな規定が設けられていますので、制度概要を理解した上で判断することをお勧めします。

この記事では特に、「備品」の取得に例を取り考えていきます。

10万円以上の備品なら勘定科目は固定資産が原則

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10万円以上の備品を購入した場合は、原則として有形固定資産の「器具及び備品」として計上されます。

使用又は時間の経過によって価値が減少するものを減価償却資産といいますが、減価償却資産には取得価額を規則的に一定の減価償却方法に従って費用化する「正規の減価償却」が要請されます。

一方、10万円未満のものを購入した場合には、「消耗品費」として費用処理することで問題はありません。企業によっては、「消耗品」、「事務消耗品費」、「備品費」などと勘定科目を分けていることもありますが、すべてその期間の費用になります。

しかし、金額だけでは一面的であり、固定資産となるか否かを判断する基準は他にもあります。

購入した備品が費用か固定資産か?

企業が取得した減価償却資産のうち次のいずれかにあてはまれば、その期の費用になります

この場合、勘定科目は「消耗品費」などの費用になります。

(1) 使用可能期間が1年未満のもの

使用可能期間が1年未満とは、法定の耐用年数ではなく、その業種において一般に損耗が著しく、かつ、平均的な使用状況や補充状況などからみて、その使用可能期間が1年未満であるものをいいます。

(2) 1単位の取得価額が10万円未満のもの(法人税法施行令第133条)

固定資産は、取引されるその単位ごとに判定し、1単位につき10万円未満は費用になります。これを少額減価償却資産といいます。

取引の単位については有名な裁判例があります。通信会社が電気施設利用権(1本あたり7万2800円)の対価として支払った約108億円につき、1本あたり10万円未満であるため少額減価償却資産として損金に算入したところ、課税庁は少額減価償却資産ではなく、合計額の108億円で判断すべきと指摘したものです。

結局、最高裁では1本単位で通話機能が果たせることから、通常の取引単位は1本であるとの判断が示され、その通信会社の少額減価償却資産の処理が認められました。1単位の考え方を誤ると大きな違いになる例です。

したがって、1年未満に取り換えるものや1単位が10万円未満のものは、原則として費用になります。

購入した固定資産は「器具及び備品」なのか?

購入したものが「備品」であるのか、その他の「機械及び装置」などにあたるかを判定するのは、最終的には法人税法上の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表」に従います。

「減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表」によると、器具及び備品は、「構造及び用途」に応じて12区分が設けられ、さらに細目によって区分されています。同じ備品であっても用途が異なれば耐用年数が異なることもあります。概要を見てみましょう。

構造又は用途 細目の例
1 家具、電気機器、ガス機器及び家庭用品 事務机、事務イス、ベッド、陳列棚、テレビ、
冷暖房 用機器、冷蔵庫、洗濯機、カーテン、
じゅうたん、厨 房用品など
2 事務機器及び通信機器 パソコン、コピー機、タイムレコーダー、FAX、
放送用 設備、電話設備その他の通信機器
3 時計、試験機器及び測定機器 時計、度量衡器、試験又は測定機器
4 光学機器及び写真製作機器 オペレグラス、カメラ、映画撮影機、望遠鏡、
引伸機、顕微鏡その他の機器
5 看板及び広告器具 看板、ネオンサイン、気球、マネキン人形、模型
6 容器及び金庫 ボンベ、ドラム缶、コンテナ、金庫
7 理容又は美容機器
8 医療機器 消毒殺菌用機器、手術機器、血液透析又は
血しょう交換用機器、調剤機器、歯科診療用
ユニット、光学検査機器
9 娯楽又はスポーツ器具及び興行又は演劇用具 たまつき用具、パチンコ器、ビンゴ器、囲碁、将棋、
マージャンその他の遊戯具、スポーツ具
10 生物 植物、動物(魚類、鳥類、その他)
11 前掲以外のもの 映画フィルム、磁気テープ、レコード、シート、ロープ、
キノコ栽培用ほだ木、漁具、葬儀用具、楽器、
自動販売機、無人駐車管理装置、焼却炉、
その他
12 前掲する資産のうち、当該資産について定められ ている前掲の耐用年数によるもの以外
前掲の区分によらないもの
主として金属製のもの、その他

引用:減価償却資産の耐用年数等に関する省令|総務省行政管理局

このように、法人税では固定資産の減価償却について細やかな規定を設けており、一般には企業が減価償却に独自の規定を設けず、法人税に合わせた減価償却をしている運用が多いのが現状です。 したがって、減価償却の方法については法人税法が企業の会計ルールとなっているとも言えます。

これらの原則に対して、法人税では特例を設けているため少し複雑になります。

減価償却資産の特例

法人税法の細則などを定めている法人税法施行令には「一括償却資産制度」があり、また、政策的観点から法人税法を補って制定される租税特別措置法には「少額減価償却資産の特例」があります。

さらに、一定の事業計画などが承認された中小企業には別の償却が認められるケースがあります。

一括償却資産となる備品とは?

取得価額が10万円以上でも減価償却によらない「一括減価償却資産」という制度があります。(法人税法施行令第133条の2)

取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、確定申告書に明細書(別表16(6))を添付することで、それらの減価償却資産を一括し、その一括した減価償却資産の取得価額の合計額の3分の1ずつ3年間にわたり、損金に算入することができます。

一括償却資産制度については会計における「重要性の原則」を準用して、特例的に費用化を認めたものと説明されます。

例えば、10万円以上20万円未満となるソフトウェアや備品、工具などがあれば、資産の種類が異なっても「一括償却資産」などの勘定科目(費用科目)としてまとめるのが一般的です。

なお、企業が取得した20万円未満の減価償却資産のうち、どの減価償却資産を一括償却の対象にするかはその企業の選択によります。

中小企業の少額減価償却資産となる備品とは?

青色法人である資本金が1億円以下の企業等は、「少額減価償却資産の特例」が適用できます。(租税特別措置法第67条5)

この特例は、30万円未満の減価償却資産を取得した場合には、確定申告書に明細書(別表16(7))を添付することで、取得価額を損金に算入することができる制度です。

一事業年度につき、合計300万円までは損金算入することができます。

この特例は、器具及び備品、機械等のほか、ソフトウェア、特許権、商標権などの無形減価償却資産も対象となります。

一般的には、固定資産である「器具及び備品」とは区別しますが、後述する償却資産税の対象ですので、別管理が必要です。

したがって、少額減価償却資産の特例によって、29万円の備品であっても費用とすることがあります。

中小企業経営強化税制とは?

すべての中小企業に当てはまるものではありませんが、経営力向上のための人材育成や設備投資などの取り組みをする「経営力向上計画」の認定をうけた中小企業は、中小企業経営強化税制(即時償却等)が受けられます。

この税制を適用するには、確定申告書等に償却限度額の計算に関する明細書及び経営力向上計画の写しと経営力向上計画に係る認定書の写しを添付して申告する必要があります。

これら書類の添付により、30万円以上の備品でも即時償却(費用化)することができます。器具又は備品の場合は、取得価額30万円以上のものが対象となります。

法人税以外の税金について

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減価償却資産については、法人税以外についても考える必要があります。ここでは、消費税と地方税である償却資産税の取り扱いについて見ていきましょう。

消費税との関係

取得価額に消費税が含まれるかどうかは、その企業の経理処理に従います。

企業の採用する消費税の経理方式が税込み経理の場合は、消費税込みの取得価額で判定します。また、税抜経理方式の場合には消費税等抜きの取得価額で判断しますので、10%の消費税率を考えると、税抜経理は有利といえます。

なお、消費税の免税事業者である場合には、消費税を含めた金額が取得価額です。

消費税法を詳しく知りたい方はこちらも参考にしてください。

地方消費税とは?消費税との違いや計算方法などを解説

償却資産税との関係

減価償却資産には固定資産税の1つである償却資産税が課税されます。毎年1月1日に保有する減価償却資産について申告納税するもので、土地や家屋、車両などは対象外です。

下の表のとおり、租税特別措置法の特例を適用し、費用処理した場合でも、その固定資産は償却資産税の課税対象となるため要注意です。

取得価額 根拠法令 償却資産税の取り扱い
1 10万円未満 法人税法施行令第133条 償却資産税は課税対象外
2 10万円超20万円未満 法人税法施行令第133条の2(一括償却資産) 償却資産税は課税対象外
3 30万円未満 租税特別措置法第67条5(中小企業の少額資産) 償却資産税は課税
4 30万円以上 租税特別措置法第42条の12の4(中小企業経営強化税制)など 償却資産税は課税

中小企業の少額減価償却資産の特例を利用する場合には、30万円未満の固定資産すべてを充てるのではなく、取得価額が20万円以上で30万円未満の備品等についてのみ適用すると節税になります。

備品の勘定科目は細かく確認しよう!

最近、いろいろなものの調査でドローンを使う企業も増えてきているようです。ドローンにもいろいろありますが、撮影用ドローンは備品の「光学機器」に相当し、耐用年数は5年です。

このように、今までになかった備品を取得したときには、まず法人税のルールを意識し、国税庁のHPなどで確認するようにしましょう。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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