税金・税務

切手の勘定科目と仕訳はどうする?事例をもとに徹底解説!

切手の勘定科目と仕訳はどうする?事例をもとに徹底解説!

勘定科目と仕訳がわかりにくいものの一つが「切手」。切手は原則と特例とで購入時に計上する勘定科目が違い、どちらを採用するかで運用方法も変わってきます。それに、購入する販売所や計上の仕方によっては消費税の仕訳が変わる場合も。

しかし実際には、実務にあわせてどちらかを選択できるんですよ。切手の勘定科目と仕訳について理解を深めていきましょう。

切手を購入した場合の勘定科目

切手を買ったときに計上できる勘定科目は2種類あります。

  • 原則:貯蔵品(資産)
  • 特例:通信費(費用)

原則において、切手は「貯蔵品」に計上します。そのうえで、使用したときに貯蔵品を取り崩して「通信費」に計上する、という流れになります。

ただし、特例で直接「通信費」として費用に計上することも可能となっています。 これらはどちらも採用して良い、というわけではなく、どちらか一方を選択する必要があります。

 

直接費用に計上しても良いという背景には、「買った後にすぐ使用する」という前提があるからです。実務上は特例を採用して直接費用にしている会社が多く、期末時点で在庫があれば「貯蔵品」に振り替えているのが実情です。実態に合った、効率が良い方を選んで処理してくださいね。

 

ただし、企業会計には「継続性の原則」があります。基本的に一度採用した方法は継続していくべきだとされていますので、注意してくださいね。

五 企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。

引用:企業会計原則第一一般原則

なお、可能であれば切手の「受払簿」のようなものを作っておくのが理想的。使用頻度が多かったり手元に置いておく切手の金額が多かったりする場合には、管理していることを証明する意味でも作っておくのがベストです。

 

また、勘定科目の決め方についてまとめたページもありますので、参考にしてくださいね。

切手の消費税の取り扱い

切手代は、郵便局やコンビニなどの通常郵便切手類販売所から買ったときには「非課税取引」となり、使用したときに「課税取引」になります。 ですが、金券ショップなどの指定されていない販売所で購入した場合は「課税取引」になるんです。 非常にややこしいのですが、これは国税庁による法令解釈通達がなされています。

6-4-1 法別表第一第4号イ《郵便切手類等の譲渡》の規定により非課税とされる郵便切手類又は印紙の譲渡は、日本郵便株式会社が行う譲渡及び簡易郵便局法第7条第1項《簡易郵便局の設置及び受託者の呼称》に規定する委託業務を行う施設又は郵便切手類販売所等一定の場所における譲渡に限られるから、これら以外の場所における郵便切手類又は印紙の譲渡については、同号の規定が適用されないのであるから留意する

引用:国税庁|第4節 郵便切手類等及び物品切手等の譲渡関係

 

切手は金券と同じような扱いであり、基本的には非課税。ですが、使用するときには郵便配達などの支払いに使うことで「役務の提供を受ける取引」になるため、課税取引となります。

物品切手の譲渡は非課税とされていますので、それを購入した段階では課税仕入れに該当しませんが、物品又は役務の提供の引換給付を受けた時にその引換給付を受けた事業者の課税仕入れとなります。

ただし、購入した物品切手で自ら引換給付を受けるものについて、継続して購入する日の属する課税期間における課税仕入れとして処理しているときは、この処理は認められます(基通11-3-7)。

引用:国税庁|物品切手の購入費用

 

ただし、特例を用いて直接費用で処理するときには注意が必要です。非課税となる郵便局などから買った場合でも、すぐに使う前提としているため、「課税取引」として処理する必要があります。

領収書上は非課税と記載されているため混乱しそうですが、覚えておきましょう。 こうした仕訳処理の具体例は次で説明します。

切手の仕訳処理の例

切手の仕訳処理の例を、原則・特例それぞれの方法で見ていきましょう。

原則による仕訳処理の例

【例1-1:郵便局で切手を5500円分現金で買った。】

原則では、一度貯蔵品に計上します。また、郵便局などで買ったときには「非課税取引」となるため、この時点では消費税は考えません。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
貯蔵品 5500 現金 5500

 

【例1-2:切手を2200円分使用した。】

使用するときには貯蔵品から費用(通信費)に計上します。 また、このときには「課税取引」となるので、仮払消費税の計上を忘れないようにしてくださいね。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
通信費
仮払消費税
2000
200
貯蔵品 2200

特例による仕訳処理の例

【例2-1:コンビニで切手を5500円分現金で買った。】

特例では、買ったときに直接「通信費」に計上します。 すぐに使用する前提のため、郵便局やコンビニなどの非課税となる販売所で買った場合でも消費税を計上する必要があるので注意してください。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
通信費
仮払消費税
5000
500
現金 5500

 

【例2-2:期末時点で切手が3300円分残った。】

期末時点で切手が残っていれば、「貯蔵品」として資産に計上する仕訳処理をします。 【例2-1】で購入したときに消費税を計上しているため、その分も忘れずに貯蔵品に振り替えましょう。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
貯蔵品 3300 通信費
仮払消費税
3000
300

 

そもそも購入・使用する枚数が少なく、すぐに使い切っているような状況であれば、特例による仕訳がおすすめ。 期末に切手在庫が残っていなければ、貯蔵品に計上する必要がなく、一度の処理で済みますからね。

実務にあわせて切手の取扱いを統一しよう

原則・特例の2種類の仕訳方法がありますが、それぞれの状況でどちらを選択したほうがいいかは異なります。

  • 切手の使用頻度や購入枚数が少なければ特例(買ったときに直接費用へ計上)
  • どちらも多い場合は原則(買ったときは貯蔵品へ計上・使用したときに費用計上)

といったように、実務にあわせて選択するのがおすすめです。継続性の原則がありますので、切手の取り扱いを統一して継続していきましょう。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

東京都千代田区にある税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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