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事業価値と株主価値の違いとは?それぞれの意味や関係性をわかりやすく解説!

事業価値と株主価値の違いとは?それぞれの意味や関係性をわかりやすく解説!

企業の価値は複数の「価値」で構成されています。この記事では、管理部門の方向けに混同・誤用されがちな「事業価値」と「株主価値」の意味の違いや関係性にフォーカスし、図解も交えて分かりやすく解説します。

M&Aや投資、リストラなど、経営判断の場面では「企業にいくらの価値があるか」を把握しておく必要があります。そうでなければ、適切な選択ができません。

その中で理解しておきたいのが「事業価値」や「株主価値」という言葉です。この二つの意味や違いはよく混同されます。

この記事では、事業価値と株主価値についてそれぞれ詳しく解説します。混同しがちな言葉に対して、しっかりと理解しておきましょう。

事業価値とは?

事業価値と株主価値の違いとは?それぞれの意味や関係性をわかりやすく解説!の画像1

「事業価値」の意味を説明します。「非事業価値」や「企業価値」についても一緒に確認していきましょう。

事業価値の意味

事業価値とはその名の通り、企業が営む事業によって生まれる価値を指します。英語ではエンタープライズバリュー(Enterprise Value)、略してEVとも呼ばれます。

その事業や資産・負債に加え、将来にわたってどれだけのキャッシュフロー(お金の流れ)を生み出すか、などを合計したのが事業価値です。

M&Aなどの際には、企業を評価するための判断材料が求められます。その時重視されるのがこの事業価値であり、将来の収益性を見極める指標として用いられます。なぜなら、一定のルールに則った明確な数字があれば、客観的な判断がしやすいためです。

なお、目には見えない「のれん」(ブランドや技術力、人的資源、顧客企業など)や特許権、商標権などの無形資産も事業価値に含まれます。のれんは将来の価値を反映する重要なポイントでもあるため、この点も押さえておきましょう。

非事業価値とは

一方、非事業価値という言葉は企業が営む事業には直接影響を及ぼさない資産を指します。例えば、次のようなものが挙げられるでしょう。

  • 現預金(余剰資金)
  • 株や投資信託などの金融商品
  • 遊休不動産(活用されていない土地や建物)
  • 保険の積立金
  • ゴルフ会員権

これらは、将来的なキャッシュフローを生み出すことには貢献しません。ただし、企業が保有している資産であることは確かです。なお現預金や不動産であっても、事業に影響を及ぼすものであれば事業価値に該当します。

事業価値を算出するには

事業価値を算出するための手法は、特に決まっているわけではありません。

代表的には「DCF法(Discounted Cash Flow method)」が挙げられます。日本語で「割引キャッシュフロー法」や「割引現金収支法」とも呼ばれます。

DCF法とは、事業が将来にわたって生み出すキャッシュフローの予測から、リスクなどを考慮した分を割り引き、現在の価値に置き換えて計算する方法です。この割引率には、主にWACC(ワック/加重平均コスト)が用いられます。

こうして換算された金額が事業価値となり、値が大きいほど今後獲得できるお金が多いことを意味します。

DCF法は、企業の将来的な成長を織り込めるため、一般的に広く活用されています。理論的に望ましい方法と考えられていますが、あくまで将来予測によるものです。その予測や事業計画の精度によっては、あまり参考にならない可能性があることには気を付けましょう。

また、小規模なM&Aでは、もう少し簡便な方法が選ばれることが多いです。

事業価値と企業価値の関係性

簡潔にいうと、企業価値を高めるために2つのワードの意味は正確に把握しておく必要があります。そして、これらの関係性は以下の式で表すことができます。

企業価値=事業価値+非事業価値

通常は、企業価値の大半を事業価値が占めることになります。それゆえ、企業価値と事業価値は混同されがちですが、正しく区別できるようにしましょう。

経理の用語は似たような言葉が多く紛らわしいもの。営業利益や経常利益などもそのひとつです。営業利益や経常利益について詳しく知りたい方はこちらも参考にしてください。

株主価値とは

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次に「株主価値」について説明していきます。こちらも、企業価値という枠組みから考えると分かりやすいでしょう。

株主価値の意味

企業価値のうち、株主に帰属する価値のことを株主価値といいます。

企業が持つ経済的価値は、全てが株主の価値(株主の取り分)になるわけではありません。なぜなら、多くの企業は債権者に返済しなくてはいけない負債を抱えているからです。

一般的に、企業は債権者と株主から得た資金を活用して事業を営みます。いずれも事業を通じて得られるリターンを期待して融資・投資を行っています。そのため、企業から生み出される価値は出資者それぞれに権利があるのです。

これまでの業績指標としては、売上高や経常利益が重視されてきました。しかし、近年では日本でも株主重視の考え方が広まり、この株主価値を最大化することが求められるようになっています。

債権者価値とは

一方、債権者(主に金融機関)に帰属するものが債権者価値です。つまり、企業価値は株主と債権者で二分されることになります。前者は自己資本、後者は他人資本と表現されることもあります。

債権者価値とは、企業が返済しなくてはならない負債のことです。具体的には以下のようなものが該当します。

  • 銀行からの借入金
  • 投資ファンドからの融資金
  • 社債

負債を「価値」と表現するのは、もしかしたら違和感があるかもしれません。しかし債権者から見れば、資金を提供するだけの価値(リターンへの期待)があるということを示しています。

これらは利子をつけて資金提供されているため、有利子負債と呼ばれます。この合計から現預金などを差し引いた「純有利子負債(ネットデット/Net Debt)」の額が、債権者価値に相当します。

株主価値を算出するには

簡潔に表すと以下のようになります。

企業価値―債権者価値=株主価値

株主価値を直接計算することは難しいため、まずは企業価値を明らかにし、次に債権者価値の額を引くことで数字を求めます。

例えば、企業価値を仮に100とした場合、債権者価値が30としたら、差し引いた残りの70が株主価値に相当するということです。

あるいは上場企業であれば、株式市場での時価総額(株価×発行済み株式数)がそのまま株主価値となります。時価総額は「株式価値」のことであり、すなわち株主が持つ権利に置き換えられるからです。

このように、株式価値と株主価値という言葉は同じ意味で使われることが多いです。ただし株式価値が「1株あたりの価値」を指すこともあるので、その都度判断してください。

株主価値と企業価値の関係性

株主価値に関しては、以下の式で表すことができます。

企業価値=株主価値+債権者価値

言い換えれば、企業の持っている経済的価値は、株主と債権者のものに分けられるということです。

事業の成長によって企業価値が大きくなった場合、債権者価値が一定ならば、その分株主価値も高まっていきます。

逆に言えば、株主価値を上げることで、企業価値を高めることも可能です。しかしそればかりを重視した経営戦略では、一時的な株価上昇は狙えたとしても、長期的な成功にはつながらないでしょう。

事業価値と株主価値の違いと関係性

では結局のところ、事業価値と株主価値はどのように違うのでしょうか。最後に、直接比較をしながらまとめていきます。

事業価値と株主価値は、どちらも企業価値(企業として持っている全ての経済的価値)を構成する要素です。ただし考える軸が異なるため、単純に並べて説明することはできません。

そこで、先ほど挙げた二つの式を以下の図にまとめてみます。

事業価値と株主価値の違いとは?それぞれの意味や関係性をわかりやすく解説!の画像3

企業価値を表す場合、このように二つの側面があることが分かります。

図の左側は、事業価値と非事業価値に分かれています。つまり、企業価値を「どんな価値か」という軸で示しています。

図の右側は、株主価値と債権者価値に分かれています。こちらは、企業価値を「誰のものか」という軸で示しています。

したがって、次のようにまとめることが可能です。

  • 事業価値は「どんな価値か」という軸による要素。事業そのものが生み出す価値のこと
  • 株主価値は「誰のものか」という軸による要素。株主が権利を持っている価値のこと

この違いを、上の図とあわせて理解しておきましょう。

事業価値と株主価値の違いを正しくとらえよう

事業価値と株主価値といった観点は、経営陣や管理職に限らず、一般社員でも理解しておくことが望まれます。これらの言葉を理解するには、まずは企業価値という全体の枠組みを知り、それに対する関係性を整理することが重要です。

混同しやすい言葉が並びますが、それぞれの意味や違いを正しく把握することが大切です。企業の価値という場合、どの要素を指し示しているのかを必ず確認しましょう。

実際に自社の価値を評価する際には、適した手法を選ぶ必要もあります。まずは今回説明した内容を押さえた上で、ぜひ実際の業務の参考にしてください。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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