持続化給付金は、新型コロナウィルスの支援対策のひとつで、2020年5月1日より申請受付が開始されました。中小企業200万円、個人事業主100万円を上限に支給されるということで、活用を検討している企業、事業主も多いのではないでしょうか。今回はこの記事で、持続化給付金の概要として、給付対象や申請に必要な書類などについてご紹介します。どのような状況であれば申請が可能か、支給要件や実際の申請の流れについても押さえておきましょう。なお、この記事は2020年5月6日時点の情報に基づいた執筆となります。新型コロナウィルスに関する支援対策は随時情報が更新されており、持続化補助金についても今後内容に変更が加わる可能性もあります。
持続化給付金の概要
持続化給付金は、新型コロナウィルスの感染拡大により、大きな影響を受ける事業者に対し、事業の継続を支援するための給付金です。混同しやすいものとして「持続化補助金」もありますが、別の制度です。「持続化給付金」は補助金と異なり、資金使途の確認等を行わないのが特徴です。
給付対象 | 売上が前年同月比50%以上の減少している事業者 |
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給付金額 | 中小法人等は最大200万円、個人事業者等は100万円 (※ただし、昨年1年間の売上からの減少分を上限とする) |
主な支給要件 |
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申請に必要な書類 |
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給付 | 申請後、通常2週間程度で登録の銀行口座に振込 |
申請期間 | 2020年5月1日~2021年1月15日 |
問い合わせ | ●持続化給付金事業 コールセンター TEL:0120-115-570 03-6831-0613 受付時間:8:30~19:00 ※ 5月・6月は毎日、7月~12月は土曜日を除く日~金 |
持続化給付金の給付対象
持続化給付金の給付対象は、売上が前年同月比で50%以上減少した中小法人等や個人事業主です。中小法人等は資本金10億円未満、または従業員数2,000人以下の中堅企業法人を言います。医療法人、農業法人、NPO法人など、会社以外の法人も対象になります。個人事業主の場合は、開業届を提出している個人事業者等をいい、フリーランスも対象に含まれます。
持続化給付金の給付額
持続化給付金の給付額は、法人最大200万円、個人事業主は100万円が上限とされています。当初、金額は10万円単位でしたが、5月9日、10万円未満の端数についても切り捨てず、後日支給されることとなりました。なお、支給された給付金の使途は限定されていないため、事業継続のため、全般に活用することが可能です。ただし、持続化給付金は複数回受給することはできません。
また、持続化給付金は税務上、益金(個人事業者の場合総収入金額)に算入されます。損金(必要経費)の金額の方が多ければ、課税所得は生じないため、結果的に課税対象とはならないでしょう。
支給要件
持続化給付金の主な支給要件は、売上が前年同月比で50%以上減少している事業者かどうかです。2020年1月~12月のいずれかの月において、ひと月でも50%以上売上減少する月があれば、申請が可能です。売上が50%以上減少しているかどうかは次の計算式に当てはめて算出します。
【売上減少分の算出方法】
前年の総売上(事業収入)― (前年同月比▲50%月の売上×12ヶ月)
なお、持続化給付金の具体的な給付対象者は、下記の通りです。申請にあたり、事業の施設の有無は要件になりません。営利型の一般財団法人、一般社団法人についても、下記の要件を満たせば対象となります。
【給付対象者】
- 2019年以前から事業により事業収入(売上)を得ており、今後も事業を継続する意思があること。
- 2020年1月以降、新型コロナウィルス感染症拡大の影響等により、前年同月比で事業収入が50%以上減少した月(※対象月)が存在すること。 ※対象月とは、2020年1月から申請する月の前月までの間で、前年同月比の事業収入が50%以上減少した月のうち、ひと月を任意で選択する。対象月の事業収入は、協力金等の現金給付は除いて算定可能。
- 法人の場合は、2020年4月1日時点において、次のいずれかを満たすこと。(ただし、組合、連合会、一般社団法人については、直接または間接の構成員である事業者の3分の2以上が個人、または次のいずれかを満たす法人であること)
1. 資本金の額又は出資の総額が10億円未満
2. 資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、常時使用する従業員数が2,000人以下
一方、中小法人、個人事業者ともに、下記のいずれかに該当する場合は給付対象外となります。
【不給付要件】
- 国、法人税法別表第一に規定する公共法人
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する「性風俗関連特殊営業」、当該営業に係る「接客業務受託営業」を行う事業者
- 政治団体
- 宗教上の組織若しくは団体
- (1)から(4)までに掲げる者のほか、給付金の趣旨・目的に照らして適当でないと中小企業庁長官が判断する者
持続化給付金申請から支給の流れ
持続化給付金の申請から支給までの流れは下記の通りです。なお、申請は基本的にWEB上から行う「電子申請」で行います。給付金の振込先である口座の名義人は、申請する法人名と一致している必要がありますが、法人の代表者名義でもOKです。
- 持続化給付金のホームページにアクセスする(スマホからも可能)
●持続化給付金の申請用HP (https://jizokuka-kyufu.go.jp/) - 申請ボタンを押し、メールアドレスなどを入力して「仮登録」を行う
- 入力したメールアドレスにメールが届いていることを確認し、「本登録」に進む
- ID、パスワードを入力し、【マイページ】を作成する(基本情報、売上額、口座情報の入力)
- 必要書類の添付
- 申請
- 持続化給付金事務局で申請内容を確認(※申請に不備があった場合、メールとマイページへの通知で連絡が入る)
- 2週間程度で給付通知書の発送、登録口座への入金が行われる
持続化給付金申請に必要な書類
持続化給付金の申請に必要な書類は下記の通りです。
- 確定申告書類の控え(収受印があるもの)
- 売上減少となった対象月(2020年分の対象とする月)の売上台帳等
- 通帳の写し
- 本人確認書の写し(個人事業者の場合)
確定申告書の控えは、中小法人等の場合は「法人税の確定申告書別表一」、個人事業者等の場合には「所得税の確定申告書第一表」を証拠書類として準備します。
確定申告書類の控えは収受印が押印されているものを提出しなければなりません。ただし、控えに収受印がない場合は、中小法人等の場合、税理士による押印および、署名がなされた月ごとの事業収入を証明する書類(様式自由)を提出してもかまいません。
個人事業主の場合は、「納税証明書(その2)」を代わりに提出します。青色申告会印や自治体印でも申請は可能ですが、確認に時間がかかることにあります。また、e-Taxの場合は「受信通知」を提出します。
なお、消費税の申告書類は証拠書類として認められません。
申請にGビズIDの取得は不要
持続化給付金の申請に、GビズIDの取得は不要です。GビズIDとは、電子申請利用時に、1つのアカウントで複数の行政サービスにアクセスできる認証システムのことです。
電子申請が難しい場合は申請サポート会場を利用
持続化給付金の申請は、基本的に「電子申請」となっています。2020年5月中旬には、電子申請の操作ガイドが公開されるようですが、電子申請が難しい場合は「申請サポート会場」を利用するとよいでしょう。申請サポート会場についても、今後設置される予定です。
申請で不明な点は専門家等に相談を
持続化給付金の申請は、法人、個人事業者ともに本人による申請が必要です。ただし、パソコンの使い方や、申請に必要な書類の用意など、戸惑うこともあるでしょう。申請をするにあたり不明な点は、顧問税理士をはじめ専門家等に相談し、支援をしてもらうことをおすすめします。
持続化給付金申請時の注意点
持続化給付金の申請は、当然ながら不正を働くとペナルティが課せられます。その他にも注意しておきたいポイントがあるので押さえておきましょう。
不正受給は最悪の場合刑事告発のリスクも
持続化給付金を申請するにあたり、提出した書類等に不審な点が見られる場合は、調査されるリスクがあります。調査結果により、不正受給と判断された場合は、給付金の全額に対し、不正受給の日の翌日から返還の日まで、延滞金(年3%の割合で算定)を加えた合計額に、さらにその2割に相当する額を加えた金額で、返還請求されることになります。
さらに、申請者の法人名等も公表されます。悪質な場合には刑事告発のリスクもあるため、適正な申請を心掛けましょう。
2020年1月以降創業の事業者は給付対象外
残念ながら、2020年1月以降に創業した事業者は対象となりません。
実際、NHKのニュースでも、今年に入り父親から店を受け継いだ人で持続化給付金を申請できないという話が報じられています。持続化給付金のサイトでは、実質無利子・無担保で最大5年間は元本が据置きされる融資など他の支援策などの活用が可能とされていますが、ニュースの中で経営者の方は、「給付金は国が考えてくれた制度だとは思うが、緊急事態の中で、僕たちも救済していただける制度を確立してほしいと切に願う」と話されています。
「売上」は「事業収入」が対象
持続化給付金の給付可否を判断するために算出する「売上」は、確定申告書類において「事業収入」として計上するものを指します。収入の総額から経費等を差し引いた利益ではないので注意しましょう。
なお、事業収入なので、不動産収入や給与収入、雑所得等は含まれません。個人事業者として不動産収入を得ている人の中には、今回の持続化給付金を受けられないことで、「期待していたのに・・・」という意見もありました。
事業所、部門ごとでの申請は不可
企業や事業者によっては、複数の事業所や部門がある場合もあるでしょう。しかし、持続化給付金は事業所、部門ごとに切り分けて申請することはできません。申請は法人または個人事業者単位で行いましょう。
持続化給付金と他の給付金等との併給は可能
新型コロナウィルスに関する支援対策は持続化給付金以外にもあり、合わせて申請する事業者も多いでしょう。ただ、中には併給できないケースもあるので注意が必要です。持続化給付金自体は、他の給付金や協力金、補助金等との併給が認められていますが、他の給付金等が、持続化給付金等と併給出来るかについては制度によって異なります。申請時は制度の運営側に確認の上、申請を行うようにしましょう。
特例として認められる申請も
前述の通り、申請には支給要件を満たす必要がありますが、下記に該当する場合は、特例として申請が認められるケースもあります。
- 直前の事業年度の確定申告が完了していない場合
- 申請書と証拠書類等の法人名が異なる場合
- 給付額に関する特例
- 2019年1月から12月までの間に設立した法人に対する創業特例
- 月当たりの事業収入の変動が大きい法人に対する季節性収入特例
- 事業収入を比較する2つの月の間に合併を行った法人に対する特例
- 連結納税を行っている法人に対する特例
- 2018年または2019年に発行された罹災証明書等を有する法人に対する特例
- 事業収入を比較する2つの月の間に個人事業者から法人化した者に対する特例
- 特定非営利法人及び公益法人等に対する特例
事業継続に続持続化給付金の効果的な活用を
持続化給付金は使途が決められておらず、事業全般に幅広く使える給付金です。給付金は前年同月比で売上が50%以上減少している中小法人等、個人事業者であれば申請可能です。ただ、支給金額が10万円未満も追加支給されるなど、持続化給付金の概要はまだ変化する可能性があります。不明な点は税理士など専門家にも相談しながら、最新の情報をチェックした上で申請を行いましょう。