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コンプライアンス違反事例とは?3つの事例と5つの防止策を紹介!

コンプライアンス違反事例とは?3つの事例と5つの防止策を紹介!

近年、ニュースなどさまざまなメディアで企業の不祥事が取り上げられています。しかし、その不祥事のどれもが起こるべくして起こっています。コンプライアンス違反は企業活動に深刻なダメージを与えます。そして、コンプライアンス違反は何気ない行動からも起こってしまいます。

本記事では、実際に起きたコンプライアンス違反の事例をもとに、コンプライアンス違反が起こってしまった原因を探ります。そして、コンプライアンス違反を起こさないための5つの防止策を提案します。

コンプライアンスとは

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Colorful letters forming the word rules

コンプライアンス(compliance)とは、直訳すると「法令順守」という意味です。企業におけるコンプライアンスの場合、この法令順守に加え、社会的規範や論理を守ることも含まれます。

ひと昔前までは、「法令さえ守っていれば問題ない」という企業が大企業でさえ見受けられました。しかし、年々、社会の目は厳しくなり、先述のような「法令さえ守っていれば問題ない」という企業姿勢は通用しなくなっています。

 

したがって、法令を守ることは当然で、法令に違反していなくても社会的規範から逸脱し、世間から批判されるような行為はしないというのが、現代におけるコンプライアンスです。

近年は、TwitterなどのSNSの普及もあってコンプライアンス違反などの悪い情報はあっという間に拡散されてしまいます。そして、一度拡散されてしまった悪い情報は、その後もなかなか消えることはありません。企業が将来的に安定した経営を持続していくためのリスクマネジメントという意味でもコンプライアンスの徹底は欠かせません。

 

コンプライアンス違反の事例から問題を読み解く

コンプライアンス違反はさまざまな要因によって起こります。コンプライアンス違反を起こさないためには、違反が起こる原因を知り、対策を立てなければなりません。そこで、まずは過去のコンプライアンス違反の事例をもとに、コンプライアンス違反が起こった原因とその問題を読み解いていきましょう。

事例1.【粉飾決算】東芝の不正会計事件

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これは、2008年度から2014年度の第3四半期までのあいだに、2000億円をこえる巨額の不正利益をかさ上げするという粉飾決算を行った結果、事業の大幅縮小や多くの取締役の辞任に追い込まれてしまった事例です。

この粉飾決算は、経営悪化を恐れた歴代の社長を含めた上層部が現場に無理な目標設定や要求・パワハラを含む圧力をかけた結果、不正をせざるを得ない環境が作られてしまったことが原因で起こりました。

 

事例2.【労働法違反】電通の社員過労自殺事件

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これは、2015年12月、当時24歳だった女性新入社員が月130時間にのぼる時間外労働とパワハラやセクハラを苦に社員寮から飛び降り、命を絶ってしまう痛ましい事件です。電通では、この事件のほかにも過去に過重労働やパワハラによって社員が自殺する事件が起こっています。

このようなコンプライアンス違反が繰り返される背景には、違法な長時間労働やサービス残業、パワハラやセクハラがあたりまえの環境・企業風土がありました。自社の利益を追求するあまり、労働基準法などの法令を順守するといった基本的な論理感が欠如していた結果といえるでしょう。

 

事例3.【情報隠ぺい】タカタのエアバッグ破裂問題

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このエアバッグ破裂問題は、2000年以降、自社のエアバッグに不具合があることを知りながら、その事実を隠ぺいして製造・販売を続けた結果、多くの死亡事故につながってしまったというものです。そしてさらに、全世界で累計1億台以上の車がリコールとなるなど、過去に類をみない規模の問題に発展していきました。

ここまで問題が大きくなった原因は、問題の隠ぺいと、責任回避など問題解決への消極的姿勢など社会的規範からの逸脱が原因です。

 

コンプライアンス違反を防ぐためにするべきこと

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防止策1.行動規範の作成・見直し

「コンプライアンスを徹底しましょう」と言っても、具体的に何をすればよいのか分からない人が多いでしょう。そこで、自社の従業員がとるべき行動規範を作成することで、取るべき行動が明確になり理解しやすくなります。

そして、行動規範をより多くの従業員に理解し、実行してもらうためには、なるべく具体的で分かりやすい内容にすることがポイントです。また、行動規範は我々を取り巻く環境の変化に対応していかなければなりません。そのため、すでに行動規範がある場合でも、その行動規範が現在の環境に適したものになっているかを定期的にチェックして改善していくことが必要です。

 

防止策2.従業員への定期的な周知

行動規範を作成したとしても、周知しなければ伝わりません。また、「行動規範を作成したので見ておいてください」といっても興味のない人は見てくれません。

一般的に、最初からコンプライアンスの意識が高い人というのはあまり多くありません。そのため、定期的に周知し理解してもらいながら徐々にコンプライアンスの意識を高めていく必要があります。

 

そのためには、新入社員研修や定期的な研修・勉強会などにコンプライアンス研修を取り入れるのもひとつの方法です。そして、周知するのはいちどではなく、定期的に行いましょう。何度も繰り返し説明することで行動規範の内容が自然と身についていき、あたりまえに行動できるようになります。

特に近年はスマートフォンやSNSが普及しており、誰でも気軽に情報を発信できてしまいます。そのため、本人が意図しないうちに機密情報が漏れてしまったり、投稿した内容によって炎上してしまったりすることがあります。そこで、SNSの利用方法を行動規範に定めておいたり、コンプライアンス研修でSNSの利用方法を取り入れたりすることも効果的です。

 

防止策3.職場環境・風土のチェック・改善

コンプライアンス違反の事例で紹介したように、職場環境や風土がコンプライアンス違反を起こしやすい状況になっていることがあります。そういった状況では、いくら行動規範を作成し周知してもコンプライアンス違反が起こってしまいます。

そこで、まずは物理的に違反が起こりやすい環境はないか、違反を促すような職場環境・風土はないかをチェックしてみましょう。例えば、機密情報を容易に持ち出せるようになっているなどの物理的な環境や、偏見や差別などを許容している環境ではないかなどを確認します。また、場合によっては個々の従業員へヒアリングを行うことも必要です。

 

その結果、コンプライアンス違反が起こりやすい環境であれば改善していかなければなりません。しかし、長年に渡って続いてきた職場環境や風土・慣習を変えるというのは簡単なことではありません。

そこで、コンプライアンス徹底の強い意志と悪い慣習を断ち切る決意を示すためにも、会社のトップや役員などの上層部を巻き込み一丸となって取り組むことが大切です。

 

防止策4.相談窓口の設置

コンプライアンス違反を発見した人がすぐに報告できるように相談窓口を設置することも有効です。しかし、コンプライアンス違反を発見しても、気が引けてしまい報告や相談ができない人も存在します。そのような人でも気軽に報告や相談ができるようにするためには、日ごろからの啓発活動が大切です。また、報告者が不利益を被らないように配慮しなければなりません。

 

防止策5.法律の専門家への相談や外部機関の設置も検討する

弁護士や社労士など、労働法をはじめとした法律の専門家相談することも、コンプライアンス違反を防ぐためには有効な手段です。専門家に相談し、自社の行動規範や現在の状況などをチェックしてもらうことで、自分たちでは気付かなかった問題点が見つかる可能性があります。

また、社内の人間関係やあつれきなどにとらわれず、客観的な立場でチェックしてくれる外部のチェック機関の設置を検討することも効果的です。その場合も、社労士などの専門家に依頼することをおすすめします。

参考:消費者庁 公益通報者保護法と制度の概要

 

今こそコンプライアンスの見直しを

SNSが飛躍的に普及したり、人工知能(AI)が普及したりと私たちを取り巻く環境は日々、劇的に変化しています。今までは問題がなかったとしても、環境の変化によってコンプライアンス違反が起こってしまうこともあります。

本記事で紹介したコンプライアンス違反の事例はごくわずかですが、どの事例も人や企業に多大な影響を及ぼしています。これから先、安定した企業活動を行っていくためにも、今一度、コンプライアンスの見直しをしてみてはいかがでしょうか。

企業の教科書
増山 晋哉
記事の監修者 増山 晋哉
弁護士法人 きわみ事務所 代表弁護士

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