補助金・助成金

働き方改革推進支援助成金の概要と申請要件|4つのコースを紹介

働き方改革推進支援助成金の概要と申請要件|4つのコースを紹介

働き方改革推進支援助成金は、中小企業の事業主を対象として労働時間の短縮や有給休暇取得促進などの職場環境の整備に要した費用の一部に対して助成するものです。長時間労働などを見直し、従業員の働く意欲の向上が期待できます。

労働時間短縮・年休促進支援、勤務間インターバル導入、労働時間適正管理推進、団体推進の4つのコースはそれぞれ内容や申請要件は異なるため、詳しく解説します。

働き方改革推進支援助成金とは|概要・目的

働き方改革推進支援助成金には新型コロナウイルス感染症対策の一貫として「テレワークコース」と「職場意識改善特例コース」がありましたが、令和3年12月現在は受付を終了しています。また、助成金の情報は随時更新されるため、常にチェックが必要です。

また、労働時間短縮・年休促進支援、勤務間インターバル導入、労働時間適正管理推進、団体推進の4つのコースについても、令和3年度は多数の申請があり、11月末の受付締切が10月15日に短縮されました。このことからも多くの中小企業が職場環境を整えて助成金申請をおこなったことが窺えます。助成金申請は常に最新の情報を得ることが大切です。

働き方改革推進支援助成金の概要

働き方改革推進支援助成金は、労働時間の短縮や有給休暇取得率向上などの従業員の働き方改革に取り組む中小企業事業主に対して、必要な費用の一部を助成する制度です。令和3年度は労働時間短縮・年休促進支援、勤務間インターバル導入、労働時間適正管理推進、団体推進の4つのコースがあります。

働き方改革推進支援助成金の目的

上場企業をはじめとする大企業には労働基準法によって、従業員のための規定が中小企業よりも厳しい場合があります。たとえば、1カ月について60時間を超える時間外労働の割増賃金率では、大企業は50%で中小企業は猶予されてきました。

労働環境整備のために労働基準法の改定があれば、大企業は率先して取り組まなければなりませんが、中小企業では経営を守るために取り組めないのが実情です。そこで、働き方改革推進支援助成金は企業規模によって生まれる労働環境の格差を小さくするために、中小企業を助けることを目的としています。

働き方改革推進支援助成金|4つのコース

働き方改革推進支援助成金の概要と申請要件|4つのコースを紹介の画像1

働き方改革推進支援助成金を申請するための4つのコースについて説明します。

①労働時間短縮・年休促進支援コース
②勤務間インターバル導入コース
③労働時間適正管理推進コース
④団体推進コース

働き方改革推進支援助成金はいずれも人気がありますので、自社にとって取り組みやすいコースがあれば早急に取り組むことをおすすめします。

働き方改革推進支援助成金|3つのコース共通の要件

以下の3つのコースには共通の要件があります。
①労働時間短縮・年休促進支援コース
②勤務間インターバル導入コース
③労働時間適正管理推進コース

1)中小企業事業主であること

中小企業とは、AまたはBの要件を満たす事業所のことを指します。

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引用:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

2)労働者災害補償保険の適用事業主であること

事業主は労働者を1人でも雇用した場合は、労働保険(労災保険と雇用保険)に加入する義務があります。労働者災害補償保険は、働く人すべての最低限のセーフティーネットといえるでしょう。

3)支給対象になる取組をしていること

以下の取組のなかから1つ以上の実施が必要です。

1労務管理担当者に対する研修
2労働者に対する研修、周知・啓発
3外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
4就業規則・労使協定等の作成・変更
5人材確保に向けた取組
6労務管理用ソフトウェアの導入・更新
7労務管理用機器の導入・更新
8デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
9労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)

引用:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

では、4つのコースの概要や成果目標、支給額をみていきます。

働き方改革推進支援助成金|①労働時間短縮・年休促進支援コース

2020年4月1日から中小企業にも時間外労働の上限規制が適用になりました。「労働時間短縮・年休促進支援コース」では、労働時間の短縮や年次有給休暇取得の促進のために職場環境の整備に取り組む事業主を支援しています。

●成果目標の設定と支給額の上限

支給対象となる取組は3つの成果目標のうち1つ以上を選び、達成を目指した実施が必要です。

1.有効な36協定で時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、あるいは月60時間を超え月80時間以下の上限設定
支給額の上限:60時間以下 100万円・80時間以下 50万円

2.特別休暇(病気休暇・教育訓練休暇・ボランティア休暇・その他特に配慮を必要とする労働者のための休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入
支給額の上限:50万円

3.時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入
支給額の上限:50万円

●注意点

・令和2年度まで「就業規則を改定し、所定休日の増加及び実績を確認」という成果目標がありましたが、令和3年度からはなくなっています。

・支給は成果目標ごとに1回です。たとえば2の特別休暇において、病気休暇の成果目標で申請し翌年ボランティア休暇で申請するようなことはできません。

働き方改革推進支援助成金|②勤務間インターバル導入コース

「勤務間インターバル」とは勤務終了から次の勤務までの間に一定時間以上の休息時間を設けることです。労働者の健康保持や過重労働を防ぐための制度で、2019年4月から努力義務化されています。

●成果目標の設定と支給額の上限

支給対象となる取組の成果目標は「休息時間数が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルを導入し、定着を図ること」です。

この成果目標にある3つの取組として「新規導入」「適用範囲の拡大」「時間延長」があります。支給額は対象経費の合計額に補助率3/4~4/5を乗じた額です。

【支給額の上限】

休息時間数 「新規導入」に該当する取り組みがある場合 「新規導入」に該当する取り組みがなく、適用範囲の拡大」又は「時間延長」に該当する取組がある場合
9時間以上11時間未満 80万円 40万円
11時間以上 100万円 50万円

(※)事業実施計画において指定した事業場に導入する勤務間インターバルの休息時間のうち、最も短いものを指します。

(※)事業実施計画において指定した事業場に導入する勤務間インターバルの休息時間のうち、最も短いものを指します。

引用:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)

●注意点

・勤務間インターバルを導入していない事業主を対象とすることに加えて、令和3年度から「原則として過去2年間において月45時間を超える時間外労働の実態があること」という要件が加わりました。

働き方改革推進支援助成金|③労働時間適正管理推進コース

2020年4月1日から、賃金台帳などの労務管理書類の保存期間が5年(当面の間は3年)に延長されました。このことを受けて令和3年度に新たに「労働時間適正管理推進コース」が加えられました。労働環境整備に取り組む事業主を支援するための制度です。

●成果目標の設定と支給額の上限

以下の成果目標の1~3のすべてを達成した事業主を対象として助成金が支給されます。

1新たに勤怠(労働時間)管理と賃金計算等をリンクさせて、自動的に賃金台帳等を作成・管理・保存できる統合管理 IT システムを用いた労働時間管理方法を採用

2新たに賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することを就業規則等に規定

3「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成 29 年1月 20 日策定)に係る研修を労働者等に対して実施

支給額の上限:50万円

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引用:厚生労働省「「働き方改革推進支援助成金」労働時間適正管理推進コースのご案内

働き方改革推進支援助成金|④団体推進コース

「団体推進コース」は、①~③のコースのように事業所単独ではなく中小企業事業主の団体やその連合団体(事業主団体等)主導で労働者の労働条件改善に取り組み、時間外労働の削減や賃金引上げを実施した場合に団体に対して助成されるものです。

●支給対象となる事業主団体等

3事業主以上(共同事業主においては10事業主以上)で構成された事業主団体等が支給対象です。事業主団体は、法律で規定された団体(事業協同組合、企業組合、商工組合など)となります。

●支給対象となる取組と成果目標の設定

支給対象となる取組は団体がおこなうため、先の3つのコースとは異なります。市場調査の事業や、新ビジネスモデルの開発・実験の事業、セミナー開催等の事業などをはじめとして、10の取組があります。

成果目標は「構成事業主の1/2以上に対してその取組又は取組結果を活用すること」となっています。事業主団体等に属している事業所は団体が主催するセミナーに参加したり、巡回指導を受けたりすることで、働き方改革推進に対する資金面の負担軽減が期待できます。

働き方改革推進支援助成金|2022年度動向予想

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働き方改革推進支援助成金は人気の助成金のため、予算に達した時点で申請受付期限が繰り上げられて締め切られてしまいます。取組を予定している事業所は迅速に申請に向けて動く必要があるでしょう。

2021年10月1日の住宅産業新聞社の報道によれば、厚生労働省から2022年度の予算の概算要求が出ています。「最低賃金・賃金の引上げに向けた生産性向上等の推進、同一労働同一賃金など雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」という項目は前年285億円に対して296億円です。

「働き方改革推進支援助成金」関連の予算では、「生産性を高めながら労働時間の縮減等に取り組む事業者等の支援」82億円、「勤務間インターバル制度の導入促進」27億円、「年次有給休暇の取得促進等による休み方改革の推進」1.7億円)となっており、2021年度とは大きな差異がないことから、2022年(令和4年)度も同様の規模で公募されると予想できます。

働き方改革推進支援助成金申請は迅速な対応を!

働き方改革推進支援助成金の4つのコースについて解説しました。たとえば勤怠管理と賃金計算を連動させることで給与計算の繁雑さを解消できるとは知っていても、資金面での不安があり踏み切れずにいる事業所を後押ししてくれる制度です。助成金は変化する時代を背景に流動的に変化し続けています。新型コロナウイルス感染拡大のときのコースはなくなりました。

人気がある助成金のため予算枠がいっぱいになった時点で締め切られてしまうので要注意です。最新の情報収集や要件を満たすかの確認、実際の申請については社会保険労務士への相談をおすすめします。

きわみ事務所には助成金制度に精通した社労士が在籍しています。申請についてもすべてお引き受け可能ですのでぜひお問い合わせください。

企業の教科書
竹内 欣士
記事の監修者 竹内 欣士
弁護士、社会保険労務士

知に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかく、人の世は住みにくい(夏目漱石「草枕」)。
日々、知識を活かす智恵こそが大切だと痛感しています。知を重んじつつ頼らない。情を大切にしつつ流されない。意地を胸に秘めつつ通さない。そのバランスを図りながら、依頼者に寄り添う「身近な相談相手」を目指してまいります。

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