助成金の種類は、とても多く覚えることは難しいです。助成金がどういった仕組みで支給されているのか、ご存知ない方も多いのではないでしょうか。
助成金と補助金の違いについても、曖昧な部分が多いと思います。この記事では、助成金の役割、補助金との違い、助成金の一覧を、事例を交えてご紹介していきます。
助成金は返済しなくていい!
助成金は、条件を満たすことで国や地方自治体から支給されるお金のことです。国や地方自治体から支給されるという面では、補助金と同じ役割を担っています。融資ではないので、返済義務がないことが特徴です。
助成金の使用例でいうと、就職できない人向けの雇用制度に利用されたり、派遣社員や契約社員から正社員へのランクアップに利用されたり、社員のスキルアップセミナーに利用されたりしています。
助成金と補助金の違いは?
助成金と補助金の違いは、雇用関係でお金を支給されているかどうかです。先ほど、助成金の使用例をご覧いただきましたが、雇用者にしかお金を使っていませんよね。
補助金との違いを簡単に説明すると、補助金は国や地方自治体が決めた予算内で、公募によって申請を募り審査をして支給されるお金です。
一般的に、国や自治体が政策を達成するために、補助金を使っているといわれています。他の記事で、補助金について詳しく解説しているので、そちらも参考にしてみてください。
助成金の種類①厚労省
助成金の役割や補助金との違いについて、ご紹介してきました。ここからは、実際に厚生労働省が出している助成金一覧をご紹介していきます。
- 時間外労働等改善助成金
- 中小企業退職金共済制度
- 職場定着支援助成金
- キャリアアップ助成金
厚労省の助成金①時間外労働等改善助成金
時間外労働等改善助成金は、時間外労働の上限規制等に対応するため、生産性を高めつつ、労働時間を短縮しようとしている中小企業や小規模事業者への助成金です。
主に、中小企業の労働時間の改善促進を目的として、厚生労働省から支給されている助成金です。
厚労省の助成金②中小企業退職金共済制度
中小企業退職金共済制度は、独力で退職金制度を設けることが困難な中小企業者について、事業の相互共済の仕組みと国の援助によって設けられている制度です。
毎月決まった金額を、「独立行政法人勤労者退職金共済機構」という機構に賭け金として納付します。すると、従業員が退職したときに、所定の金額が機構から従業員に退職金として支払われる仕組みです。
納付金額は従業員ごとに選択でき、5,000〜30,000円の間で設定が可能です。
厚労省の助成金③職場定着支援助成金
職場定着支援助成金とは、従業員の離職率低下に取り組んでいる事業主に対して支給される助成金です。助成対象となるのは、評価・処遇制度を導入しているときと、研修制度を導入しているときです。
評価・処遇制度は、下記の内容が含まれます。
- 登用制度(昇進・昇格基準の明確化)
- 賃金制度(退職金・ボーナス)
- 手当制度(通勤手当・役職手当)
上記のいずれかの制度を導入するときに、100,000円が支給されます。制度の導入によって、1年間の離職率が一定割合低下したときは、追加で600,000円が支給されます。
研修制度は、業務を行うときに必要な知識とスキルを習得するための研修です。研修制度も、導入したときに100,000円が支給されます。
100,000円は、各制度を導入するたびに支給されますが、離職率の低下による支給は1回だけです。
厚労省の助成金④キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、契約社員や派遣社員などの非正規社員を、正社員にキャリアアップさせるための制度を導入したときに、事業主に支給されます。
キャリアアップ助成金には、「正社員化コース」と「処遇改善関係コース」と呼ばれている2つのコースがあります。
正社員コースは、正社員にキャリアアップさせてから、6ヶ月後の賃金支払いに伴って、賃金が約5%以上増額している必要があります。
処遇改善関係コースは、就業規則の相談を従業員に受けてから規則改定を実施してから、6ヶ月後の賃金払いが終わっている必要があります。
それぞれの過程が終了したのち、支給申請をして審査が行われ、支給が決定する仕組みです。
キャリアアップ助成金については、他にも助成金コースがあるので、詳しくはこちらをご覧ください。
参考:キャリアアップ助成金
助成金の種類②勤労者福祉関係
ここからは、福祉関係の助成金一覧をご紹介していきます。
福祉関係の助成金は、大きく分けて5つあります。
- 勤労者財産形成促進制度
- 財形貯蓄制度
- 事務代行制度
- 財形給付金・基金制度
- 財形教育融資制度
上記の制度は、一般的に給料天引きによって貯蓄されていく制度が多いようです。
勤労者福祉関係の助成金①勤労者財産形成促進制度
勤労者財産形成促進制度は、勤労者財産形成促進法に基づき、勤労者が退職した後の生活、資産形成を目的として貯蓄をしていき、事業主や国が貯蓄を援助していく制度です。
退職後に、安心した生活を送れるようにするための制度といえるでしょう。
勤労者福祉関係の助成金②財形貯蓄制度
財形貯蓄制度には、3つの貯蓄タイプがあります。お金の使い道を限定しない「一般財形貯蓄」、60歳以降の年金払いを目的とする「財形年金貯蓄」、住宅の取得や増改築を目的とする「財形住宅貯蓄」です。
勤労者福祉関係の助成金③事務代行制度
中小企業の事業主が、財形貯蓄の事務仕事に使う時間を、事務代行団体に委託することができる制度です。
勤労者福祉関係の助成金④財形給付金・基金制度
財形貯蓄を行なっている勤労者のために、事業主が資金を出し合い、一定期間勤務をしてもらった後に、該当勤労者に財形給付金を支払う制度です。
助成金⑤財形教育融資制度
勤労者本人か、勤労者の親族の教育を受けるために必要な資金を、独立行政法人雇用か能力開発機構が、必要な資金の貸付を行う制度です。限度額は4,500,000円となっています。
助成金の事例(成功例)
ここまで、さまざまな助成金と制度をご覧いただきました。ここでご紹介した助成金は、ほんの一部に過ぎません。まだ紹介しきれていない助成金はありますが、実際に助成金に関する事例をいくつかご紹介しましょう。
【助成金の事例】IT企業が1,740万円を受給した方法とは?
キャリアアップ助成金の正社員化コースを活用
前年の業績がよかったために新しく契約社員やアルバイトを20名ほど雇用しました。
半年間非正規の従業員として雇用し、勤務態度や業務の成績をみて20人のうち15人を正規の従業員として雇用しました。
キャリアアップ助成金は年間で最大15人を対象として受給申請することができます。
受給できる金額は対象の従業員ひとりあたり最大50万円で、東京都の場合1人あたり60万円が上乗せで支給され、合計で一人あたり110万円の受給が可能です。
今回の事業主の方は非正規の従業員のうち15人を正規の従業員として雇用したので110万円×15人で1,650万円の助成金を受給することができました。
職場定着支援助成金を活用
日々の残業による疲労や、PCの長時間操作による疲労などから離職率が高いと言われるIT業界。今回の事業主の方も会社の業績があがる反面、離職率が高いことに悩んでいました。
従業員がより働きやすき職場環境を整え、離職率を下げるために雇用管理制度の導入を行いました。雇用管理制度には5つの制度があり、1つの制度を導入するごとに10万円受給することができます。
今回は5つの制度のうち「評価・処遇制度」「メンター制度」「研修制度」を導入し助成金を申請し30万円受給することができました。
介護離職防止支援助成金
従業員の中に高齢の家族と同居している方が多かったため、介護による離職を防ぐために介護離職防止支援助成金を活用しました。
仕事と介護が両立できる就労環境を整え、実際に介護休業などの制度を利用する従業員がいたため、介護離職防止支援助成金を申請しました。介護離職防止支援助成金は60万円を受給することができます。
助成金の事例(失敗例)
ここまで、各助成金の成功事例をご紹介してきましたが、ここでは失敗事例をご紹介していきます。失敗例を参考にして、同じ失敗をしないようにしましょう。
【助成金の事例】キャリアアップ計画書の提出遅れ
問題提起
株式会社A社は、キャリアアップ助成金のうち正社員化による助成金の取得を検討していた。
このA社は、5人の有期雇用労働者を雇用しており、最低でも57万円×5人=285万円の支給がえられると考えていた。さらに、生産性要件が満たされれば、360万円が考えられた。
社長Bは、この資金をあてにして車の購入計画を立てていた。
担当者Cは、有期雇用労働者を6月以上雇用した後に正社員化すれば、要件を満たすと考えていた。
キャリアアップ計画書が必要なことはなんとなくわかっていたが、あとから出しても大丈夫、場合によっては、支給申請の時に出しても間に合うだろうと考えていた。
そのため、この5人を正社員化した後に、キャリアアップ計画書を作成して提出した。
しかし、キャリアアップ助成金は一切下りなかった。
車の購入計画もお流れになってしまった。
なぜこのようなことに?
キャリアアップ助成金は、キャリアアップ計画に基づいて正社員化した会社(労働者)に対してしかおりません。
その為、正社員化の後に、キャリアアップ計画書を出すということは、キャリアアップ計画に基づいて正社員化したとは言えないため、助成金の対象にならないのです。
必ず、キャリアアップ計画書を正社員化の前に、労働基準監督署(労基)に送って、受領印をもらってください。
その受領の日の後に、正社員化が必要です。
【助成金の事例】キャリアアップ助成金
株式会社E社は、キャリアアップ助成金のうち正社員化による助成金の取得を検討していた。
このE社は、3人の有期雇用労働者を雇用しており、正社員化すれば最低でも57万円×3人=171万円の支給がえられると考えていた。さらに、生産性要件が満たされれば、216万円もらえる可能性もあった。
社長Fは、この資金をあてにして設備投資の購入計画を立てていた。
担当者Gは、キャリアアップ計画書の提出し、その後、6月以上雇用した有期雇用労働者を正社員にした。
就業規則も、有期雇用から正社員にする規定を新設し、労働者側からも意見書をもらっていた。
しかし、キャリアアップ助成金は一切下りなかった。
車の購入計画もお流れになってしまった。
なぜこのようなことになってしまったのだろうか?
キャリアアップ助成金は、キャリアアップ計画に基づいて正社員化しただけではなく、そのような制度を就業規則に記載する必要があります(就業規則要件1)。
当然、変更した就業規則については、労働者側の意見書が必要です。通常の就業規則の変更と同じです(就業規則要件2)
ただ、この変更後の就業規則について、労働基準監督署(労基署)の検印が必要です(就業規則要件3)。
また、この就業規則の変更の日より後の日付で正社員化する必要があります(就業規則要件4)。
これらが全て満たされなければ、キャリアップ助成金をもらうことはできません。
なお、商業規則要件1の就業規則にどのようなことを書かないかいけないかも規定あり、これを満たさないと、だめです。
また、就業規則以外でもかまいません。具体的には、労働協約、転換規則、人事課通知などでも可能です。
引用元:キャリアアップ計画書の提出遅れ
まとめ
この記事では、助成金と補助金の違い、助成金の事例についてご紹介してきました。助成金の解説と事例を交えることで。助成金を申請するときの注意事項や、助成金の受け取り方が理解できたのではないでしょうか。
ぜひ、参考にしてみてください。