税金・税務

法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?

法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?

みなさんは、「寄付金」と聞くと何を思い浮かべますか?

最近では、ふるさと納税のCMなどもよく見かけるようになり、気軽にふるさと納税を通じて寄付をおこなっている人も多いのではないでしょうか。ふるさと納税は所得税や住民税といった税金の控除ができるだけではなく、寄付先の特産品などをもらうことができるお得な制度です。

これはあくまでも個人での寄付金に関することですが、法人においても、取引先や団体に寄付をおこなうことがあります。法人の寄付金に関しては、「損金不算入制度」により、一定の計算のもとで経費になる部分と経費にならない部分に区分されます。

「損金不算入ってどういう意味?」
「法人は寄付をおこなった場合、全額経費にならない?」

と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、

  • 法人が寄付をおこなった場合における取り扱いとは
  • 寄付金には種類がある?種類ごとの処理方法とは
  • 特定寄付金とはどのような寄付金?

これらの疑問について、徹底的に解説していきます。法人の寄付金については、「どこへ寄付をおこなったのか」によって取り扱いが異なります。そのため、まずはどのような寄付金の種類があるのかということを理解しておく必要があります。

損金不算入制度とは?なぜ損金にならない?

寄付金の損金不算入とは、法人税などを計算する際に、支出した寄付金の一部を損金から除外することをいいます。

「損金」は法人税などを計算する際に、売上から差し引くことができる費用のことをいい、通常であれば、会計上で計上した費用の金額と、損金の金額は一致しますが、寄付金や交際接待費などは損金不算入制度があるため、支出した全額が必ず売上から差し引かれるとは限りません。

そのため、寄付金の損金不算入制度により、支出した寄付金のうち、一定額が損金から除外される場合があります。

このように、会計実務においては、損金不算入制度などの影響により、会計上の利益と法人税法上の所得に差が生じる場合があります。

< 例:当事業年度に支出した寄付金のうち、50万円が損金不算入である場合 >

細目 会計上の処理 細 目 法人税法上の処理
売上 900万円 売上 900万円
諸経費 700万円 損金 700万円
(うち寄付金) (100万円) (うち寄付金) ( 100万円)
利益 200万円 所得 200万円
寄付金の損金不算入 +50万円
所得調整後の課税所得 250万円

寄付金に損金不算入制度が導入されている理由は、「事業活動に必要かどうかが不明確だから」です。

法人税などを計算する際の損金とするためには、その支出内容が「事業活動に必要な支出である」という条件を満たしていなければいけません。しかし、寄付金は費用対効果が明確ではなく、事業に必要なものであるかどうかの判定が非常に困難であるといえます。

また、寄付金を無制限に損金算入してしまうと、法人税などの税収が減少してしまうという問題もあるため、限度額を設けて、それを超える金額については、損金の額に参入しないことになっています。

寄付金の取り扱いは寄付金の種類に応じて異なる

法人の寄付金については、寄付金の種類に応じて

  • 支払った全額が損金となる
  • 支払った一部の金額が損金となる

といったように取り扱いが異なります。

法人がおこなう寄付金は大きく区分すると、主に次の4つの種類に区分され、それぞれについて、定められた方法で計算をおこないます。

  • ①一般の寄付金
  • ②国等に対する寄付金
  • ③指定寄付金
  • ④特定寄付金

それぞれの区分で取り扱いが異なるため、まずは寄付金がどの区分に該当するのかを調べなければいけません。

①一般の寄付金

法人がおこなう寄付金のなかで、

  • 地域などの町内会や任意団体
  • 神社やお寺などへの寄付
  • お祭りなどの実行委員会などイベント団体

といった一般的な寄付金は「一般の寄付金」に該当します。

寄付金が一般的なものであるかどうかわからない場合で、下記の②~④に該当しないときは「一般の寄付金」であると考えるようにしましょう。

②国等に対する寄付金

法人がおこなう寄付金のなかで、

  • 都道府県
  • 地方公共団体

などに対しておこなった寄付金は「国等に対する寄付金」に該当します。

ただし、

  • 寄付をおこなったことにより、設けられた設備などを専属的に利用できる場合
  • 寄付者にとって、特別な利益がある場合

このような場合には、「国等に対する寄付金」には該当しません。

③指定寄付金

法人がおこなう寄付金のなかで、次の(1)~(3)を満たす場合は「指定寄付金」に該当します。

(1)次のいずれかの法人や団体に対しておこなった寄付金であること

  • 公益社団法人
  • 公益財団法人
  • その他公益目的事業※1をおこなう法人、または団体

(2)おこなった寄付金が次の要件どちらにも該当していること

  • 一般に広く募集されている寄付金
  • 公益性、および緊急性が高い寄付金

(3)財務大臣が指定した寄付金であること

身近な指定寄付金としては、「赤い羽根共同募金」があります。

指定寄付金の場合には、必ず財務省の告示番号があるため、指定寄付金であるかどうかを調べる際の1つの目安としましょう。

赤い羽根共同募金の場合には、ホームページの中に下記のように告示番号の記載があります。

法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?の画像1

引用:令和元年度共同募金への寄付の税制優遇に係る告示について|赤い羽根共同募金

④特定寄付金

法人がおこなう寄付金のなかで、

  • 特定公益増進法人に対する寄付金
  • 特定公益信託の信託財産とするために支出した寄付金
  • 認定NPO法人等に対する寄付金

などに対しておこなった寄付金は「特定寄付金」に該当します。

特定寄付金はさらに細かく区分されるため、まずは、どの特定寄付金に該当するのかを確認していきましょう。

 (1)特定公益増進法人に対する寄付金

特定公益増進法人は、

  • 公共法人※1
  • 公益法人※2など(一般社団法人と一般財団法人を除く)
  • その他特別の法律により、設立された法人

上記の法人などのうち、公益の増進に著しく寄与する法人のことをいいます。

具体的には、次のような法人のことをいいます。

特定公益増進法人の具体例
独立行政法人通則法第2条第1項に規定する独立行政法人
地方独立行政法人法第2条第1項に規定する地方独立行政法人で一定のもの
自動車安全運転センター
日本赤十字社
公益社団法人
公益財団法人
私立学校法第3条に規定する学校法人で一定のもの
社会福祉法第22条に規定する社会福祉法
更生保護事業法第2条第6項に規定する更生保護法人

※1 公共法人とは次のような法人のことをいいます。
・株式会社日本政策金融公庫
・国立大学法人
・社会保険診療報酬支払基金
・地方公共団体
・地方公共団体金融機構
・地方住宅供給公社
・地方道路公社
・土地開発公社
・日本司法支援センター
・日本年金機構
・日本放送協会
など

引用:別表第一 公共法人の表(第二条関係)|電子政府の総合窓口e-Gov

※2 公益法人とは次のような法人のことをいいます。
・一般財団法人(非営利型法人に該当するものに限る。)
・一般社団法人(非営利型法人に該当するものに限る。)
・企業年金基金
・企業年金連合会
・健康保険組合
・公益財団法人
・公益社団法人
・国民健康保険組合
・国民年金基金
・国民年金基金連合会
・社会福祉法人
・商工会、商工会連合会
・日本赤十字社
など

引用:別表第二 公益法人の表(第二条、第三条、第三十七条、第六十六条関係)|電子政府の総合窓口e-Gov

 (2)特定公益信託の信託財産とするために支出した寄付金

法人がおこなう公益信託※1のうち、一定の要件を満たす場合には、「特定公益信託の信託財産とするために支出した寄付金」に該当します。

一定の要件については、次のとおりです。

  • 信託終了の時における信託財産がその委託者に帰属しないこと
  • 信託契約は、合意による終了ができないものであること
  • 寄付する財産が金銭に限られていること

なお、上記の要件を満たし、主務大臣からの証明を受けた公益信託でなければ、「特定公益信託の信託財産とするために支出した寄付金」には該当しません。

※1 公益信託とは、所有する金銭などの財産を、
・学術
・技芸
・慈善活動
といった公益目的のために信託銀行などに預け、管理、運用する公益的な活動をおこなう制度のことをいいます。

法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?の画像2

 

引用:公益信託のしくみ|一般社団法人信託協会

 (3)認定NPO法人等に対する寄付金

法人がおこなう寄付金のなかで、認定NPO法人等(認定特定非営利活動法人等)に対しておこなった寄付金の場合、「認定NPO法人等に対する寄付金」に該当します。

認定NPO法人とは、NPO法人※1のうち、一定の要件を満たしていることを都道府県や政令都市が認定したNPO法人のことをいいます。

認定NPO法人に該当しているかどうかは、内閣府のホームページなどで確認でき、各都道府県ごとにリスト化されています。
また、認定NPO法人については、有効期間が設けられているため、一覧表に記載されている有効期間についても必ず確認するようにしましょう。

例えば東京都の場合、次のような形式で認定NPO法人の一覧が公開されています。

法人名 所在地 代表者 有効期間
ベトナム子ども基金 東京都文京区本駒込二丁目
12番13号アジア文化会館内
近藤 曻 2019/08/05から
2024/08/04まで
多摩子ども劇場 東京都多摩市落合一丁目
46番地1 4階407号室
春田 祐子 2019/04/11から
2024/04/10まで
日本がん登録協議会 東京都中央区銀座八丁目
19番18号 第三東栄ビル503
猿木 信裕 2018/11/27から
2023/11/26まで

引用:所轄庁別認定・特例認定NPO法人名簿(東京都)|内閣府NPOホームページ

2020年11月1日時点では、全国に1,164件の認定NPO法人があり、こちらのホームページから都道府県ごとに確認することができます。

引用:所轄庁別認定・特例認定NPO法人名簿|内閣府NPOホームページ

 

※1 NPO法人(特定非営利活動法人)とは、次の20種類の分野に該当する活動をおこない、不特定多数の相手に貢献することを目的とする法人のことをいいます。

① 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
② 社会教育の推進を図る活動
③ まちづくりの推進を図る活動
④ 観光の振興を図る活動
⑤ 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
⑥ 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
⑦ 環境の保全を図る活動
⑧ 災害救援活動
⑨ 地域安全活動
⑩ 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
⑪ 国際協力の活動
⑫ 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
⑬ 子どもの健全育成を図る活動
⑭ 情報化社会の発展を図る活動
⑮ 科学技術の振興を図る活動
⑯ 経済活動の活性化を図る活動
⑰ 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
⑱ 消費者の保護を図る活動
⑲ 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
⑳ 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

引用:特定非営利活動法人(NPO法人)制度の概要|内閣府NPOホームページ

寄附をした場合における損金算入額の計算方法

法人の寄付金については、どの区分の寄付金に該当するかによって計算方法が異なります。なかには、全額が損金算入の寄付金もあれば、一部しか損金に算入されない寄付金もあります。まずは、上記の①~④のどの区分の寄付金に該当するのかを判定し、下記のそれぞれの区分に応じた計算で、損金算入額を計算していきましょう。

①一般の寄付金

法人がおこなった寄付金が「一般の寄付金」に該当している場合は、その法人の、

  • 資本金等の金額
  • その年の所得金額

に応じて計算をおこないます。具体的には次の計算式でおこないます。

法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?の画像3

計算式だけでみると、非常に複雑な計算式にみえますが、

法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?の画像4

このように、法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?の画像5で囲っている箇所がわかれば、簡単に計算することができます。

例えば、下記の条件で法人が寄付をおこなった場合における、損金算入限度額の計算は下記のようになります。

名称 法人A
資本金 1,000万円
所得金額 1,500万円
会計期間 令和1年1月1日~令和1年12月31日(1年決算法人)
法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?の画像6

上記のとおり、この場合における損金算入限度額は10万円であるため、10万円を超える部分については、損金に算入されません。

②国等に対する寄付金

法人がおこなった寄付金が「国等に対する寄付金」に該当している場合は、寄付を行った全額が損金に算入されます。

そのため、「一般の寄付金」のように、資本金や所得金額などによって損金算入限度額を計算する必要はありません。

③指定寄付金

法人がおこなった寄付金が「指定寄付金」に該当している場合は、寄付を行った全額が損金に算入されます。

そのため、「国等に対する寄付金」のように、損金算入限度額を計算する必要はありません。

④特定寄付金

法人がおこなった寄付金が「特定寄付金」に該当している場合は、「一般の寄付金」とは別の取り扱いとなり、次のうち、いずれか少ない金額が損金算入限度額となります。

  • ①特別損金算入限度額
  • ②特定公益増進法人に対する寄付金の額

特別損金算入限度額の計算は次の数式でおこないます。

法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?の画像7

例えば、下記の条件で法人が寄付をおこなった場合の損金算入限度額の計算は下記のようになります。

名称 法人A
資本金 1,000万円
所得金額 1,500万円
会計期間 令和1年1月1日~令和1年12月31日(1年決算法人)

< 特別損金算入限度額の計算 >

法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?の画像8

損金に算入されなかった寄付金については、「一般の寄付金」の金額に含めて限度額の計算をおこないます。

そのため、特定寄付金のみで、特別損金算入限度額以上の寄付金額である場合には、

  • 特別損金算入限度額
  • 「一般の寄付金」の計算式にもとづいた損金算入限度額

この2つの合計額が損金算入限度額となります。

上記の例の場合、法人Aが特定寄付金のみを60万円おこなっている場合、

損金算入される金額は次の①~②の合計額である「58万7,500円」となります。

①特別損金算入限度額

法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?の画像9

②「一般の寄付金」の計算式にもとづいた損金算入限度額

法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?の画像10

寄付金を損金に算入するために必要なことは?

法人がおこなった寄付金について、それぞれの区分に応じた規定の適用を受けるためには、

  • ①法人税申告書別表14(2) 寄付金の損金算入に関する明細書を添付すること
  • ②それぞれの区分に応じた必要書類の保存

などをおこなっておく必要があります。特に「一般の寄付金」以外の寄付金については、全額損金算入のものがあるなど、税制上有利な取り扱いとなっている場合もあります。

そのため、税務調査時などにおいて、損金に算入した寄付金が否認されないように、証拠書類などを正しく保存しておくことが重要です。

①法人税申告書別表14(2) 寄付金の損金算入に関する明細書を添付すること

法人が寄付をおこなった際には、確定申告時に法人税申告書別表14(2) 「寄付金の損金算入に関する明細書」を添付する必要があります。

法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?の画像11

引用:法人税申告書別表14(2) 寄付金の損金算入に関する明細書|国税庁

明細書については、それぞれの区分に応じて記載箇所が異なります。

そのため、まずはおこなった寄付金の区分を調べたうえで、明細書の適切な箇所に記載していく必要があります。

法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?の画像12

詳しい記載方法については、下記を参考にしてください。

引用:別表十四 「寄付金の損金算入に関する明細書」|国税庁

②それぞれの区分に応じた必要書類の保存

法人がおこなった寄付金のうち、

  • 一般の寄付金
  • 国等に対する寄付金
  • 指定寄付金
  • 特定寄付金

これらの寄付金については、区分に応じて所定の書類を保存しておく必要があります。

寄付金のうち、

  • 一般の寄付金
  • 国等に対する寄付金
  • 指定寄付金

これらの寄付金については、原則として、寄付した金額とその明細を記載した書類を添付した場合に限り、所定の計算で求めた金額を限度として損金に算入できます。

区分 必要書類
①一般の寄付金 寄付した金額と、その明細を記載した書類
(法人税申告書別表14(2) 寄付金の損金算入に関する明細書)
②国等に対する寄付金
③指定寄付金

特定寄付金については、おこなった寄付金がその区分の寄付金に該当することを証明する書類を保存しておく必要があり、種類に応じて必要な書類が異なり、具体的に次のような書類が必要になる場合があります。

なお、下記の表における、

「 ④特定寄付金 (2)特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭 」については、必要書類を保存しておくだけでなく、申告時に必要書類を税務署へ提出しなければならないため、注意が必要です。

別表十四 「寄附金の損金算入に関する明細書」 4 添付書類 |国税庁

区分 必要書類
④特定寄付金 (1) 特定公益増進法人に対する寄付金 寄付金がその特定公益増進法人の主たる目的の業務に関連する寄付金である旨をその特定公益増進法人が証する書類など
(2) 特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭 その公益信託が特定公益信託に該当することを証明するための主務大臣の発行する証明書類の写しなど
(3) 認定NPO法人等に対する寄付金 認定NPO法人などのおこなう特定非営利活動に係る事業に関連する寄付金である旨をその認定NPO法人等が証する書類

引用:No.5283 特定公益増進法人に対する寄付金

引用:別表十四 「寄付金の損金算入に関する明細書」

引用:No.5284 認定NPO法人等に対する寄付金

法人も「ふるさと納税」ができる?

個人だけでなく、法人についても「ふるさと納税」をおこなうことができます。

法人がおこなう「ふるさと納税」は「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)」と呼ばれ、2016年4月に創設された比較的新しい税制です。

個人がおこなう「ふるさと納税」は所得税や住民税といった税金を減少させる効果があります。それに対し、法人がおこなう「企業版ふるさと納税」については、

  • 法人税等
  • 法人住民税
  • 法人事業税

といった税金を減少させる効果があります。

企業版ふるさと納税の仕組みは?

企業版ふるさと納税は、地方公共団体の実施する地方創生に関する取り組みを応援した場合に税制上の優遇措置を受けることができるしくみです。

法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?の画像13

企業版ふるさと納税の大幅な見直し(令和2年度~)|内閣府ホームページ

令和2年度の税制改正により、企業版ふるさと納税における税額控除割合の引き上げなどの見直しがおこなわれています。

税額控除割合などについては、具体的に次のように改正されています。

法人が寄付をおこなった場合は経費にすることができる?特定寄付金ってなに?の画像14

令和2年度税制改正 企業版ふるさと納税の拡充・延長|内閣府ホームページ

それぞれの税金の上限額については、上記の表のとおりですが、下限額として「10万円以上」となっています。

企業版ふるさと納税においては、自社の控除上限額を計算しておくことで、最適な寄付額を計算できます。

しかし、その計算については、

  • 事業年度の課税所得
  • 事業年度の繰越欠損金
  • 自治体の税率

などの項目が必要になってくるため、具体的な計算をおこなう際には税理士などに相談するようにしましょう。

また、企業版ふるさと納税については、内閣府が認定した地方公共団体が実施する地方創生に関するプロジェクトに対しておこなわれた寄付に対してのみ認められます。

どのようなプロジェクトが認定されているかどうかは、下記の内閣府のホームページで確認できるため、企業版ふるさと納税を検討する際は必ず確認するようにしましょう。

企業版ふるさと納税ポータルサイト

未払いの寄付金は損金になる?

法人がおこなう寄付金が未払いの状態である場合、損金処理できません。

この取扱いについては、法人税法施行令第78条によって次のように定められています。

  • 法人税法施行令78条

「寄付金の支出は、各事業年度の所得の金額の計算については、その支払がされるまでの間、なかつたものとする」

法人税法施行令|電子政府の総合窓口 e-Gov

上記の規定により、法人がおこなう寄付金は実際に金銭を支出した事業年度において、損金に算入されることになります。

また、経理処理において、

  • 未払金に計上した寄付金
  • 仮払金として処理している寄付金

などの寄付金については、次のように申告調整※1をおこなう必要があるため、注意が必要です。

経理処理の方法 申告調整方法
未払金に計上した寄付金 法人税申告書内で所得に一定額を加算する
仮払金として処理している寄付金 法人税申告書内で所得から一定額を減算する

※1 申告調整とは法人税などを計算する際に、決算で確定した当期純利益を「加算」「減算」することで数値を調整することをいいます。
この場合における申告調整の場合、
・未払金に計上した寄付金・・・未払金は損金処理ができないため、所得金額に加算する
・仮払金として処理している寄付金・・・寄付金は支払った事業年度に損金処理するため、所得金額から減算する

まとめ

法人がおこなう寄付金は必ずしも、支払った金額すべてが損金になるとは限らず、

  • 寄付金の区分
  • 資本金の金額
  • 所得金額

などによって、損金算入額に限度額が設けられています。

そのため、法人ごとに適切な寄付金額は異なり、それぞれに合った寄付金額を知っておくことで効率よく損金に算入できます。

しかし、

  • どこに対しておこなった寄付金がどの区分に該当するのか
  • 寄付金の損金算入限度額がいくらなのか

ということについては、素人での判断は難しく、より専門的な知識が必要となります。

そのため、効率よく最適な寄付をおこないたい場合には、なるべく税理士に相談することをおすすめします。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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