税理士は会社にとって大切なパートナーになります。円滑な会社運営をするためにも、マッチする税理士の探し方は重要です。「マッチする」は人間関係と同じで「相性がいい」という言葉に置き換えてもいいでしょう。
税理士は会社経営にとって、資金調達や経営方針に沿った指針作成、節税対策などについて経営者や経理部門と協力しながら考え、相談にのってくれる存在です。税理士の探し方がわからない方は気軽に相談できて的確なアドバイスを適時適宜にもらえる税理士を探すための参考にしてください。
税理士の探し方:税理士の基本的な役割とは?
税理士は会社とって数々の重要な役割を担ってくれます。顧問税理士として会社経営のさまざまなシーンに関わり、税金の申告業務だけでなく幅広い役割を担います。税理士の探し方における最初の一歩が、どの役割を税理士に任せるのかを知ることです。
税理士の主要な3つの役割
- 顧問税理士
- 確定申告
- 相続税申告
税理士のその他の役割
- 会社設立や創業支援
- 税務調査立ち会い
- 節税相談
- 資金繰り相談
- 補助金や助成金受給サポート
- 事業承継アドバイス
- 記帳代行
- 決算業務
- 給与計算や年末調整
税理士の探し方:良い税理士の特徴と良くない税理士
税理士を探すときに知っておきたい会社にとって良い税理士とは、どのような税理士なのかを見ていきます。同時に良くない税理士とはどのような税理士かも説明します。良くない税理士に依頼してしまうと、損失が発生するリスクは多大です。
良い税理士の特徴5つ
会社にとって良い税理士が必ずマッチするとは限りませんが、一般的に良いとされる税理士の特徴は大きく5つあります。この特徴を知ることで探すときの一助になるでしょう。
税理士業務はサービス業と割り切っている税理士
税理士は会社へメリットのあるサービスを提供するものだ、と割り切っているかどうかは重要なポイントです。税理士は難しい資格を取得し、「士業」として世間の人たちから敬われて「先生」と呼ばれます。世間の評価のままに税理士自身がそう考えているとミスマッチの原因になります。
気難しい先生では、経理担当者も気軽に相談できません。知識や経験を有しているうえに、人としてフレンドリーな性格でサービス業として徹する意識のある税理士だと接しやすいものです。
スピーディーかつ的確に対応可能な税理士
会社や個人事業主が求める業務をスピーディーかつ、的確に遂行してくれる税理士は心強い味方になります。たとえば、決算時期になってから今期の税金はこうなります、と結果だけを伝えられても手の打ちようがありません。
期中に期末の予測を立てて、方向性を示してくれれば軌道修正が可能です。決算期のシミュレーションをスピーディーかつ具体的な数字で的確に示せる能力のある税理士を探しましょう。
レスポンスが早くフットワークの軽い税理士
経理担当者が仕事を進めるうえでの疑問を税理士に相談する場面は多々あります。メールや電話で問い合わせした際にすぐに返信があったり、会社に来てくれたりすると業務遂行がスムーズに運びます。
レスポンスの早さやフットワークの軽さは、誠実さや真摯さの現れといえます。税理士との関係においては信頼がベースになるので大切なことでしょう。
法律改正を学び有益な情報を発信する税理士
電子帳簿保存法の改正など重要だと判断した情報を随時会社に向けて発信してくれる税理士は、ありがたい存在となります。会社経営に関する法律改正は毎年のように行なわれます。会社の経理責任者がすべてを追いかけるのは困難です。
大きな災害などがあれば、特例措置などもあります。ポイントを押さえて必要な情報だけをピックアップするには全体を知ることが必要です。真面目に学ぶ姿勢のある税理士は頼りになるでしょう。
節税対策を考えてくれる税理士
会社にとってキャッシュフローは重要なポイントです。いかに社外に出ていくお金を小さくするかを考えるうえで、節税は欠かせません。税務署の立場で考えられては、税金が出ていく一方になってしまいます。法律の範囲内で会社の立場になって節税を考え、詳しく教えてくれる税理士が必要です。
良くない税理士を選ばない
良い税理士を見てきましたが、逆に良くない税理士についても説明しましょう。
もっとも悪質な例としては税理士資格を持っていないにも関らず、税理士を名乗る「にせ税理士」が挙げられます。「まさか!」と思われるかもしれませんが、国税庁は令和3年4月1日に「No.9204 にせ税理士にご注意」と注意喚起しています。
税理士業務ができるのは、税理士・税理士法人・国税庁に通知した弁護士および弁護士法人だけです。その他の個人や法人が税理士業務を行なった場合は、税理士法第52条違反になります。
ほかには、良い税理士の5つの特徴と反対の場合は会社業務が円滑に運ばず、トラブルが起きる可能性が大きいでしょう。
マッチする税理士の探し方のポイントと注意点
良い税理士の特徴を備えていても、必ずしも会社や個人事業主にマッチするとは限りません。ミスマッチな税理士に依頼してしまうと不愉快な気持ちになるだけでなく、決算業務が滞るなどの実害がありますので注意が必要です。まずは探し方のポイントと注意点を把握しておきましょう。
マッチする税理士の探し方のポイント
- どのような特徴を持つ税理士に依頼したいかを明確にする
- 自社にとって必要な税理士業務をピックアップする
- 数名をリストアップして比較したうえで選ぶ
このように、税理士側の特徴と自社の特徴を把握してマッチングさせることが大切です。マッチングの大切さは恋愛や友人とのつきあいと似ています。共通の趣味、金銭感覚、収入、性格などを見極めると人間づきあいに支障が少なくなるのと同じでしょう。
税理士探しで注意したいポイント
他社から紹介してもらってもマッチするとは限らない
会社ごとに業種や従業員数、売上高などの規模が異なりますので、他社にとって良い税理士でも自社にマッチするかどうかはわからないため、よく調べる必要があります。
近い距離にいる税理士でも、タイムリーに相談できないことがある
インターネット環境が整備されていますので、実際の距離が遠くてもレスポンスが早くオンライン会議などを利用できる税理士が良い場合があるでしょう。
個人事業主にとっての税理士の必要性
個人事業者が税理士に依頼するのは、年間売上1000万円の消費税課税事業者になったときが良いとされています。年間売上が1000万円を超えると節税対策を行なったり、資金調達の必要性が増したりするため、税理士の協力が必要となってきます。
税理士に依頼する大きなメリットのひとつが、法律改正への対応です。税務の法律改正はよくあり、そのたびごとに改正点を把握して業務に反映させなければなりません。
個人事業主は営業活動も経営もひとりで抱え込んでいる方が多いのが実情でしょう。業務に手一杯で法律改正の要点も掴めない状況であれば、税理士に依頼して法律改正対応の部分や資金繰り対応を任せてしまえると安心です。
重視事項で選ぶ、おすすめ税理士タイプ
マッチする税理士の選び方に「どのような特徴を持つ税理士に依頼したいかを明確にする」というポイントを挙げました。税理士を選びで重要視するポイントが変われば、おすすめする税理士の特徴も変わってきます。ここでは重要視しているポイントごとに、どういった税理士があうのか、おすすめの税理士タイプについて解説します。
①低価格重視
なによりも価格を低く抑えたいという人には、税理士業務のうち必要最低限の業務だけに絞って依頼ができる税理士がおすすめです。必要最低限の業務とは、たとえば会計ソフトへの入力、メールや電話での相談業務、申告業務のみをさします。会社規模が年商5000万円以下で、大きな変化の少ない業種であれば低価格重視でも良いでしょう。
ただ、まれに低価格を売りにしている税理士に依頼した場合、「レスポンスが遅い」「相談に応じてもらえない」といったトラブルがあり、税理士を変えるケースがあります。税理士業務は年度比較をしながら、変化に気づいてもらうことも大切ですし、新たに探す手間も大変ですから、価格だけで探すのはリスクを伴う可能性が大です。
②専門性重視
税理士には、自身の運営する業種や事業についてよく知っていてほしいという人には、「専門」や「得意業種」を明記している税理士にご依頼することをおすすめします。
業界によっては税務においても特殊な知識と経験が必要な場合があります。たとえば不動産の場合は顧客の物件売買に伴う納税が発生するケースもあるため、不動産に特化した税務知識が必要です。
また、税理士になるためには11科目中5科目の試験に合格する必要があります。しかし、企業顧問を務めるうえで大切な法人税の科目は選択科目であり、受験しないまま税理士になる人も少なくありません。つまり、極論ではありますが、世の中には法人税について全く勉強してきていないが、法人税について相談にのっている税理士も存在するということです。
専門性や知識の乏しい税理士に依頼するということは、節税のチャンスや企業成長の機会を逃すことにもつながります。専門性が1番の重要視ポイントでなかったとしても、しっかりと専門性と実力のある税理士を見極めたうえで依頼するようにしましょう。
③付加価値重視
通常の税務を滞りなく進めてくれることはもちろんとして、+αで提供してくれるサービス内容をみて決めたい人には「相談・アドバイス」や「経営コンサル」を強みにしている税理士がおすすめです。
こういった点を強みにしている税理士は、顧問税理士として定期的に面談して、会社業務におけるリスク予測や資金調達調達、節税対策、法律改正対応など全般的に相談に応じてくれます。
会社経営者にとって、財務面からの投資判断や資金調達などは会社の将来を左右する大きな問題です。顧問税理士からスピーディーかつ的確にアドバイスを得られることの安心感は大きいでしょう。
事業規模が大きくなると、従業員の数も増えたり、事業所を拡大したりして資金繰りも複雑化してきます。節税対策もタイミングを逸すると、納税という資金流出が起きてしまいかねません。新規事業を立ち上げたり、事業を拡大したりする場合には、財務・税務面からの的確なサポートが期待できる付加価値重視の税理士を探しましょう。
税理士の主な3つの役割に応じた探し方のポイント
マッチする税理士を探すには、税理士に何を求めるかを明確化することが大切です。そのうえで、探し方のポイントを押さえて探します。
良い顧問税理士のポイント
顧問税理士は会社や個人事業主と顧問契約を結びます。顧問契約を結ぶと、もちろん単発で依頼をするよりも、密にコミュニケーションをとることとなり、日常業務の相談など接する機会が増えてきます。頻繁に接する相手だからこそ、税理士選びは慎重にいかなければなりません。以下では、良い税理士のポイントを詳しく解説していきます。
決算前に予測を立ててくれる
決算を迎えてしまってから問題を挙げられてもどうしようもありません。決算を迎える前にあらかじめ経理担当者と面談を行ない、問題がないかどうかの洗い出しをして予測を立ててくれる税理士だと安心して決算や確定申告を迎えられます。
時間・期限・約束を守る
ビジネスパーソンにとって時間や期限、約束を守るのは基本のマナーです。決められた時間に訪問してくれない、書類提出の期限を過ぎる、約束した事項に抜けがあるなどは、もってのほかで、信頼関係が築けません。
雰囲気が明るい
税理士事務所のスタッフの雰囲気が明るいことが大切です。人間関係と同じですが、対面だけでなく電話応対でも暗い雰囲気だと、会社業務にマイナスの影響をおよぼします。第一印象を大事にして、暗い雰囲気だと感じたらやめておくほうが賢明でしょう。
節税対策をしてくれる
税理士に依頼するのですから、税務のプロならではの節税策を提示してもらいたいものです。
数いる税理士のなかには「こちらから調べて聞かなければ、答えてくれず動いてくれない」「節税できるかどうか調べてもくれない」「節税できると知っていたのにスルーしていた」など、悪い税理士も存在します。
こちらが聞かずとも、提案してくれたり、対策してくれたりする税理士がよい税理士であることは間違いありません。無料相談など、初回面談の時点での対応をしっかりと見て、見極めましょう。
納得できる顧問料
税理士事務所の料金は、事務所が自由に設定できます。いくら雰囲気が良くても、あとになって価格面で後悔しないためにも探すときは比較することをおすすめします。また、税理士から最初に報酬額を提示されますが、その金額か妥当かどうかは税理士報酬の相場を知って判断する必要があります。税理士報酬の相場を知るために、税理士紹介サービスなどを利用すると良いでしょう。
コミュニケーションがとりやすい
近寄りがたい雰囲気で、叱られるような口調の税理士の場合は、相談もしづらいでしょう。相性の問題になるので、ビジネスライクに冷たい雰囲気がいい、という方もいるかもしれません。しかし、どんな雰囲気にせよ言葉のキャッチボールがしっかりと成立し、コミュニケーションがとれるかどうかは大切なポイントです。
マッチする税理士の4つの具体的な探し方
良い税理士と良くない税理士、重要項目で選ぶおすすめ税理士タイプ、会社や個人事業主にとって税理士に任せる業務は何なのかを明確にできたら、実際に探しはじめることになります。それぞれの探し方のメリットとデメリットを見ていきます。
税理士の探し方① 知人や他社から紹介された税理士に依頼
知人や他社から紹介してもらう方法は、紹介者が実際に接しているので信頼できる可能性が高いはずです。「知っている」ことは大きなメリットで、税理士と紹介してくれた人との信頼関係が担保となり、誠実に業務に取り組んでくれることが期待できます。
一方でデメリットはミスマッチが判明したときに断りにくいことです。逆に紹介者との関係が壊れてしまう可能性があります。紹介者にマッチしていても、自社の実情に合っているとは限らないからです。気になる点が見つかれば、明らかにしてはっきりと断りましょう。
また税理士には守秘義務がありますが、紹介者が同じ業界でライバル関係にある場合は、双方の業績などを比較される可能性もあり、気になる場合は違う税理士を探すほうが良いでしょう。
税理士の探し方② 会社の近くの税理士事務所に依頼
ビジネス街には、歩いていると税理士事務所を見かけることがあります。契約している税理士に疑問を感じる場合などは、直接訪問して相談することも可能です。メリットはコストや手間がかからないことです。関係がない状態なので、遠慮せずにいろいろな話を聞けます。
歩いていて見つからないときは、自治体が行なっている無料税務相談を利用して、税理士に出会うという探し方もあります。無料税務相談とは税理士が社会貢献として小規模納税者に行なっている、無料~安い価格で相談にのってくれる税務相談のことです。
近くの税理士事務所に依頼することのデメリットは、得意分野や料金設定などがわかりにくいことです。また実際に会って話してみてもほかの税理士事務所と比較しにくく、結果としてミスマッチな税理士だったということになりかねません。
税理士の探し方③ 地域を限定してインターネットで検索
2001年に税理士法が改正されるまでは、税理士には広告規制がありました。改正後は緩和されて、税理士もホームページを作成して宣伝できるようになったため、インターネットで探すことが可能です。
地域を限定して自社が必要とする業務のKWに絞って検索できます。インターネットで探す最大のメリットは費用がかからないこと。さらにいつでも自由にアクセスできることです。
逆にデメリットは表示される情報が多すぎて迷うことといえます。実績や経験が豊富な税理士もいれば、まだ開業したばかりの税理士も一緒に並んで出てきます。マッチする税理士をそのなかから探し出すのは至難の業といえるでしょう。
税理士の探し方④ 税理士紹介サービスを利用
税理士紹介サービスを利用して探すと、自社のニーズにマッチした特定のタイプの税理士を多数ピックアップしてもらえます。インターネットで検索して一つひとつ検証する手間が省けて時間の節約が可能です。税理士を選ぶときの客観的視点で探してもらえます。さらに、価格交渉や断りも対応してもらえるので気が楽です。
デメリットは実際に知っている人ではないので、信頼できるかどうか不安が残ります。実績データなどを自分の目で確認することも必要でしょう。
マッチする税理士を探して会社業務を改善する
会社や個人事業主にマッチする税理士の探し方は、良い税理士について知るところからはじまります。自社にとって、どのタイプの税理士が適しているのか、税理士業務のなかで何を任せるのかを明確化することが大切です。その点を明らかにしたのち、具体的にマッチする税理士を探します。良い税理士との出会いは、会社の発展にとって欠かせません。自分で探すのは手間と時間がかかりますので、税理士紹介サービスを利用するメリットは大きいでしょう。ビジネスパートナーとして共に歩んでくれる良い税理士を探してください。