令和2年12月に、令和3年の税制改正大綱が発表されました。今回の改正案では新型コロナウイルスによる影響を受け、社会のデジタル化を推進させるための施策が多く盛り込まれています。
この記事では令和3年の税制改正の中でもデジタル化に関係の深いものに焦点をあて、どのような制度があるのか、紹介していきます。
令和3年の税制改正 税金関係書類のハンコが不要に
今まで確定申告書や税務署への届出書を紙で提出する際にはハンコが必要でした。
しかし令和3年の税制改正において、一部の書類を除き今後は税務書類のハンコを押さなくてもよいこととされました。
ハンコが不要な書類・必要な書類
それでもすべての書類にハンコが不要となるわけではなく、引き続きハンコが必要な書類もあります。ハンコが不要となる書類、引き続き必要な書類について確認しましょう。
【ハンコが不要となる主な書類】
- 確定申告書
- 修正申告書
- 更正の請求書
- 届出書や申請書
- 扶養控除申告書などの年末調整書類
【引き続きハンコが必要な書類】
- 遺産分割協議書
- 担保提供関係書類および物納手続関係書類のうち、実印の押印および印鑑証明書の添付を求めている書類
税金関係書類のハンコが不要なのはいつから?
ハンコが不要となるのは国税・地方税ともに令和3年4月1日からです。
ただし国税については「施行日前においても押印がなくても改めて求めない」とされていますので、実質的には令和3年4月1日より前においてもハンコが不要といえます。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
令和3年の税制改正 電子帳簿保存制度の見直し
経理関係のリモートワーク化、ペーパーレス化に伴い、電子帳簿等の保存制度について見直しがされました。また、電子帳簿やスキャナ保存制度についても今までの要件を緩和し、より運用しやすい形となりました。
一定の電子帳簿については今までの事前承認制が廃止。事前申請をせずに運用できるようになりました。さらに電子データでの保存が認められ、帳簿書類については一部を除いて紙での保存が不要となります。
また、書類を電子で保存する際の、スキャナ保存の要件も緩和。まず事前承認制が廃止されました。加えて、タイプスタンプの付与期限を現状の3日以内から会計入力期間(最長約2か月)とするなどの見直しがされる予定です。
令和3年の税制改正 デジタルトランスフォーメーション投資促進税制とは?
令和2年は新型コロナウイルスによって経済が大打撃を受けた年でした。ウィズコロナやポストコロナを見据え、事業の転換やビジネスのデジタル化を図る事業者も多いのではないでしょうか。
「デジタルトランスフォーメーション投資促進税制」(以下「DX投資促進税制」は、このようなデジタル化のために投資するソフトウェアなどを対象に、税制優遇をする新たな制度です。
誰が対象?【デジタルトランスフォーメーション投資促進税制】
DX投資促進税制の対象となるのは次のすべてを満たす事業者です。
【対象となる事業者】
- 青色申告書を提出する法人または個人
- 産業競争力強化(改正法)の事業適応計画(※)の認定を受けていること
- 事業適応のために一定の設備投資をすること
(※)仮の名称です。産業競争力強化法はこれから改正予定であり、細かな内容の決定は2020年12月時点でまだされていません。
どんな資産が対象?【デジタルトランスフォーメーション投資促進税制】
DX投資促進税制の対象となるのは、クラウド化やサイバーセキュリティ強化などの、生産性の向上または需要の開拓にとくに効果のあるものとして認定を受けた設備投資で、下記のいずれかの資産です。
【対象となる資産】
- 新設または増設をするソフトウェア
- ソフトウェアとともに計画に必要な機械装置・器具備品
- ソフトウェアの利用に必要な費用のうち、繰延資産となるもの
※開発研究用資産は対象資産から除かれます。
具体的な優遇措置は?【デジタルトランスフォーメーション投資促進税制】
DX投資促進税制では、対象となる資産の取得価額の30%の特別償却、または取得価額の3%の税額控除の選択適用が可能です。また、親子会社ではない、グループ外の事業者とデータ連携をする場合には5%の税額控除が認められています。
他に気をつけることは?【デジタルトランスフォーメーション投資促進税制】
DX投資促進税制では上限額が2つあります。
1つは税額控除の上限で、「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」での税額控除と合計したときに、法人税額の20%を控除上限としています。
2つ目の上限は対象資産の金額で、取得価額が300億円までを限度としています。
令和3年の税制改正 カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設
「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」は温室効果ガスの削減を促進するための投資優遇制度です。事業者の一定の生産設備等のうち、温室効果ガスの削減に効果があるものについて、税制優遇を設けた新たな制度です。
誰が対象?【カーボンニュートラルに向けた投資促進税制】
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の対象となるのは次のすべてを満たす事業者です。
【対象となる事業者】
- 青色申告書を提出する法人または個人
- 産業競争力強化法(改正法)の中長期環境適応計画(※)の認定を受けていること
- 一定の設備投資をすること
(※)仮の名称です。産業競争力強化法はこれから改正予定であり、細かな内容の決定は2020年12月時点でまだされていません。
どんな資産が対象?【カーボンニュートラルに向けた投資促進税制】
設備投資で対象となる資産は次のいずれかです。
【対象となる資産】
- 生産工程の効率化による温室効果ガスの削減その他の中長期環境適応に用いられる設備
- 温室効果ガスの削減に効果のある事業活動に貢献する製品、新たな需要の開拓に貢献する製品の生産に使用される設備
具体的な優遇措置は?【カーボンニュートラルに向けた投資促進税制】
「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」では、対象となる資産の取得価額の50%の特別償却、または取得価額の5%の税額控除の選択適用が可能です。また、温室効果ガスの削減に著しい効果があるものについては10%の税額控除が認められています。
他に気をつけることは?【カーボンニュートラルに向けた投資促進税制】
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制では上限額が2つあります。
1つは税額控除の上限で、「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」での税額控除と合計したときに法人税額の20%を控除上限としています。
2つの上限は対象資産の金額で、取得価額が500億円までを限度としています。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
令和3年の税制改正 設備投資は事業計画をもとに行おう
デジタル化に関連のある税制改正についてお伝えしてきました。
設備投資に関係の深い税制優遇もありますが、ご注意いただきたいのは、設備投資は事業計画を優先して行うということ。
優遇制度や節税効果があるからといって、回収の見込みがない投資を行っては、節税額より投資損失が上回ってしまうことも。
大事なことは利益を生み出す事業計画が元にあり、そのうえで計画を実行するための設備投資を行うことです。事業計画については外部の税理士に相談するほか、経営企画に長けた人材を社内に迎え入れることで実効性の高いものが作りやすくなります。ぜひ一度検討してみましょう。