第三者割当増資とは、株式会社では資金調達の手段になります。また、第三者割当増資について知っておくことで、上手に経営することが可能になります。しかし、第三者割当増資を完全に理解するのは難しく簡単には理解できません。ここでは、第三者割当増資という言葉を聞いたことがない素人の方でも簡単にわかるように第三者割当増資について紹介していきます。
第三者割当増資とは?わかりやすく解説
第三者割当増資という言葉を聞いたことがある人は多くても第三者割当増資について理解している人は少ないです。しかし、第三者割当増資は会社を経営する人なら必ず理解しておかなくてはいけないものになります。特に、株式会社を経営している人は第三者割当増資について知っておくことで経営をより安定したものにできます。ここでは、第三者割当増資を知らない人でも第三者割当増資について理解できるように概要などを中心に紹介していきます。
第三者割当増資の概要
第三者割当増資とは、現在発行している株式のほかに、新規で株式を発行することになります。新規で株式を発行することで、トータルで発行している株式の絶対数が多くなります。このように、株式の数が増える第三者割当増資ですが、しっかり理解しておかないと痛い目を見ることもあります。特に、第三者割当増資を行う目的と影響をしっかり理解しておくことが重要になります。
第三者割当増資の目的とは
第三者割当増資を行うのには目的があります。第三者割当増資の目的を知っておくことで必要になった時に第三者割当増資を行うという選択肢を取ることが可能になります。ここでは第三者割当増資の目的でもポピュラーなものについて紹介していきます。
資金調達
第三者割当増資を行うことで、株式の数を増やすことが可能になります。なので、資金を調達することが可能になります。株式会社の場合は、株式を発行して買い手がついたらその分の金額を自社の運営費用に回すことが可能になります。
第三者割当増資は、株式会社が行うことができる資金調達の方法といえます。第三者割当増資がうまくいけば、多額の資金を調達することも可能になります。
企業買収
第三者割当増資は、企業買収の手段として使われることもあります。株式を新規で発行することで、特定の会社や人物に株式保有率を高めることが可能になります。
株式会社の場合は、株式の保有比率が全体株式数の半数を超えると実質的な経営権を握ることが可能になります。なので、第三者割当増資を行って企業を買収するということはよくあります。
第三者割当増資で企業を買収するのは非上場企業が多いです。これは、第三者割当増資で会社を買収するのが上場している会社では、株式の保有者が多いので困難になるためです。
第三者割当増資の影響とは?
第三者割当増資を行う時には影響も大きいです。影響についてしっかり理解しておかないと会社としての信用を失ってしまう原因にもなりません。ここでは、第三者割当増資を行うことで出る可能性がある影響について紹介していきます。
経営権を握られる可能性がある
第三者割当増資は意図的に企業買収のために使われることもありますが、意図しないうちに経営権を握られる可能性もあります。第三者割当増資を行い株式の絶対数が増えることで、大株主の株式保有率は相対的に下がります。
この時に、新規発行した株式を買い占められてしまうと、その人の株式保有率が全体の半数を超えてしまうことがあります。大きな企業ではこのようなミスを行うところは少ないですが、株式の絶対数が少ない会社ではこのようなことが起こってしまう可能性があります。
株価が大きく乱れる
第三者割当増資は株式を新規発行することになります。新規発行すると、一株当たりの株価は大きく下がります。いままで株を持っていた人が第三者割当増資を行う前に、一気に売りに出すことがあります。このような行動を皆が起こすことで株価が大きく変動することになります。
株式の保有比率が変化
第三者割当増資で株式の新規発行を行うことで、株式の保有比率が大きく変わることがあります。新規発行によって株式の保有比率が変わり経営に対しての発言権がなくなる可能性もあります。なので、第三者割当増資で株式の保有比率が大きく変わってしまい不利益を被ることになる人もいます。
第三者割当増資のメリットを初心者にもわかりやすく解説
第三者割当増資のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。第三者割当増資のメリットを知っておくことで、経営の際に生かすことができる可能性が高くなります。ここでは、第三者割当増資を行うメリットについて紹介していきます。
資金調達が可能
第三者割当増資の最大のメリットは、新規に株式を発行することで資金調達ができることです。第三者割当増資は資金調達のために使われることが多くなっています。特に上場企業の場合は、第三者割当増資をおこなうことで株価が乱れることは予想されますが、それでも資金を調達することが可能な場合が多いです。
資本金の増加
株式会社では資本金の多さが会社の信用に直結します。資本金が多い会社ほど社会的な信用を得ることが可能になり、融資などを受けることができる可能性も高くなります。
株式会社の場合は、株主からの払い込みである株式を資本金の一部に計上することが可能になります。なので、第三者割当増資を行って新規株式を発行することで得た資金を、資本金にすることが可能です。株式会社では第三者割当増資を行って資本金を増やすことがあります。
関係を増すことができる
第三者割当増資を行うことで、株式を新規発行することが可能になります。この株式を取引先や会社に関係のある人に買い取ってもらうことで、第三者割当増資を行った会社の株主になることができます。このように株式を関係者に保有してもらうことで関係を増すことが可能になります。
株式なので返済をする必要がない
株式は融資と異なり返済を行う必要がありません。なので、企業はリスクを少なくして資金を調達することが可能になります。なので、第三者割当増資が使われることもあります。
株式が増える
第三者割当増資では、株式を新規発行するので株式の絶対数が増えます。株式の発行数を増やしたい時に第三者割当増資を行うことがあります。第三者割当増資を行うこと以外に株式の絶対数を増やすことができる方法は基本的にありません。
第三者割当増資のデメリットを初心者にもわかりやすく解説
第三者割当増資のデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。第三者割当増資のデメリットを知っておくことで、経営の際に生かすことができる可能性が高くなります。ここでは、第三者割当増資を行うデメリットについて紹介していきます。
経営権を握られることがある
第三者割当増資で株式の新規発行を行うと、株式を買い占められて実質的な経営権を握られてしまうことがあります。ファンドなどではこのような手法を用いて企業の敵対買収などを行うことがあります。なので、第三者割当増資には株式を買い占められて経営権を握られてしまう可能性があることもあることを心得ておきましょう。
株価が下がることが多い
第三者割当増資では株式を新規発行します。一般的に供給が増えると需要は下がり値段が下がります。株式でも同じことがあります。第三者割当増資を行うことで、株式の数が一気に増えて需要を超過していまい、株価が下がることがあります。
また、第三者割当増資を行うこと自体が不安要素に数えられることもあります。なので、第三者割当増資が原因で心理的な不安を呼び起こし、株が一気に売られて株価が暴落することもあります。
コストがかかる
第三者割当増資で新規株式を発行するためには、コストがかかります。第三者割当増資を行うことで資本金の金額が変更になります。資本金を変更する時には変更の時ごとに3万円の登録料や司法書士の方に頼む時の依頼料金などがかかることになります。なので、コスト面での負担が増えることになります。
しっかり周知を行わないといけない
第三者割当増資を行う時には、新規株式の発行を行います。なので、既存の株主の方に説明を行う必要があります。株主に周知をしないうちに第三者割当増資を行ってしまうと株価が大きく乱れてしまう可能性があります。なので、既存の株主の方には周知を行った上で第三者割当増資を行う必要があります。
株主の反対が起こる可能性がある
第三者割当増資を行うと大半の場合に株主の反対が起きます。第三者割当増資を行うと、株式の価格が下がることは必須です。なので、既存の株主は第三者割当増資に大きく反対します。特に、大株主は保有比率が下がるので反対することが多いです。発言権が大きい大株主が反対することでなかなか第三者割当増資に踏み出せない企業も多いです。
第三者割当増資で起こる株式の希薄化とは?
第三者割当増資を行うと株式の希薄という現象が起こることがあります。しかし、素人の方は株式の希薄化と言われてもなんのことかわからないことが多いと思います。ここでは、第三者割当増資で起こる株式の希薄化について紹介していきます。
株式の希薄化とは
株式の希薄化とは、文字通り株式の価値が希薄されてしまうことになります。本来100株が発行されている株式が追加で900株発行されると、一株の価値は10分の1になっています。これが株式の希薄化と言われる現象になります。
株式の希薄化の原因
株式の希薄化が起こる理由を理解していない人も多いと思います。ここでは、株式の希薄化が起こる原因について紹介していきます。
発行株数が増える
第三者割当増資で株式の発行数が増えることで株式の絶対数が増えます。なので、株式総額が変わらなかった場合は株式の数が増えることで一株あたりの価格が下がることになります。
株主が多くなる
株主が多くなることで株式の希薄化が起こる可能性があります。株主が多くなることで一人あたりが株式を保有する割合が減ることになることが多いです。また、そのほかにも株主が第三者割当増資を受けて株式を一気に売り出すこともあります。このような行動によって株式の希薄化が起こることになります。
希薄化の問題や影響
株式の希薄化が起こることで起きる問題や影響は、非常に大きいものになります。特に、株主の間では大きな問題にあります。会社を経営している人の視点からすると会社に対する信用も減らすことにもなります。ここでは第三者割当増資を行い株式の希薄化が起こることで起きる問題や影響について紹介していきます。
株価が大きく乱れる
第三者割当増資を行い株式の希薄化が起こると、株価が大きく乱れることになります。また、インサイダー取引を行う人が増えるという問題もあります。なので、第三者割当増資で株式の希薄化が起こってしまうと大きな問題になります。
信用を失う
第三者割当増資を行い株式の新規発行を行うことで株式の希薄化が行われてしまうと、信用を失うことになります。基本的に株式を多く発行したら、株式の希薄化が行われることが予想されます。なので、株主はいい顔をしないことが多いです。また、いきなり第三者割当増資を行ってしまうと株主からの信用を失うことにもなってしまいます。
第三者割当増資における25%・300%ルールを簡単に解説
第三者割当増資には株式の希薄率が25%と300%の時にルールが設けられています。このルールを破ることで最悪の場合は株式の上場が廃止されることもあります。なので、第三者割当増資における25%・300%ルールは知っておくようにしましょう。ここでは25%・300%ルールについて紹介していきます。
希薄化率が25%の場合
希薄化率が25%以上となるとき、または支配株主が異動するときは、原則として、「経営陣から一定程度独立した者による第三者割当の必要性及び相当性に関する意見の入手」もしくは「第三者割当にかかる株主総会の決議などによる株主の意思確認」をする必要があります。
希薄化率が300%の場合
上場会社が希薄化率300%を超えるときは、株主の権利の不当な制限に該当するとされ、上場廃止となります。希薄率が300%を超えてしまうということはなかなかありません。しかし、実際に300%を超えてしまう場合は高確率で上場廃止になります。
第三者割当増資の発行株価の計算方法を初心者にもわかりやすく解説
第三者割当増資の発行株価を求める必要があります。しかし、どのように発行株価を調べればいいのかわからない人も多いと思います。ここでは、第三者割当増資における発行株価の求め方について紹介していきます。
上場企業の場合
上場企業の場合は、簡単に発行株価を調べることが可能になっています。上場企業の場合は、株価は調べれば出てきます。また、発行株式数も会社がIRなどで株主に向けて情報の提供をしています。発行株価の求め方は以下の公式で求めることが可能です。
- 「株価(月の平均)×発行株数」
非上場企業の場合
非上場企業の場合は株価や発行株式数の情報が開示されていないことが多いです。なので、発行株価を求めることは簡単ではありません。ここでは、非上場企業の発行株価を求める方法を紹介していきます。
①簿価純資産法
簿価純資産法は、帳簿上に記載されている資産の合計から負債を引いたものが評価額に当たります。企業の帳簿をもとにしているので信頼性の高いものになります。
②時価純資産法
時価純資産法は企業が持つ資産・負債を時価に直したうえで計算する手法です。時価に直した総資産から負債合計を引いた値を評価額とします。この手法を使うことで上場していない企業の発行株価の目安をつけることが可能になります。
③類似企業比較法
類似企業比較法は、類似した他の上場企業を複数選出し、発行株数を比較することで大体の発行株価を求める手法になります。この手法を使うことで発行株価を簡単に求めることが可能になります。
第三者割当増資を実際に行った事例を紹介
第三者割当増資を行った会社は過去にたくさんあります。ここでは実際に第三者割当増資を行った会社について紹介していきます。
エムスリー
エムスリーは企業を買収するための資金を集めるために、第三者割当増資を行いました。エムスリーが行った第三者割当増資では。割当先を事前に決めたものでした。
ドコモとソニーという大企業に割り当てを行ったことから、株価は下がるどころか上昇しました。第三者割当増資でも割当先が事前に決まっている場合は期待を込めて株価が上がることもあります。エムスリーはこの第三者割当増資で502億円の資金を調達することができました。
大和ハウス工業
大和ハウスは、不動産への投資費用を捻出するために第三者割当増資を行いました。大和ハウスは第三者割当増資で126億円の資金を調達することに成功しました。しかし、株主から大和ハウスへの期待は少なかったようで、株価は一時200円ほど値を下げることになりました。
このように資金調達をしたところで、見込むことができる期待が少ないと株価が下がることもあります。実際に株価が下がってしまう事例は多くなっています。
⼤塚家具
大塚家具は、株式会社ハイラインズと業務提携を行うために第三者割当増資を行いました。大塚家具の第三者割当増資では76億円の資金を調達することができました。大塚家具の第三者割当増資では株価が大幅に下落して下落率は25%にもなりました。
このように第三者割当増資で株価が大幅に下がってしまうこともあります。特に、業務提携の場合は期待度によって株価の上下は大きく変わります。
ヤマダ電機
ヤマダ電機は企業の価値を高めるために第三者割当増資を行いました。第三者割当増資では新規株式を発行することで資本金を増やして企業としての価値を高めることが可能になります。ヤマダ電機は第三者割当増資をおこない、期待度が大きかったことから株価は上昇するという結果になりました。
第三者割当増資でお悩みなら税理士に相談を
税理士は第三者割当増資を含め資金調達のプロです。なので、資金調達や企業買収、業務連携などを見込んで第三者割当増資を行う場合は税理士に相談するようにしましょう。
まとめ
第三者割当増資は株式会社が資金を調達するために一番ポピュラーな方法です。また、第三者割当増資は業務提携や企業買収の際にも使われるものになっています。なので、株式会社を経営する人は知っておくといい制度になります。